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「機会平等」「結果平等」とは何か

石渡嶺司 (2012)『大学の思い出は就活です (苦笑): 大学生活50のお約束』(筑摩書房, ISBN 978-4-480-06656-5)
に「機会平等」と「結果平等」のユニークな定義を発見。サークルで雑誌を作る事例なのだけれど、全員一律に5ページずつ作成するのが「機会平等」、がんばってたくさん作成したメンバーに多くの売り上げを配分するのが「結果平等」なのだそうで。

どこの領域の用法をどう理解するとこうなるのか、仮説を4つ考えてみた。

(1) 概念をとりちがえておぼえている可能性がある。
社会学界隈では、「結果の平等」といえば、原因の如何を問わず格差が存在しない状態を指す。対して「機会の平等」といえば、不当な原因による格差が存在しない状態を指す。もっとも、何を「不当な原因」(あるいは正当な原因) とみなすかにはコンセンサスがない。そのため、性別、年齢、民族、出身、能力、努力、貢献、容姿、性格、運などなど、めいめいが好き勝手なものを放り込むので、ほぼ闇ナベ状態になっている概念なのだが、具に統一性はないにせよ、すくなくともその「ナベ」が原因の正当性/不当性を区別するという一点だけは死守されている。
石渡の例でいうと、たくさん作成したメンバーに多くの売り上げを配分するのは、(仕事量によって報酬をちがえるのは正当なことだという前提を置くなら)「機会の平等」と呼ぶべき状態である。
参考:http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/qfam/mm5.html

(2) 一方で、社会学の領域の一部 (階層論ないし社会移動論) には、格差を生み出す因果連鎖の流れのなかから適当な2点をとりだして、相対的に上流に位置するものを「機会」、下流に位置するものを「結果」と呼ぶ用法がある。仕事をした結果として売り上げが配分されるのだから、この用法にしたがえば、「仕事の平等」=「機会の平等」、「売り上げ配分の平等」=「結果の平等」と置換可能だと考えたとしても不思議はない。
ただ、この場合、(「仕事の平等」のほうはいいのだが) 売り上げは平等に配分されていないではないか、という問題がある。もちろん、原稿1枚あたり報酬が等しいのだ、とか理屈をこねることはできる。しかし、そういうことを表現するために「衡平」ということばが別に用意されているので、あえて「平等」と表現する人はあまりいないのではないかと思う。
参考:http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/remcat/2008--9784595308536.html

(3) 法学方面で形式的平等を「機会の平等」、実質的平等を「結果の平等」とよぶ用法がある。ここから派生しているかもしれない。
憲法学の教科書類だと、事実上の差異を無視して一律平等にとりあつかうのが形式的平等、事実上の差異を考慮して実質的な格差を改善するために異なる取り扱いをするのが実質的平等、というような説明がのっていることがある。それを真に受けると、全員に強制的におなじ量の仕事をさせるのが「形式的平等」=「機会の平等」で、仕事の量が事実上ちがうという差異を考慮して配分を変えるのが「実質的平等」=「結果の平等」だという理解になるのかもしれない。
しかし、法学の教科書にのっている説明を、ふつうの日本語の文章だと思って読んではいけないのである。常識に照らせばわかることだが、差異をまったく考慮せずに全員一律の適用だけをおこなう制度などというものは存在しない。すべての法は、大なり小なり、個別の事情を考慮して取り扱いを変えることを規定している。そして、それらの規定の大部分は、実際には、形式的に平等だと位置づけられているのだ。たとえば、犯罪を犯した人にだけ刑罰を課すとか、選挙に立候補して当選した人だけが議員になるとか、仕事をした人だけに報酬を支払うとかいうのは、余裕で「形式的平等」の枠内に入る (たぶん)。
参考:http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/remcat/2009--9784641130692.html

(4) 法学分野にはもうひとつ、「絶対的平等」と「相対的平等」の区別がある。ここからの類推かもしれない。
これは、どのような理由があっても不平等はいけない、という立場と、合理的な理由によるものであれば不平等があってもかまわない、という立場のちがいである。社会学でいう「結果の平等」「機会の平等」にほぼ対応すると考えてよいだろう。石渡の事例でいえば、全員一律5ページ作成、というのが「絶対的平等」で、仕事量の違いという合理的な理由によって報酬の配分を変えるのが「相対的平等」ということになる。
問題は、「絶対的平等」=「機会の平等」、「相対的平等」=「結果の平等」という (社会学とは反対方向の) 言いかえをする用法があるだろうか、というところである。(3) (4) をごっちゃにして考えていくと、そういうのも出てきそうな気はするのだが。
参考:http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/remcat/2007--9784000227643.html

