2010年度 (筑波大)

講義情報 (2010年度・筑波大)

2010年度・担当講義一覧

2010年度は微積分I演習(1学期)、線形代数III(3学期)、解析I演習(1学期)、解析II演習(3学期)、関数論(1・2学期)を担当しました。また、3学期の総合科目「数学の美しさと面白さ」のなかで『実数, 指数関数, オイラーの公式』というタイトルで4回話しました。

それぞれの講義・演習の情報をまとめて見るには、右上の「カテゴリ選択」タブから科目名を選択してください。

総合科目 (4回目・1月24日)

最終回。オイラーの公式について。

まず、sin{x} と cos{x} の (x=0における) テイラー展開を書き下す。
sin と cos の微分がそれぞれ cos, -sin であることを認めれば、
書き下すこと自体はそれほど難しくない。
そして、このようにして得られた展開式は、任意の実数 x について正しい
(収束半径は無限大だということ)。

次に、複素関数の話。
複素関数とは、独立変数が複素数の関数。
多項式や有理式で定義される関数を複素関数と見なすのは難しくないが、
では、この講義でも扱った指数関数を考えるにはどうすれば良いか。
そこで、テイラー展開を使う。
複素数の収束の概念さえ定義すれば、テイラー展開の無限和に複素数を代入することで、
独立変数が複素数の場合にも拡張することができる。
そして、このように拡張しても指数法則 e^(x+y)=e^x e^y が成り立つ。
これはベキ級数の間の等式として等しいからだ。

以上の準備をしておけば、オイラーの公式は容易に導ける。
指数関数のテイラー展開の独立変数 x を ix におきかえて、
テイラー展開を計算していけば、自然に sin と cos の展開が現れる。
これがオイラーの公式。
最後に、指数関数の指数法則から三角関数の加法定理が出ることを話して、
竹山の担当分は終了。


補足:竹山担当分のレポート課題としては
「講義で扱った 4つのテーマから一つ選び、高校生にも分かるように自分の言葉で解説せよ」
という出題をしました。
学生さんのレポートは、みな力作揃い (明らかに手を抜いてるのもありますが) で、
とても感心しました。「自分で説明してみて良く理解できた」という感想もあったりして、
こちらの狙いとしては成功だったと思います。

解析II演習 (2月8日・15日・22日)

更新が遅くなったので、その後、解決した問題を列挙しておく。

2-10, 2-11, 2-12, 2-13, 2-14, 2-15, 2-16, 2-17, 2-18, 2-19,
2-20, 2-21, 2-22, 2-23(1), 2-24(1), 2-25, 2-27.

この演習では、求積法を主に扱いましたが、常微分方程式の話としては、
解の存在や延長などの定性的な理論も知っておいてほしいところです。
みなさんの今後の努力に期待します。

線形代数III (2月23日)

最終回。部分空間の和と直和の話。

まず、部分空間の和の定義。和が部分空間であること。
直和の定義。ここでは一般の個数の部分空間でも通用するように、
「和で書いたときの表示が一意的になる」と定義する。
そして、定理として、2個の部分空間の場合は、
直和であることと、共通部分がゼロしかないことが同値になること。
以上の話の例を 2次元の数ベクトル空間で。
最後に、和の次元公式とその証明の概略を述べて終了。

今日の反省:更新が遅れました。もう既に試験も終えて、
成績を出す締切が近づいています。
やはり 3学期の線形代数は難しいようです。
抽象ベクトル空間の話になって、ものの見方を学ぶことになるので、
たとえば多項式や関数が「ベクトル」に見えるようになってこないと、
この辺りの話は理解したとは言えないと思います。
今年度は物理学類の学生さん対象の講義でしたが、
この講義で話した抽象ベクトル空間という考え方は、
物理学でもかならず必要になりますので、よく復習しておいてください。

線形代数III (2月16日)

まず、前回の補足として、線型写像の階数(=像の次元) が、
その表現行列の階数に等しいことを、事実だけ述べる
(証明は前回プリントにして配布済)

今回は次元定理。
その証明の準備として、基底の拡張の話。
有限次元ベクトル空間において線形独立なベクトルがあれば、
そこに次元に足りない分だけベクトルを付けくわえて基底を構成することができる。
証明は難しくないが、時間の都合でプリントにして配布。
以上の準備の下で、次元定理の証明。
次元定理の応用としては、

1. 次元が同じベクトル空間の間の線形写像については
(1) 単射であること (2) 全射であること (3) 全単射であること
が同値になる。

2. 斉次1次連立方程式が非自明解を持つことと、
係数を並べた行列が full rank でないことは同値。
さらに、解の自由度は、未知数の個数から rank を引いたものになる
(ここで次元定理を使う。斉次方程式の解とは kernel の元のこと)。

次回は 2月23日。和と直和。

線形代数III (2月2日)

今回は線形写像の行列表示について。

まず、数ベクトル空間の間の線形写像の行列表示についての復習。
対応する行列は、標準基底の行き先を標準基底で展開した等式を、
行列の形で書き直すことによって現われる。

抽象ベクトル空間の場合も、同様に考えれば線型写像から行列が定まる。
すなわち、f: U -> V が線形写像だとすると、U, V の基底をひとつ決めて、
U の基底の行き先を V の基底で展開した等式を行列の形で書けばよい。
このようにして定まる行列を、f の表現行列という。
定義によって、表現行列は基底の取り方に依存することに注意。

後半は、基底の取り替えによって表現行列がどう変わるかについて。
基底の変換行列の定義。変換行列は正則であること。
最後に、基底を取り替えると、
表現行列は基底の変換行列でサンドイッチしたものに変わること。

今日の反省:今回は表現行列の階数と、
線型写像の rank の対応の話までしたかったのだけれども、時間切れ。
今年度の講義は物理学類対象ということもあって、
証明よりも考え方の解説に時間をかけている。
その分、以前に担当したときよりも時間に余裕ができるかなと思っていたのだけれども、
そうも行かないようだ。以前よりも、板書のペースを落としたということもあるけど。

来週の水曜は 11日の振替のため、次回は 2月16日。次元定理。

線形代数III (1月26日)

今回は線形写像とベクトル空間の同型について。

まず、抽象ベクトル空間の間の線形写像、その核と像の定義。
定義そのものは、数ベクトル空間のときと変わらない。
核、像が部分空間であること。単射であるための必要十分条件は核が {0} となること。
このあたりの事実の証明も、数ベクトル空間のときと同じ
(と言うよりも、まったくそのまま通用するような証明を、数ベクトル空間のときに与えた)。

次に全射の定義。全射とは、おおざっぱには像が行き先の集合全体を覆いつくすということ。
正確には「任意の○○に対して、ある××が存在して~」と定義する。
そして、全単射の定義。

最後に、ベクトル空間の同型の定義。
同型が同値関係であること (詳細はプリントで配布)。
n 次元ベクトル空間は、n 成分の数ベクトル空間と同型であること
(基底をひとつ決めるごとに同型写像が定まる)。
以上のことから、次元の等しい(有限次元)ベクトル空間は互いに同型であることが分かる。

今日の反省:同型という概念は、なかなか掴みにくい。
それは代数という考え方を感覚的に理解するのと、ほとんど同義だと思うので、
ある程度の経験は必要なのかなとも思う。
今日の講義では、前から数列目に座っている学生さんが、
講義そっちのけで思いっきり別の本(マンガの単行本?)を読んでいて、
静かにしているから注意はしなかったが、非常にげんなりした。
こちらの話を聞かずに、板書をただ写しているだけだったら、
教科書を一人で読んでいるのと変わらないので、たぶん講義に来る意味はないと思います。
どこか別のところで、思いっきり読書を楽しんだ方が幸せです。

