研究ブログ

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ブルッキングス研究所のセミナーに登壇します

【ブルッキングス研究所×JICA×GDN】

来週、ワシントンのブルッキングス研究所でカイゼンをテーマにセミナーを行います。1月の世銀セミナーで私がコメンテーターをした世銀のWilliam Maloney氏がモデレーターをしてくれます。

GDN (Global Development Network)とJICA研究所の共同研究の一環です。John Page氏、細野昭雄先生と私で本を編集しており、園部哲史先生にもアドバイザーとしてご参加していただいています。

この研究にはJICA職員も多く参加しています(産業開発・公共政策部の片井啓司氏、神公明氏、本間徹氏、鈴木桃子氏、JICA横浜の石亀敬治氏、JICA研究所の坂巻絵吏子氏)。

ケニア一村一品プロジェクト  松島恭範・元JICAチーフアドバイザーへのゼミ生・インタビュー


ケニア一村一品プロジェクト 
松島恭範・元JICAチーフアドバイザーへの
ゼミ生・インタビュー

明治大学 情報コミュニケーション学部

3 横山日向子

 1月17日に東洋大学で、松島恭範・元JICAチーフアドバイザーにインタビューを行いました。

                      (東洋大学の研究室でのインタビュー)


一村一品プロジェクトとは
 ― ないものを探す

 今回、松島さんにお聞きしたのは、JICAが無印良品と共同して行ったケニアの一村一品プロジェクトについてです。

一村一品プロジェクトは、もともとは大分県から始まった一村一品運動から来ています。これは、現存する地域の資源を使って住民による創意工夫を活かした付加価値のある商品やサービスをつくることを目的としています。今回のプロジェクトでは、商品を作る人材の育成や技術支援を行っていました。


                                     (時間をかなり超過して行われた意見交換)


 一村一品プロジェクトの最大の特徴は、販売や売り上げそのものよりも、むしろ人材育成が中心であるという点です。そのためマーケティングや最終的な商品の決定は住民が主導で行います。自分たちで行うことで、すでにある商品が見直され(あるいは見出され)、自分たちの村の誇りを取り戻すことに繋がるということだそうです。

 また松島さんは「ないものを探す」というキーワードを挙げていました。これは四方を海で囲まれ、他国に比べて資源が少ないといわれる日本ならではの考えだと思いました。

一村一品プロジェクトの課題

 このプロジェクトを実施するにおいて松島さんがあげていた課題は主に3つありました。
①ビジネス・マインドが十分ではない、②競合商品のことを考えられていない、③市場で売れる品質を得るための技術・知識が足りていない、という点です。
松島さんは最終的のこれらのことを支援なしに住民たちが考え、実行できることがゴールだと仰っていました。そのためにJICA側が人材育成や技術支援をしていく必要があるそうです。

所感
 
 私は現在、ジェンダー支援を通じた女性の起業支援を研究テーマにしています。今回お伺いしたプロジェクトでは男女ともに研修に参加したり、地域の女性が作ったものが売れて現金収入を得ることで女性の地位向上に繋がったりと、ジェンダーの向上に大きな影響を与えていると思いました。今後の研究に生かしたいと思います。

 最後に、お忙しい中インタビューのお時間を割いてくださった松島恭範・元JICAチーフアドバイザー、本当にありがとうございました。

                          (帰り際に東洋大学の入り口で一緒に写真を撮っていただきました)

国際開発ジャーナル』「大学の国際化最前線」で取り上げられました

最新号の『国際開発ジャーナル』の「大学の国際化最前線」で1ページ全部(P59)を使って明治大学の取り組みと、ゼミの学生達の活動を取り上げていただきました。

記事の中の写真では全学年のゼミ生が参加して行った開発援助戦略を作るワークショップの様子も。

こうして取り上げてもらえると嬉しいし、なにより学生たちには励みになると思います。国際開発ジャーナルの皆さんに感謝です☺️

世界銀行ラウンドテーブル「よみがえる東アジア:世界的な変化の中での方向性」

今日は世界銀行東京事務所でスディール・シェッティ東アジア・太平洋地域担当チーフエコノミストとの少人数でのラウンドテーブルにお招きいただきました。

世銀の新報告書「よみがえる東アジア:世界的な変化の中での方向性」(A Resurgent East Asia, Navigating a Changing World)についてはコチラからアクセスできます。

発表もその後の議論もとても丁寧かつ明快で面白く、「東アジアの奇跡」との違いを考えさせられました。

スディール・シェッティさんと終わった後に話をしたら、「東アジアの奇跡」の中心人物であったジョン・ページさんは昔の上司だったとのこと。どおりで色々と東アジアの奇跡を思い出させる記述が散りばめられているはず(少し政策の処方箋は違いますが)。

ジョン・ページさんとは来月、ワシントンのブルッキングス研究所で一緒に編集している本のセミナーをやるのでセミナーの紹介しておきました。

出席されていた先生たちの議論も面白く満足度の高いラウンドテーブルでした

(ゼミ生からの報告)JICA研究所・国際開発学会「カイゼン・セミナー」に参加して

JICA研究所・国際開発学会共催 国際開発研究・特集号発刊記念セミナー 

「国際開発におけるカイゼン研究の到達点と今後の課題

 — 学際的アプローチからの政策的インプリケーションの検討」に参加して


 昨年、12月25日にJICA研究所で行われたセミナーではゼミの学生4名がお手伝いをしてくれました。学生にもカイゼンの意義を考えてもらう機会になればと思い、参加して考えたことを短い文章にまとめてもらいました。
 セミナーの
概要については JICA研究所のHPに報告が掲載されています。あわせてご覧いただければ幸いです(当日の写真を最後に掲載しています。写真は全て3年生の中島百合子さんによるもの)。



      (セミナーの登壇者によるパネル・ディスカッションの様子)


      (各登壇者による発表の様子)各発表者の写真は最後にまとめてあります

                 (会場の様子)


明治大学 情報コミュニケーション学部

3年 中島百合子

 

 セミナーを終えて特に印象に残ったのは、「現場のカイゼン能力の育成」という課題です。セミナーで各先生がおっしゃっていたように、カイゼンは今後、国際比較やメカニズムの研究が進み、より多くの分野への導入が行われると考えられます。その際に、カイゼンが支援に頼らず継続的に実施されるためには、現場のカイゼン能力の育成こそが大切であると思いました。

 山田先生によると、近年、教育分野では、作業的スキルや言語スキルなどを指す「認知能力」に代わって、問題解決やチームワークに関わる「非認知能力」が注目されており、産業労働者の非認知能力は「カイゼン能力」と言い換えることができるとのことでした。就業前の職業訓練の場でこれまで重視されてきたのは、作業的スキルの育成でした。しかし、作業的スキルは就業後に企業内研修で専門に応じて実施した方が短期間で身に付く一方、カイゼン能力は長期的な教育・研修によって得られるものであることが分かったそうです。長期的な教育・研修を実現する機会は、就業前後で2回あると思います。具体的には、義務教育修了後の進学先である職業技術教育課程と、就業後の「環境」です。


 長期的な教育・研修を実施するためには、その価値観を共有する環境にある期間身を置くことが大切です。しかし、アフリカなどにおいては雇用が安定していないという現実があります。長期的な雇用を前提とした就業後の「環境」が、非認知能力を身につけるためには必要だと感じました。


 雇用の安定は、カイゼンの成功要因としてセミナーの中でも取り上げられていました。細野先生が指摘されていたように、カイゼンが意味する生産性向上は、収益や効率性の変革だけでなく、労働者や顧客の満足度の変革を含んでいます。そのため、カイゼンを通して解雇が頻繁に行われる従来の雇用形態が変わることで、組織による学習が可能となり、経済発展につながるそうです。質疑応答でも、山田先生が日本でカイゼンが成果を上げた要因の1つとして、雇用の保障を挙げられていました。

 ただし、雇用形態を変えることは組織の文化を変えることにもつながります。その際には、外部の新たな価値観に入れ替えるのではなく、佐藤先生がお話されていた、今の組織を活かして適応させるという視点が不可欠なのだろうと感じました。

 「現場のカイゼン能力」の高い人材の育成は、職業訓練校の教育内容と雇用形態の変革によって可能となるのではないでいかと考えさせられました。



明治大学 情報コミュニケーション学部

1年・鈴木聖恵


 今回、カイゼンという一つのテーマに対する様々な専門、バックグラウンドを持つ先生の報告及び議論の場に参加でき、とても勉強になりました。実はこのセミナーに参加するまでカイゼンについてはなんとなくしか理解していませんでしたが、実際にお話を聞くことで自分の抱いていたイメージと照らし合わせながらカイゼンに対する理解を深めることができたと思います。


 特に印象的だったのは、佐藤寛先生の「カイゼンの領域横断性」でした。セミナーではカイゼンについて開発と比較して説明されていましたが、カイゼンの出発点「何が手元にあるのか」という発想は私自身抱いたことがありませんでした。


 今まで他国の開発や経済成長案について考える時も、別のセミナーに参加した時も、なんだかこちら側が上位の立場にいるような気がして違和感を覚えていましたが、その根底にあるのは開発の出発点である「何が欠けているか」という最も大切な課題ではないかと気づきました。


 欠けているものを外部から持ち込む際は受け入れ元の現状や立場が見すごされる危険性があると考えていますが、カイゼンの「何が手元にあるのか」という概念を適用すれば、オーナーシップが現地側になるため、その国に合った状況の改善が見込めるのではないかと考えました。


 今回のような広い会場で多くの登壇者がいらっしゃるセミナーへの参加は初めてでしたので少々緊張してしまいましたが、普段の大学の講義とは違った雰囲気を味わうことができました。また、今回のテーマであるカイゼンは国際開発の分野に限らずさまざまな組織においても適応できるのではないかと期待を膨らませています。私はカイゼンをもっと進めていくべきだと思うので、より理解を深め、この概念を様々な事柄にどう生かせるか模索していきたいです。



明治大学 情報コミュニケーション学部

1年 中山 優衣


 今回のセミナーは論点が多くありましたが、その要点を一言でまとめるなら、今後のカイゼンの課題はそのメカニズムを解明することでカイゼン導入の客観的評価をし、更に質の高い取り組みを目指すことだと思いました。


プロジェクトが持続していくために

質の高いカイゼンとは支援の終了後にも持続できる力を育成する取り組みだと思いますが、その成功には大きく分けて3つの要素が重要だと感じました。1つは国内条件(歴史的背景,主体条件)、2つ目は援助のあり方、3つ目は実施の担い手です。特に国内条件と外部支援のあり方は深く関係しており、政府主導か民間団体主導か(国内条件)そして支援国はどのように課題に関わり、援助に取り組むかは表裏一体だと思います。いずれにせよ被援助国が最終的な取捨選択や要求の権限を持つなど、あくまでも被援助国主体であることは大切だと思います。


実施の担い手を育成するために

また、カイゼンの質を考える際に避けられないのは被援助国側での実施の担い手です。プロジェクトの継続のために最も重要だからです。しかし援助国側のやり方が必ずしも被援助国に適しているとは限らないため、教育の現地化や他ドナーと連携して実施していくことが有効だと思いました。


カイゼン協力の今後に向けて

本セミナーにおいては他ドナーとの連携を求める場合についても興味深い議論がありました。それはこの運動をカイゼンと呼び続けるべきか否か、という議論です。インパクトはあるが他ドナーはよく思わないとして呼ばない方が良い、という意見が多かったように思えましたがこれは佐藤寛先生による本セミナーでの挨拶内容そのものであったと思います。カイゼンの本家争いをすることなくカイゼンの質が改善され、且つより一層世界に認知され運動が広がることが重要だと思います。



明治大学 情報コミュニケーション学部

1年・佐々木絢音


 今回、国際開発研究-特集号発刊記念セミナーに参加させていただきました。カイゼン支援については、大学のゼミ等で島田先生よりお話を伺っていたのですが、今回セミナーに参加させて頂き、より深くカイゼン支援について学ぶことができました。


 私は、特にセミナーの中で幾度か話題となっていた「カイゼン支援の普及」について興味を抱きました。カイゼンに対し、あえて定義を与えず、ケースバイケース取り組んでゆくのが良いのでは、という意見や、カイゼンという名称それ自体を使うべきか否かなどについての御指摘など、自分では到底考えもつかなかったような、パネリストの先生方のご意見に直接触れることができたからです。


 定義を確定させず、比較的柔軟なニュアンスで使用される言葉は、定義が厳格に確立しているような他の様々な言葉とは、社会へ浸透してゆく過程がまるっきり異なるのか。また、異なっているとすれば、どのようなプロセスを辿って人々のあいだに伝わっていくのか。誤用や不足の無い適切な状態で、かつ定義を明確に確立しない形そのままに世の中に広まるためにはどうすれば良いのかなど、これから自分なりに考えを深め調べてゆきたいです。


 その国·その地域のネットワークや文化によっても伝播の仕方は多かれ少なかれ異なってくるのでは、と現時点では浅薄ながら考えているため、そういった点にも留意して調べを進めてゆき、カイゼンの伝播につながるような結果を垣間見ることができれば、と考えました。

 普段の学生生活では中々触れることのできない貴重な知見を得る機会を得られたので、今後の学生生活の中でも深めていきたいと思います。


              (JICA 
児玉顕彦氏の発表)


              (大野泉先生の発表)


              (細野昭雄先生の発表)


              (山田肖子先生の発表)


               (佐藤寛先生の発表)


                (
柳原透先生の発表)


               (島田の発表)

          (セミナーの受付などを手伝ってくれた島田ゼミの1年生たち)

(Photo by Yuriko Nakashima)

アジア・アフリカの経済成長ー開発経済学と歴史学の出会うところで

アジア・アフリカの経済成長
ー開発経済学と歴史学の出会うところで

大塚啓二郎先生、杉原薫先生の編による本が出ました。樋口裕城先生と私の共著による"Industrial Policy, Industrial Development, and Structural Transformation in Asia and Africa"という章が収められています。オープン・アクセスなので、本全体を読んでいただくことができます

開発経済学と歴史学という2つの側面からアジア・アフリカの経済発展を研究したものです。とても面白い共同研究で参加させていただき感謝です。


Our chapter is included in the book below. The title of our chapter is "Industrial Policy, Industrial Development, and Structural Transformation in Asia and Africa" The whole book is available for free through Open Access.




