南国雑記帳(全卓樹)

南国雑記帳(全卓樹)

新著「銀河の片隅で科学夜話」が出ました

Researchmapが新しくなったと聞いて久々の書き込みです。ちょうど「銀河の片隅で科学夜話」と題した新著が来週出版されますので宣伝。

https://www.asahipress.com/bookdetail_norm/9784255011677/

 

朝日出版社の「あさひてらす」に連載の「南国科学通信」を加筆修正し、書き下ろしを追加したものです。科学読み物であるより、科学を題材にとった人文書というか文芸作品っぽい何かになってしまいました。それでも中身はちゃんとした科学です!

 

そもそもをいうと、Researchmap最初期にここに不定期に書いていたブログが東大出版編集部の目に留まり、その文体を気に入ったという事で「エキゾティックな量子」という量子力学解説本を書かせてもらったのが事の始まり。その解説本が朝日出版編集部の目に留まり、今回の本の執筆につながったというわけです。本を開けていただくとわかりますが、昔のブログの断片が少し混じっていたりもするので、初期Researchmapをご記憶のオールドタイマーはニヤリとされるかもしれません。

 

研究者のWebページもまだ稀だった頃に、突然のように提供されたResearchmap、創業時の牧歌的な雰囲気の中、研究成果の整理からブログを通じた他分野の方々との水のごとき交流まで、今振り返っても、私にとってその価値は計り知れず、新井紀子先生をはじめとした開発スタッフの方々には感謝の言葉もありません。

 

時は移り、大学広報部のネット上の活動や研究室自サーバーでのホームページは当たり前、研究者のSNSアカウントを通じた相互交流や一般広報ももはや常識となった今、Researchmapも「単なる」日本のアカデミアの共通インフラ、何ら特別な存在ではない黒子となったのは、時代の必然の趨勢なのでしょう。

 

繁栄する帝国ローマの時代に共和時代を懐かしむ年老いたローマの警世家さながらに、時代に取り残された我々ロートルが昔を懐かしんだところで、世の大勢には何ら違いはありません。しかしそれでも我々創業時のメンバーは語ることをやめないのです。今のSNSの華やかな騒々しさは、創造性を育むよりむしろ奪っているのではないか、研究者のためにはより良い別な形のSNSがありうるのではないか、初期のResearchmapにはそのヒントが潜むのではないか、と。

 

さはさあれ時は巡り、我が21世紀もすでに5分の1が過ぎ、冬が終わりかけて春もまじか、老いも若きも諸氏諸姉メダーム・エ・メシュー、古くて新しいResearchmapの門出を祝おうではありませんか!

 

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