情報アクセシビリティについて

EPUBアクセシビリティJIS原案作成委員会の発足

EPUBアクセシビリティJIS原案作成委員会委員長 村田 真

JIS X 23761(EPUBアクセシビリティ - EPUB出版物の適合性と発見性の要件)の原案作成委員会が発足した。このJIS制定についての情報をこのブログで随時公開していく。

1. 情報分野産業標準作成委員会による承認

日本規格協会の情報分野産業標準作成委員会の第10回会議(議事次第議事録資料3 産業標準案作成対象テーマの審議について)で、この原案作成委員会が承認されている。議事録に、「事務局より資料3に基づき、産業標準案作成対象テーマについて説明があり、審議を行った。すべてのJIS案の作成着手が承認された。」とある。 資料3に5件目としてEPUBアクセシビリティが掲載されている。

日本規格協会のJIS作成予定(一覧表)に掲載されるのは、JIS素案作成開始が7/1からなので、7月初めになるらしい。

出来上がったJIS原案は、そのまま官報公示される。以前は必ず日本工業標準調査会による審議が必要だったが、今回は認定機関案件なので必要ない。手続きの詳細は「 日本規格協会(JSA)の認定機関体制及び産業標準作成委員会運営」を参照されたい。

2. 産業標準案作成対象テーマEPUBアクセシビリティの概略

1) 規格番号

JIS X 23761

2) 産業標準原案の名称(和文)

EPUBアクセシビリティ - EPUB出版物の適合性と発見性の要件

3) 対応する国際規格番号 対応する国際規格番号及び名称

ISO/IEC 23761:2021 Digital Publishing -- EPUB Accessibility -- Conformance and Discoverability Requirements for EPUB Publications

4) 必要性

近年、「視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律」(読書バリアフリー法)の制定(2019年)及び「盲人,視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」の批准(2018年)を受けて、印刷物だと判読できない人にも読めるような電子書籍(アクセシブルな電子書籍)を推進することが必要になってきている。そのために、電子書籍がアクセシブルかどうかを明示する方法が強く望まれている。

一方、電子書籍がアクセシブルかどうかを明示するための規格として、EPUB出版物のアクセシビリティを検証するためのコンテンツ適合性要求事項、及びEPUB出版物を検出可能にするためのアクセシビリティメタデータ要求事項を規定したISO/IEC 23761が制定されている。このような状況から、この国際規格を基に日本語固有の情報も追加し、国際規格に整合したJISを制定する必要がある。

5) 期待効果

この規格を制定することによって、電子書籍のアクセシビリティがどこまで達成されているかが出版側にも利用者にも把握できるようになり、アクセシブルな電子書籍を必要とする人(印刷物だと判読できない人)にとっては、自分にとってアクセシブルな電子書籍を入手することが容易になる。出版する側としては、EPUB電子書籍がどこまでアクセシブルかを意識する機会となるとともに、国際整合したJISの制定によって、電子書籍の市場の拡大が期待できる。

6) 規定する項目構成

主な規定項目は、次のとおり。

  1. スコープ
  2. 引用規格
  3. 用語及び定義
  4. 成功技術
  5. 古い版への適用
  6. 適合性クラス
  7. 発見可能性
  8. アクセシブルな出版物
  9. 最適化された出版物
  10. 配布

追記(2021-07-05)

JIS作成予定(一覧表)に掲載された。