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連続勉強会:「国難」のなかのわたしたちのからだ (第1回 4/1 東京)

「高校保健・副教材の使用中止・回収を求める会」主催で、「少子化対策」にかかわる情報を検討、吟味していく勉強会を始めます。

<連続勉強会:「国難」のなかのわたしたちのからだ>
第1回:書き換えられる女のからだ――またも改ざん? 「女性の年齢と卵子の数の変化」グラフとその言説の検証

「妊娠しやすさは22歳がピーク」グラフのウソが暴かれた……と思いきや、政府・自治体・専門家により「女性の年齢と卵子の数の変化」というおかしなグラフが拡散されています。その隣には「卵子数の減少が妊娠しにくくなる原因」といった怪しい説や、「妊娠適齢期をふまえた」ライフプラン設計の奨めも…。

「22歳ピーク」グラフもそうですが、これは出典どおりのグラフに差し替えればOK、という単純な話ではありません。少子化対策が「結婚支援」を掲げて人口増加政策であることを自ら明らかにしたいま、国家権力はまことしやかに「医学・科学」を騙って、優しい顔つきでわたしたちのからだ、性、生き方に介入してきています。一緒に考えませんか。

日時: 2018年4月1日(日)14:00-16:30(開場13:30)
会場: 渋谷男女平等・ダイバーシティセンター・アイリス第1・第2会議室 (渋谷駅西口徒歩5分 渋谷区文化総合センター大和田8F http://www.shibu-cul.jp/)
参加費: 500円(学生・非正規雇用の方などは300円)

申込み準備の都合上、なるべく下記へお申込みをお願いします。(先着40名)

プログラム

司会: 柘植あづみ(明治学院大学教員)

報告1「巧妙になった新・高校保健副教材」西山千恵子(大学非常勤講師)
報告2「少子化をめぐる政策のその後の動きについて」皆川満寿美(中央学院大学教員)
報告3「ライフプラン冊子には何が書いてあるのか」田中重人(東北大学教員)
報告4「卵子数グラフの怪!――女性の人生は「卵」の数にあらず!」高橋さきの(翻訳者、お茶の水女子大学非常勤講師)

主催者・連絡先等

高校保健・副教材の使用中止・回収を求める会
申込み・問合せ先: stopkyouzai* gmail.com
(* を @ に変更してお送りください)
協力:女政のえん

URL: http://d.hatena.ne.jp/remcat/20180321
ポスターPDF: http://tsigeto.info/misconduct/poster20180401.pdf
関連情報: http://tsigeto.info/misconduct/j.html
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「10歳の壁」の虚妄:箕面市「子ども成長見守りシステム」データから読みとるべきこと

昨年12月25日、 読売新聞社サイト YOMIURI ONLINE 「深読みチャンネル」に「「10歳の壁」から貧困家庭の子どもを救え」と題する記事が載りました: http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20171222-OYT8T50029.html

「Yahoo! ニュース」でも、年明けの1月7日に、おなじ記事が配信されました: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180107-00010000-yomonline-life

毎日新聞も、2017年12月30日大阪朝刊に「学力格差:「貧困」小4から 「学習・生活習慣、身につかず」 日本財団が箕面で調査」という記事を載せています: https://mainichi.jp/articles/20171230/ddn/041/040/019000c

これらの記事のもとになっている、箕面市の「子ども成長見守りシステム」データを使った日本財団の研究について、資料を集めて検討した結果、トンデモであるとの結論に達したので、解説します。

http://d.hatena.ne.jp/remcat/20180111/minoo


要点はつぎのとおり:

  • データをみるかぎり、貧困世帯の子供の「学力」は全国平均にくらべてやや低い程度であり、大きな格差はない
  • 貧困世帯の子供の「学力」が成長にしたがって低下するという解釈をデータから導くことはできない。むしろ、全国の児童生徒の平均的な傾向と同様に、貧困世帯の子供も順調に学力を伸ばしていることが、データからは示唆される
  • 「小学校4年(10歳ごろ)時に、家庭の貧富の差による「学力格差」が急拡大する」というのは根拠のないデマ
  • 経済状態による格差よりも地域間の格差のほうが大きそうである。このことを考慮せずに、特定の地域のデータの分析結果を一般化するのは非常に危険
  • 「学力」を測定しているとされる調査やそれを使って算出したスコアの測定・算出方法が不明であり、またその妥当性・信頼性・代表性が吟味されていない

「「10歳の壁」の虚妄:箕面市「子ども成長見守りシステム」データから読みとるべきこと」本文

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『学術の動向』22巻8号 (2017年8月) 記事「非科学的知識の広がりと専門家の責任: 高校副教材「妊娠のしやすさ」グラフをめぐり可視化されたこと」

