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アルビノはみんな赤い目をしているわけではない

2019年12月にサービスを終了したYahoo!ブログに書いたものを、一部修正して掲載しています。
以下の記事は2011年7月27日にブログに投稿したものです。

==ここから本文==
 アルビノはみんな赤い目をしていると信じられています。

 でも、それは違います。

 この記事は、具体的な論拠を示して「みんなが赤いわけではない」ということを述べるのが目的です。「赤い目をしたアルビノの人は1人たりとも存在しない」ということではありません。
 
 とはいえ、動物のアルビノでは赤い目が多いですし、専門家も目が赤いかどうかでアルビノかただの白い動物かを見分けられると言ってます(Halls 2004: 36)。また、フィクションに登場するアルビノのキャラクターも赤い目で描かれるのが常です。

 ですが、実際のところ人間のアルビノではそんなことはないです。

 赤みがかっている人もいますが、ほとんどは明るい青か灰色で、薄褐色や茶色、スミレ色の人なんかもいます。にもかかわらず、赤い目の神話があまりにも強固なため、「彼女は赤い目をしてないからアルビノではない(She can't have albinism because she doesn't have red eyes)」と言われてしまう始末です(NOAH 2008: 35)。また、アルビノの人は青色や茶色、緑色、灰色、スミレ色の目をしており、みんなが思ってるようなピンク色ではないとも言われてます(Mitchell 2004: 9)。ただこれらは、いずれもアメリカの人たちのことです。
 
 目が何色に見えるかは、虹彩のメラニン色素の含有量によって変わってきます。

 以下では、日本のアルビノの人たちの目の色について、医療の専門的な文献から個別の症例報告を見ていきましょう。
 
・淡褐色(辻・斎藤 1976: 553)
・暗赤色(三室ほか 1976: 60)
・茶褐色(宇治・小林 1977: 2)
・褐色、青色、青灰色(薗田ほか 1978: 9-11)
・茶色(永田ほか 1981: 293-5)
・青灰色(富田 1994: 1107)
・灰色(飯島ほか 2007: 30)
 
 個別の症例報告ではなく「一般的にアルビノの人の虹彩の色はこうですよ」と述べたものとしては、次のようなものがあります。
 
・虹彩は紅色、瞳孔は赤く、兎の眼のように見える(原田編 1971: 156)
・青色(堀 1977: 1003)
・薄い青灰色(富田・松永 1997: 1057)
・青色(阿部・鈴木 2009: 44)
 
 以上のように、「虹彩の色も微妙に様々」(富田 1998: 601)なことがわかります。
 ただし、眼球に光を照射したら虹彩の奥の眼底が透けて赤く見えます(富田 1994: 1107; 富田・松永 1997: 1057; 稲垣・富田 2003: 129; 岡本ほか 2005: 821)。
 つまり、赤目防止機能を使わずに写真を撮ったら赤目になります。

 当たり前ですけど。


参考文献(著者名のアルファベット順)
阿部優子・鈴木民夫, 2009,「皮膚の異常と病気 白皮症(先天性色素異常症)」『からだの科学』262: 44-6.
Halls, Kelly M., 2004, Albino Animals, Plain City: Darby Creek Publishing.
原田政美編, 1971,『視覚障害(リハビリテーション医学全書12)』医歯薬出版.
堀嘉昭, 1977,「白皮症」『皮膚科の臨床』19(11): 1003-16.
飯島亜由子・鈴木民夫・稲垣克彦・小西朝子・西村陽一・富田靖, 2007,「症例報告 眼皮膚白皮症4型の1例」『臨床皮膚科』61(1): 30-3.
稲垣克彦・富田靖, 2003,「白皮症と白斑」『小児科診療』66(増): 128-31.
三室厚子・鈴木芙美代・山口規容子・福山幸夫・佐藤昌三, 1976,「Tyrosinase活性陽性の眼皮膚型白皮症の1例」『東京女子医科大学雑誌』46(1): 60.
Mitchell, Elizabeth T., 2004, Albinism in the Family/Albinismo en la Familia, Bloomington: 1st Books Library.
永田裕二・中塚和夫・原潤一郎, 1981,「網膜剥離をきたした白子眼底の2例」『日本眼科紀要』28(6): 293-6.
NOAH, 2008, Raising a Child with Albinism: A Guide to the Early Years, East Hampstead: The National Organization for Albinism and Hypopigmentation.
岡本和夫・高須逸平・寺田佳子・大月洋, 2005,「眼皮膚白皮症に併発した両眼裂孔原性網膜剥離の1例」『眼科臨床医報』99(10): 821-3.
薗田紀江子・長尾貞紀・飯島進, 1978,「白皮症の3例――とくにDopa反応について」『臨床皮膚科』32(1): 9-16.
富田靖, 1994,「臨床講義 眼皮膚白皮症――その遺伝子型と臨床型の対応について」『皮膚科の臨床』36(8): 1107-17.
富田靖, 1998,「展望 白皮症の臨床と研究」『皮膚病診療』20(7): 597-602.
富田靖・松永純, 1997,「色素異常症 白皮症」『皮膚科の臨床』39(7): 1055-60.
辻卓夫・斎藤忠夫, 1976,「汎発性白皮症の兄弟に多発した"黒子"について」『臨床皮膚科』30(7): 553-9.
宇治幸隆・小林雄二, 1977,「白子眼における単色光ERG」『日本眼科紀要』28(6): 802-6.