研究ブログ

匂いを利用した線虫感染ニンニクの検出技術開発

 

Matsumoto, M., Ueno, D., Aoyama, R., Sato, K., Koga, Y., Higuchi, T., Matsumoto, H., Nishimuta, K., Haraguchi, S., Miyamoto, H., Haraguchi, T., Yoshiga, T.
2020
Novel analytical approach to find distinctive odor compounds from garlic cloves infested by the potato-rot nematode Ditylenchus destructor using gas chromatography–olfactometry (GC–O) with heart-cut enrichment system.
J. Plant Dis. Protect., 127, 537–544.

https://doi.org/10.1007/s41348-020-00349-3

 

要旨

ニンニクは、香辛料などの食品や医薬品の原料として広く世界中で利用されており、現在の日本国内で流通しているニンニクの約50%は輸入品である。近年、消費者の安全安心の意識の向上によって国産ニンニクのニーズは高まっており、それに伴い減農薬・無農薬ニンニクの人気も高まりを見せている。一方で、国内のニンニク栽培圃場では、腐敗を早めて商品価値を低下させる、イモグサレセンチュウの感染による病害が問題となっている。

そのような中、農業者から“線虫に感染した病害ニンニク(感染ニンニク)には特有のにおいがある”という情報を得た。感染ニンニクが発するにおいを特定することができれば、それらの早期発見および選別技術への応用が可能となり、結果的に農薬の使用量低減につながると期待される。

本研究では、におい嗅ぎガスクロマトグラフィー(Gas Chromatograpy-Olfactometry: 匂い嗅ぎGC :GC-O)(Fig.2)、およびガスクロマトグラフィー分取システム(Gas Chromathography-Fraction System:GC分取システム)を活用し、感染ニンニクの発する特有のにおい物質の同定を目的とした。

本結果から、線虫感染ニンニクに特有のにおい物質として、プロピルメルカプタン、アリルメチルスルフィド、2-メチル-1-ブタノールがあげられた。本研究により、線虫感染ニンニクに特有の匂い物質が特定された。

将来的に本物質を指標とした線虫感染ニンニクの選別手法を構築することができれば、感染ニンニクは出荷時期を早めるなど、流通・貯蔵法の最適化に向けた技術改善につながると期待される。