研究ブログ

初等教育は協同の方向へ

学生の研究テーマの関係で、小中学校の授業を研究として見ることが多くなりました。中学校は学校公開や参観の時に見るくらいですが、小学校は研究授業を研究させてもらったり、お願いしてビデオに撮らせてもらったりして、かなりしっかり見ています。それで、最近の小学校教育に対して感じたことを書いてみます。

結論から書くと、協同による授業に重きをおかれている、コミュニケーションが重視されている、正解を教えるよりプロセスが重視されていると感じていて、大学や大学院の授業で自分が目指している方向と本質的には同じだなあ、と感じました。また、あたり前のことのような気もしますが、大学の教員と比較して、小学校の先生がたは互いの授業を見たり、授業を改善することにオープンだなあ、という感想も持ちました。このブログには教育関連のことを書いて、自分では授業改善に対する意識が高いようなつもりでいましたが、そんなことは当たり前のことであるというのを思い知らされて、ちょっと恥ずかしいです。

さて、研究授業を見学した小学校は、特に図工に力を入れているそうで、上述の協同、コミュニケーション、プロセスの重視という方針は特によく図工で実践されているそうです。見学した時期は10月で、学年は3年生、テーマは夏休みの思い出を絵に書く、というものでした。10月に夏休みの思い出というと、少し遅いような気がしますが、この講義に至るまでに何回かの準備があったそうで、まず、児童はどういうことを書きたいのか文章にする、どういうことに注意すると気持ちを図に表せるか技術的なことを学ぶ、下書きの絵を書く、といったことをすでに終えているそうです。その上で、見学した回では、3、4人の班に分かれ、班のメンバーの下書きを順番に見ていき、こうしたほうがいいんじゃないかとフィードバックをもらい、絵を修正する、というものでした。

コミュニケーションがとりやすいような工夫も様々にしてあり、上述した気持ちを表すポイント(例えば「背景」「大きさ」とか)を、フィードバックする時にも使うようにして、フィードバックが具体的に言えるようにしたり、グループワークの時は横一列になって絵を見たり、意見を交換したりしていました。この授業では、どういう絵がよいかではなく、気持ちがよく伝わればよく、そういう意味で正解はありません。また、まわりと一緒に改善していくプロセスが重視されている点も感心しました。他にも、国語の授業(1年生)では学校内で見つけた面白いことを他の人に聞かせて、その発表にフィードバックをするとか、社会の授業(5年生)では調べ学習の結果に他の人がコメントする、などコミュニケーションの場面が多く見られました。一方で、同じような意見ばかりになりがちなだな、という感じもあったので、いろんな意見から自分たちが結論を見つける興奮を味わってもらって、独自の意見を出すことの重要性をぜひ実感してもらいたいところです。

このような動きは、特定の小学校に限った話しではなく、文科省の方針として「協同」という言葉が謳われているそうです(確認はしていませんが)。小学校のこのような点は将来に明い希望を持たせてくれる一方で、大学に入った学生さんたちの授業での反応を見ていると、中学や高校を通ってくると、授業でのコミュニケーションや協同というのはすっかり忘れさられるようです。中学や高校では、どうしても受験が最終目的になりがちだからかなあ、という気がしています。もうちょっと言い方を変えると、学ぶことが手段となってしまい、多くの子には面白くなくなるんでしょうね。