2011年度 (筑波大)

講義情報 (2011年度・筑波大)

2011年度・担当講義一覧

2011年度は微積分II(2学期・物理対象)、数学外書輪講(1~3学期)、関数論(1・2学期)、解析学III(大学院・1~3学期)を担当しました。

それぞれの講義の情報をまとめて見るには、右上の「カテゴリ選択」タブから科目名を選択してください(外書輪講の情報はほとんどありません)。

解析学III (2月13日・20日・27日)

更新がかなり遅れたので概要だけ。

2月13日は Fuchs の関係式とアクセサリーパラメータの数え上げ。
2月20日はモノドロミー群、モノドロミー表現の定義。
2月27日は例として2階のオイラー方程式のモノドロミーの計算と、
リーマン・ヒルベルト問題の紹介。
ガウスの超幾何のモノドロミーの話はできなかった。

解析学III (2月6日)

まず最初に前回の補足で、
ガウスの超幾何微分方程式の t=1 まわりにおける解の構成。
変数変換で t=0 まわりの話に帰着する。

今回は、一般の Fuchs 型微分方程式の決定方程式と exponent の計算。
無限遠点まわりでの計算をするために、Euler 作用素を導入した。

次回は Fuchs の関係式とアクセサリーパラメータの勘定。

解析学III (1月30日)

なるべく Fuchs 型の一般論の話を始めたいのだけれども、
その前に重要な例として、ガウスの超幾何の話。
まず、ガウスの超幾何が Fuchs 型であることの確認をして、
フロベニウスの方法。決定方程式、exponent の定義。
そして、原点で正則な解として超幾何級数を導出した。
ほかの特異点まわりでの解の話は、結果だけ述べて、
一部はレポート(無限遠点での解の構成)。

次回は、一般の Fuchs 型方程式の exponent の計算。

解析学III (1月23日)

前回の補足で、第一種特異点、第二種特異点、Poincare rank の定義。
第一種特異点は確定特異点であること (証明略)。

今回から単独高階斉次線形の方程式を考える。
これは1階連立系に書き直せて、この形で前回までの意味で(不)確定特異点であるとき、
もとの単独の方程式の(不)確定特異点であるという。
単独高階の場合は、確定特異点であるための必要十分条件が、
係数の関数の特異性の条件として書き下せる。
この条件の P^{1} 上の各点でも書き換え (無限遠点での議論はレポート問題)。

Fuchs 型微分方程式の定義。
P^{1} 全体で有理型な関数は有理関数なので、
Fuchs 型であれば係数の関数は有理関数。
特に特異点は有限個となるので、一次分数変換によって、
特異点のひとつは無限遠点であると仮定してよい。

次回は Gauss の超幾何。

解析学III (1月18日)

海外出張とリヨン空港ストライキのための休講があって、
前回から 1ヶ月以上空いてしまったので、前回の復習から。

考えるのは 1階連立斉次線形のシステムで、
係数行列の孤立特異点のまわりで考える。
基本解を取り替えれば、(local な)モノドロミーが Jordan 標準型であると仮定してよい。
このとき、モノドロミー行列の log を考えて、それを独立変数の肩に乗せた関数を考えると、
基本解の多価性を打ち消せる。
この残りに現れる行列関数が、方程式の特異点を高々極とするとき、
この特異点は確定特異点であるといい、
真性特異点であるとき不確定特異点であるという。

次回は Fuchs 型の方程式。

解析学III (12月5日)

三学期は複素変数の常微分方程式の話。

しばらくは斉次線形の1階連立系を考える。
係数行列が正則な点の近傍では、
初期値を与えれば正則な解が一意的に存在すること。
孤立特異点の場合は、その点のまわりにある一点において基本解行列を考えると、
一般には多価関数になる。
これを特異点のまわりで解析接続したときに出てくるのがモノドロミー行列。

次回は特異点の分類。

微積分II (11月15日)

最終回。

線積分の定義とその意味 (力の場が曲線に沿ってなす仕事)。計算例。
後半はガウス・グリーンの公式。領域が長方形の場合に証明した。一般の場合は省略。
最後に応用として、ポテンシャルをもつ力は保存力であること
( 線積分が始点と終点にしかよらないこと )の証明をして終了。