次回は線形写像の行列表示。

線形代数III (1月19日)

今回は次元の話。

2成分の複素数ベクトル空間を考える。
このとき、基本ベクトルはもちろん基底をなすが、
それ以外にも x_{1}=(1, 0), x_{2}=(0, 1) (正確には転置をとった列ベクトル) とすれば、
x_{1}, x_{2} は基底をなす。
このように、同じベクトル空間であっても、基底のとり方はいろいろある。
しかし、基底をなすベクトルの個数 (上の例では 2個) は一定であることが見てとれる。

以上の前置きをふまえて、今回の主定理を述べる。すなわち、
有限生成ベクトル空間の基底をなすベクトルの個数は、基底のとり方によらず一定の値である。
この定理は次のことから従う:
「n 個のベクトルからなる基底をもつベクトル空間において、
任意にとった n 個のベクトルが線形独立であれば、それは基底をなす。」

ベクトル空間の基底をなすベクトルの個数を、そのベクトル空間の次元という。
上の事実から、有限次元ベクトル空間の次元は、
その空間において線形独立なベクトルの個数の最大値に等しい。
さらに、任意の部分空間の次元は、全体の次元以下であることも分かる。

今日の反省:線形代数の講義は、この辺りから少しずつ話すのが難しくなる。
ひとつひとつの細かいステップを述べていると時間がなくなるし、
聞いても理解できないような話になってしまうので、多少は端折る必要が出てくる。
学生さんが復習してくれることを期待するしかないのだけれども、
もう少しなんとかできないだろうかと毎年悩むところ。

次回は 1月26日。線形写像とベクトル空間の同型。

線形代数III (1月12日)

今回は基底について。

数ベクトル空間における基本ベクトルは、次の二つの性質をもつ。
(1) 任意のベクトルは、基本ベクトルの線形結合として書ける。
(2) (1) の表し方は一意的である。
この性質の (2)は、基本ベクトルは線形独立である、ということにほかならない。
以上のことをふまえて、抽象ベクトル空間において「基本ベクトルのようなもの」を考えたい。

その準備として、線形独立の定義 (の復習)。
2次以下の多項式のなすベクトル空間において、
線形独立なベクトルの組の例。独立でないベクトルの組の例。
線形独立の拡大条件 ( x_{1}, ... , x_{n} が線形独立で、
x がこれらの張る部分空間に属さなければ、この n 個のベクトルに x を加えても線形独立)。

次に基底の定義。基底の例。
有限生成なベクトル空間には基底が存在すること (証明はプリント) を述べて終了。

今日の反省:前回の記事の影響か、今回は私語がまったく聞こえてこなかった。
抽象ベクトル空間に入ると、話が次第に難しくなる (計算の話ではなくなってくる) ので、
話すのにも工夫が必要になってくる。
今年度は物理学類の学生さんが対象なので、細かい証明の話は講義であまりせず、
プリントにして配布するつもりでいる。

次回は 1月19日。次元。

総合科目 (3回目・1月18日)

今回はテイラー展開という考え方について。

まず、高校での微分の定義の復習 (微分係数は接線の傾き)。
この定義式を 1次近似式と読みかえる。
例として (4.01)^(1/2) の近似値の計算。

テイラー展開は、近似式の次数を上げることで、より良い近似を得ようという考え方である。
2次近似式の導出 (導関数に1次近似を適用して積分する)。
得られた2次近似式が、確かにより良い近似を与えることを確かめるために、
もう一度 (4.01)^(1/2) の計算。

導関数に2次近似式を適用して積分する、という計算を同様にくりかえしていくと、
一般に n次近似式が得られる。
そして、n の値を大きくしていくともとの関数に限りなく近づくのだとすると、
もとの関数は無限級数の和として表示できることになる。
これがテイラー展開 (テイラー級数展開と呼ぶこともある)で、
このような展開ができるとき、もとの関数は解析的であるという。
最後に、前回定義したネイピア数 e について、
それの定める指数関数 e^x のテイラー展開の計算をやって終了。

次回は 1月24日。オイラーの公式。

解析II演習 (1月11日)

今回解決した問題:1-9, 1-10, 1-11, 1-12(1)(2)。

今回はクレーロー型方程式の解法と、
定数係数線形微分方程式の記号解法についての問題を配布。

来週 1月18日は、17日の講義の振替のため、次回は 1月25日。

線形代数III (12月22日)

今回から抽象ベクトル空間の話。

まず、抽象化とはどういう考え方なのかについて。
そして、ベクトル空間の定義。8つの公理の使い方の例。
ベクトル空間の例として、数ベクトル空間と、次数を制限した多項式の空間。
部分空間・線形結合・ベクトルが張る部分空間の定義 (数ベクトル空間の場合と同じ)。
最後に、有限生成の定義をして終了。
以下この講義では、有限生成のベクトル空間のみを考えて、
基底の存在などについて述べていく。

今日の反省:抽象ベクトル空間の導入については、
上手く話ができているかどうか毎回不安になる。
今年度は物理の学生さんが相手の講義なので、
線形性という概念についてしっかりと述べたいところではあるのだけれど、
感覚だけを言語化しても伝わらないだろうから、難しいところ。

以下は愚痴めいてしまうけれども、人数の多い講義のせいか、
学生さんの講義の受け方がどうしても気になってしまう。
机の下で携帯などをいじっていたり、
講義の途中で教室に入ってきて文庫本を読み出したり。
これらの場合は静かにしてくれているので、気分は悪いが注意しないけれども、
明らかに私語を発している学生もいる。
もちろん、すべての学生に講義を受ける権利はあるが、
ほかの学生さんが講義を聴くのを妨害する権利は誰にもない。
自分では小声のつもりでも、教室中に大きく響き渡っている。
繰り返しになるけど、竹山の講義では出席を絶対にとりません。
また、話の内容は途中から聴いて分かるようには準備していません
(というか相当の時間をかけて「話の流れ」を準備しています)。
講義を真剣に聴くつもりが無いのなら、
教室以外の場所で時間を過した方がよほど幸せになれます。

次回は1月12日。基底の存在。

総合科目 (2回目・12月20日)

今回はネイピア数と指数関数の定義の話。

井原西鶴の浮世草子「日本永代蔵」に出てくる大阪泉州の水間寺の話。
水間寺では1年に10割の複利で金貸しをしていたが、
ある男がここで1貫の金を借り、地元に帰って運用して稼ぎ、
13年後に水間寺に帰ってきて 8192 貫の金をきちんと返した、という話。
この 8192 は 2の13乗で、これが複利計算。

そこで、借りる立場からは
(1) 1年に10割の複利  (2) 半年に5割の複利
のどちらが得か、という問題(「どちらも同じ」ではない)。
(2) は期間と利率を(1)の2等分にしたものだが、これを n等分にして、
nを無限大にする極限を考えた利率がネイピア数。
この極限が存在することは、前回やった連続性公理から出る。

後半は指数関数の定義。y=2^{x} を定義したい。
x が自然数のときは「2を掛ける回数」を独立変数として定義できる。
x が整数のときは高校で習ったように定義するのだが、
なぜそのように定義するかと言うと、それは指数法則が成り立つようにするためである。
同じ考え方で有理数の場合までは定義できるが、
有理数は体なので(四則演算で閉じるので)指数法則だけでは実数全体に拡張できない。
そこで、前回やった有理数の稠密性を使って実数全体に拡張する。
このようにして定義した指数関数もやはり指数法則を満たす。ただしこれは自明ではない。

次回はテイラー展開の考え方。

線形代数III (12月15日)

線形結合と線形写像の像 (image) について。

前おきとして、1次連立方程式が解を持つためには、
「右辺」をどのように取らなくてはいけないか、という問題を考える。
この問題を行列が定める線形写像の言葉で言いかえれば、
その写像の像を記述しなさいという問題になる。以上が前おき。