世界銀行セミナー「生産性を再考する」でのコメント

世界銀行セミナー生産性を再考する」でのコメント


先週、世界銀行のセミナーで討論者をさせていただきました。お声がけいただいたのがセミナーの1週間前で、大学の仕事の方が忙しい時期と重なってしまったので、泥縄式で新しい世界銀行のレポートを読み込み、パワポを作成しました。少し日程的にはきつかったですが、今回のレポートはできがよく、とても勉強になりました。昨年に続いて、こうした機会をいただけたことを感謝しています。




ここでは私のコメントの要点をメモとして残しておきたいと思います(当日、使ったスライドは
コチラに置いてあります)。

(コメントの要点)

・評価できる点:TFPと企業業績の分析について新しい貢献

・コメント:産業構造の変化、雇用、クラスターといった点についても分析があるとさらに良かった

(以下はメモ)

今回のレポートが評価できるのは次の2点です。

第1に、「生産性パズル」に新しい手法で取り組んでいることです。生産性が注目されるようになったのはロバート・ソローが1956年の論文で論じてからです。それまでは経済成長は資本と労働の投入量によって決まると考えられていました。ソローはそこに生産性という考えを持ち込んだのです(全要素生産性(TFP: Total Factor Productivity)と言います)。そして、この考え方は実際の経済の動きをよく説明できました。しかし、1987年にソローは疑問をなげかけます。コンピューターがこれだけ導入されているのに、なぜかむしろ生産性が全世界的に落ちてきたからです(これを「生産性パズル」といいます)。今回のレポートでは、それに対してTFPをさらに要素毎に3つに分解して検討することを提唱しています。これは新しい貢献と言えるでしょう。

第2にこのレポートは企業レベルでの生産性についても新しい手法で取り組んでいます。企業レベルの生産性や経営的資本の重要性について、ここ10年ほどかなり研究が進んできています。そうした研究の中でも企業における生産性を伸ばすための研修が、企業の業績にどう影響を与えているかの実証はまだ研究の進みつつある分野です。しかし、同じ国の同じ産業内でも企業間で生産性に大きな差があり、それがなぜか縮まらないという課題があります(第2の生産性パズル)。今回のレポートはこの企業業績について、企業業績に影響の与える項目を細かく分解して検討している点が新しい点です。

これら2点は評価できる点ですが、3つコメントがあります。

第1は、ボーモルの病についてです。ボーモルは1993年の論文でサービス業は製造業に比較して生産性が上がらないことを指摘しました。途上国、特にアフリカで課題になっているのは早すぎる経済のサービス化です(「ウィリアム=ペティの法則」の通りいけば、もう少し経済の発展が進んでからサービス化する筈です)。これは資源が多いことによって為替レートが強くなり、輸入品が安くなり、国内の製造業が育たないため生じている現象です(オランダ病といいます)。実際、アフリカの国々の主なサービス産業は輸入業です。ボーモル病を考えると、このままではアフリカの国々の国単位での生産性はなかなか上がらないことが考えられます。

また、生産性の低い農業セクターに多くの人が働いているのもアフリカの特徴です。いかに産業構造に変化をもたらし、製造業セクターを活性化するかがアフリカの生産性を上げるにあたっての課題です。

こう考えると、このレポートでは国の生産性(TFP)と企業の生産性が論じられていますが、産業構造の変化(農業→製造業、サービス産業→製造業)による生産性向上がもう少し議論されると良かったのではないかと思います。

第2には雇用です。生産性が上がるということは産出物の量が変わらなければ、雇用は減るということを意味します。実際、アメリカは第二次世界大戦後にヨーロッパにマーシャル・プランの一環で生産性向上の援助を行いましたが、特にイタリアとフランスで労働組合から反発を受けます。その後、日本でも1955年から生産性向上の対日援助が行われますが、総評は大反対しました。そういう意味からは経営のあり方はなんでもいいという訳ではなく、雇用を大切にするような経営手法が求められるのではないか。日本のカイゼンはボトムアップで労働者の参加を促し、同時に生産性三原則により「雇用の確保」と「賃金への還元」が謳っています。今後の途上国への援助ではこうしたカイゼンのようなアプローチが重要なのではないか。

第3は政策を行う順番です。このレポートでは人的資本が根本に置かれています。これらの考え方は日本の大塚啓二郎先生を中心に我々が提唱しているTIF (Training-Infrastructure-Finance)戦略ととても似ています。ただ、違いは単体の企業だけではなく、どうやってクラスター(産地)を作るかという部分がこのレポートにはなく、そうした論点があればさらに良かったと思います。

JICA研究所 非常勤研究助手募集 / Recruiting a Research Assistant

私が研究代表をしているJICA研究所の研究プロジェクトで、非常勤研究助手を募集しております。対象案件はケニアで実施されているJICAのSHEPプロジェクです。

(以下はJICA研究所の募集内容です)
JICA研究所では、非常勤研究助手を募集しております。沢山のご応募お待ちしております。
English follows Japanese.


JICA研究所 非常勤研究助手(「アフリカ小農民の商業化による貧困緩和の実証研究-行動経済学的アプローチ(SHEP研究)」)募集

募集期間: 2019年1月16日(水)10時00分から2019年2月18日(月)23時59分
募集人員:1名
職種:非常勤研究助手
業務内容
研究案件「アフリカ小農民の商業化による貧困緩和の実証研究-行動経済学的アプローチ(SHEP研究)」について、非常勤研究助手として以下の業務を行う。
1. 現地調査にて収集したデータのクリーニング及び計量経済学的手法に基づいた分析の補助。
2. データ分析結果の報告書等への取りまとめ。
3. 現地調査にかかるJICA関係者やローカルコンサルタントとの調整や調査準備の補助。
4. その他、上記研究に関連する外部研究者との連絡調整等各種業務。

勤務形態
非常勤(任期あり)
原則週3日、契約期間:2019年4月1日~9月30日迄(ただし、週毎の勤務日数については採用者の予定を踏まえ、
応相談。当機構と本人が合意した場合に限り、半年毎の契約更新の可能性があるが、通算契約期間は最長2年間)。

勤務地
JICA研究所(東京都)
〒162-8433 東京都新宿区市谷本村町10-5

応募資格
以下の条件を全て満たすこと。
(1)上記研究分野等における修士号以上(又は同等の資格)を取得していること(又は取得予定)。
(2) データ分析及び基礎的な計量経済学の手法を習得していること。
(3) STATAの使用方法に習熟していること。
(4)学術研究のためのコンピュータースキル及びインターネット・ツールに習熟していること。
(5)日常会話レベルの日本語能力を有することが望ましい。
(6)研究の遂行が可能なレベルの英語能力を有すること((a)TOEIC800点以上、(b)TOEFL(PBT)574点以上、
     (c)TOEFL(CBT)230点以上、(d)TOEFL(iBT)89点以上程度)。
(7)国籍は不問。ただし就労できる在留資格をお持ちの方に限る。

待遇
1.職名:非常勤研究助手
2.契約期間:2019年4月1日(予定)~2019年9月30日
  ※双方の合意の下、半年毎の延長の可能性あり。
  ※原則週3日業務に従事。就業時間は研究所の勤務時間平日9時30分~17時45分(休憩時間45分)に準ずる。
3.報酬:当機構研究所の規程により支払い(経験年数に応じて報酬額を決定)。
4.交通費:報酬とは別途支給(上限1日2,750円)。
5.保険:非常勤のため、社会保険等への加入なし。

着任時期
2019年4月1日
上記の時期に着任が難しい場合は、応募書類にその旨記載すること。

応募書類
1. 履歴書
 ※添付の様式を使用してください。顔写真の添付、推薦者2名の連絡先の記載が必須です。
 ※語学能力については、証明書類がある場合は添付してください。証明書類がない場合は履歴書に自己評価を簡潔に記載願います。
2. 研究業績リスト
3. 学会活動リスト
4. 志望動機(自身の研究活動との関連を含む。)
5. 学位証明書、成績証明書 
5. 学位証明書、成績証明書 

JICA-RI CV format(和文・非常勤助手) [DOC/60.5KB]
JICA-RI CV format(English/Research Assistant) [DOC/59.0KB]
CV formatは以下URLから取得してください。
https://www.jica.go.jp/jica-ri/ja/about/jobs/20190116_01.html


送付方法
【送付方法】
E-mailにてJICA研究所採用アドレス「ditr2@jica.go.jp」まで送付してください。
※件名に「JICA研究所非常勤研究助手(アフリカ小農民の商業化による貧困緩和の実証研究)募集の件」と明記の上、
添付ファイルには氏名及び各応募書類の番号を付してください(例:「1.(氏名)履歴書」、等)。
※応募書類のデータの容量が5MBを超える場合は、何通かのEメールに分けて送信願います。分割した送信が難しいファイル
がある場合は、別途お問い合わせください。
※圧縮ファイル(ZIP、LHA、CAB、TGZ、TBZ、TAR、RAR等)は受信できません。送信の際はご注意ください。
※提出期限:2019年2月18日必着
※応募書類は返却いたしません。
※応募時に提供いただいた個人情報は、非常勤研究助手の選考・契約に関わる手続にのみ使用いたします。


選考内容
・書類選考結果は個別にEメールにて連絡します。
・2次選考(面接)は、3月上旬に実施予定です。詳細は面接対象者におってご連絡します。
※審査内容に関する問合せには応じられません。
※審査内容以外のご質問は、Eメールにて下記の連絡先までお送りください。電話による対応はいたしかねます。
※E-mailでの応募後、2営業日以内に当方からの受信確認メールが届かない場合は応募メールが未着の可能性がありますので、
その場合は必ずご連絡ください。


連絡先
JICA研究所 総務課 採用担当
〒162-8433 東京都新宿区市谷本村町10-5
Eメール:ditr2@jica.go.jp

Research Assistant (Data Management/Analysis on "An Empirical Analysis of a Project on Commercialization of Small
Scale Farmers and Poverty Reduction; A Behavioral Economics Approach")

Application period :January 16, 2019(Wed)- February 18, 2019(Mon)

Number of positions:1 (one)

Job type : Research Assistant

Content of work
The research project aims at evaluating the impact of JICA's technical cooperation entitled,
"Smallholder Horticulture Empowerment and Promotion Project for Local and Up-scaling",
by measuring the improvement of livelihood among target horticulture farmers from an economic perspective.

The Research Assistant is expected: 
1. To assist the data cleaning, analysis and econometrical estimation of the collected data.
2. To summarize the results of data analysis in the form of reports and others.
3. To liaison with related departments and offices in JICA and local consultants for preparation of surveys.
4. To conduct other related tasks such as coordination with researchers of other institutes.


Contract period
1st April 2019 to 30th September 2019, tentative, 3 days a week
(There will be some flexibility in the number of working days per week depending on the applicant's
schedule. Contract can be extended to maximum 2 years if both parties agree.)


Work location/Address
JICA Research Institute (Tokyo)
10-5, Ichigaya Honmura-cho, Shinjuku-ku, Tokyo 162-8433, JAPAN

Qualifications
Required qualifications include:
(1) Master's degree (or equivalent, or soon to be) in the above research fields.
(2) Possess sufficient skill in data analysis and basic econometrics.
(3) Be proficient in the use of STATA.
(4) Be proficient in the use of personal computers and internet for academic research.
(5) Preferable to have Japanese language skills sufficient for basic communication.
(6) English language skills sufficient for carrying out research (TOEIC score of 800 or above,
   TOEFL (PBT) score of 574 or above, TOEFL (CBT) score of 230 or above, TOEFL (iBT) score of 89 or above, or equivalent).
(7) Open to all nationalities, but applicants are required to have a visa status that confers eligibility to work in Japan.