こうやってならべてみると、いちばん無理がなさそうなのは …… (2) かなあ。著者は社会学部出身のようだし。

Link: ライター石渡嶺司のブログhttp://reiji0.exblog.jp/
http://tsigeto.blog.fc2.com/blog-entry-76.html(2012-04-02 21:12) から転載
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NFRJ reports available online

National Family Research of Japan (NFRJ) research results, NFRJ08 second report (four volumes) and other NFRJ publications, are now downloadable from the NFRJ official website:

http://tsigeto.blog.fc2.com/blog-entry-69.html(2012-02-21 20:13) から転載
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NFRJ08 data on SSJDA

National Family Research of Japan 2008 (NFRJ08) dataset is now available from Social Science Japan Data Archive (SSJDA) by the Institute of Social Science, University of Tokyo, as Survey Number 0817. See the following hyperlinks:

I am introducing Japanese interfaces from the SSJDA site, because SSJDA does not offer English information about NFRJ08. Although the NFRJ08 dataset is available via the data download system “SSJ Direct”, NFRJ08 is not on the English list of the downloadable datasets. Japanese pages may be unreadable for users unfamiliar withkanjiandhiraganacharacters, but, …… anyway, the number “817” indicates NFRJ08.


Reprint from http://tsigeto.blog.fc2.com/blog-entry-68.html (2012-02-18 10:41)
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研究不正に関する調査報告書(東北大学)

「研究者の公正な研究活動の確保に関する調査検討委員会報告書の公表について」(東北大学 プレスリリース 2012-01-24 17:09)
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2012/01/press20120124-01.html
研究者の公正な研究活動の確保に関する調査検討委員会「研究者の公正な研究活動の確保に関する調査検討委員会報告書」(2012-01-24)
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/press20120124_01_1.pdf

こっちのほうは、仮に日付が4月1日であったとしても、洒落にならん内容である。問題になっているのと類似のケースを集めてどういう対応がなされてきたかを調べる程度のことが、なぜできないのか?

というか、なにを「調査」したつもりの報告書なんだろうか。


http://tsigeto.blog.fc2.com/blog-entry-67.html(2012-02-17 23:49) から転載
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「川島隆太教授が朝ごはん習慣とやる気と〔中略〕を調査」

「川島隆太教授が朝ごはん習慣とやる気と幸せ度と目標達成の関係を調査」(東北大学ニュース)
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/2012/02/news20120207-01.html
http://www.idac.tohoku.ac.jp/ja/activities/info/news/20120207.pdf

あまりにも突っ込みどころだらけなのだが、あえていちばん重要な欠点をあげるとすれば、公表の日付が2月7日だというところであろう。4月1日まで待てなかったのか……

参考: 「朝ごはんプロジェクト」(東北大学加齢医学研究所スマート・エイジング国際共同研究センター) http://www.fbi.idac.tohoku.ac.jp/www/docs/100112_asagohan.pdf

(http://tsigeto.blog.fc2.com/blog-entry-66.html(2012-02-10 12:27) から転載)
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IATUR conference in Matue, 22-24 Aug. (deadline 15 Mar.)

http://fgps.u-shimane.ac.jp/iatur/call.html

Call for papers: International Association for Time Use Research (IATUR) conference in Kunibiki Messe (Shimane Prefectural Convention Center), Matsue, Japan in 2012-08-22..24. Deadline is 2012-03-15.

8月22-24日に松江市のくにびきメッセ (島根県立産業交流会館) で開かれる国際生活時間学会 (IATUR) 会合での報告募集。〆切は3月15日。

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来年度授業予定

2012年度の開講授業と時間割を確定させました。
以下、行頭の [数字] は対象学年、[M] は大学院科目。
* は学部・大学院共通科目

【1学期】 (4-7月)
[1] 基礎ゼミ         1セメスタ 月3-5 資源配分システムとしての家族・市場・政府
[2] 現代日本論概論      3セメスタ 金1 現代日本における家族
[2] 現代日本論基礎講読    3セメスタ 火1 論文作成の基礎
[3] 現代日本論演習      5セメスタ 火4 統計分析の基礎
[3] 現代日本論演習      5セメスタ 金2 質問紙法の基礎
[M] 比較現代日本論研究演習I 1学期   木2 統計分析入門