線形写像の像の定義。像が部分空間であること。
写像の像を基本ベクトルの像を使って記述するために、
線形結合の定義。いくつかのベクトルが張る部分空間の定義。
最後に、写像の像は基本ベクトルの像が張る部分空間と一致することを証明して終了。

今日の反省:という前おきで話を始めてみたのだが、
最後の結論は結局「解を持つときには解を持つ」と言ってるので、
トートロジーになってしまってはいる。
ただ、線形写像という枠組みで見ているので、螺旋階段を一周登っている感じではある。
この辺のことは、きっちりと話しておくべきだったかも知れない。

次回は抽象ベクトル空間。

総合科目 (1回目・12月13日)

全4回のオムニバス講義の初回。
初回だけれども、竹山担当分のレポート課題を出した。
講義で扱う四つのテーマのなかから一つ選び、
高校生にも分かるように自分の言葉でまとめなさい、という課題。
みなさんの力作を期待します。

初回は実数の定義と性質について。
この講義ではカントール流の定義を採用して、
実数とは有理数の列(正確にはコーシー列)である、と定義する。
このとき、異なる二つの列が同じ実数を表すという約束も含めて定義する
(正確に言うと、有理数のコーシー列からなる集合に同値関係を入れて、割る)。
この約束に従えば、1=0.9999・・・という等式が正しいと言える。
こういう等式が正しいかどうかをきちんと述べるには、
実数とは何かという定義をしなければならない、という話。

講義の最後では、次回への布石として実数の二つの性質の紹介。
一つは有理数の稠密性。もう一つは連続性公理で、「有界単調数列の収束」の話をした。

次回はネイピア数と指数関数の定義。

解析II演習 (12月14日)

今回解決した問題:1-1, 1-2, 1-4。

1-1(2)は失題です (作問のときに計算間違いをしていました)。ごめんなさい。

今回は1階線形方程式の解法についての問題を配布。

次回は12月21日。

線形代数III (12月8日)

部分空間と線形写像の核の話。

前おきとして、斉次連立1次方程式の解全体の集合が線形性を持つ、という話。
そして、係数を並べた行列を考えて、この行列が定める線形写像を考えると、
解の集合はその核 (kernel) と見れること。

以上の前おきのもとに、まず部分空間の定義と例。
次に、線形写像の核の定義。核が部分空間であること。
後半は、写像の単射性の定義と、線形写像が単射であるための条件
( kernel がゼロしかない) の話をして終了。

今日の反省:今回は予定よりも少し早く話を終える。ペースが速いかも知れない。
この講義を担当するときは、最初の3回で数ベクトル空間の話をするのだけれども、
いろいろな概念を導入するときに、どういう動機付けを与えるのかを考えねばならない。
特に今年度は物理の学生さんが対象なので、その辺のことも意識しつつ。
というわけで、毎年同じ講義ノートというわけにはいかないのだ。

次回は12月15日。線形結合と線型写像の像 (image)。

解析II演習 (12月7日)

初回。

解析IIという常微分方程式の基本的な話の講義の演習。
ということで、まず微分方程式という考え方を理解してもらうために、例題として
「グラフ上の任意の点Pにおいて、Pにおける接線と y 軸との交点を Q とするとき、
 PQ の中点は必ず x 軸上にある」
という条件を満たす関数をひとつ見つける、という問題を考えてもらう
( 答えは原点を頂点とする2次関数 )。
後半は、変数分離法の話をして、実際にいくつかの方程式を解いてみせて終了。

次回から発表形式の演習です。

線形代数III (12月1日)

初回。

物理学類の学生さん向けの講義なので、
3学期に扱う内容(線形写像と抽象ベクトル空間)と物理との関係をほんの少しだけ。

写像の定義。写像が等しいことの定義。
数ベクトル空間の写像の例。行列から定まる写像 (左かけ算)。
線形写像の定義。線形でない写像の例。
行列から定まる写像は線形であること。
そして逆に、線形写像は行列から定まる写像であることの証明
(ここが今回の講義のメイン)をして終了。

今日の反省:初回ということもあって、教室がほぼ埋まるくらい学生さんが出席していた。
さすがに1年生も3学期になると、講義中にずっと携帯をいじってたり、
後ろの方に座って机の下で何かをいじってる学生さんがでてくる。
例によって竹山の講義では出席を絶対にとらないので、
話を聴くつもりがなければ教室の外で時間を過ごした方が良いと思います。
こちらの反省としては、久しぶりの講義なので、軽くバテたこと。
3学期はなかなか忙しいので、体調管理をきちんとしなければならない。

次回は12月8日。部分空間と線形写像の核。

基本情報 (総合科目:3学期)

3学期の総合科目「数学の美しさと面白さ」のなかで 4回話します (12/13, 12/20, 1/18, 1/24)。
テーマは「実数・指数関数・オイラーの公式」。
実数の定義の話から始めて、指数関数の定義、
テイラー展開の意味、オイラーの公式の解説までの予定です。
大学に入ったからには、受験数学からはとっとと卒業して、
学問としての数学に触れましょう、という感じの話にするつもり。

基本情報 (解析II演習:3学期)

初回は12月7日。教室は1E502。
常微分方程式の基本的な事項に関する演習を行います。
講義との対応も意識しますが、多少、演習独自のこともやります
(木下先生のクラスも同様の内容の予定です)。

基本情報 (線形代数III:3学期)

初回は12月1日。教室は 1E303。主に物理学類の学生さんを対象にします。
教科書は1・2学期と同じく「明解 線形代数」(日本評論社)。
第5章~第6章の6.5節までの話をします。
3学期の線形代数は証明の話がほとんどで、計算はあまりしません。
時間の都合により、講義中に例題を解く時間はほとんど取れませんので、
必ず演習をとってください。

関数論 (11月15日)

最終回。

今回は無限遠点での留数の話。
今年度の講義では、教科書に従って留数を表す記号を ${\rm Res}_{z=a}f(z)dz$ としたので、
変数変換のルールによって無限遠点での留数を定義する。
この定義の良いところを示すために、
複素平面内に有限個の孤立特異点をもつほかは正則な関数の
リーマン球面上での留数をすべて足すとゼロになることの証明。
このことを有理関数に適用すると、非自明な関係式が得られる。
講義ではその例として
$\frac{a^3}{(a-b)(a-c)}+\frac{b^3}{(b-a)(b-c)}+\frac{c^3}{(c-a)(c-b)}$
の計算を実行した。
( ちなみに、分子のベキを 3 ではなくて一般の整数にすると、どのような値が得られるか?
  というのを考えてみると面白いかも )
最後に、関数の正則性と留数がゼロかどうかの関係について述べて、
留数は 1次微分形式に対して定義されるべきものだという話をして終了。

今日の反省:関数論の講義は久しぶりなので、
講義のペースを調整するのに多少手間取ったように思う。
偏角の定理とルーシェの定理の話をしたのは今年度が初めてだったけど、
一方で、講義で話せなかったこともいくつか残っている。
また今度、担当するときに、ノートの見直しをせねば。

次回 11月22日は試験。

関数論 (11月8日)

今回からリーマン球面の話。

やりたいのは、複素平面に一点「∞」をつけ加えて、
|z|→+∞のときにz→∞、となるようにすること。
このような実現をするために、複素平面に球面を差し込み、
南極からの射影によって複素平面を球面上に実現する。
このとき、複素平面の点と対応しない南極を∞と書いて無限遠点と呼び、
以上の同一視の下で複素平面に無限遠点を加えてできる球面をリーマン球面という。

