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授業で発言しやすい仕組みはできるか?:掲示板による例

1/29日に、恒例になりつつある、半期に一度の「情報科学I:ネット時代の情報センス」(担当 南俊朗先生)を1コマだけ担当しました。また、今年度の後期に、初めて半年通して掲示板を利用して講義をしたので、掲示板のデータもあわせて、気付いた点などをまとめておきます。結論からいうと、学生はインタラクティブな講義は大歓迎で、使った掲示板システムのあまり問題なさそうだが、心理的に書き込みにくいという学生が多少いるということが分かりました。いままでのブログで書いたようなメリットはあるものの(例えば、こちら)、システムや運用の仕方が安定してきて、さらに次のステップが見えてきた、というように捉えています。
 
まず、掲示板の基本情報です(掲示板の技術的な詳細については別途まとめます)。情報科学IIIの掲示板はこちら(情報科学IIIの掲示板)からアクセスできます(一応、まだ使っているので、関係者以外は利用しないでください)。カラムごとに機能が分かれており、TAや先生のカラムには、右上の学籍番号に適切な文字列を入れないと書き込めません。これは、TAや先生へのなりすまし防止のためです。TAや先生のカラムからの書き込みには、自動的に"##Teacher"などのタグがつきます。リロードしなくても、新しい書き込みは、「n件の新着」と表示され、クリックすると示されます。自動でカラムに表示せず、一度クリックさせているのは、情報科学Iで大量の書き込みがあって、自動で表示すると新着を追うのが大変だからです。
 
前期の利用のあとに情報科学III用にリファクタリングした時に、グループ機能には未対応となったので、今回の情報科学Iのために、私がグループに対応させました。もともとの学生の設計が非常によく、簡単な拡張で済み、しかも、拡張前も後も安定して動きました。こちら(情報科学IのHTMLファイル)は、学外へのポートが空いていないマシンに掲示板を置いたので、静的なHTMLの形で保存したもの(つまり掲示板機能はない)を公開しています。グループのカラムが追加されていることがわかります。
 
どちらであっても、使い方も簡単ですので、難しいから使わない、ということはないだろうと思います。利用する時は匿名ですが、表示される名前を自分で好きに入力できます(右上の表示名ボックス)。情報科学IIIでは表示名は必須ではありませんが、これまでの情報科学Iでの知見から、名前があったほうが互いに意見交換しやすいと思ったので、表示名の入力を必須と(掲示板システム側で)しました。学籍番号も入力を必須としていますが、ここには何を入れてもよいので、個人を認証する機能ではありません。
 
次に、それぞれの講義についてです。一つは情報科学IIIという講義で、全学の(主に)1年生が対象です。回によるバラつきはあるものの、毎回の受講者は40〜50名程度です。内容はPHPでサーバーサイドプログラミングをやり、動的なWebページを作る仕組みを理解することです。そのため、必要となる技術はDBやHTML/HTTP、セキュリティなど多岐に渡り、けっこう大変だと思います。そこでまず、分からないところはじっくり勉強してもらえるように、反転講義の形式にしました。様々な概念の説明を予習資料として前週に掲示し、講義の時には実習をみんなで行い、分からないところを掲示板で聞く、というスタイルです。質問を想定しているので、グループは不要だろうと思い、こちらの掲示板では実装していません。コンピュータ系の実習ベースなので、掲示板はぴったりだと思っていました。つまり、掲示板は質問をする場所になります。
 
最終回にとったアンケートによると、学生側も掲示板の利用に関して肯定的な意見が圧倒的でした。ただ、実際には、それほど書き込みがあったわけではなくて、毎回の書き込みは100や200程度で、少ないときは50程度でした。内容は、実習に関する質問とその答えで、学生が私より先に答える、ということもしょっちゅうでした。また、アンケートによると、書き込みに抵抗を覚えるという学生が数名いました。他にも、最初のほうに、(私はそれほどとは思いませんでしたが)不適切な書き込みをした学生がいて、アンケートでも不快感を表した学生が少なからずいて、ちょっと驚きました。というのも、上で見せた情報科学Iの掲示板では、かなり不適切なものがいっぱいあり、ある程度はo.k.みたいな雰囲気があります。逆にいうと、情報科学IIIではなぜそのような雰囲気を作れなかったのかが気になります。もしかしたら、上述の不適切な書き込みの直後に、ある学生が掲示板上で強い態度でたしなめたのですが、これが掲示板への書き込みにくさを助長したのかもしれません。これに対して、私からは「ある程度はいいんじゃない」とコメントはしたのですが。また、そもそも、「質問があれば」と学生側から書かせることにしたのが失敗だったかもしれません。例えば、自分で読んでくる予習資料についても、「これこれについては理解しましたか?」などとこちらから聞けば、より質問がでやすいかもしれません。
 
もう一つは、今回が4回目の情報科学Iで、受講者は50名程度と聞きました。南先生のこの講義は大人気で、これまで150名程度だったので、今回は少なめです。内容は、識別子とプライバシーなどを扱います(講義資料はこちら)。こちらは、質問を通した実習でスキルをつけるというより、自分の考えを述べたり他の人の意見を聞くための掲示板です。受講者数をあらかじめ聞いた上で、10グループに設定し、最初に掲示板にアクセスした人から、順番にグループに割り振ります。そのため、5人程度で1グループとなります。グループ向け通知に名前とユーザIDが表示されるので、グループ内のメンバーは誰がいるかが分かります。名前は自由に変えられますが、IDは(単純には)変えられないので、何人いるかは(一応)確認できます。
 
全体の書き込みは上記ダンプファイルで見れますが、グループ内の議論を公開するのは適切ではないと考えたので、グループ内書き込みのカラム自体を削除しています(グループ向け通知は削除していません)。全体で1600程度の書き込みがあります。書き込み番号は、グループ内書き込みと共通の通し番号です。はっきり言って、全体掲示板の内容は、授業と関係ないものが多いですが、質問に対する答えを各自入力したり(230あたり以降や1400あたり以降)、グループ内議論の報告を全体でシェアしたり(例えば、700あたり以降)もあります。1400あたり以降は授業の感想と、こういうた掲示板システムを授業で使うことへの意見です。また、少数ですが質問もあり、だいたいはきちんと対応できましたが、いま改めて見直すとGPAに関する質問は見落しています。QAのカラムから入力してくれるといいのですが、なかなか別のカラムは使われないようです。
 
比較的荒れぎみの全体掲示板に対し、(公開しませんが)グループ内の書き込みはきちんと議論してくれたところが多かったです。ただ、2, 3のグループは、議論に参加しないメンバーが多く、議論にならなかった、というところもありました。1424番に学生が書いたように「グループの方が、匿名でも自分の発言に責任がもてる」ような気がしました。これは規模からくる参加意識の違いかもしれません。つまり、小さいグループでは、自分が参加しなきゃ、という意識が高い反面、人数が多い全体掲示板ではそういう意識が出にくい、とか。このように参加していない人を、広い意味での不満を持つ人と捉え、このような不満を吸いあげるための改良を引き続き考えたいと思っています。例えば、学生ごとの発言回数を表示するとか、「いいね!」やその逆の「よくない!」ボタンを発言ごとにできるようにしてみるとか、(システムを作るのは面倒そうですが)アバターや写真を採用するとか。