Treatment: Please check the URL below (available only in the Japanese language).
https://www.jica.go.jp/jica-ri/ja/about/jobs/20190116_01.html

Starting date :April 1, 2019
The starting date will be determined by consultation

Application materials: Please check the URL below (available only in the Japanese language).
https://www.jica.go.jp/jica-ri/ja/about/jobs/20190116_01.html

Where to make contact

JICA Research Institute
10-5, Ichigaya Honmura-cho, Shinjuku-ku, Tokyo 162-8433, JAPAN
E-mail:ditr2@jica.go.jp

書評が出ました:湖中真哉・太田 至・孫 暁剛 編『地域研究からみた人道支援 ―アフリカ遊牧民の現場から問い直す』

今年の3月に出版された「湖中真哉・太田 至・孫 暁剛 編『地域研究からみた人道支援 ―アフリカ遊牧民の現場から問い直す』」の書評のPDFがHPに掲載され読めるようになりました。書評の部分だけはこちらでも読めます。→ 書評.pdf

評者は
玉置泰明先生(静岡県立大学)です。書評の中で、私と本村美紀さんが書いたエチオピアにおけるJICAの取り組みについて次のように書いていただきました。


「ソーシャル・ キャピタルは、近年日本を 含めてその重要性が認識されてきてはいるが、お金・物資や技術でない 
ソーシャル・ キャピタル強化のプロジェクトが 「人道支援」になるという発想は今までほとんど 見られなかったのではないか。」

ありがとうございます。

この本は今年、国際開発学会・特別賞と
地域研究コンソーシアム賞 研究作品賞を受賞しました。


国際開発研究の最新号の全文が読めるようになりました

『国際開発研究』の最新号について特集だけではなく、それ以外のペーパーも読めるようになりました。こちらです。

ちなみに今回はJICAに職員および専門員として在籍したことのある方の論文が多い(澤村信英先生、内海成治先生、黒澤啓先生、小林尚行先生、升本潔先生、伏見勝利・JICA次長)。

実務と研究が徐々に近づいてきているように感じる。

JICA研究所カイゼン・セミナーを終えて

昨日はクリスマスにもかかわらず100名を超える方にJICA研究所でのカイゼン・セミナーにお越しいただきました。会場がこの日しか確保できず、集客の懸念から当初は開催が危ぶまれた中でこんなにも多くの方にお越しいただき、本当にありがたかったです(詳しいセミナーの報告はまた掲載したいと思います)。

今回のセミナーはもともとは国際開発学会の企画セッションとして企画したのですが、パネルの先生方の予定があわず、JICA研究所でのセミナーになったものです。忙しい中で予定を調整していただいた先生方(細野昭雄先生、柳原透先生、佐藤寛先生、大野泉先生、山田肖子先生、児玉彰彦さん)に大感謝です。

また、JICA研究所企画課の山口課長、坂巻絵吏子さんをはじめとする皆さんにも国際開発学会との共催という形でご協力いただき、本当に感謝です。

『国際開発研究』での特集号の企画が決まってからほぼ1年。1人で編者をするのは初めてだったので迷うことも多く、色々な方々に助けていただきました。国際開発学会の学会誌編集委員長の澤村信英先生、事務局長の池上寬先生のお力添えがなければここまで企画を持ってこれなかったと思います。改めて深謝いたします。

最後に会場でお手伝いをしてくれた明治大学の3年生と1年生の島田ゼミ生、ありがとう!

国際開発研究(国際開発学会)カイゼン特集号を全文読んでいただけるようになりました

編者としてとりまとめていた特集号論文の全てがこちらから読んでいただけるようになりました。

【特集号の論文は以下の7本です】

  • (巻頭)国際開発におけるカイゼン研究の到達点と今後の課題 ― 学際的アプローチからの政策的インプリケーションの検討(島田剛・明治大学)

1, 現在の産業分野のカイゼン支援からの研究

  • 「産業政策とカイゼン: エチオピアにおける実践と産業政策対話の経験から」(大野泉・政策研究大学院大学(GRIPS/JICA研究所)
  • 「カイゼンと学習:「質の高い成長」の視座から」(細野昭雄・JICA研究所)
  • 「JICAのカイゼン支援の『これまで』と『これから』」(児玉顕彦・JICA)

2. 職業訓練の視点からの研究

  • 「非認知的能力が職能に及ぼす影響: エチオピア縫製業労働者に見るカイゼン教育の効果」(山田肖子・名古屋大学、クリスチャン・S・オチア・名古屋大学)

3. 歴史的アプローチからの研究

  • 「生産性向上のアメリカ対日援助の戦略と労働組合、アジアへの展開: 被援助国としての日本の経験」(島田剛・明治大学)
  • 「生産性/品質向上支援体制の形成と展開―日本・シンガポール・チュニジア―」(柳原透・拓植大学、黒田和光・日本生産性本部、菊池 剛・日本開発サービス)

なお、12/25にJICA研究所✖︎国際開発学会でカイゼン・セミナーを行います。ぜひお越し下さい(詳細と申し込みはこちら↓)
https://www.jica.go.jp/jica-ri/…/news/event/20181225_01.html

社会イノーベーションの本が有斐閣から明日、出版になります

私も1章を書かせていただいた松岡俊二(編)「社会イノベーションと地域の持続性」(有斐閣)が明日(12/12)発売になります。

私の章では次の点を議論。① 社会イノベーションと私的イノベーションはどう違うか?② 社会イノベーションが生まれる地域とそうでない地域がなぜあるのか② もし絆の強さがその違いを生む原因だとすると、田舎は絆が強いことが多いがうまくいく地域ばかりではない。では成功した地域の要因は何か?

人間の安全保障学会(広島)

週末は広島で人間の安全保障学会。大島賢三・元国連大使の基調講演。国連代表部でご一緒した2年半の間の話は、いろいろ思い出すことも多くすごい迫力。

今回の学会での最大の収穫は武者小路公秀先生と人間の安全保障についてじっくり話をできたこと。自分の理解が浅かったことがよく分かった。ここから深めて何らかの形で纏めていきたい。

人間の安全保障学会(12/8-9、広島市立大学)のプログラムが発表に


人間の安全保障学会(12/8-9、広島市立大学)のプログラムが発表になりました。とっても充実した内容です。

ニューヨークの国連代表部とJICAでお世話になった大島賢三・元大使も講演に来られるとのこと。大島・元大使には原子力規制委員会の時代にもシンポに来ていただくなどお世話になり、お会いできるのが楽しみです(私は2日目のセッションに出ます)。

The program of the JAHSS (Japan Association of Human Security Studies) was announced. The program includes many interesting session including a seminar by Kenzo Oshima, former Ambassador to the U.N.
- Dec. 8-9, 2018
- Hiroshima City University 


【JICA研究所×国際開発学会】「国際開発におけるカイゼン研究の到達点と今後の課題 — 学際的アプローチからの政策的インプリケーションの検討」

「国際開発研究」のカイゼン特集号の発刊記念のセミナーを12/25に行います。 ぜひご参加ください。教育や生活改善、歴史など普段とは違う視点からカイゼンを検討するものです。

(以下、詳細)

「国際開発におけるカイゼン研究の到達点と今後の課題 — 学際的アプローチからの政策的インプリケーションの検討」セミナー
12/25(火) 14:00-16:00  JICA研究所

来年(2019年)はエチオピアで国際協力機構(JICA)によるアフリカでは初のカイゼン・プロジェクトが開始されて10年目に当たります。この10年、国際開発におけるカイゼン研究は日本国内のみならず海外でも盛んになってきています。そうした研究は主に次の3つの方向から研究がされてきています。その3つとは、①エチオピアのカイゼン・プロジェクトから盛んになった一連の事例研究、②計量経済学的なインパクト研究(RCT(ランダム化比較試験)などによる)、③産業政策論からのカイゼン研究、です。


しかしながら、途上国開発でカイゼンは企業支援のみの文脈で行われているわけではなく、職業訓練、保健医療(「きれいな病院」など)、生活改善、労働者保護といった分野でも導入されてきています。これらの協力に共通するのは「現場」において成果を上げてきているという実績です(定量的なインパクト評価でも実証されつつあります)。

これまで、カイゼンについての研究が積み上がってくる中で、これら国際開発におけるさまざまな分野におけるカイゼンの取り組みを横断的に議論されることはあまりありませんでした。そのため「国際開発研究」11月号ではカイゼンを特集テーマとし、学際的なアプローチからカイゼンの可能性と今後の課題を学際的に検討しています。本セミナーは、この特集号で掲載された各論文を紹介し、その上で対話を通じて政策的なインプリケーションを導くことを目的としています。

プログラム

あいさつ   
JICA研究所 研究所長 大野泉
国際開発学会 元会長 佐藤寛

趣旨説明  
「カイゼン研究の到達点と今後の課題 — 学際的アプローチからの政策的インプリケーション」
島田剛(明治大学、モデレーター)

(セッション1)現在のカイゼン支援から(各10分)
・JICAのカイゼン支援の「これまで」と「これから」
 児玉顕彦(JICA産業開発・公共政策部)
・産業政策とカイゼン: エチオピアにおける実践と産業政策対話の経験から
 大野泉(政策研究大学院大学/JICA研究所)
・カイゼンと学習:「質の高い成長」の視座から
 細野昭雄(JICA研究所)

(セッション2)教育および社会開発の視点から(各10分)
・非認知的能力が職能に及ぼす影響—エチオピア縫製業労働者に見るカイゼン教育の効果
 山田肖子(名古屋大学)
・生活改善の視点から(生活改善とTQCの関係は、サクランボとチェリーか?)
 佐藤寛(アジア経済研究所)

(セッション3)カイゼンの歴史的検討(各10分)
・生産性向上のアメリカ対日援助の戦略と労働組合、アジアへの展開 - 被援助国としての日本の経験  
 島田剛(明治大学)
・生産性/品質向上支援体制の形成・展開過程:日本・シンガポール・チュニジア
 柳原透(拓殖大学)

パネルディスカッション(10 分)

質疑応答(15分)

申し込みはJICAのHPからお願いいたします。

世界的な不平等に何が起きているか What is happening with global inequality?

世界の不平等度を表した「象カーブ」で有名なBranko Milanovicが2013年のデーターまでアップデートした結果をリンク先で公表。

2つの異なるメッセージ:
(1)世界的に平均(メディアン)所得は上がり、不平等度下がっている(ジニ係数が下がった)
(2)が、トップ1%のシェアも上昇し分極化傾向がさらに強まっている。

ちなみにMilanovic先生は覚えていないだろうけれど、数年前、NYで共通の友人宅にお呼ばれした際の帰り道、セントラル・パークを2人で歩きながらお話したことがあります。資本主義のあり方についてなどとても刺激を受けました。

Global inequality update by Branko Milanovic upto 2013. Mixed picture. Median income increased and inequality decreased (Gini down), but more polarization (top 1% share rising).

新しいペーパー(JICA研究所)が出ました「戦後アメリカの生産性向上・対日援助における 日本の被援助国としての経験は何か-民主化・労働運動支援・アジアへの展開」

途上国におけるカイゼン の取り組みにも関係する、新しいペーパーがJICA研究所の日本の開発協力の歴史 バックグラウンドペーパー No.2として出ました。

「戦後アメリカの生産性向上・対日援助における 日本の被援助国としての経験は何か - 民主化・労働運動支援・アジアへの展開」
こちらからダウンロードできます→ 
background_paper_No2.pdf


(要約)
1960 年代のアジアへ の展開をはじめる時期までを振り返ったものである。この時期は終戦から、援助を日本が受けていた被援 助国の時代を経て、日本が援助をアジアに展開していった時代である。本ペーパーが目的とするところは、 日本が被援助国であったときにどのようにアメリカの生産性向上支援を受容していたかを検証し、被援助国 としての経験がどのようなものであったかを導き出すことである。 その経験の特質は、第1に、アメリカの生産性向上・対日援助は東西冷戦の中で極めて戦略的な位置づ けの中で行われたものであったことであり、7 年間で 3,986 名の研修員を受け入れるなど極めておおきな規 模で実施されていた点である。第2に、日本において労使関係はもともと対立的であったが、援助を受け入 れていく中で協調的な労使関係に変化していったことである。つまり、協調的な労使関係は生産性向上に 取り組む中でむしろ作り上げられてきたのである。そして、第3に、アメリカ・対日援助の受け入れに当たっ て、日本では政府ではなく民間セクター(とくに経済同友会)が援助の受け入れに中心的な役割を果たした ことである。むしろ政府は活発な民間の動きを補助的に支える役割を担ったのであり、これは理想的な産業 政策のあり方であったと言える。援助受け入れに当たって予算の半分(半年で 1 億 800 万円-1 億 3200 万 円)は日本が負担し、しかも政府ではなく大部分を民間が負担したのである。つまり、民間のコミットメントが 高かったと言える。アメリカの援助規模はおおきかったにもかかわらず、現在の日本国内では生産性向上 について被援助国であったという認識はあまり持たれていない。それだけ日本においては生産性向上を政 府、企業、労働者ともそれぞれが自らのものとして受容していったためと考えられる。 

キーワード: カイゼン、生産性、対日援助、民間セクター開発、産業政策



Journal of Human Security Studiesの最新号が発刊

編集委員をしているJournal of Human Security Studiesの最新号がアップされました(人間の安全保障学会)。今回はEveryday Life and Riskという特集号です。ぜひご覧ください。

A special issue of the journal of human security studies has just published. The theme is on everyday life and risk. Available on line. 


https://docs.wixstatic.com/ugd/3b5c68_91e61b32f9e749b5a1c1fff0b7f69ddf.pdf

林文夫先生の「論文の書き方」

林文夫先生の「論文の書き方について」がとっても面白い。

イントロが命。なぜか。
1. レフェリーはあなたが優秀であることを知らない。
2. レフェリーはイントロは読む。イントロを一読して何を言っているかわからなければ、reject する理由を探し始める。
3. レフェリーは、仮に本体を読んでくれたとしても、必ず誤解すると想定したほうが 良い。誤解を防ぐには、イントロで論文の内容を誤解のないように要約する、などなど。
一方で、「編者・レフェリーは あなたが知らないことはすぐわかる。シロウトは desk-reject される」とも。耳が痛い・・・。