後半は、複素平面上で定義された関数の無限遠点での様子を調べるにはどうすれば良いか、
という動機付けから始めて、無限遠点での座標近傍系を実現する。
このときは、裏返した複素平面に球面を差し込み、北極から射影する。
この実現をすると、二つの座標近傍が z=1/w という関係で貼り合わされる。
そして、無限遠点での極の位数の話をして、
リュービルの定理の言いかえ(リーマン球面全体で正則な関数は定数に限る)に
少しだけ触れて終了。

今日の反省:今年度は偏角の定理の話をする回を入れたので、
これまでとは予定が少しずれている。
一次分数変換の話くらいまではしようかと思っていたけれど、
そこまでは行けない(行くと時間的に中途半端になりそう)ので、
今年度は諦めることにする。教科書に少し記述があるので、読んでおいてください。

次回は 11月15日で最終回。無限遠点での留数。

関数論 (11月1日)

今回は偏角の定理とルーシェの定理。

偏角の定理の statement を述べるために、零点の位数の定義。
関数 f(z) が z=a を正則点もしくは極とするとき、f'(z)/f(z) は
z=a が f(z) の極でも零点でもなければ正則、
z=a がf(z) の零点もしくは極のときは 1位の極を持ち、
そこでの留数はf(z)の零点または極の位数から決まる。
このことを使うと、f'(z)/f(z) をある単純閉曲線に沿って積分すれば、
その積分路で囲まれる部分にある f(z) の零点の位数の和から
極の位数の和を引いた値が得られる。これが偏角の定理。

偏角の定理において、特に f(z) が正則である場合を考えると、
零点の位数が測れることになる。
つまり方程式 f(z)=0 の解の個数を重複度もこめて数えることができる。
これを応用したのがルーシェの定理。
講義では、ルーシェの定理の証明は概略に留めて、その使い方を例題で見せた。

今日の反省:ルーシェの定理までやろうとしたのは、
ちょっと欲張りだった (証明をきちんと述べられなかった)。
本当は代数学の基本定理もやる予定だったのだけれど、
まったく時間が足りなかった。二回に分けて話しても良かったかも知れない。

次回は 11月8日。リーマン球面。

関数論 (10月25日)

定積分の計算その2。今回扱ったのは次の二つ。

$(3)\, \int_{0}^{\infty}\frac{\sin{x } }{x}dx \qquad (4)\, \int_{0}^{\infty}\frac{x^{\alpha-1 } }{1+x}dx \,\, (0<\alpha<1)$

(3) は上半平面の半円周を積分路として $e^{iz}/{z}$ を積分する。
ただし、原点は特異点だから、これを上に避けてコーシーの積分定理を使う。
避けたところから原点における留数の半分が出てきて、
外側の半円周からの寄与は半径を無限大にすると 0 になるので、積分が求まる。

(4) は累乗関数の多価性を使うもの。
被積分関数としては $(-z)^{\alpha-1}/(1+z)$ を使う。ただし分子は主値をとる。
このとき、z が実軸の正の部分に上から近づくか下から近づくかで、
定数倍だけ異なって $x^{\alpha-1}/(1+x)$ に収束する。
そこで積分路として、原点を中心とする円周で実軸の正の部分にカットを入れたものをとると、
積分の値は z=-1 における留数を拾えば計算できて、
原点まわりと外側の円周からの寄与は極限で 0 になるので、積分の値が求まる。

今日の反省:(4) については十分に時間が取れなかったので、
極限で積分が 0 になるところの評価はきちんと話せなかった。
教科書に書いてあるので、各自復習しておいてください。

次回は 11月1日。偏角の定理とルーシェの定理。

関数論 (10月18日)

今回と次回は、留数計算を使って定積分を計算する話。
扱った例は以下の二つ:

$(1)\, \int_{0}^{2\pi}\frac{d\theta}{3\cos{\theta}+5}$  $(2)\, \int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{1+x^4}$

(1) は三角関数をオイラーの公式を使って指数関数に書き直して、
複素平面上の単位円に沿っての積分に変数変換するパターン。
被積分関数が有理関数になって、単位円の内部にある極の留数を計算することになる。

(2) はこの手の計算の代表例。
上半平面に半円周をつけ加えて、積分路を単純閉曲線にする。
この積分は留数定理で計算ができて、あとは半円周の半径を無限大にする極限で、
そこからの積分の寄与がゼロに収束することを示せばよい。

今日の反省:(1) にせよ(2) にせよ、極が1位であることをきちんと言うのに、
どのような方法で述べるかが、いつも悩ましい。
ローラン展開を思い浮べればほとんど自明なんだけど、
その辺の感覚を言語化して、命題として書き下してしまうと、
なんだか難しいことをやってるような感じになる。
結局、「問題を解いて慣れてください」という話になってしまって悩ましい。

次回は10月25日。定積分の計算(その2)。

関数論 (10月4日)

今回は留数の定義と留数定理。

$C$ を単純閉曲線とし、関数 $f(z)$$C$ で囲まれる部分において
有限個の孤立特異点をもつほかは正則であるとする
(正確には $C$ を含むある領域において正則)。
このとき、積分 $\oint_{C} f(z)dz$ は次のようにして計算できる
($f(z)$ が有理関数の場合は1学期に扱った。計算法は本質的に同じだが、
 部分分数分解ができないので、ローラン展開を使うことになって留数が出てくる):
  1. 積分路 $C$ を変形して、孤立特異点の回りの積分の和に直す。
    ( コーシーの積分定理を使う )
  2. 各孤立特異点で $f(z)$ をローラン展開して積分を計算する。
    ( ローラン展開は孤立特異点の回りで広義一様収束するので、項別積分可能。
      結果としてローラン展開の (-1) 次の係数の  $2 \pi i$ 倍が出てくる)
ローラン展開の (-1) 次の係数を留数という。
以上の結果から、求める積分は各孤立特異点における留数の和の $2 \pi i$ 倍となる。
これが留数定理。

後半は、正則関数の比で与えられる関数の極の位数の計算 (零点の位数の差)、
ローラン展開の計算法と、留数を求める公式の証明。
ただし、この公式は極の位数が高い場合には、ほとんど役に立たない。

今日の反省:留数の計算法を話す時間が、あまりとれなかった。
具体的な関数に対して極の位数を決定するのは、
慣れてしまえば見るだけでできるのだが、最初はとまどうかも知れない。
留数の計算はベキ級数の計算に慣れていれば、大変だけど難しくない。
個人的にはその方法を身につけてもらいたいと思っているので、
留数を計算する公式の扱いは低くなる。
微分しても大抵は不定形になるので、さらにロピタルを使うことになって、
そこまでするくらいなら、展開した方が速いと思うのだけれど。

次回は10月18日。定積分の計算(その1)。

関数論 (9月27日)

今回はローラン展開と孤立特異点の分類。

たとえば、1/(z sinz) という関数は、z=0 において微分可能でない。
よって、z=0 においてベキ級数展開はできないのだが、
z の負ベキを許すと展開ができる。このような展開がローラン展開。

まず、孤立特異点の定義。要するに、その点で微分可能かどうか分からないが、
まわりでは正則であるような点のこと。
よって、微分可能な点も孤立特異点と呼ぶ。これは教科書の流儀に従っている。

そして、孤立特異点においてはローラン展開ができる。
コーシーの積分公式から出発して、この積分をその点の外側にある円周と、
内側にある円周の差として書く
(そういえばこれは CFT の OPE の計算そのものだな、などと思いつつ)。
あとは 1/(z-a) を二通りに展開すれば、
z についての正ベキの級数と負ベキの級数の和として書ける。
このような展開の一意性は教科書参照。
孤立特異点の周囲の円環領域で一様収束することはプリントで。

最後に、ローラン展開の主要部の定義 (負ベキの部分)。
孤立特異点は三つに分類できて、主要部がゼロの点が正則点、
有限項になるのが極、無限項になるのが真正特異点。