試験は11月22日。

解析学III (11月14日)

二学期最後は、Fredholm 行列式について少しだけ。

斉次の積分方程式に対して、積分をリーマン和で近似すれば、
固有関数を持つための条件が行列式で書ける。
この行列式で分割を細かくする極限をとったのが Fredholm 行列式。
事実としては、Fredholm 行列式は広義一様収束して正則関数を定め、
その零点が、もとの積分方程式の固有値を与える。
最後に例として、分解核で一番簡単な場合 K(x,y)=xy に、
実際に Fredholm 行列式を計算し、固有値が零点と一致することを確認して終了。

補足:講義の後で質問を受けましたが、そこで変なことを言ったので、ここで訂正します。
固有値の重複度は、Fredholm 行列式を一般化した関数でなく、
Fredholm 行列式そのものの零点の位数と一致します。
位数が2以上の場合に固有関数を構成するとき、
Fredholm 行列式にパラメータを入れて一般化した関数を 使います。
(二つの話が混乱してました。失礼しました。)

関数論 (11月14日)

最終回。

無限遠点での留数の定義。P^{1} 上で有限個の孤立特異点を持つ関数の、
P^{1} 上での留数の和がゼロになること。
この応用例として、有理関数の計算。
最後に、留数は 1次微分形式に対して定めるべき概念であることを説明して終了。

試験範囲はルーシェの定理まで。

微積分II (11月8日)

今回はガンマ関数・ベータ関数と2変数関数のグラフが定める曲面の曲面積。

最初に、ガンマ関数とベータ関数をつなぐ公式の証明。
(広義)積分の順序交換、(上手い)変数変換など、
いままで扱った手法を総動員して証明する。

「曲面」「曲面積」を数学的にきちんと定義するには、
いろいろと道具と説明が必要なので、
2変数関数のグラフとして定まる曲面の場合に限定して公式を与え、
それが正しいことを大雑把に説明した
( リーマン和の極限として計算する)。
この公式が正しいことを確認する例として、円柱の側面積。
最後に、球の表面積の計算をして終了。

次回は線積分とガウス・グリーンの公式。

解析学III (11月7日)

今回はこれまでの話のまとめ。

2階の境界値問題に対し、グリーン関数を構成できれば、
それを積分核とする積分方程式と等価になる。
このことを使えば、適当な解析的な条件(たとえばC^2 級)を満たせば、
ある積分方程式の固有関数を使って展開できることが分かる (Hilbert-Schmidt)。
そのような具体例として、閉区間[0,1]においてC^2 級の関数が正弦フーリエ展開できること。
周期関数に対する古典的なフーリエ展開の存在も、
上の枠組みを使って証明できる (ただしグリーン関数の構成については省略)。

次回は Fredholm determinant について少しだけ。

関数論 (11月7日)

最後の2回はリーマン球面の話。

リーマン球面の構成法と、無限遠点での座標近傍の入れ方、
二つの座標近傍の貼り合せがどうなるか(z=1/w)を証明なしで述べて、
関数の無限遠点での振舞いの調べ方。
最後に、リュービルの定理の言い換え(P^{1} 全体で正則な関数は定数のみ)をして終了。

次回は無限遠点での留数。

微積分II (10月25日, 11月1日)

更新が遅くなったので二回分まとめて。

10月25日は、累次積分の順序交換と、重積分の変数変換。
累次積分の順序交換は、積分領域をきちんと図示すれば、それほど難しくはない。
順序交換をすることによって計算できるようになる例。
変数変換の公式の証明は、この本の説明に従って概略だけ述べたが、
それでも結構時間がかかる。
例として、極座標変換のヤコビアンの計算だけして終了。

11月1日は、変数変換の話の続きから。
極座標変換の例として、球の体積の計算。極形式で与えられた曲線が囲む部分の面積。
そして、アフィン変換の例。
後半は広義積分。
重積分の広義積分の定義をきちんと述べるためには、
いろいろと概念を準備しないといけないので、細かいことは省略して、
定義の概要だけ述べた (あるコンパクト近似列を使って収束すればOK)。
広義積分の計算例。最後にガウシアンの計算をして終了。