リンクはここから。



ゼミ紹介ビデオが完成

ゼミ生募集用のビデオが完成。学部のHPに1年前には掲載しないといけなかったのですが、動画を作るのが初めてで学生たちの力を借りてなんとか完成にこぎつけました。


1-3年生合同ゼミ合宿

1−3年生合同でのゼミ合宿を明治大学の山中セミナーハウスでおこないました。今回は各自の研究発表を聞きつつ、その研究発表から特にTICADに向けた提言を作るワークショップをみんなでやりました。

























研究発表を聞きながら、アフリカ開発のあり方をKJ法をつかって考えをまとめていく。
ふだんは別々なキャンパスにいる3年生と1、2年生が一緒になって議論。二日間の合宿の終わりにはセミナーハウスの庭でバーベキューをしました。ふだんは見えないそれぞれの側面が見えてとても面白く、充実した合宿でした。







































いかにして英文雑誌に論文を掲載するか

大塚啓二郎先生の「いかにして英文雑誌に論文を掲載するか」。これまで色々な機会に大塚先生から教わってきたことがまとめて書かれていてとても参考になります。

リンク先から全文読むことができます。若手研究者はもちろんのことでなく、学生にもオススメです。

特に「壁にぶつかったら幸運だ」という言葉に励まされます。ここのところジャーナル査読コメントに対する対応で消耗しており、昨日もデータとにらめっこで徹夜になってしまったので。

マンチェスター大学のGDI (Global Development Institute)の60周年の動画

マンチェスター大学のGDI (Global Development Institute)の60周年の動画が出来たらしい。あまり期待せずに見たら、よく出来ていて驚いた。イギリスにおける開発学の歴史もよく分かる。


スティグリッツ先生との共同研究プロジェクトを開始したのもここからでした。

ノーベル経済学賞を受賞したアーサー・ルイスにちなんだ学部のビルが真新しくなっているのも驚き。昔のビルも産業革命を彷彿とさせて愛着がありましたが・・・。

それにしてもディヴィッド・ヒューム先生が20年前と全く変わらないのは本当に驚き。

地域研究からみた人道支援 - アフリカ遊牧民の現場から問い直す





2018年11月28日追記
その後、2018年度国際開発学会特別賞と
2018年度地域研究コンソーシアム賞をダブル受賞しました。また、国際開発研究の書評でも取り上げていただきました。


2018年8月14日追記
こちらの本について武内進一先生による書評が『アフリカレポート』に掲載されました。

私も一章を書かせていただいた「地域研究から見た人道支援 - アフリカ遊牧民の現場から問い直す」(昭和堂)が出版となりました。文化人類学の先生方に誘われて参加させていただいた研究会のものです。


担当したのは9章「レジリエントな社会の構築とソーシャル・キャピタル ー エチオピアの遊牧民・農牧民コミュニティにおける旱魃対策支援」。JICAの本村美紀さんとの共著。前にAfrican Study Monographsからでた英文の論文をベースに加筆した日本語版です。

編者は湖中真哉先生、太田至先生、孫暁剛先生。

序 章 人道支援におけるグローバルとローカルの接合――東アフリカ遊牧社会の現場から


第1部 支援の現場から人道支援を再考する――食料・物資・医療・教育


 第1章 食料援助からの脱却を目指して─―ケニア北部の遊牧民レンディーレの食料確保

 第2章 元遊牧民の多角的な生計戦略─―ウガンダの難民居住地における南スーダン難民の実践

 第3章 物質文化と配給生活物資の相補的関係―─東アフリカ遊牧社会における国内避難民のモノの世界

 第4章 武力に対抗する癒し―─ウガンダ・ナイル系遊牧民の多文化医療

 第5章 科学知と在来知の協働―─エチオピア・オロモ系遊牧民の民族獣医学的実践

 第6章 教育難民化を考える―─カクマ難民キャンプにおける教育の状況と課題


第2部 政治的・文化的・社会的文脈のなかで人道支援を再考する


 第7章 難民開発援助の可能性と限界─―ウガンダにおける生計支援の事例から

 第8章 ベイシック・ヒューマン・ニーズとしての文化遺産―─ソマリランドの生活文化と考古学的発見

 第9章 レジリエントな社会の構築とソーシャル・キャピタル

       ―─エチオピアの遊牧民・農牧民コミュニティにおける旱魃対策支援

 第10章 紛争後の農業再構築―─アンゴラの農耕民がとった新生活戦略

 第11章 困難に直面する森の民―─アフリカ熱帯林の狩猟採集民の人道危機

 第12章 人道支援を遊牧的にローカライズする―─遊牧社会の脈絡で再定義する試み


終 章 新しい人道支援モデルに向けて――東アフリカ遊牧社会の現場から

サブサハラ・アフリカの産業開発に向けたセミナー(報告)

【African industrial development strategy workshop held at GRIPS】
サブサハラ・アフリカの産業開発に向けたセミナー(GRIPS/JICA研究所共催)の報告がJICA研究所HPGRIPSのHPに掲載されました。

当日は、大塚啓二郎先生の基調講演に続いて田中明彦GRIPS学長(元JICA理事長)、加藤宏JICA理事と園部哲史先生とのパネルに私も出させていただきました。

JICA研究所HPではパネルディスカッションの内容なども詳しくまとめられており、私が話をした経済同友会が戦後のカイゼン導入に果たした役割などについても触れられています。

田中学長と加藤理事とも元上司。HPの写真も余裕の表情の皆さんの中で私だけかなり緊張気味で表情がカタイですが・・・????

ここで議論したのはTIF戦略というもの。これについては「新しい開発経済学の可能性(その2)- TIF戦略」という記事で紹介しているのでご覧ください。なお、この前に「新しい開発経済学の可能性(その1)」でも紹介しています。

ニューヨークでの国連サマースクールについて(ニュースクール大学)

【UN Summer Study at the New School in the city of New York】

日本に滞在中の福田パー・咲子先生(元UNDP人間開発報告書室長)とランチをした際に、先生が教鞭を取られているニュースクール大学の国連サマーコース(UN Summer Study)について教えていただきました。今年のプログラムはすでに終了していますが、国連でのキャリアを考える人にはとても良さそうです。今後に向けて興味ある方は見てみると参考になると思います。修士が中心ですが、学部生も受け入れてもらえる可能性もあるようです(来年どうなるかはまだ未定のようです)。

ニュースクールは私もニューヨーク時代に何度も打ち合わせで足を運んだことがある懐かしい場所。コロンビア大学とはまた異なる雰囲気で、ヴィレッジのニューヨークらしい雰囲気の中の大学。ハンナ・アーレントがいたことで知られていますが、開発経済学でも構造主義者として一世を風靡したランス・テーラー先生がいることで有名。
#NewSchool

アフリカにおけるコミュニティ・ベースド・ツーリズムとは何か? ーゼミ生によるJICA本部インタビュー#2

昨日はJICA本部を明治大学のゼミで訪問(静岡県立大学の学生も1名参加)。「アフリカにおけるコミュニティ・ベースド・ツーリズムとは何か」についてJICAの産業開発部・公共政策部の浦野義人氏よりお話をお伺いしました。


            
       JICA産業開発・公共政策部 浦野義人 氏


最近、「観光開発」は学生のテーマとして人気です(カイゼンなどの産業開発よりも圧倒的に観光開発をテーマに選ぶ学生が多い印象があります。カイゼンにも関心を持ってもらいたいのですが・・・)。日本国内の地方創生という側面から取り組む学生、途上国の貧困解決という観点から取り組む学生など様々です。やはり敏感に世の中の新しい動向に反応しているのだなと感じさせられます。

そうしたことから観光開発についてお話をお伺いするならこの人、と前からずっと考えていた浦野さんに今回はお話をお伺いすることができました(かつてJICAの貿易・投資・観光課で一緒にお仕事をさせていただいたことがあり、その当時からコミュニティにためになる観光開発とは何かについて教わっていました)。

今日のお話ではボツワナでの青年海外協力隊時代に直面した課題からお話を始めていただきました(浦野さんは国内での遺跡発掘調査の仕事を辞めて参加)ボツワナでは「文化遺産保護」に取り組まれましが、地域住民との意識のギャップという矛盾があったそうです。当初、地域の住民から文化遺産を保護する(文化遺産を消失することから守る)ことの大切さの理解を得ることがなかなか難しく、そうした状況を改善するために「観光開発」を取り入れることを始めたそうです。その結果、徐々に観光開発の効果が出て、文化遺産保護が観光による収入向上につながるようになり(生活が改善)、住民も文化財も保護するようになるという良いサイクルに向かうことができたとのことでした。つまりコミュニティが重要だということです。



さらに、その上で①「観光客数を増やす」=「観光収入が増える」ということではないこと、②JICAでは自然への負荷を考慮してCarrying capacity(観光客数受け入れ)の上限と下限を設定して観光開発をするという新しい取り組みをしていること、③南部アフリカの観光の可能性など、ここでは全てを紹介することはできませんが学生の関心に沿った具体事例を多くご紹介いただきました(ちなみにCarrying capacityの上限は観光による負荷の許容量、逆に下限は自然保護に必要な収入を確保するための最低ライン)。



学生からは「観光における女性の役割は何か」「何が持続的な観光開発の鍵などか」「ブルンジの観光開発の可能性」「竹富島の事例と途上国の比較」「シミエン国立公園プロジェクトの地域住民へのインパクト」など質問が止むことなく矢継ぎ早に続き19時終了予定のインタビューは20時すぎまで続きました。

長い時間を取っていただいた上に様々な調整もしていただいた浦野さんに感謝です。私にとっても勉強になりました。JICAを出てから市ヶ谷駅まで歩く間、学生たちも一生懸命得た情報を消化しようとしているようでした。充実した時間でした。

ちなみに今回の訪問では明治大学OB、静岡県立大学OBのJICA職員とも挨拶をさせていただきました。明治大学OBは産業開発・公共政策部
次長の富田洋行さん、ハーバード大学での海外長期研修から帰国されたばかりの評価部の横井博行さん。静岡県立大学OBは総務部審議役の福田茂樹さん。それぞれ、分刻みの会議の合間などを縫って学生のためにお時間を取っていただきました。本当にありがとうございます。今後も色々とアドバイスなどをいただければと思っています。


産業開発・公共政策部次長の富田洋行さん(左から3人目)、ハーバード大学での
海外長期研修から帰国されたばかりの評価部の横井博行さん
(左から4人目)を囲んで


  総務部審議役の福田茂樹さんとともに

(3年生ゼミは「
アフリカへの援助はどうあるべきか?ー 2019年日本で行われる第7回アフリカ開発会議(TICAD VII)への政策提言を考える」をテーマに勉強を始めています。詳しくはコチラ


責任ある旅行者になるために(Responsible Tourism)(ゼミ生による国連世界観光機関(UNWTO)訪問)

昨日はゼミでJICAを訪問し、国連世界観光機関(UNWTO: United Nations World Tourism Organization)駐日事務所の鈴木宏子・代表補佐・国際部長とアリアナ・ルキン・サンチェス事業・広報部課長にお時間をいただきUNWTOについてのご説明をいただきました。



UNWTOの概要から、誰もが参加できる「持続可能」で「責任ある観光(Responsible Tourism)」を実現するための国連の専門機関であるという概要の説明からSDGs(持続可能な開発目標)との関わりまで幅広くお話をいただきました。

学生達も途上国における観光の状況を知るのにUNWTOの統計を見ることが多く、そうした中でUNWTOの方からお話をお聞きすることができてとても良い機会になりました。

今回は急なお願いにも関わらず時間を調整いただき、お時間をいただけて本当に感謝です。観光開発に関心を持つ学生が増えてきており、長期的にUNWTOと関係を構築できていければと思っています。

学生の人たちは夏休みに海外旅行をする人も多いと思います。ぜひ「責任ある旅行者になるためのヒント」に目を通すことをお勧めします。






ワークショップ『Africa and Japan "The Training-Infrastructure-Finance (TIF) Strategy: How Japan Helps Industrial Development in Africa" 』

7月23日(月)18:20 - 19:30に政策研究大学院大学において『Japan and Africa」と題するワークショップをすることになりました。ぜひご参加下さい。申し込みはリンク先からお願いします。
https://www.jica.go.jp/jica-ri/ja/news/event/20180723_01.html

(GRIPSの案内文より)
平素よりお世話になっております。

この度、サブサハラ・アフリカにおける産業開発の戦略について議論するため、ワークショップ『Africa and Japan: The Training-Infrastructure-Finance (TIF) Strategy: How Japan Helps Industrial Development in Africa』をGRIPSとJICAで共催することになりました。ご参加をご検討いただければ幸いです。

われわれの考えている戦略の骨子は、Training (人材育成)→Infrastructure(社会資本)→Finance(金融支援)という順序を念頭に置いて援助をデザインするべきであり、同時にFDI(直接投資)の促進が必要であるというものです。これをTIF戦略と呼んでいます。順序を念頭に置くというのが、どういう意味か、なぜそうなのか等について説明が必要ですが、お聞きいただければ、まったく常識的な議論であることがお分かりになると思います。しかし、この常識の理解が海外でも国内でも必ずしも正確でないために、政策の立案・実施に混乱が生じているという懸念があります。