今日の反省:今回もやや急ぎ気味だったのか、ちょっと時間が余る
(と言っても 1分くらいだけど)。
次回はもっと話すことが多くなりそうなので、ペースを調整しなければ。

次回は 10月4日。留数定理と留数の計算法。

関数論 (9月22日)

今回は一致の定理とリウビルの定理。

教科書では、一致の定理が解析関数の性質として述べられているのだけれど、
講義では正則関数の話として紹介することにしている。
複素関数では正則性と解析性は同値だから、どちらでも良いのだが、
正則関数の定理として述べた方が印象深いと思う。

領域Dにおいて正則な二つの関数 f(z), g(z) について、
Dのある点 a に異なりながら収束する点列上で f と g の値が等しいならば、
D全体で f(z)=g(z) が成り立つ。これが一致の定理。
証明は、まず点 a の近傍において等しくなることを示しておいて、
あとはD全体に解析接続すればよい。
ここで領域とは「弧状連結」な開集合であることが効いている。

複素平面全体で有界かつ正則な関数は定数しかない。これがリウビルの定理。
原点でベキ級数展開すると、その係数は積分で書ける。
もとの関数の有界性から、この積分が評価できて、
定数項以外の係数はゼロであることが分かる。
よって、原点の近傍において正則で、あとは一致の定理から
複素平面全体において定数であることが分かる。

今日の反省:今回は少し時間が余った。
2学期になって話すスピードが上がっているのだろうか。
学生さんが板書を写す時間も見ながら話しているつもりだけど、
もっとブレイクを入れるべきなのかも知れない。

次回は 9月27日。ローラン展開と孤立特異点の分類。

関数論 (9月13日)

今回は正則関数の解析性について。

関数 f(z) が、ある領域 D の各点において収束ベキ級数に展開できるとき、
f(z) は D において解析的であるという。

実関数の場合、たとえ無限回微分可能であっても、
解析的 (テイラー級数展開可能) であるとは限らないが、
複素関数の場合は、正則 (つまり 1回微分可能) であれば解析的となる。
とくに、正則関数は何回でも微分可能であることが分かる。

その証明は、前回示したコーシーの積分公式を使うだけ。
積分公式の被積分関数の分母を展開し直せば、欲しいベキ級数展開が得られる。
ただし、ここで無限和と積分の順序交換をしなければならないから、
一様収束の議論が必要となる (そんなに難しくない)。
このとき、ベキ級数展開の係数は積分で得られるが、これとテイラー展開の式を比べれば、
高階導関数を積分で書くコーシーの積分公式の一般形が得られる。

今日の反省:この辺は、こちらも話していて楽しいところだ。
得られる公式は、ある点での値がその回りでの値で決定されてしまう、というものだから、
そこだけでも面白い。学生さんの反応も、それなりに良かったように思う。
あまり意識してなかったが、次回に一致の定理を証明する布石にもなっている。

次回は祭日の振替で 9月22日(水曜日)。一致の定理とリウビルの定理。

関数論 (9月6日)

2学期初回。まず、1学期の試験の答案を返却した。

今回はコーシーの積分公式の証明。
関数の連続性の定義を復習。定義から、関数$f(z)$ が $z=a$ において連続のとき

$\sup_{|z-a|=r}|f(z)-f(a)| \to 0 \qquad (r \to +0)$

となる。このことと

$f(a)=\frac{1}{2\pi}\int_{0}^{2\pi}f(a)d\zeta$

を使えば、

$\left| \frac{1}{2\pi i}\oint_{|\zeta-a|=\epsilon} \frac{f(\zeta)}{\zeta-a} d\zeta-f(a)\right| \to 0 \qquad (\epsilon \to +0)$

となることが容易に示せる。
コーシーの積分定理より、この積分の値は$\epsilon$ によらない (ここで正則性を使ってる)。
このことからコーシーの積分公式が得られる。

今日の反省:毎年、夏休み明けの講義は疲労困憊してしまうのだけれど、
今回は内容を少なめにしたのでそれほど疲れなかった。
以前、関数論の講義を担当したときには、
2学期中に定積分の計算だけで2回くらい使っていたのだけれど、
今年度はどうしようか考え中。

次回は 9月13日。正則関数の解析性について。

微積分I演習 (6月23日)

最終回。

前回のレポートのやり直しを時間中にやってもらいました。
出席していた学生さんは全員、再提出をクリアしたので、こちらとしてもホッとしました。

演習では教科書の問題のほんの一部しか扱えませんでした。
夏休みの間に教科書の1・2章の問題をできる限り解いてみてください。

解析I演習 (6月22日)

1学期最後のため、発表回数が少ない学生さんを優先して、発表してもらった。
最終回にしては出席している学生さんは少なかった。

今回の演習では、教科書などでは省略されている議論を中心に取り上げました。
解析の議論というのは、細かいところまできちんと考えていると時間がかかるので、
講義などではその辺りの話は省略されます。
しかし、講義で省略されたからと言って、学習者がその内容を無視して良いわけではありません。
こういう細かい議論をサボっている限り、自分のなかに正しさの根拠を持つことはできず、
ずっとフワフワしたまま数学をやることになってしまいます。それは数学ではありません。

竹山の担当は 1学期のみです。単位は1・2学期の成績を合わせて出します。

関数論 (6月21日)

1学期最後の講義。

今回は積分路変形の原理を使って、有理関数の単純閉曲線に沿っての積分を計算する話。
この積分は次の手順で計算できる:
(1) 部分分数分解
(2) 積分路の変形 (ここでコーシーの積分定理を使っている)
(3) $\oint_{|z-a|=\epsilon}(z-a)^{n}dz$ の計算
具体例をふたつやって、最後に多項式に対するコーシーの積分公式を証明して終了。

今日の反省:
今日は早めに終えられるかと思ったけど、結局時間すべてを使った。
最終回だけあって、登録学生のほぼ全てが出席していたようだ。
次の授業の教室が少し離れていて、移動に時間がかかるのは分かるのだけれど、
講義の最後に重要なコメントをしていてチャイムが鳴り始めると、
学生さんが筆箱を片付けるカチャカチャという音が聴こえてきて、
こちらのテンションが一気に下がってしまう。
そんなに早く出ていきたいのなら講義なんて出ないで(出席は絶対に取りません)
自分で勉強すれば良いのに、と思うのだけれど、これは愚痴になってしまうのだろう。
自分の話がそれだけ学生さんを惹きつけていない、ということなのだから。
はあ。

次回 6月28日は試験。

微積分I演習 (6月9日)

まず、前回のレポートの解説。
ランダウの o-記号について、o(x)-o(x)=0 としている答案がかなりあったので、
これについての説明 (もちろん、正しくは o(x)-o(x)=o(x) )。
ランダウの o-記号というのは、同じ性質を持つ異なるものを同じ記号で表す、という
数学的にはちょっと乱暴な記法なので、最初のうちは十分に注意しなければならない。

今回のテーマは広義積分。
講義では来週扱うことなので、予習になるため、まず広義積分とはどういう概念かを説明し、
具体的な計算練習を行った。

レポートの締切は 6月17日の 17:00 (普段とちがって木曜日なので注意)。
次回は 6月23日。

解析I演習 (6月8日)

今回解決した問題:
2.2, 2.7, 2.8, 3.1

今回は誤った答案がいくつかあったので、問題数をあまり消化できなかった。
次回は、発表回数の少ないひとを最優先するので、
これまで一度も発表できなかったひとは、入念に準備をしておいてください。
(易しい問題は競争率が高くなります。なるべくたくさんの問題を解いておくこと。)

次回は 6月22日。

関数論 (6月7日)