次回はガンマ関数とベータ関数と2変数関数のグラフが定める曲面の面積。

解析学III (10月24日, 10月31日)

更新が遅くなったので、二回分まとめて。

この二回で、有界閉区間上で、
エルミート対称な連続関数を積分核とする積分作用素の固有値の分布の話と、
Hilbert-Schmidt の展開定理の証明。
もう少し詳しく言うと、
固有値は必ず実数で、固有値全体のなす集合は集積点を持たないので高々可算となる。
固有値が無限個ある場合は、固有関数に適当にラベルをつけると展開定理が成り立つ。

次回は展開定理の具体例と、古典的なフーリエ展開との関係。

関数論 (10月24日, 10月31日)

更新が遅れたので、二回分まとめて。

24日は、次の定積分の計算。
$(1)\,\int_{0}^{\infty}\frac{\sin{x } }{x}dx$  $(2)\,\int_{0}^{\infty}\frac{x^{\alpha-1 } }{1+x}dx$
ただし 0<α<1. 

31日は、偏角の原理とルーシェの定理。
偏角の原理は、f(z) のローラン展開の最低次数が f(z) の対数微分の留数になる、
ということを押さえておけば、あとは留数定理ですぐに分かる。
偏角の原理の応用として、ルーシェの定理。ただし、時間の都合で証明はプリントで配布。
代数学の基本定理の証明も大事な応用だけど、これもプリントで。
最後に、ルーシェの定理の応用例として、代数方程式の解の分布を調べる話。

次回から残り2回でリーマン球面の話。

微積分II (10月18日)

今回から重積分。

前半はリーマン積分可能性についての理論的な話。
積分領域が有界閉区間の直積 (長方形) の場合に、
リーマン積分可能性の定義 (上積分と下積分が一致する)。
一般の領域の場合は、その領域を含む長方形を新たな積分領域として、
もとの関数を 0で拡張した関数が上の意味でリーマン積分可能であるときに、
リーマン積分可能であるという。
2変数の区分求積 (リーマン積分可能であればリーマン和は積分に収束する)。
リーマン積分可能性の十分条件として、
積分領域が縦線型集合で、被積分関数がその上で連続であれば良いこと。

後半は実際に積分を計算する話。
積分領域が長方形のときは、累次積分として簡単に計算できる。
一般の縦線型集合のときは、累次積分の積分区間に相方の変数が現れるので、
計算はもう少し複雑になる。
実際、どっちの変数から積分をするかで、計算の複雑さが変わる。

次回は積分の順序交換と変数変換。

解析学III (10月17日)

今回は、前回やり残した固有値の存在の証明。
いままでに準備したことを総動員すれば、比較的簡単に証明できる。

ここでほとんどの時間を費してしまったので、
後半は固有値が実数であることと、
異なる固有値に属する固有関数が直交することだけ証明して、
残りの時間は今後の話について概略を説明した。
目標は Hilbert-Schmidt の展開定理。

次回は固有値の分布について。

関数論 (10月17日)

今回は定積分の計算その1。
次の積分を留数定理を使って計算する方法について述べた。

$(1) \int_{0}^{2\pi}\frac{d\theta}{4\cos{\theta}+5}$   $(2) \int_{-\infty}^{\infty}\frac{dx}{1+x^4}$

次回は定積分の計算その2。ちょっと難しいもの。

微積分II (10月11日)

今回は陰関数定理とラグランジュの未定乗数法。

2変数の場合の陰関数定理なので、
f(x,y)=0 で定義される図形が局所的に関数のグラフとなることを保証する定理、
として陰関数定理を紹介した。証明は省略。
続いて、陰関数の微分。その応用として、曲線の接線の式。
具体例としては、高校で学んだ楕円の接線の公式の導出の話をした。
そして、曲線の法線方向のベクトルとして勾配ベクトルを定義。

後半はラグランジュの未定乗数法。考え方としては、
登山道の最高点・最低点では、登山道を射影した曲線と等高線が接する、
ということに尽きる。この説明をして、証明は省略。
最後に、ラグランジュの未定乗数法を利用して、
条件つき最大・最小問題の例題をひとつ解いて終了。

次回から積分。