1月にJICA研究所で同様の趣旨のセミナーを実施して、コメントをいただきました。その後、海外からのコメントもあり、それらを取り入れて内容を改めました。今回はアフリカ各国の大使・大使館関係者をお招きして、さらに議論を深めたいと存じます。

TIF戦略のペーパーは全文(1月のセミナー以前のものですが)は、こちらからダウンロードできます。


GRIPSに入館するには登録が必要になります(リンク先のJICA研究所HPに応募フォームへのボタンがあります)。
https://www.jica.go.jp/jica-ri/ja/news/event/20180723_01.html

また上記フォームにリンクしない場合は、tif@grips.ac.jp にメールをいただくか、もしくはfax:03-6439-6020にご参加の旨お知らせいただくようお願いします。なお、会場が狭いため、先着40名までの登録とさせていただきます。

日時:2018年7月23日(月)18:20 - 19:30
場所:政策研究大学院大学 1F、会議室1AB

議事次第
開会の挨拶 園部哲史 GRIPS副学長

基調講演 
大塚啓二郎 神戸大学教授

パネルディスカッション
大塚啓二郎 神戸大学教授
田中明彦 GRIPS学長/JICA研究所特別招聘研究員
加藤宏 JICA理事
大島賢三 アフリカ協会理事長 (元国連大使)
島田剛 明治大学准教授/JICA研究所招聘研究員

質疑応答
(英語で行い、通訳はありません。)


どうして成長に成功するアフリカと成長しないアフリカがあるのか(ゼミ生によるJICA本部訪問#1)

今日は3年生のゼミ生がJICA本部を訪問しお話をお伺いしインタビューさせていただきました(3年生ゼミは「アフリカへの援助はどうあるべきか?ー 2019年日本で行われる第7回アフリカ開発会議(TICAD VII)への政策提言を考える」をテーマに勉強を始めています。詳しくはコチラ

お話をお聞きしたのは吉澤啓アフリカ部参事役と
榊将乃介・南アジア部調査役(最近、アフリカ部から異動されたとのこと)。

吉澤さんからは「TICAD VI(第6回アフリカ開発会議)の概要とフォローアップ」についてお話いただきました。TICADの初期から関わってこられた経験をベースに様々なTICADの取り組みを紹介いただき、さらにオーナーシップやアフリカとのビジネス促進、経済成長という課題について熱く語っていただきました(長い経験からくる、強い思いの伝わってくるお話でした。

      



     














     資料を元に説明いただく吉澤啓JICAアフリカ部参事役



榊さんからは
「ブルンジ・ルワンダでのJICAの活動」と題して、特に学生の関心が高いルワンダ・ブルンジでのJICA協力の話をお聞きしました。単にJICA協力の紹介にとどまらず、鳥の目(アフリカの中での両国の位置づけ)、虫の目(両国の国の形)の二つの視点から学生達の関心にあわせてお話いただきました。
















       
       学生からの質問に答えられる榊JICA南アジア部調査役


お二人の話に対し学生から出された質問は「ルワンダとブルンジのように、どうして成長に成功するアフリカと、成長しないアフリカあるのか、その要因は何か」、
「日本とのビジネスとの関係でどのようなセクターが可能性があるのか」、「アフリカにおける現在の課題は何か」、「人口問題、ジェンダー」など。話はガバナンス、治安、ドローンなどによる新しい開発、農業の生産性、女子教育など多岐にわたりました(私にとってもとても勉強になりました)。

19時終了予定のところが、19時半過ぎまで吉澤さんと榊さんにはお付き合いいただいてしまいました。さらに最後にルワンダ・ナッツとルワンダ・コーヒーのお土産までも各学生にいただいてしまいました。お心遣いがありがたく本当に感謝です。


             
                   熱心にメモを取る学生達

JICAを出て駅に向かう途中で学生の反応を聞いてみたところ、とても楽しかったとの反応。こういう反応はとても嬉しい。今回が第一回、今後も続けて行きたいと思います。JICAから出た途端に急に空腹を感じた学生もいたようで、やはり
緊張していたようです。



                          講師のお二人を囲んで


















ゼミのJICA地球ひろば訪問

南アフリカから帰った翌日は土曜日。ゼミでJICA地球ひろばのあるJICA市ヶ谷を訪問しました

JICA市ヶ谷にはJICA研究所があるので、普段からよく行きますが学生を連れて行くのは今回が初めて。地球ひろばも中に入るのは久しぶり。J's Cafeで腹ごしらえをしてから最初は地球ひろばを見学。昔よりもかなり展示が充実しているのが印象的。小学生から社会人まで幅広い年齢層に見てもらえるよう様々な工夫がされていました。



       

展示を見た後は、地球ひろばの宍倉有加里さんからお話をお聞きしました。宍倉さんはエチオピアに派遣されていた青年海外協力隊員OG。職種は数学教育だったとのことで首都アジスアベバの学校での活動についてお話をお伺いしました。

掛け算ができない中学生にどうやって数学を教えるか、同い年ぐらいのエチオピア人の同僚教師にどうやってアドバイスをするか、どうやって活動を点から面にするか(一つの学校から、横展開するか)など、国際協力をする際に直面する課題をユーモアを交えながら分かりやすくお話しいただきました(私自身も勉強になりました)。

10年ほど前、カイゼンをエチオピアで始めるために故メレス首相と産業政策対話で大野健一・泉先生(GRIPS)などと少人数での議論をしていた際、どこかのタイミングでメレス首相が言及し始めたの
理数科教育の充実の必要性でした(あまりにも急にアイデアが出て来て驚いたので、その瞬間を今でも鮮明に覚えています)。私は担当部ではありませんでしたがそれを受けて、JICAは理数科教育の活動を強化していったのですが、宍倉さんの活動もそうした延長線上にあるのだろうなと感慨深く聴き入ってしまいました(南アフリカの会合ではカイゼン活動の充実ぶりを、今日は宍倉さんから数学教育の取り組みを聞き、今週はちょっとしたエチオピア・ウィークでした)。

終了後も学生達はJICAのパンフや、国際協力キャリアガイドに見入ったり、J's Cafe のフェアトレード用品を見たりそれぞれ。今後のキャリアについて考えが深まったのではないかと思っています。これからが楽しみです。

今回の訪問にあたっては担当していただいた宍倉さんにとてもお世話になりました。また、受け入れ調整の段階では私がJICAの新人職員だった頃、青年海外協力隊事務局で仕事を教えていただいた菅原富美
さんにも本当に久しぶりにお会いできるなど嬉しい再会もありました。また学生を連れて訪問したいと思います。

















 


南アでのアフリカ・カイゼン年次会合

Africa Kaizen Annual Conference 2018

南アでの第3回アフリカ・カイゼン年次会合から帰ってきました。3年連続で参加していますが年々プログラムが充実し、議論の中身も深化してきていると思います(GRIPSの園部晢史副学長とご一緒させていただきました)。正確な数字は分かりませんが今回は参加者約150名、19カ国からと多く(自費負担で来られた熱心な人達もいたそうです)、世界銀行やUNIDOといった国際機関も多く参加したのが特徴。研究者もケーブタウン大学や、ガーナ大学などから参加がありました。

                     分科会で議論中

                                                      
私は1日目に
東工大の長田洋・名誉教授、ケープタウン大学のNorman Faull教授(リーン研究所所長)、世界銀行リードエコノミストのGabriel Goddar氏、南アフリカ生産性機構CEOMothunye Mothiba氏とパネルディスカッション(Kaizen and Improving Firm Capability for Innovation)をさせていただきました。アフリカにおけるカイゼンの役割について、マクロ経済や産業政策という観点や、イノベーション、リーン・マネジメント、さらには労働者の観点まで幅広い議論ができて個人的にはとても勉強になるセッションでした。


分科会では、25%以上と失業率が高い南アフリカらしく労働者や労働組合の役割についても議論が出てしました。先日の国際開発学会で私も日本の歴史を元にほぼ同じテーマで発表していたので、とても興味深い議論でした(
「戦後アメリカの生産性向上の対日援助 — その戦略と労働組合、被援助国から援助国への転換点で」)。まさに今後、アフリカが経済成長をしつつ格差を縮小し、若者への雇用を作り出すのに必要なのがカイゼンだと改めて感じさせられました。


また、JICA研究所でやっているGDNとのカイゼンの本の出版についても紹介するセッションをさせていただき、ガーナ大学からの研究チームが分析結果を紹介。短い時間でしたがなかなかインパクトの高い発表だったと思います。


今回はいくつかのチームに別れて南ア・トヨタの工場を見学させていただきました(写真は私たちのチームでトヨタ紡織(株)を訪問させていただいた際の写真です)。やはりトヨタの工場(しかも日本ではなく、アフリカの)を見学できたことはアフリカからの参加者に強い印象を残したようです。各工場で随分と熱心に質問をしていました(質問が多くて先になかなか進めないほど)。私にとっても日本と南アのトヨタの工場を比較できてとても勉強になりました。

  INONOは南アの5S















   工場見学をした会社での写真INONOは南アの5S
 (整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)の意味らしい

今回の会議は運営側の負担はかなり大きかったと思
いますが、すごくスムーズな会議運営でした。今後の展開が楽しみです。

       
 















   
会場に置かれた今回の会議の共催者のバナー、NEPAD、JICAとPAPA


                   会議の参加者の集合写真

ケニアでのRCTによるODAプロジェクトのインパクト評価

ケニアで実施しているJICA研究所での研究がIPA (Innovation for Poverty Action)のHPで紹介されました。IPAはインパクト評価で有名なJ-PALの関連研究機関の一つです。研究のデザインなどがまとめられておりますのでご覧いただければ幸いです。

案件:ケニアSHEP(市場志向型農業振興)プロジェクト
手法:RCT(無作為化比較試験)

マイケル・サンデルの「それをお金で買いますか」のビデオ版が公開されています

マイケル・サンデルの「それをお金で買いますか」の動画が公開されています。現在、エピソード3まで(英語のみ。字幕なし)。

「腎臓を市場で売れるべきか」、「外見で雇用するしないを決めて良いか」、「難民受け入れを市場で決めて良いか」など。市場の役割と倫理の関係について考えさせられます。本の方は授業のネタとしても使っていますが、今回のビデオ版ではマンキューやスティグリッツなど多くの経済学者も出てきて、見方の違いが良く出て興味深い。

エピソード1:外見で雇用するしないを決めて良いか?




エピソード2:腎臓を市場で売れるべきか?




エピソード3:難民受け入れを市場で決めて良いか?



エピソード 5: 投票率を上げるためにお金を払うべきか?



エピソード 6: 人の死から儲けても良いか?

世界開発報告書2019(WDR)コンサルテーション

先週は世界銀行・東京事務所で世界開発報告2019(WDR)のドラフト案についてシメオン・ジャンコフWDR2019執筆担当局長との意見交換に出席させていただきました。テーマは「The Changing Nature of Work」。AIやロボットという問題も取扱った意欲的な報告書。人的資本指標(Human Capital Index)という新しい指標の提案も

今回の報告書の作り方は面白くて、毎週金曜日午後5時(ワシントン時間)に最新の
ドラフトがリンク先のサイトに公表され、質問やコメントがメールでもできるというシステム。

http://www.worldbank.org/en/publication/wdr2019#1

こうした方法で広くコメントする機会があるというのはこれまでになく、初めての取り組みで面白い。また、今年はILOが100周年でFuture of Workという報告書をつくっており、世銀とILOが同じテーマでどのような世界観をお互いに提示するのか(どこが同じでどこが違うのか)、とても興味があります。

カイゼン導入は 労働者にどんな影響を与えるか?

カイゼン導入は 労働者にどんな影響を与えるか?」という園部哲史先生との共著論文がJICA研究所ワーキングペーパーとして刊行されました。中米・カリブ海地域のプロジェクトに基づく実証研究です。ずいぶんと時間がかかってしまいましたがようやくWP発行まで来ました(ジャーナルはこれからです)。データー収集から刊行まで実に多くの方にお世話になりました。本当にありがとうございました。論文はこちらで読んでいただけます。



(論文の要約)
近年、開発途上国の産業発展へのアプローチとしてのカイゼンの役割に新たな関心が向けられている。これまでのいくつかの研究では、カイゼン導入が経営のあり方やビジネス・パフォーマンスに与える影響を評価されてきたが、労働条件、賃金、雇用などへのインパクトを評価する研究はほとんど行われていない。

本研究はJICAの「中小企業の品質・生産性向上に係るファシリテーター能力向上プロジェクト(中米・カリブ広域)」(2009年~2013年)にかかわった企業(94社)を対象に経営陣と従業員双方から聞き取り調査を行い、比較群の企業(182社)と比較を行いプロジェクトの効果を傾向スコアマッチング手法によって分析したものである。

分析の結果、カイゼンの導入が労働条件を改善し、労働者の間の信頼(社会関係資本)を強化することが確認された。また、カイゼンの研修の後、経営者の研修に対する支払い意思額(WTP)が高まったことも確認されたが、一方、経営者と労働者ではカイゼンの効果について異なった見方がされていることも分かった。これらの結果は、今後のカイゼン協力のあり方をさらに効果的にすることにつながると思われる。


ちなみに下の写真はペットボトルを半分に割って作られた部品置き場です。エチオピアの会社でのカイゼンの取り組みの一つ。



JICA・SHEP(市場志向型小規模園芸農業推進)セミナー

先週は北島暖恵さん(マラウイのJICA・SHEP(市場志向型小規模園芸農業推進)プロジェクトのチーフ)に島田ゼミでお話いただきました。現地で工夫を重ねて来られたSHEPプロジェクトのお話は興味深いものでとても好評でした。忙しい一時帰国中の合間を縫ってゼミに来ていただいた北島さんには大感謝です。

今後、徐々に一般向けのセミナーなども企画していきたいと思っています。

SHEPプロジェクトについてはこちら↓
https://www.jica.go.jp/…/i…/agricul/approach/shep/index.html

Today my seminar had a special lecture by Ms. Harue Kitajima (Chief, JICA's SHEP (Market-Oriented Smallholder Horticulture Empowerment and Promotion)) project in Malawi. The story of the SHEP project was very interesting because it based on her experience in the field. I am very thankful to Ms. Kitajima who came to the seminar during her busy schedule in Japan.