今回はコーシーの積分定理の話。
まず、定理の statement を述べておいて、証明の準備。
(1) R^{2} 上の線積分の定義と、グリーンの公式の復習
(2) 複素積分を線積分で書きかえる (実部と虚部に分ける)
以上のことと、コーシー・リーマンの関係式を使えば、
コーシーの積分定理はすぐに証明できる
(正則性の定義のなかに「C^{1} 級」という仮定を入れているので話が簡単になっている)。

後半はコーシーの積分定理の応用として、
積分路変形の原理の話をして終了。

今日の反省:
今日は最後のところで時間切れになってしまった。
積分定理の証明のところで時間をかけすぎたかも知れない。
単純計算で変形するところを、学生さんが一字一句、黒板を見ながら写してるのを見てると、
ノートの上で自分でやった方が速いよ、と言いたくなるのだけれど、
それも難しいのかも知れない。うーん。

次回は 6月21日。単純閉曲線上で有理関数を積分する話。

微積分I演習 (6月2日)

前回のレポートで、テーラー展開の意味がよく分からないという質問があったので、
あらためてその復習から。
「違う点で展開すると違う式が出てきて、もとの関数が変わってしまうのはおかしい」
という質問もあったので、それについても説明した。
これはテーラー展開が問題ではなくて、「式が等しい」ということの理解の問題かも知れない。
この演習に限らず、学生さんのレポートなどと見ていると、
「式の見た目が違うから違うのだ」という議論を安易にやっていることがあって、
これについてはちょっと心配している。

今回のテーマは漸近展開を使った不定形の極限の計算。
講義ではとばされてしまった内容なのだけれど、これ自体は大事だと思うので、
演習では扱うことにした。
講義の教科書の定理 2.23 の内容の説明をして、
教科書の練習問題 1.19 (2)を解いてもらった。
合わせてランダウの o-記号の演算法則の証明についても少しだけ。

レポートの締切は 6月 4日の 17:00。
次回は 6月9日。

解析I演習 (6月1日)

今回解決した問題:
1.29, 2.3, 2.4(1)--(4), 2.5, 2.6
2.2 は次回に保留です。2.5 の解答は来週プリントで配ります。

この演習はあと 2回で終了しますので、まだ一度も発表をしていない人は、
準備をしておいてください。試験は実施しません。

今回はテーラー級数展開についての問題を配布。
次回は 6月8日。

関数論 (5月31日)

今回から積分の話。

複素関数の積分は、複素平面内の曲線に沿っての積分なので、
まず曲線についての準備から。
曲線、閉曲線、単純な曲線の定義。曲線の演算 (向きの逆転と「つなげる」)。
滑らかな曲線、区分的に滑らかな曲線の定義。
この講義では、以下「曲線」と言ったら、特に断わならない限り「区分的に滑らかな曲線」を
意味するものとする。

複素関数の積分の定義。
この講義では積分路のパラメータ表示による積分の変数変換で定義する。
このとき、積分の値はパラメータ表示の取り方によらない(証明は略)。
また、実軸上の線分に沿った積分を考えれば、実変数の積分に等しい。

積分の基本性質 (被積分関数と積分路に関する線形性)。
弧長による線積分の定義をして、積分の絶対値を上から評価する不等式を証明して終了。

今日の反省:
積分の絶対値の評価の証明のところで、時間を読み違えて少し延長。
もう少しペースを上げるべきだったか。証明がややバタバタしてしまった。
1学期にやるべき内容は、ほぼ消化できそうなので、とりあえず一安心。

次回は 6月7日。コーシーの積分定理。

微積分I演習 (5月26日)

今日のテーマはテーラー展開。
講義では来週扱う内容になるのだが、予習の意味で今回扱うことにした。

問題を解く前に、微分の概念の復習から。
高校までは微分というのは「接線の傾き」であるが、大学の微積分では「1次近似式」と見る。
これを2次, 3次と次数を上げて近似の精度を良くしていくのがテーラー展開だ、
という概略を述べて、教科書の例題 1.10を解いてもらった。

レポートの締切は 5月28日の 17:00。
次回は 6月 2日。

解析I演習 (5月25日)

今回解決した問題:
1.15, 1.22, 1.23(8), 1.24, 1.26, 1.27, 2.1, 2.9(1)

今回は、これまでに学んだ事実(解いた問題の結果)を使い、
それらを論理的に上手く組み上げることで証明する問題がいくつかあった。
こういう問題は、特に技巧的な議論が必要なわけではなく、
論理を組み上げるだけで証明できるから、自分で考えてみること。
この作業をサボっていると、数学的な記述が正しいのかどうかを、
自分の頭で判断できるようにはなりません。

今回は上極限・下極限、収束半径の計算の問題を配布。
次回は 6月1日。

関数論 (5月24日)

今回はコーシー・リーマンの関係式の話。

前回述べたように、複素関数の場合は簡単な関数でも微分可能でない場合がある。
では、どのような場合に微分可能となるのかを、
独立変数・従属変数を実部と虚部に分けて記述すると、
自然にコーシー・リーマンの関係式が現われる。

次に、正則性の話をするために、弧状連結と領域の定義。
領域とは「(弧状)連結な開集合」のことだが、こういう日常用語としても使われうる数学用語は、
定義を確認することを見逃しがちなので注意する。
ある領域で正則であることの定義。
この講義では教科書に合わせて、実部と虚部が $C^{1}$ 級である、という条件も
定義のなかに入れておいた (実は必要ないのだが、それは自明ではない)。

最後に、以上の話の応用として、対数関数の主値が正則であることの証明。
独立変数を極座標表示し、主値の実部と虚部を極座標で書いておいて、
2変数の合成関数の微分を使ってコーシー・リーマンの関係式を確かめて終了。

今日の反省:
今日も少し早めに終わることができた。
次回からは積分の話になるので、話すことが多くなる。さて、どうなるか。
対数関数の主値が正則であることの証明では、
偏微分の変数変換の公式を使おうかと思ったが、
もう少し泥臭くやって見せた (実質的に同じことをしているのだけれど)。
学生さんの反応が全然分からなかったのだが、どうだったのだろうか。
それが見えないということが、一番の反省点なのかも知れない。

次回は 5月31日。複素関数の積分の定義と計算例など。

微積分I演習 (5月19日)

前回のレポートの返却。
前回は問題が簡単だったので、ひとつでも間違っていたり、
正しくない式を書いていたら、再提出です。
きちんとした字できちんとした数式・文章を書くように心がけましょう。

今回のテーマは、逆関数の微分。
高校で「逆関数の微分の公式」と言って $\frac{dx}{dy}=\frac{1}{\frac{dy}{dx } }$ なんて式を書きますが、
その意味を理解し、さらにそれを使って逆関数の微分を正しく計算できる人は、
ほとんどいないと思います。
なので今回は、$\arcsin{x}$ の微分を計算する問題を例題として、
逆関数の定義から出発し、合成関数の微分の公式を使って、
逆関数の微分を計算するプロセスを追ってもらいました。
最後に、高階導関数について少しだけ説明して、終了。

レポートの締切は 5月21日の 17:00。
次回は 5月26日。来週、講義は休講ですが、演習はあります。

解析I演習 (5月18日)

今回解決した問題:
1.19, 1.23 の (8) 以外, 1.25
1.22 と 1.24 は次回に持ち越しです。

1.23 は正項級数の収束判定の問題で、
学生さんにとっては取り組みやすいものだったようだ。
この手の「計算して終わり」みたいな問題だけではなく、
基礎的なことをきちんと証明する問題にも挑戦してもらいたい。

今回は、関数項級数の一様収束性についての問題を配布。
次回は5月25日。

関数論 (5月17日)