日本学術協力財団の雑誌『学術の動向』22巻8号(=通巻257号) (2017年8月) に書いた記事「非科学的知識の広がりと専門家の責任: 高校副教材「妊娠のしやすさ」グラフをめぐり可視化されたこと」が J-STAGE (科学技術情報発信・流通総合システム) で公開されました。

http://doi.org/10.5363/tits.22.8_18

「「卵子の老化」が問題になる社会を考える―少子化社会対策と医療・ジェンダー」という特集の一部です。

この記事と特集、その元になった2016年6月18日の日本学術会議シンポジウム、そしてそもそも医学批判に私が首を突っ込むきっかけになった文部科学省作成の保健科目用副教材『健康な生活を送るために』(2015年度版)における「妊娠のしやすさ」改竄グラフ問題についてはすでに何度か書いているので、そちらもお読みください。

J-STAGEからこの記事の全文PDFファイルがダウンロードできます。それほど長い文章でもないので、お読みいただければ内容はわかると思います。今回は、たぶんあまり一般には理解されていないであろうポイントについて、重点的に解説します。

目次は以下のとおり:

  1. 「妊娠のしやすさ」グラフの大元の研究自体が、都合のよいデータだけを抜き出したものである
  2. ダメ論文は被引用状況からわかる
  3. 非公表の調査結果が政策・世論操作に使われてきた

つづきはこちらから →http://d.hatena.ne.jp/remcat/20171217

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ウィメンズヘルスリテラシー協会

「ウィメンズヘルスリテラシー協会」は、女性の健康についてのリテラシー向上を掲げて2017年7月に発足した一般社団法人です。9月28日に「ウィメンズヘルスリテラシーサミット」なるものを開くという告知が流れてきていますが、団体のウェブサイト等には、関係者や活動内容についての情報がほとんどありません。BuzzFeed がこの団体をとりあげた記事などを元に、この団体の正体を探りました。
http://d.hatena.ne.jp/remcat/20170920/whla
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【記事紹介】I LADY. 「新・女子力テスト」とニセ医学

『messy』というオンライン雑誌に記事を書きました。

I LADY. 「新・女子力テスト」とニセ医学:ジョイセフ×電通「粉かけ罰ゲーム動画」の背景

健康に関する質問を女性出演者にぶつけ、正解できないと粉をぶっかける「新・女子力テスト」宣伝動画なるものがYoutubeにアップロードされていた件に関連して、この記事では、この動画が宣伝する「新・女子力テスト」なるものの医学的根拠のあやしさと、その背後にあるジョイセフ (国際NGO) や産婦人科団体の科学的リテラシーの低さについて説明しています。

(1) 「模範解答」の出典のあやしさ
(2) 「先進国の中で最下位レベル」の根拠のあやしさ
(3) 繰り返される問題
(4) 「正しい知識」を得ることの困難

この記事に載せていないデータの一部は http://d.hatena.ne.jp/remcat/20161114 で解説しています。
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Slides: Dynamics of Ideology and Institution (3rd ISA Forum of Sociology 2016, July 11)

Date: 2016-07-11 (Monday) 10:45-12:15
Slides: 16x-slide.pdf (2016-07-11)
Handout: 16x.pdf (2016-07-11)

Title: Dynamics of Ideology and Institution: Probable Scenarios for Changes in Beliefs about Gender and Family in Japan

Author: TANAKA Sigeto (Tohoku University)

Abstract:

This paper put forward a proposal for elaborating ideology analysis. In parallel with development of empirical analysis to specify causality in the real social phenomena, we should develop methods for analysis of ideology to explore dynamics of what we perceive and think about the real society. Using them in combination, we obtain a powerful tool to foresee the future.

This paper proposes a framework of ideology-institution dynamics with causal modeling (IIDCM). IIDCM defines ideology as a system of interdependent beliefs classified into three categories: beliefs about facts (how the society is), about ideals (how the society should be), and about norms (what we should do). A feedback cycle is assumed as follows. We have beliefs about facts based on our observations of society. We have also beliefs about ideals as criteria to evaluate whether the social condition is good or bad. Such criteria and beliefs about facts jointly justify a norm to realize a better society. If the norm is institutionalized, it determines people’s action and brings social outcomes. And if we observe the social outcomes through empirical analysis, it will make changes in our beliefs about facts.

IIDCM theorizes relationships among ideology, institution, and people’s action. We can write a scenario and select the cast to predict social changes, using IIDCM as a basic framework. This paper takes an example of fertility issue in Japan. Political responses to low fertility in Japan since late-1980s have been too conservative to set ideological changes about gender and family. However, facing the population shrinking, the government (and people) are now seriously recognizing the necessity of drastic social changes. We can write probable scenarios, with the framework of IIDCM, according to what policy will be selected and how public opinion will change hegemonic ideology related to gender and family. (See http://tsigeto.info/iidcm/ for details)

Keywords: methodology, norm, policy, social change

Conference: 2016 Third ISA Forum of Sociology
Session Selection: Scenarios and Future Societies
Abstract URI: https://isaconf.confex.com/isaconf/forum2016/webprogram/Paper78902.html
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シンポジウム 「卵子の老化」が問題になる社会を考える (6月18日 東京)