国際開発学会:戦後アメリカの生産性向上の対日援助

今日は聖心女子大学で国際開発学会。かつてのJICA青年海外協力隊事務局の建物が聖心女子大学になり、本当に久しぶりに中に入りました。私にとってJICAの新人時代4年間を過ごした懐かしい場所です。当時の楽しい思い出(と共に苦しかった思い出も・・・)が詰まった建物に入り、とても感慨深いものがありました。昔の自分に出会うような感覚もあり、なんだか少し不思議な気持ちでした。

今回の学会での私の発表は「戦後アメリカの生産性向上の対日援助 — その戦略と労働組合、被援助国から援助国への転換点で」。ガリオア援助などはよく知られていますが、対日援助でも生産性向上支援はあまり知られていません。実はマーシャル・プランとも連動し、大規模かつ極めて戦略的なものでした。発表のスライドはこちらからご覧いただけます。

林薫先生(文教大学)、大野泉先生(GRIPS)、大森功一先生(世界銀行)やフロアからも参考になるコメントを多くいただき、収穫の多いセッションでした。これから論文にさらに手を入れていきたいと思います。



(以下は参考(論文の要約))
 本研究はアメリカによる生産性向上の対日援助に焦点をあて、戦後直後から1960年代のODA黎明期までを振り返ったものである。この時代は終戦後から、援助を日本が受けていた被援助国の時代と、援助国に転換していく時代である。本研究が目的とするところは、日本が被援助国であった時にどのようにアメリカの生産性向上支援を受容していたかを検証し、現在の日本のカイゼン支援と比較し、どのような特質があるのかを導き出すことである。

 その特質は、第1に、米国・対日援助の受け入れにあたって、日本では政府ではなく民間セクター(特に経済同友会)が援助の受け入れに中心的な役割を果たしたことである。むしろ政府は活発な民間の動きを補助的に支える役割を担ったのであり、これは理想的な産業政策の在り方であったと言える。援助受け入れに当たって予算の半分(半年で1億800-3200万円)は日本が負担し、しかも政府ではなく大部分を民間が負担したのである。つまり、民間のコミットメントが高かったと言える。

 第2に、アメリカの労働組合政策は日本の非軍事化・経済民主化の中で労働組合結成の奨励に始まり、東西冷戦の中で労働組合の西側陣営への取り込みへと代わり生産性向上プログラムの支援が行われるという戦略的な位置づけを持ったものであった。そうした中でこの援助が7年間で3,986名の研修員を受け入れるなど極めて大きな規模で実施されていた点である。

 そして、第3に、労使関係はもともと対立的であったが、援助を受け入れていく中で協調的な労使関係に変化していったことである。つまり、協調的な労使関係は日本においても生産性向上に取り組む中でむしろ作り上げてきたのである。ということは他国においても同様の取り組みは可能であるということを意味している。アメリカの援助規模は大きかったにもかかわらず、現在の日本では生産性向上について被援助国であったという認識はあまり国内では持たれていない。それだけ日本が生産性向上を自らのものとして受容していったためと考えられる。


キーワード: カイゼン、生産性、対日援助、民間セクター開発、産業政策

【専任教員・公募情報】明治大学・情報コミュニケーション学部(4ポスト)

【専任教員・公募情報】明治大学・情報コミュニケーション学部(4ポスト)

1)「情報社会と経済」 2)「情報と経済行動」「不確実性下の人間行動」 3)「情報社会と教育」 4) 言語学。詳しくは以下のHPをご覧ください。

http://www.meiji.ac.jp/infocom/office/6t5h7p00000rleir.html

バンコクでカイゼンの英文書籍・著者会合

5月18日追記 JICA研究所のHPでもこの会議が報告されました。ぜひご覧ください。

週末から昨日までバンコクでカイゼンのAuthor's work shop。とても充実
したものでした。GDN(Global Development Network)とJICA研究所の共同研究。カイゼンの英文書籍を出版する予定で、編者はJohn Page先生(ブルッキングス研究所)、細野昭雄先生(JICA研究所)と私。園部晢史先生(GRIPS)も参加いただきました。

ベトナム、ブラジル、フィリピン、ガーナの研究チームによる4本の論文と、JICA職員6名が5本の論文で合計9本のとっても質の高い論文が出てきました。

特にJICA職員の人たちは仕事を抱えながら海外の研究者に引けを取らない論文を書いてきて、本当に感心させられました(その大変さは身にしみて分かるので)。これからが楽しみ。

今回のタイ訪問ではタイ事務所の田中啓生所長や、ILOの敦賀一平さんなど懐かしいJICA研究所出身者ともお会いでき充実していました。お世話になった皆さんには改めてお礼を申し上げたいと思います。

Author's work shop in Bangkok, organized by the GDN (Global Development Network) and JICA Research Institute. The WS was held to publish a book on Kaizen. The co-editors are John Page (Brookings Institution), Akio Hosono (JICA-RI) and myself. Great papers were presented by participants from Vietnam, Brazil, Philippines, Ghana and Japan!

戦後アメリカの生産性向上の対日援助 — その戦略と労働組合、被援助国から援助国への転換点で

戦後アメリカの生産性向上の対日援助 — その戦略と労働組合、被援助国から援助国への転換点で


 6/2の国際開発学会(聖心女子大学)のプログラムが発表になりました。私も発表を行います。戦後アメリカの生産性向上の対日援助を取り上げて、その意味を問うです。なぜそんなテーマをやっているのだろうと思われるかもしれません。私も全くやるつもりはありませんでした。しかし、ひょんなことから史料に目を通し始めたらあまりにも驚くことが多く(長く援助実務に関わってきたのに、歴史を知らなかった自分にも驚きました)、昨年の夏から国立国会図書館に籠っていました。

 歴史を遡るようになったことが先の国際開発研究に書評として書いた「記憶のあり方、あるいは過去との向かい合い方」(下村恭民先生「タイの新しい地平を拓いた挑戦ー東部臨海開発計画とテクノクラート群像」)にも影響しています。


 歴史を遡る作業もかなり地味に手間のかかるものなので、この歴史の分野をどこまで力を入れてやるのか、こんなことをやっていて良いのかと迷っていますが・・・。


(発表とコメントの予定)
午後①12:30-14:30の援助セッション
「戦後アメリカの生産性向上の対日援助 — その戦略と労働組合、被援助国から援助国への転換点で」

コメンテーターをするセッション:
午後②14:40-の経済セッション(英語)

(写真はケニア・ナクル湖の自然公園のレンジャー。JICAの協力によりカイゼンに取り組んでおり5Sを指差している)

スティグリッツ教授らとの共同研究の本の書評が出ました

私もエチオピアの産業政策とカイゼンについて一章を書いた、JICA研究所とスティグリッツ教授の共同研究で出た本の書評がPublic Administration and Developmentというジャーナルに掲載されました。


著作権上共有するわけにはいかず、以下のWiley Online Libraryへのアクセスがないと読めないのですが、ご参考まで共有させていただきます。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1002/pad.1813

私の書いた章はThe Economic Implications of a Comprehensive Approach to Learning on Industrial Policy The Case of Ethiopia.

本の詳細についてはコロンビア大学出版会のHPを。アマゾンでも購入できます。
https://cup.columbia.edu/…/industrial-policy-…/9780231175180



「記憶のあり方、あるいは過去との向かい合い方」

「記憶のあり方、あるいは過去との向かい合い方」

国際開発学会の「国際開発研究」の最新号に書評を書きました。下村恭民先生の「タイの新しい地平を拓いた挑戦ー東部臨海開発計画とテクノクラート群像」についてです。(掲載版PDFは以下のファイルから読んでいただくことができます。
JASID-26-2.pdf

この本は国際開発の歴史として何を我々は記憶するべきか、を問いかけていると思います。何を覚え、何を忘れるかの選択は私たちが何者であるかを決めると思います。その選択は我々自身のためでもあり、また同時に未来のためでもあります。本書を読んでそんなことを考えさせられました。JICA研究所プロジェクト・ヒストリー・シリーズの一冊。




以下に全文を掲載しておきます。

下村恭民「タイの新しい地平を拓いた挑戦 – 東部臨海開発計画とテクノクラート群像」(佐伯印刷()出版事業部、2017年) 

− 記憶のあり方、あるいは過去との向き合い方

島田剛
 

 本書は単なるODAの歴史の本ではない。成功物語でもない。ましてや過去についてノスタルジックな追憶を述べた本でもない。むしろ、本書は「どうして経済成長する国とそうでない国があるのか」、あるいは「どうすれば経済成長するのか」という現在の国際開発を考える上で最も根元的な問いを巡る研究である。どういうことだろうか?少しずつ見て行きたい。

 本書で検証される事例は1980年代に世界銀行の強硬な反対を受け、タイ国内の世論を推進派と反対派に二分しながら実施されたタイの東部臨海開発計画である。東部臨海開発計画についてはこれまでも様々な論文が生み出されてきた(例えば下村2000; Mieno 2013; Hosono 2015など)。これらの論文においてはタイ東部臨海開発計画がどれだけタイ経済の成長に寄与したかという点について分析されてきた。

 これまでの分析にはない本書の特色は次の3点である。第1に著者自身に「当事者性」がありつつも、同時に「客観性」を両立している点である。第2には単なる事例研究で終わらず「どうすれば経済成長するのか」という問いを深めて分析がされている点である。特に後に90年代に入って行われた世銀・日本論争の前哨戦になっている点は興味深い。第3は我々が日本のODAの歴史にどう向き合い、何を忘れ、何を記憶していくのかを問いかけている点である。以下、この3点について1つずつ見ていきたい。

 

1.  当事者性と客観性

 本書の特色の第1は「当事者性と客観性の両立」である。著者である下村恭民氏は、JICAの前身である海外経済協力基金(OECF)のバンコク首席駐在員として世銀との対立、タイ国内の推進派と反対派の対立に向き合ったのである。そのため、世界銀行のタイ事務所代表のキル・ハーマンズ氏、タイ国内での推進派、反対派の国会議員や官僚達との交渉やり取りなどの記述が具体的で当事者でなければ書けない内容が含まれており、それ自身が貴重な記録になっている。

 しかし記録として重要なだけではない。この本が優れているのは当事者であるが故に得られた経験や当時の記憶を、あえて意識的に距離を取り客観的に分析している点である。その真骨頂は本書の第2章から第3章にかけて推進派・中立派・反対派の人々を逸話とともに描き出している部分である。おそらく下村氏自身が当事者として、事態の解決に向けて奔走する中で各派のキーパーソンと会いそれぞれの立場や真意を確かめ、協議を重ねていったのだろう。特に面白いのは各自について出自や、それぞれの来歴から調べ、どうしてその個人がどのように合理的に自分の立場を選びとっているのか、その「動機」にまでふみこんで考察されていることである(例えばプレーム首相の行動原理と、その『動機』についての分析)。

 そこで描き出される「群像」は極めて興味深い社会心理ドラマを見ているようである。しかし読み進める上で気がつかされることがある。それは著者の「眼差し」である。著者自身は日本側の現地責任者であった。当然、立場は推進派と最も近かったはずである。しかし、本書の中では推進派も反対派も、対立する世銀のハーマンズ代表のいずれにも深く肩入れすることなく、淡々と観察し、客観的に分析をしていくのである。これは推測であるが、著者がそれぞれの立場をその動機レベルまで遡って分析したのは、当事者として事態打開に向けてなんとか交渉を進展させようとしていた最中ではないか。客観的に状況を観察、把握して相手がどうした行動原理で動いているのか、つまり交渉の際にどのような対応してくるのか先の先まで読んで交渉に臨んでいたのだろう。少なくとも本書はそう思わせる迫力に満ちている。こうした当事者性と客観性を両立させるのは簡単なことではなく、本書を特色のあるものにしているのである。

 

2.  どうすれば経済成長するのか — インフラを作れば成長するのか?