初等関数の話の続き。今回は多価性のあるものについて。

まず、対数関数の定義。指数関数の逆関数として定義する。
このとき、対数関数の虚部は独立変数の偏角になるので、そこから多価性が発生する。
定義域を制限することによって、この多価性をなくしたのが対数関数の主値。
次に、累乗関数の定義。これは対数関数を使って定義するので、
ベキの値が一般の場合には多価関数となる。
しかし、ベキが整数であれば偏角の不定性が打ち消されて一価になる。
以上、ふたつの関数について、具体例で値を書き下してみせた。

後半から、複素関数の微分の話。
微分可能性の定義(の式)は実関数の場合と同じ。
和・積・商・合成関数の微分の公式も成り立つ。
しかし、簡単な関数であっても、微分可能とは限らない。
その例として $f(z)=\overline{z}$ が微分可能でないことの確認。
最後に、微分可能な関数の例を挙げて終了。

今日の反省:
今回は分量を減らしたこともあって、少し早めに終えられた。
今年度は、講義の進行が毎回読みきりではなく、
「次回に続く」という感じの区切り方になってしまっているのだけど、
これで良いのか、ちょっと不安ではある。
まあ、講義の始めに毎回復習することになるので、それはそれで良いのかも知れない。

次回は 5月24日。コーシー・リーマンの関係式と、対数関数の主値の微分可能性など。

微積分I演習 (5月12日)

前回のレポートの返却。
約半数くらいが再提出です (なので再提出でも凹まないように)。
再提出は、返却したレポートとやり直したレポートを合わせて閉じて提出してください。

今回のテーマは逆関数、逆三角関数。
教科書の例題 1.3 と、逆三角関数の定義についての問題、および、
逆三角関数の具体的な値を答える問題。

逆関数については、高校によって扱っていないことがある。
特に、もとの関数と逆関数のグラフの関係 (y=x に関する折り返し) を知ってる学生さんは、
こちらのクラスでは 1/3 ほどしかいなかった。

レポートの締切は5月14日の 17:00。
次回は5月19日。

解析I演習 (5月11日)

今回解決した問題:
1.9, 1.16, 1.17, 1.18, 1.20, 1.21
1.15 は次回に持ち越しです (挑戦権は全員にあります)。

講義の進度との差が大きくなってきたので、問題数を調整するようにした。
序盤の細かい証明をきちんとしていけば、後半はなんとかなると思うので、
積極的に考えてみてください。

今回は、関数列の一様収束について問題を配布。
次回は 5月18日。

関数論 (5月10日)

前半は、前回の続きで収束ベキ級数の演算。
今日は、前回の最後にやったベキ級数の合成の計算の応用として、
ベキ級数の逆数の計算法から。
もちろん、逆数の級数を適当において、もとのものにかけて 1になることから
連立方程式を解いても求まるが、ここでは 1/(1+z)=1-z+z^2+... の展開を使って
直接計算する方法を例を通してやってみせた。
次に収束ベキ級数の微分。項別微分してよいこと、そのあとで収束半径が変わらないことを、
事実だけ述べる (この辺りの証明も昨年の「解析I」でやってるはずなので)。

後半から、初等関数の話。
指数関数、三角関数の定義 (ベキ級数で定義する)。これらの収束半径が +∞であること。
この定義にもとづいて、指数法則の証明。そして、オイラーの公式。
この流儀でいくと、オイラーの公式は簡単に得られるものとなる。
オイラーの公式の応用として、指数関数の値を極座標表示で書いておいて、
$2 \pi i$ を周期とする周期関数になることを確認。
最後に、三角関数を指数関数で書く公式 (オイラーの公式の応用) を導いて終了。

今日の反省:
今日は予定していた内容をほとんど消化できた、が、ほんのすこしだけ延長してしまう。
以前にも書いたように、このコマの前後には、少し離れた建物
(数学の講義はほとんどそこで開かれてる) で講義があるので、絶対に延長できない。
これが少なからずプレッシャーなのだけれど、まあ、
時間配分を上手くやる訓練だと思って頑張ろう。

次回は5月17日。対数関数・累乗関数(多価性のある初等関数)の定義と、
複素関数の微分についてちょっとだけ。

微積分I演習 (4月28日)

前回の小テストとレポートを返却。
レポート問題から次のものを取りあげて解説した:

$A=\{ x \in \mathbb{Q} | x^2 \le 2\}, \, a=\sqrt{2}$ とするとき、a は A の上限か?

上限の定義とその言い換え、そして有理数の稠密性について解説した。

今回のテーマは、関数の極限。
例題は、「関数の有界」「関数の極限」の定義を問い、
$\lim_{x \to a}f(x)=A$ のとき、f(x) は x=a の近傍で有界であることを示せ、というもの。
これらの定義を述べて、$\epsilon - \delta$ 論法の内容を解説し、
有界性の証明をきちんと書いてみせた。

学生さんの反応を見ていると、極限の定義を論理記号を使って書くところまではできたが、
それが何を意味しているのかが全然分からない様子だった。

今回から TA の院生さんが来てくれている。
時間中に学生さんに例題を解いてもらっているのだが、
そのときに巡回して学生さんの質問に答えてもらった。
学生さんの方も積極的に質問していて、とても良いと思う。

前回のレポート問題のフォローを完全にはしきれなかったのが反省点。
微積分の演習を担当するのは初めてだけど、運営が難しいことを実感している。

今回のレポートの締切は5月6日木曜日の 13:00。
次回は5月12日。

解析I演習 (4月27日)

今回解決した問題:
1.3, 1.8, 1.10, 1.12, 1.13
1.11 と 1.14 は答案を書いてもらったが添削できなかったので、
各自で答案の内容を吟味してくること。
正解は次回にプリントで配布します。

今回は時間内にさばききれなかったのが反省点。
1回に処理できるのは(問題の重さにもよるが) 6問程度のようだ。
今後、問題を作るときに気をつけることにする。

前回、もうひとつのクラスに移った学生さんの一部がこちらに帰ってきたようで、
結果としては2クラスで同じくらいの人数になったのではないかと思われる。

今回は具体的な正項級数の収束判定と絶対収束についての問題を配布。
次回は 5月11日。

関数論 (4月26日)

今回からベキ級数の話。
関数論の話というのは、歴史的にふたつの流派、Weierstrass 流と Cauchy 流があって
(それが統一されてしまうのが関数論のスゴいところなんだけど)、
しばらくは Weierstrass 流の、つまり複素関数をベキ級数として捉える (拡張する) 話をする。
(この辺の歴史的経緯は fiction かも知れません。ご存知の方がいらっしゃったら教えてください)

ベキ級数の定義。一般の級数の収束の定義を復習して、絶対収束の定義。
ベキ級数の収束半径の存在 (証明は教科書にあるし2年の講義でもやってるはずなので省略)。
収束ベキ級数、収束円の定義。

収束半径の計算法として、係数比判定法と Cauchy-Hadamard の公式
(証明はプリントで配布。これも2年の講義でやってるはず)。
具体例として $f(z)=\sum_{n=1}^{\infty}(-1)^{n-1}z^{n}/n$$g(z)=\sum_{n=0}^{\infty}\,z^{n}/n!$ の収束半径の計算。
f(z) は係数比判定法と CH の公式の両方で計算、
g(z) は係数比判定法のみ (CH で計算するのは練習問題として各自考える) やった。

残りの時間で、収束ベキ級数の演算について。
和(差)・積の計算法と、それが収束ベキ級数であること (これも証明は省略した)。
最後に合成の計算を、上の例の g(f(z)) の計算でやってみせて、一般的な結果を紹介して終了。

今日の反省:
今回やったような話は、証明も全部つめていくと結構大変になるので、
ほとんど証明は省略して、具体的な計算例をやって見せている。
2年の「解析I」の講義で扱ってるはずのことなので・・・というのが言い訳なのだけれども、
学生さんとしてはどうなのだろうか。
気になる人は教科書をきちんと読んでください。