【シンポジウム】少子社会対策と医療・ジェンダー ― 「卵子の老化」が問題になる社会を考える

日時:2016年6月18日(土)午後1時~5時(開場12時半)
会場:日本学術会議講堂 (〒106-8555 東京都港区六本木 7-22-34)
   東京メトロ千代田線「乃木坂」駅5出口より徒歩1分

参加費無料、参加申し込みの必要はありません、直接会場にお越しください。(先着300名まで)
f:id:remcat:20160406161656j:image

総合司会

河野銀子(山形大学教授、学術会議連携会員)

企画主旨説明・ファシリテーター

柘植あづみ(明治学院大学教授、学術会議連携会員)

研究報告

  • 田中慶子(家計経済研究所研究員) 「妊娠・出産をめぐる女性の意識 ― インターネット調査から」
  • 白井千晶(静岡大学教授) 「卵子提供で子どもをもった高齢妊娠女性への調査から」
  • 菅野摂子(電気通信大学特任准教授) 「出生前検査と高齢妊娠の不安と選択」
  • 田中重人(東北大学准教授) 「高校副教材『妊娠しやすさグラフ』をめぐり可視化されたこと」

問題提起・提言 

  • 阿藤誠(元国立社会保障・人口問題研究所・所長)
  • 早乙女智子(産婦人科医、京都大学・客員研究員)

コメンテーター

  • 江原由美子(首都大学東京・教授、学術会議連携会員)
  • 小浜正子(日本大学・教授、学術会議連携会員)

(敬称略)



主催:日本学術会議第1部会社会学委員会ジェンダー研究分科会
協力:日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究(B)「医療技術の選択とジェンダー:妊娠と出生前検査の経験に関する調査」(研究代表者 柘植あづみ 25283017)研究グループ(略称 妊娠研究会)
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吉村泰典「妊娠のしやすさ」改ざんグラフコレクション

22歳をピークとして「妊娠のしやすさ」が急激に低下する改竄グラフをつくったのが吉村泰典内閣官房参与 (慶應義塾大学名誉教授、日本産科婦人科学会元理事長、日本生殖医学会元理事長、吉村やすのり生命の環境研究所 所長) であることがはっきりしたところで、これまでに確認されている改竄グラフ5枚 (+高校副教材に載った1枚) の情報をまとめました。

→ 
http://d.hatena.ne.jp/remcat/20160331/falsified
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高校保健副教材「妊娠のしやすさ」グラフの不適切さを検証

田中重人 (2016)「「妊娠・出産に関する正しい知識」が意味するもの:プロパガンダのための科学?」(特集 一億総活躍の中の男女共同参画:第4次基本計画を読む 『生活経済政策』230: 13-18) について、東北大学からプレスリリースを出しました:

「高校保健副教材「妊娠しやすさ」グラフの適切さ検証-人口学データ研究史を精査」
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2016/03/press20160330-02.html

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東北大学大学院文学研究科の田中重人准教授は、2015年の高校保健副教材 (文部科学省作成) の「妊娠のしやすさと年齢」グラフに関し、その元データを掲載した1978年の論文(1) とそれを引用した文献を網羅的に調べました。その結果、このデータは早婚の女性に限定して推定したものであり、結婚からの時間経過による性行動変化と加齢の効果とを混同している との専門家からの批判がある(2) こと、この批判への反論や再検証はないまま放置されてきたことがわかりました。また、副教材グラフは、原典の論文ではなく、それを不正確に写した別の論文からの曾孫引きであるために本来の値からはずれた曲線になっており、原典には存在しない「22歳がピーク」という印象 を作り出しています。このようなグラフを学校教材に採用するのは不適切と田中准教授は指摘しています。
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このプレスリリースに関する解説を http://d.hatena.ne.jp/remcat/20160331/pr に書きました。
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【論文】「妊娠・出産に関する正しい知識」が意味するもの

下記の論文を出版しました。

2015年8月、妊娠・出産に関する「医学的・科学的に正しい知識」をはじめて盛り込んだ保健副教材改訂版が高校に配布されました。その第20節「健やかな妊娠・出産のために」に載っていたのが、女性の妊娠のしやすさは22歳で頂点を迎え、そのあと急激に低下していく、という、加齢による減少を誇張したグラフでした。この論文では、このグラフ改竄事件の経過と、このグラフの元となった研究について、解説と評価を加えます。また、科学的研究への信頼と男女平等 (男女共同参画基本計画) に関して、この事件からえられる教訓を引き出します。

私たちが専門家を信頼できるのは、彼らは相互に厳しい批判を繰り返してダメな研究成果をふるい落としているはずであり、そのような淘汰の過程をくぐり抜けた確実性の高い知識について、誠実に解説してくれるものという前提があるからだ。今回の「妊娠のしやすさ」グラフ改竄事件から得るところがあるとすれば、このような信頼をおくことのできない専門家集団が実在するという事実を明るみに出したことであろう。
(p. 16)

目次:

  • 「妊娠のしやすさ」改ざんグラフ問題
  • グラフの来歴
  • 「医学的・科学的に正しい知識」の危うさ
  • 性差に基づく男女共同参画?

論文に関する情報:

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