 本書の特色の2つ目は、「どうすれば経済成長するのか」という問いに対して向き合っている点である。東部臨海開発計画は言うまでもなくインフラ開発事業である。それでは、「インフラ開発をすれば貧しい国は豊かになれる」と考えていいのであろうか。本書を読む限り、そう物事は単純ではないようだ。この問いを考える前に、本書は「歴史の流れ」の中ではどう位置づけられるかを振り返っておきたい。

 下村氏がタイでの勤務を終え、東京のOECF本部に戻り、迎えたのが1990 年前半の「世銀・日本論争」であった。産業政策が有効かどうかを巡って世銀と日本が対峙し大論争に発展したのである。下村氏は日本側の理論的な中心であった。こうした中で有名な世界銀行(1994)「東アジアの奇跡−経済成長と政府の役割」が出されるのである。この論争は途上国開発を考える上で最も重要な論争と言って良く、多くの論争がなされた(Shimada 2015; 2017a; 島田2016)。しかし、この産業政策をめぐる論争は終わっていない。一時期、沈静化していたが、その後、2000年代後半になって世界銀行のチーフエコノミストになったジャスティン・リンは世界銀行の内部からこの議論を仕掛け、大きな議論となり最終的には世界銀行を去ることになってしまった(島田2017)。そして、今も議論が続けられている。つまり本書で問われているのは過去の事例によりながら、極めて今日的(かつ根源的)な「どうすれば経済発展は可能なのか?なのである。

 こうした歴史の時間の中で考えると、タイの東部臨海開発計画における世銀との対峙は、下村氏が日本帰国後に待っていた1990 年前半の「世銀・日本論争」の前哨戦として位置づけられるだろう。

 「世銀・日本論争」における世銀側の論点はいくつかあるが、主な点は次の2つである。第1は、汚職など政治との関係で「政府は適切な産業政策はできないのではないか」という批判。第2は、「政府はそもそも優良な産業や企業を選別する力はないのではないか」というものである。本書はタイのケースを分析することによってこれらに答えている。

 本書で東部臨海開発計画の成功要因として強調されているのは次の2つである。それは第1に、「タイのテクノクラートが政治から切り離されていた」ことである。それにより客観的に「明らかに効果の見込める事業」と「効果を期待しにくい事業」を明確に選別することが可能になったのである。そうした客観的な分析によって、世銀も表立って異論を挟みにくくなり、反対論を抑えつつ計画を軌道に乗せることができた、としている。つまり、政治的影響を遮断した有能なテクノクラート集団の存在が重要であったということである。

 第2に強調されているのは、2つの側面でチェック・アンド・バランスが機能したという点である。それによりこのプロジェクトでは汚職などがなかったのである。2つの側面とは第1にタイ国内で反対派と推進派が互いにけん制しあう状況である。第2にはマスメディアの力である。反対派の世界銀行がタイ側に送った書簡が推進派によってメディアにリークされ、変な動きをすると対立するグループによって、いつマス・メディアに不利な情報を流されるかもしれないという状況にあったからだ。つまり、「対立する両陣営の力の均衡」と「自由なマスメディアによるチェック」との組み合わせが重要であったと議論しているのである[1]

 さらに重要な点は、インフラとしての東部臨海開発計画の産業政策上の位置づけである。インフラ事業は諸刃の刃である。成功すると経済成長に繋がるが、工業団地などが使われずに放置されることは日本国内でも少なくない。では、どのように政府はインフラ事業を選定すれば成功するのだろうか。それはインフラ不足が民間セクターの成長のボトルネックになっている場合である。そうしたボトルネックを取り除くことになる場合に、インフラは機能し経済成長につながるのである。逆に十分な民間セクターの活力がない時に課題なインフラを投資しても十分な効果が得られないことになる(こうした点をOtsuka et al.2017)はTIFTraining-Infrastructure-Finance)戦略として提唱している)。

 本書ではタイが東部臨海開発計画を実施したのはまさに一次産品から製造業への経済構造転換の時代であり、バンコクへの一極集中の解消と手狭になったインフラ不足の解消を目的としていたことがとてもよく分かる。つまり、活力のある民間企業の活動と直接投資の流入、こうした条件が整っていたので、このインフラ開発は成功したのである。

今、サブサハラ・アフリカが同じ様に経済構造の転換へのチャレンジに直面しており、今後、タイと同じような課題に直面することは十分に考えられる。そうした時にどのような対策や政策が必要かを考えるにあたって、本書で分析されているタイのこうした経験は参考になるだろう。

 

3.  我々は何を忘れ、何を記憶するか– 選択としての歴史

 本書の特色の3つ目は、この本は日本のODA史上、最も重要なプロジェクトの1つを取り上げて単なる紹介ではなく、分析することにより「我々は何を歴史として記憶すべきか」を問うているのだと思う。特に、上で触れたような推進派と反対派の対立についての記述などは、長い年月を経たからこそ記述することが許されるという部分があると思う。多くのオーラルヒストリーの研究と同じく、まだ関係者の記憶が生々しすぎる間は発表できないものもある。しかし、ある一定の時間が経てばそれは記録として何らかの形で記憶する「しかけ」が必要になってくるのである。歴史はただそこに在るものではなく、不断に作られものであり、時には作り変えられてしまうものだからである。

 本書で語られる推進派と反対派の対立は当時、援助関係者の多くにとっては周知の事実であっただろう。しかし、それはいつしか忘れられる。著者も書いている通り東南アジアで反日運動があったということも、まだ忘れられてはいないにせよ、多くの人にとっては遠い過去になりつつある。

 一方、著者はタイにおいてネーション誌が東部臨海について特集記事を書いた際(20073月)のことに触れている。同誌が東部臨海を「タイの明日を決めた瞬間」と評価しつつ日本の援助には触れなかったらしい。その点、著者は次のとおり書いている。「成果を誇りに思えば思うほど『われわれ自身の手で(外国人の手を借りずに)達成したのだ』と主張したくなる気持ちは理解できる。いいかえれば、日本の援助に全く言及しなかったからこそ、(中略)日本の援助の成果を裏書きしたのだ」。ここでは忘れることが積極的な意味を持って書かれているのである。

 何を覚え、何を忘れるかは我々が何者であるかを決めるだろう。我々は日本の援助の歴史の何を忘れ、何を記憶するか。その選択には我々自身とは何者かが問われているとのだと思う。それは我々自身のためであると同時に未来のためでもある。

 日本・世銀論争もあれだけ国際的に注目されたにも関わらず、日本国内では今は知る人も実は少なくなってきている。日本語で書かれた記録も実は少なく、当時、起こったことを我々はRobert Wade1996)の「Japan, the World Bank, and the Art of Paradigm Maintenance: The East Asian Miracle' in Political Perspective」などによって知ることができるだけであった。そうした中、下村氏は日本・世銀論争についてもJICA 研究所の「日本の開発協力の歴史」研究の一環で執筆中と聞いている。その刊行を一読者として待ち遠しい気持ちで待っている。

 今後、さらに多くの実務家による記録が残ることを期待したい。

 

参考文献

大野健一(2013)「産業政策のつくり方」、有斐閣.

島田剛(2017)書評「ジャスティン・リン『貧困なき世界』」、経済セミナー45月号、日本評論社、東京。

島田剛(2016)「第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)から読み解く日本と世界の未来――1993年に日本で始まった3つの試みからカイゼンまで」、シノドス・ジャーナル(https://synodos.jp/international/1825220161130日閲覧).

下村恭民(2000)「タイ東部臨海開発計画の変遷とその意味– 途上国のオーナーシップと援助の有効活用」国際協力銀行『円借款事後評価報告書』、国際協力銀行・プロジェクト開発部.

世界銀行(1994)「東アジアの奇跡−経済成長と政府の役割」、東洋経済新報.

 

Noman, Akbar and Joseph Stiglitz, eds. Efficiency, Finance and Varieties of Industrial Policy. New York: Columbia University Press.

Mieno, Fumiharu. 2013. “The Eastern Seaboard Development Plan and Industrial Cluster in Thailand” in Machiko Nissanke and Yasutami Shimomura eds., Aid as Handmaiden for the Development of Institutions A New Comparative Perspective, Palgrave Macmillan.

Otsuka, Keijiro, Tetsushi Sonobe, Fumiharu Mieno, Takashi Kurosaki, Go Shimada, Naohiro Kitano, Ken Odajima, Suguru Miyazaki. 2017. Training-Infrastructure-Finance (TIF) Strategy for Industrial Development in Sub-Saharan Africa. JICA Research Institute.

Robert Wade. 1996. “Japan, the World Bank, and the Art of Paradigm Maintenance: The East Asian Miracle' in Political Perspective,” New Left Review(May-June 1996).

Hosono, Akio. 2015. “Industrial Strategies and Economic Transformation: Lessons from Five Outstanding Cases.” In Akbar Noman and Joseph Stiglitz, eds. Industrial Policy and Economic Transformation in Africa. New York: Columbia University Press.

Shimada, Go. 2017. “Inside the Black Box of Japan’s Institution for Industrial Policy – An Institutional Analysis of Development Bank, Private Sector and Labour.” In Noman, Akbar and Joseph Stiglitz, eds. Efficiency, Finance and Varieties of Industrial Policy. New York: Columbia University Press.

Shimada, Go. 2015. "The Economic Implications of Comprehensive Approach to Learning on Industrial Development (Policy and Managerial Capability Learning): A Case of Ethiopia." In Noman, Akbar and Joseph Stiglitz, eds. Industrial Policy and Economic Transformation in Africa. New York: Columbia University Press.



[1]かつては産業政策が白黒かという議論が目立ったが、近年は「どのような産業政策が良いのか」というHowの議論に変遷してきている(Noman and Stiglitz 2017;大野2013)。本書の分析はこうした議論に対して、「政治的影響を遮断した有能なテクノクラート集団」「対立する両陣営の力の均衡と自由なマスメディアによるチェック」があることが、産業政策には必要だと教えてくれる。

JICAインターンシップ・プログラムの募集開始(5月7日必着)


今年のJICAインターンシップ・プログラムの募集が開始になりました。とても面白そうなポストの募集も多くあります。5月7日必着。国際開発に関心のある学生・大学院生の方はぜひ応募を!

ちなみに募集されているポストは、JICA本部(東京)をはじめJICAの国内機関(JICA北海道(札幌・帯広)/筑波/北陸/中国/沖縄)や在外事務所、開発コンサルティング企業、海外のJICAプロジェクト(アジア/アフリカ/中東/中南米)の計47名です。開発コンサルティング企業でのインターンも含まれているというのが興味深いです。ぜひリンク先のポストの一覧を見てみてください。

世界銀行グループの春季会合(ワシントンDC)セミナーのライブ配信

今年の世界銀行グループの春季会合(ワシントンDC)は今週から(4月17日から21日)。会合中に開催されるセミナーのライブ配信は以下のリンクから。
http://wrld.bg/JCxK30jtb8Z(英語)

(主なセミナー)

■SDG達成に向けたビッグデータの活用
ビッグデータや新しいテクノロジーを活用し、いかに都市や地域コミュニティが抱える雇用創出や製造業での機会創出といった課題を解決できるかを議論します。
2018年4月20日(金)午前3時30分(日本時間)より
ライブの視聴、質問はこちら: http://wrld.bg/8onv30jtb14(英語)

■MIGA設立30周年イベント
多数国間投資保証機関(MIGA)設立30周年を記念し、キム総裁、本田桂子MIGA長官兼CEOらがこれまでの取り組みによる成果および今後の展望について語ります。
2018年4月20日(金)午前5時30分(日本時間)より
ライブの視聴、質問はこちら: http://wrld.bg/jdMF30jtb3r(英語)

■ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けて
世界銀行グループと日本政府、世界保健機関(WHO)の共催による本セミナーでは、すべての人が質の高い保健サービスを経済的負担なく受けられるようにするために、各国政府はどのような改革や投資を行うべきかを議論します。
2018年4月21日(土)午前5時(日本時間)より
ライブの視聴、質問はこちら:http://wrld.bg/mhdj30jtb5E(英語)

■レジリエンス・ダイアログ:都市への投資
都市化による人口増加が進み、都市の強靭性確保への投資が高まる中、どのように投資家を動員し、最適な資金調達を行うべきかを議論します。
2018年4月21日(土)午前6時(日本時間)より
ライブの視聴、質問はこちら: http://wrld.bg/ym7H30jtb6N(英語)

■アフリカ地域の現状
アフリカの起業家、公共セクターのリーダー、開発パートナーたちが、アフリカ地域における経済や財政面での課題と農業およびエネルギー分野における技術革新について議論します。
2018年4月22日(日)午前0時(日本時間)より

JICA研究所 非常勤研究助手(「アフリカ小農民の商業化による貧困緩和の実証研究(SHEP研究)」にかかるデータ分析)募集

JICA研究所 非常勤研究助手(「アフリカ小農民の商業化による貧困緩和の実証研究(SHEP研究)」にかかるデータ分析)募集が出ましたのでおしらせします。詳しくはリンク先を見ていただければと思いますが、同じ内容を下に貼り付けておきます。

募集内容
募集期間
2018年4月9日(月)12時00分から2018年4月26日(木)23時59分

募集人員1名

職種非常勤研究助手

業務内容
研究案件「アフリカ小農民の商業化による貧困緩和の実証研究-行動経済学的アプローチ(SHEP研究)」について、非常勤研究助手として研究代表者の補佐業務を以下のとおり行う。
1. 現地調査にて収集したデータのクリーニング及び基礎的な分析。
2. データ分析結果の報告書等への取りまとめ。
3. 現地調査にかかるJICA関係者やローカルコンサルタントとの調整や調査準備の補助。
4. その他、上記研究に関連する外部研究者との連絡調整等各種業務。