次回は5月10日。ベキ級数の微分、初等関数の定義(までやりたい)。

解析I演習 (4月20日)

今回解決した問題:
1.1, 1.2, 1.3, 1.5, 1.6, 1.7

この演習では「定義を書け」という問題や、
教科書や講義で述べられた命題・定理などの証明を、
細かい議論も含めてすべて書いてみるような問題がほとんどです。
ということもあってか、前回こちらのクラスにいた学生さんの一部が
もうひとつのクラスに移動したようです。
ちなみに問題1.1 は
「数列 $\{a_{n}\}_{n=1}^{\infty}$$\alpha$に収束することの定義を ($\epsilon -N$論法の言葉で) 書け.
さらに, その命題を否定することで「$\alpha$に収束しないこと」の定義を述べよ. 」

今回は級数の収束判定法についての問題を配布。

関数論 (4月19日)

前回の続きから。
複素数の極座標表示の話で、動径の長さは絶対値だから一意的に決まって、
偏角は $2\pi$ の整数倍の自由度があるから一意的には決まらないことに注意。
極座標を使って複素数の積を計算すると、三角関数の加法定理が出てきて、
複素数倍が「拡大+回転」であることが分かる。

次に、距離と収束について。
複素平面上の二点の距離は、その差の絶対値に等しいこと。
複素数の絶対値は三角不等式を満たすが、これは複素平面上に図示すると
「三角形の一辺の長さは、他の二辺の長さの和を越えない」ことを意味している
(なので三角不等式と呼ばれる)。
複素数列の収束の定義。複素数体の完備性について (実数体の完備性から従う。証明は省略)。

最後に、開集合と閉集合について。
開円板の定義。複素数列の収束の定義を開円板を使って図示する。
開集合と閉集合の定義をして、開円板が開集合であることの説明を簡単にして終了。

今日の反省:
今日もちょっと時間が足りない感じで終了。
かつての講義ノートの分量から、かなり減らしてこの状況なので、
以前に担当したときはどんなスピードだったんだと、ちょっと反省する。
最近は、学生さんが板書を写すペースも見ながら話しているので、分量は抑え気味だけど、
これでちょうど良いということなんだろうな。
教室は変更して、黒板も大きくなったし、座席に余裕もできてるので良かったと思う。
その割に、学生さん同士は接近して座ってたりもするけど。

次回はベキ級数の話。

微積分I演習 (4月14日)

初回。
種々の事務連絡のあと、早速だが小テスト。
微積分の計算問題10問を10分で解くスピードテストで学生さんたちの現在の計算力を見る、
という若干ムチャなことをしているので、このテストは単位とは無関係。

論理記号の使い方についての説明と、「数文和訳」「和文数訳」の練習。
とくに、数学特有の言葉遣いについて説明した(ここも参照)。
最後に、定義に基づいて議論することの例として、
上界の定義、上界でないことの定義(否定命題の作り方)、
それらに基づいた議論の仕方を話して終了。
ちょっと脱線が多かったので、最後はバタバタしてしまった。反省。

今回のレポートの締切は4月21日(水), 17:00。

来週21日は健康診断のため休講。

解析I演習 (4月13日)

初回。
今回は講義の内容の概要を話して、ちゃんとした演習をやるのは次回から。
各点収束と一様収束の違いを理解してもらうために、
次の問題を解いてもらった:

n=2,3,... に対して、閉区間 [0,1] を定義域とする関数
$f_{n}(x)=\left\{ \begin{array}{ll} n^2 x & (0 \le x \le \frac{1}{n}) \\ 2n-n^2 x & (\frac{1}{n} \le x \le \frac{2}{n}) \\ 0 & (\frac{2}{n} \le x \le 1) \end{array} \right.$
を考える。

(1) $y=f_{n}(x)$ のグラフを書け。

(2)$\int_{0}^{1}f_{n}(x)dx$ を求めよ。

(3) $0 \le a \le 1$ のとき $\lim_{n \to \infty}f_{n}(a)$ を求めよ。

(4) $\lim_{n \to \infty}\int_{0}^{1}f_{n}(x)dx$$\int_{0}^{1}\left(\lim_{n \to \infty}f_{n}(x)\right)dx$ をそれぞれ計算せよ。

小問(3)が肝となるところ。学生さんはそれなりに盛り上がって解いていた
(試験ではないので、近傍の友達と相談して解くのはアリ)。
一様収束しないが各点収束し、積分との順序交換が可能でない代表例だと思うけれど、
初めて触れる学生さんには頭の体操になって良いようだ。

問題を解いてもらったあとに、講義の内容の聞きどころを説明した
(条件収束と絶対収束、各点収束と一様収束、ベキ級数の収束半径など)。
最後に次回分のプリントを配布して終了。

関数論 (4月12日)

初回。
まずは講義で扱う関数論の内容の概説から。
  1. 複素関数の例
    多項式・有理関数はそのまま考えられるが、指数関数・三角関数を考えるには?
    それはベキ級数展開を考えればよい。このときに自然な問いは、
    複素変数のベキ級数が、いつ収束するのか、そして
    そもそも複素数が収束するとはどういうことか。

  2. 複素関数の微分
    定義は実関数と同じだが「hがゼロに近づく」ときの近づき方が2次元的になるので、
    微分可能性は強い条件となる。そのことによって、複素関数の世界では
    いろいろと「不思議なこと」が起こる (正則性=解析性)。
    この話をする途中で、複素平面の定義。

  3. 複素関数の積分
    実関数のときは数直線上の区間のみを考えていたが、
    複素平面に世界が広がると、端点を指定してもいろいろな道がありうる。
    一般には、複素平面内の向きづけられた曲線に沿っての積分を定義することになる。
    これについても「不思議なこと」が起こって、
    いままで計算できなかった種々の定積分が計算できるようになる。
後半からは本論で、複素平面と複素数の演算について。
実部・虚部・絶対値・複素共役の定義。それらを複素平面上で見るとどうなるか。
複素数の加法はベクトルの加法に対応すること。
乗法がどのようになるかを見るために、極座標表示の導入。
偏角が一意的には定まらない、というところまで話して時間切れ。

今日の反省:
久しぶりの講義でペース配分が上手くいかず、最後がちょっと中途半端になってしまった。
教室が1B棟にあって、この講義の前後には1E棟で講義がある。つまり遠い。
なので、決して延長できないので、それなりにプレッシャーがかかる
( こちらが話し終えたら速攻で学生さんが移動してしまって、ちょっと寂しい感じに )。
しかも部屋は狭めで、とにかく黒板が小さい。つらい。
教室の変更はできるのかなあ。

次回は極座標表示を使った乗法の図示、距離と収束、開集合・閉集合など。

基本情報 (解析I演習:1学期)

初回は4月13日。教科書は講義と同じく「明解微分積分」(南・笠原・若林・平良/数学書房)。
発表形式で演習を行う予定です。発表の回数と内容で評価しますが、
必要があれば試験をするかレポートを課します。

基本情報 (関数論:1・2学期)

初回は4月12日。教科書は「複素関数入門」(神保道夫/岩波書店)。
参考書としては「複素解析」(L. V. Ahlfors・笠原乾吉訳/現代数学社)、
「解析入門Ⅰ・Ⅱ」(杉浦光夫/東京大学出版会)などがあります。
成績は各学期末の試験によりつけます。出席は絶対にとりません。

講義全体の目標は、留数定理を使って定積分の計算ができるようになること。
複素関数特有の良い性質を紹介することに力点を置きながら話を進めます。

初回は、講義の概要と、複素平面と複素数の演算、極座標表示。