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ゴールボールを始めたわけ(2):周波数から視覚と聴覚へ

■はじめに

ゴールボールを始めた理由がいろいろあるのでこんな文章を書き始めたのですが、単純に複数の理由が並列してあるというより、複数の興味がからみあってゴールボールにつながったという感じです。なので、今回のエントリ単体では直接ゴールボールまで辿りつかなかったです。今回は、科学教室で使っていた周波数というアイデアから視覚と聴覚を同一視した、ちょっと変わった動画までです。写真は、科学教室で使ったアプリの画面ダンプです。

■(少し難しいけど前提なので)フーリエ変換とは

もう10年くらい前になりますが、「フーリエ変換」と呼ばれる難しい理論の本質部分を小学生に分かるように教えたら面白いのではないかと思いついて、数年間試行錯誤して、実際に小学生向けの科学イベントをやりました。
小学生に教えるフーリエ変換(2014/04/06)


この時は、近所の子供たち向けのイベントでしたが、改良したものを昨年MUJIのイベントとして一般の子供たち向けにやりました。
「小学生に教えるフーリエ変換」再び!(2020/02/24)

フーリエ変換は、理系の大学2, 3年くらいで習う数学的な概念で、数学や物理学、情報を含む工学部の多くの学科で習います。無限級数や微分積分、三角関数などを用いていて、多くの人にとってはチンプンカンプンだと思います。ただ、現象としては日常的に体験していて、虹は典型的な例です。虹は、雨粒の屈折によって太陽光がいろんな色に分けられます。この場合、一つの色が一つの周波数(1秒間に何回振動する波かを表す)に対応します。大きな周波数の光は紫(紫外線とか)に見えて、さらに大きくなると紫外線と呼ばれます。音でいえば、高い音は大きな周波数(速い振動)で、低い音は小さな周波数(ゆっくりした振動)で、我々は様々な周波数の音が重なった音を聞いているわけです。

フーリエ変換は時間的に変化する波(音や光)を、その波の中にある周波数(ある高さの音やある色の光)がどれくらい含まれているかというように変換するものです。音にあわせて光のインジケーターが増えたり減ったりするイコライザーとかアナライザーとか呼ばれる機器がありますが、これらの機器は、基本的には入力された音の中に、どの周波数の音がどれくらいの量含まれているかを、おおまかな区間ごとに表示するものです。つまり、複数の音が重なったものを個々の音に変換するものです。

光でいえば、虹には、いろんな色が連続して変化しながら含まれていますが、もともとの太陽光にこれらの光が含まていたというわけです。太陽光ではなくて、例えば、ブラックライトの光をプリズムで分解してみると、紫外線のあたりの光だけが見えて、虹のように見えませんが、これはブラックライトの光が特定の周波数の光のみを含むからです。

■周波数で表すことの利点

周波数で表す利点はいろいろあると思いますが、小学生でも分かるような利点というとなかなか難しい気がします。ただ、日常的な現象の例として音や光を使うので、これらに関連したものがいいなと考えていたところ、TEDの動画でまさにドンピシャなものがありました。
ニール・ハービソン:「僕は色を聴いている」

この人は色覚に異常があり、色が見えず全てがモノクロに見えているそうです。そこで、21歳から小さなカメラを使って、このカメラで見えた色の周波数を適当な音の周波数に変換して、これをイヤホンで聞きます。つまり、タイトルにあるように、この人は「色を聴いている」わけです。これまで色は見たことないので、はじめのうちは、「この音は赤で、この音は青」というように学習する必要があります。その意味で、まったくランダムに音に色を割り当ててもよいのですが、似たような色は近い音で聞こえたほうが分かりやすいでしょう。人間に見える範囲の色と音は幅があり、その間は少しずつ周波数が変化しているので、端の色に端の音を割りあてて、あとは光の周波数を数式で変換して音の周波数に変えれば、近くに見える黄色の黄緑の音は近い音になります。このような変換が自然にできるのが周波数の良さです。

音には、楽しく聞こえる音や悲しく聞こえる音がありますが、上のような変換をしていると、「これは楽しい色」といった認識がうまれてくるそうです。すでにこのプレゼンの時には8年間このような経験をしているそうで、このような経験を積んでいけば、もともとは音のみの世界だった音楽にも色を感じるようになるそうです!例えば、モーツァルトの「夜の女王のアリア」を聞いたら、「黄色が多くてとてもカラフルです。いろんな周波数が混在しているからです。」だそうです!