勤務形態
非常勤(任期あり)
原則週3日、契約期間:2018年6月1日~2018年11月30日迄(ただし、週毎の勤務日数については採用者の予定を踏まえ、応相談。当機構と本人が合意した場合に限り、半年毎最大3回までの契約更新の可能性があるが、通算契約期間は最長2年間)。

勤務地
JICA研究所(東京都)
〒162-8433 東京都新宿区市谷本村町10-5

応募資格
以下の条件を全て満たすこと。
(1)上記研究分野等における修士号以上(又は同等の資格)を取得していること(又は取得予定)。
(2) データ分析及び基礎的な計量経済学の手法を習得していること。
(3) STATAの使用方法に習熟していること。
(4)学術研究のためのコンピュータースキル及びインターネット・ツールに習熟していること。
(5)日常会話レベルの日本語能力を有することが望ましい。
(6)研究の遂行が可能なレベルの英語能力を有すること((a)TOEIC800点以上、(b)TOEFL(PBT)574点以上、(c)TOEFL(CBT)230点以上、(d)TOEFL(iBT)89点以上程度)。
(7)国籍は不問。ただし就労できる在留資格をお持ちの方に限る。

待遇
1.職名:非常勤研究助手
2.契約期間:2018年6月1日(予定)~2018年11月30日
※双方の合意の下、半年毎の延長の可能性あり。
※原則週3日業務に従事。就業時間は研究所の勤務時間平日9時30分~17時45分(休憩時間45分)に準ずる。
3.報酬:当機構研究所の規程により支払い(経験年数に応じて報酬額を決定)。
4.交通費:報酬とは別途支給(上限1日2,750円)。
5.保険:社会保険等への加入なし。

着任時期
2018年6月1日(6月15日となる可能性もあり)
上記の時期に着任が難しい場合は、応募書類にその旨記載すること。

応募書類
1. 履歴書
※添付の様式を使用してください。顔写真の添付、推薦者2名の連絡先の記載が必須です。
※語学能力については、証明書類がある場合は添付してください。証明書類がない場合は履歴書に自己評価を簡潔に記載願います。
2. 研究業績リスト
3. 学会活動リスト
4. 研究概要と志望動機(自身の研究活動計画を含む。)
5. 学位証明書、成績証明書 ※写し可

JICA-RI CV format(和文・非常勤助手) [DOC/60.5KB]
JICA-RI CV format (English_Research Assistant) [DOC/59.0KB]
送付方法
E-mailにてJICA研究所採用アドレス「ditr2@jica.go.jp」まで送付してください。
※件名に「JICA研究所非常勤研究助手(アフリカ小農民の商業化による貧困緩和の実証研究)募集の件」と明記の上、添付ファイルには氏名及び各応募書類の番号を付してください(例:「1.(氏名)履歴書」、等)。
※応募書類のデータの容量が5MBを超える場合は、何通かのEメールに分けて送信願います。分割した送信が難しいファイルがある場合は、別途お問い合わせください。
※圧縮ファイル(ZIP、LHA、CAB、TGZ、TBZ、TAR、RAR等)は受信できません。送信の際はご注意ください。
※提出期限:2018年4月26日必着
※応募書類は返却いたしません。
※応募時に提供いただいた個人情報は、非常勤研究助手の選考・契約に関わる手続にのみ使用いたします。
※E-mailでの応募後、2営業日以内に当方からの受信確認メールが届かない場合は応募メールが未着の可能性がありますので、その場合は必ずご連絡ください。

選考内容
・書類選考結果は個別にEメールにて連絡します。
・2次選考(面接)は、5月中旬に実施予定です。詳細は面接対象者におってご連絡します。
※審査内容に関する問合せには応じられません。
※審査内容以外のご質問は、Eメールにて下記の連絡先までお送りください。電話による対応はいたしかねます。

連絡先
JICA研究所 総務課 採用担当
〒162-8433 東京都新宿区市谷本村町10-5

Eメール:ditr2@jica.go.jp

イノベーションを可能にする仕組みづくりで開発途上国の成長を—世界銀行との共催セミナーで議論


私がコメンテーターをさせていただいた世界銀行グループとJICA研究所の共催により行われたセミナー「イノベーション・パラドックス:途上国の能力、遅れを取る技術活用」(2018年3月26日)について、JICA研究所のホームページにセミナー報告が掲載されました。以下に報告内容を引用させていただきますが当日の写真などはJICA研究所のホームページでご覧いただけます。

ちなみに私がコメントをしたのは次の3点です。
第一に、世界銀行は産業政策に否定的な立場を取ってきたが、今回の報告書はその政策の変化を意味するのかどうか。

第二に、WTO/TRIPSにより知的財産権が強力に保護されている現在、イノベーションの利益が途上国(特に中小企業など)に届くのか(一部の薬のように生産量が抑えられ、価格が上がる独占的競争になるのではないか)。

第三に、技術イノベーション、生産イノベーションだけでなく社会に裨益する「社会イノベーション」が必要なのではないか。日本のカイゼンは労使が生み出した社会イノベーションであり、労働者の賃金上昇を通じてより平等な社会を作り出すことに繋がった。

このコメントに際して使ったスライドはResearchgateに格納されていますので併せてご覧いただければ幸いです。

(以下、JICA研究所ホームページからの転載です)。
2018年3月26日、世界銀行グループとJICA研究所の共催により、セミナー「イノベーション・パラドックス:途上国の能力、遅れを取る技術活用」が開催されました。

基調講演で報告書について紹介した世界銀行のウィリアム・マロニー公正成長・金融・制度(EFI)担当チーフエコノミスト
世界銀行は、2017年10月に報告書「イノベーション・パラドックス:途上国の能力、遅れを取る技術活用(The Innovation Paradox: Developing-Country Capabilities and the Unrealized Promise of Technological Catch-Up)」を発表しました。このセミナーでは、執筆者の一人、ウィリアム・マロニー世界銀行公正成長・金融・制度(EFI)担当チーフエコノミストが基調講演に登壇し、政策研究大学院大学の園部哲史副学長とJICA研究所の島田剛招聘研究員(明治大学准教授)がコメントしました。

まずJICA研究所の北野尚宏所長(当時)と世界銀行の西尾昭彦戦略・業務担当局長があいさつ。北野所長は、「この報告書から、イノベーションを起こす鍵として企業の経営の質が重要といったメッセージを受け取った。イノベーションについて活発な議論ができれば」と期待を寄せました。

続いて、マロニー・チーフエコノミストが基調講演に登壇。「イノベーションの推進が経済成長の鍵となるが、開発途上国の企業は革新的な技術を導入せず、途上国政府もイノベーションを促進する政策立案に失敗している。これが“イノベーション・パラドックス”。例えば、なぜチャドは政府の予算を新しい技術の研究開発に投資しないかというと、エンジニアがいない、マーケティング人材もいない、輸出するための事業環境もない、金融市場もない。つまりイノベーションをバックアップする補完要素がなく、リターンを得られないから投資は意味がないと結論づけてしまう。しかし、研究開発ができる優秀な人的資本を供給する教育機関などの供給側、研究開発を必要とする需要側の企業、そして政府が相互作用してイノベーションを起こす仕組み『国家イノベーションシステム(National Innovation System: NIS)』が浸透すれば、途上国でもイノベーションが広がるはず」と述べました。特に企業の役割は重要で、企業がイノベーションを起こすためには、競争や貿易体制などのビジネス環境が整うといったインセンティブや、企業自体の経営能力の向上などが必要だと提起しました。

国のタイプに沿った企業の経営改善を提案した政策研究大学院大学の園部哲史副学長
企業が経営の質を向上させるためには何が必要なのか。マロニー・チーフエコノミストは、「先進国ではモチベーションとして機能する競争の原理が途上国では必ずしも機能せず、そうした複雑な状況下での効果的な政策が必要になる。ところが途上国では、今度はその政策を立案する政府の能力が限定されるというジレンマに陥ってしまう」と述べました。それに対し、日本では幕末に薩摩・長州藩士が英国へ留学し、これらのメンバーが日本の近代工業化に公共セクターから大きく貢献した事例を挙げ、イノベーションを進めるためには合理的、効果的、NIS内での整合性、継続性がある政策が重要であり、途上国政府がそういった政策立案ができる能力をもつ必要性を指摘しました。

世界銀行の産業政策などについて質問した島田剛招聘研究員
また、NISの発展には3つのステージがあるとして「能力エスカレーター(The Capabilities Escalator)」という概念を示し、その国がどのステージに位置づけられるかによりフォーカスすべき政策が変わってくると主張。「私たちは、飛べる鳥、つまりイノベーションを起こせる企業を生み出さなくてはならない。途上国では経営の質に対して自己評価が高い傾向にあり、コンサルティングの導入が効果的であるにもかかわらず、経営者は学ぶ必要がないと考えて十分に活用していない。戦後、生産性向上運動を発展させた経験を持つ日本は、途上国に伝えられる知見が多いはずだ」と講演を締めくくりました。

コメントした園部副学長は、能力エスカレーターの初期のステージ1をタイプ1とタイプ2に細分化し、経営について知識が不足しているタイプ1の国には国際協力としてカイゼンなどを伝え、それより少し上の段階のタイプ2の国には輸入障壁を減らすことで競争を持ち込めば経営の改善につながるのではと提案。また、島田招聘研究員は「この報告書は、政府介入に慎重だった世界銀行の従来の戦略変更を意味するのか」といった質問を投げかけたほか、会場からもイノベーションの定義についてや人的資本が不足している場合にイノベーションは起こるのかといったさまざまな質問や意見があがり、活発な議論が行われました。

世界銀行セミナー「イノベーション・パラドックス:途上国の能力、遅れを取る技術活用」

3月27日追記:昨日行われた世界銀行セミナー「イノベーション・パラドックス:途上国の能力、遅れを取る技術活用」でコメントをするのに使ったスライドをResearchgateにアップロードしました。

7月23日追記
世界銀行のHPでは私のスライドも含め、全てのスライドを見ることができます。


3月26日に行われる以下のセミナーで討論者をすることになりました。

(以下セミナーの案内)
世界銀行が昨年10月に発表した報告書「イノベーション・パラドックス:途上国の能力、遅れを取る技術活用」(The Innovation Paradox: Developing-Country Capabilities and the Unrealized Promise of Technological Catch-Up)では、世界にあふれている膨大なノウハウや専門知識を途上国が積極的に導入し、イノベーションを推進することで経済成長が促進される可能性は極めて大きいものの、途上国の政府や企業はこうした知識ストックを活用するために比較的少ない資金しか投じていないと分析し、これを「イノベーション・パラドックス」と呼んでいます。この度、同報告書の執筆者のウィリアム・マロニー世界銀行公正成長・金融・制度(EFI)担当チーフエコノミストの来日の機会を捉え、同報告書の主な論点をご紹介するセミナーを開催いたします。使用言語は英語・日本語(同時通訳付)です。

プログラム

挨拶

北野尚宏
国際協力機構  JICA研究所 所長

西尾昭彦
世界銀行 公正成長・金融・制度(EFI)戦略・業務局長

講演

ウィリアム・マロニー
世界銀行 公正成長・金融・制度(EFI)担当チーフエコノミスト

討論

園部哲史
政策研究大学院大学 副学長

島田剛
静岡県立大学 准教授 JICA研究所 招聘研究員

講演者紹介

ウィリアム・マロニー
世界銀行 公正成長・金融・制度(EFI)担当チーフエコノミスト

1990年から1997年まで、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校教授(経済学)。その後世界銀行に入行し、2009年までラテンアメリカ・カリブ海地域担当チーフエコノミスト室リードエコノミスト、2009年から2014年まで開発経済総局(DEC)リードエコノミスト、世界銀行貿易・競争力担当チーフエコノミスト兼イノベーション・生産性グローバルリードを経て、現職。2011年から2014年までアンデス大学客員教授として、コロンビア政府のイノベーションと企業の改善のための取り組みにも従事。ハーバード大学で学士号を取得、コロンビアのアンデス大学で学び、カリフォルニア大学バークレー校で経済学博士号を取得。世界銀行 公正成長・金融・制度(EFI)担当チーフエコノミスト公正成長・金融・制度(EFI: Equitable Growth, Finance, and Institutions)プラクティスグループ
金融・競争力・イノベーション(Finance, Competitiveness, and Innovation)グローバルプラクティス(GP) 、ガバナンス(Governance)グローバルプラクティス、マクロ経済・貿易・投資(Macroeconomics, Trade, and Investment)グローバルプラクティス、貧困・公正(Poverty and Equity)グローバルプラクティス で構成されており、世界銀行のマクロ経済、貿易、金融、競争力、イノベーション、ガバナンス、貧困問題に関する業務を統括しています。
 
イベント詳細
日時: 2018年3月26日(月)午後4時~午後5時30分
場所: 国際協力機構(JICA)市ヶ谷ビル 国際会議場 東京都新宿区市谷本村町10-5 (アクセス方法は、下記「関連項目」をご覧ください)
言語: 英語・日本語(同時通訳付)
お申込み: 以下登録フォームからお申込みください。フォームが作動しない場合は、お名前、ご所属 (会社・団体名、ご部署、ご役職)、メールアドレスを明記の上、下記までメールをお送りください。
お問合せ: 世界銀行東京事務所 大森 TEL: 03-3597-6650
komori@worldbankgroup.org