【2学期】 (10-1月)
[2] 現代日本論概論      4セメスタ 金1 現代日本における職業
[2] 現代日本論基礎講読    4セメスタ 火1 研究法入門
[3] 現代日本論演習 *1     6セメスタ 火4 実践的統計分析法
[3] 現代日本論講読 *2     6セメスタ 金2 現代日本論論文講読
[M] 比較現代日本論研究演習II 2学期   木2 質問紙調査の理論と実践
[M]比較現代日本論研究演習III *1 2学期 火4 実践的統計分析法
[M] 比較現代日本論講読I *2  2学期   金2 現代日本論論文講読

これらのほかに、水曜16:30から「課題研究」(大学院) があります。

2011年度からの変更点はつぎの4つ:

(1) 2年次4セメスタ開講の「現代日本論基礎講読」は、これまでの論文検索+プレゼンテーションの授業にかわって、自分で問いを立てて資料を探して研究を進める (つまりより初歩的なところから研究法を習得する) 授業にする

(2) 論文検索+プレゼンテーションの授業を大学院で行っている (比較現代日本論講読I) ので、これを学部との共通開講として、3年次6セメスタに「現代日本論講読」という科目名で開講する

(3) 時間割の変更:火1←→金1を入れ替え;火5や木1の授業→金2や木2に移動;2学期の実践的統計分析法(学部・大学院合同)は火4に移動;その他

(4) 1セメスタに新入生向け転換・少人数科目「基礎ゼミ」を開講 (2012年度かぎり)


2012年度の授業内容についての現在の構想(基礎ゼミ以外は未確定)→ http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/2012/c.html
2011年度の情報は → http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/c.html


http://tsigeto.blog.fc2.com/blog-entry-50.html
  (2011-12-23 17:23) から転載
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品切:『情報探索の基礎知識』人文社会科学編

東北大学附属図書館発行の『東北大学生のための情報探索の基礎知識』人文社会科学編の冊子体(赤いやつ)は在庫がもうないそうで、品切れ。後期の授業(火4、金1)で使う予定にしていたのだが、オンライン版のほうを使うしかないか。
http://tul.library.tohoku.ac.jp/modules/supp/index.php?content_id=27

基本編(緑のやつ)は去年の(2010年版)が最新だそうで、これは図書館カウンターでもらえる。
オンライン版は →http://tul.library.tohoku.ac.jp/modules/supp/index.php?content_id=26


http://tsigeto.blog.fc2.com/blog-entry-36.html(2011-10-03 12:53) から転載
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ReMCat on Researchmap

I have copied more than 3,500 records of bibliography to Researchmap:http://researchmap.jp/tsigeto/remcat/
Now you can use the search function of the Researchmap Multidatabase.

この10年あまりの間に集めた文献の情報3,500点以上を Researchmap にコピーした:http://researchmap.jp/tsigeto/remcat/
これで全件のデータを検索できるようになった。
ただし、大量のデータを一気にアップロードしようとするとエラーを起こすので、コピーしたのは基本的な書誌情報だけ。追加的な情報 (編書中の個別論文の情報や著者名・表題の多言語情報など) は入れていない。一方、従来からhttp://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/remcat/ で利用できるGoogleによる検索ではこれらの情報も検索できるのだが、一部のレコードしかGoogleが収集してくれていないので、大部分のレコードが対象外である。

もし Researchmap のデータベース機能が使いやすいようなら、そちらに移動しようかと考えていた。しかし、大量のデータを一気に追加できないことをふくめて、使いやすいとはいいがたい。検索インターフェースもわかりにくい。もともと、講義資料のようなファイルを公開するためのものみたいなので、大量のデータを検索するような使用法はもともと想定してないんだろうとは思う。研究者用にチューンナップされた使いやすい文献データ共有の仕組みがあればけっこう役に立つんじゃないかと思っていて、それはいまやってる科研プロジェクト (http://www.sal.tohoku.ac.jp/~tsigeto/sociodb/23330153.html) の守備範囲ではあるな。Endnote Web とRSSリーダとソーシャル・ブックマークとSNSをあわせたような機能のやつ。

http://tsigeto.blog.fc2.com/blog-entry-35.html (2011-10-03  08:25) から転載 
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