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情報って何?(1):審査の評価軸から考える

このブログでも取りあげているように子ども向けの科学イベントなどを行います。その時、自分の所属(情報学専攻)について、「どんなことしてるのー?」といった質問を想定して、「情報学というのはこういうことを研究するんですよ」といった説明がしたいと、以前から思っていました。しかし、専攻のページには『「情報」を基礎科学として探究する学問です』としか書いてありません。他に、例えば、京大の情報学研究科では、『京都大学の情報学は,自然および人工システムにおける情報に関する学問領域である。』と書いています。いずれにしても、結局、情報が何なのか分からないと、情報学が分からないようになり、小学生などに説明するの目的として、十分ではないように思います。

このような問題意識があったため、だいぶ前から、「情報とは何か」を子どもにも簡単に
説明したいと思ってきて、この3年ほどで、なんとなく形が見えてきました。さらに、このことにより、取り組んだり考えていた、まったく異なる分野のことが、統一的に見えてくるという副次的な効果もありました。それで、何回かに分けて、「情報って何?」という話しをしようと思います。

まず、辞書的に言えば、あるいは、結論を先に書けば、「情」が「心で生起すること」であることから、「情報=心に起きた(起きる)ことを知らせること」だろうと思います。Wikipediaの「情報」に書いたあったことが元になっていますが、オリジナルの情報源は何かの辞書だと思います。(いま見つけられませんでした)

しかし、実際には、情報は「個人・一人の心の中で起きたこと(感情など)」よりも、より広く使われています。例えば、「大量のデータから情報を取りだす」といったときは、個人の感情とは関係ありません。このようなことを含めようと思うと、「キモチ・雰囲気・流れ等のモヤモヤっとしたイメージをカチっと表現したもの」が「情報」だと考えるようになりました。例えば、「大量のデータ」だけでは、そこに含まれる気持ちが分からないため、知識やルールのような、なんらかの形式で表現することで、伝わるようになる、という感じです。

最近経験したコンテストの評価というのが、このような説明の例としてよかったです。コンテストは、「ひとよしアプリ・アイデアコンテスト the first」です。ちょっとした縁があって、この審査員をやりました。審査は予備審査と最終審査の二段階で、予備審査の段階で、応募のあった全てのアイデアおよびアプリに目を通しました。

多くの各作品を見ることで、自分が考える「良い」アイデア・アプリというのがモヤっ
とイメージできるようになりました。しかし、審査の観点(基準)に照らしあわせて点数をつけていくと、私が良いと考えるものは、そこそこの点数にはなるけど、トップにはなりませんでした。

そこで、なぜそうなったのか、どういう基準ならよいのかを考えてみると、以下のような感じになりました。例えば、Twitterというサービスを考えてみると、これは非常に単純な仕組みで制約が多いものです。しかし、その制約があるからこそ、気軽に情報発信ができるという側面があります。また、シンプルであるため、ハッシュタグやリツイート等の新しい使い方をユーザが開拓し、その使い方が広まっていきました。つまり、当初想定されていた使い方を越えた利用の仕方がされたわけです。自分としては、このようなサービスがよいサービスだと思っています。

逆に、なんでもできます、的なのはあまり好きではないようです。
しかし、審査基準として「汎用性」とあれば、何にでも使えそうなDBやインフラ系のものが高得点になります。私自身そのような研究もしているので、汎用的なものの重要性はよくわかるのですが、地域活性化等をねらった場合、わかりやすさやシンプルさが重要な気がします。それで考えたのが、「単純性」「発展性」という基準です。これだと、上であげた例のようなサービスに得点が高くつきます。本当は、1つの基準でこのようなサービスを表せないか考えていたのですが、いまのところ成功していません。

このように、自分にとっての「良いアイデア・アプリ」というモヤっとしたイメージを、審査基準ということに落としこんだということになります。