地球の夜のあかりと電気エネルギー問題
本日、関東地方は平年よりも12日早く梅雨明けしました。今年の日本付近の天候は全般的に季節の進行が早く、沖縄地方からスタートした夏はコンスタントに平年より早く到来してきました。そしていよいよ、関東地方でも節電の夏が始まったのです。
そう、節電の夏。今年の人々の大きな関心事はエネルギー問題です。そのエネルギー問題を啓発する時によく使われる素材が「地球の夜のあかり」の画像です。そこで本日、以下のサイトを公開しました。
夜の地球:DMSP衛星によるNighttime Lights Time Seriesデータ(1992年〜2009年:Google Maps版)
これは、DMSP衛星という夜のあかりを観測できる衛星を用いて作成した、各地の1年平均の明るさ画像です。明るい場所ほど明るい色づけになっており、日本では関東地方や関西地方、そしてそれらをつなぐ太平洋ベルト地帯が特に明るいことがわかります。厳密にいえばこの明るさは必ずしもエネルギー消費に比例するものではなく、関東地方などは振りきれてしまっていますが、発展途上国などであれば夜の照明がエネルギー消費を比較的よく表すことから、これを使った人口分布や経済活動などの推定に関する研究が進んでいます。
私のウェブサイトでも、夜の地球:DMSP衛星によるNighttime Lights of the Worldデータというページで、1994年から1995年の画像をずいぶん以前から公開していました。今回は別のデータセットを用いて、1992年から2009年の1年ごとの画像をグーグルマップで拡大縮小できるようにしました。以前のバージョンよりはだいぶ便利になったと思います。
この画像からは、いろいろなことがわかります。日本は1992年から2009年の間にあまり変化していませんが、中国にスクロールしてみると、この期間に大きく変化している(=明るくなっている)ことがわかります。もちろんそれに合わせて、同国のエネルギー消費量も飛躍的に拡大したのです。またこの画像の一種の「名所」となっているのが、韓国と中国に挟まれた某国です。ここ、周囲に比べると不自然に暗いですよね。1か所だけぼんやりとしたあかりが見えますが、他は真っ暗です。しかも国境線みたいなものまで見える。まあ、この国のエネルギー消費が少ないことは一目瞭然ですが、かといって北朝鮮を「エコな国」と呼んでいいのかは微妙なところです。
またこの画像は、災害時における被害推定にも関連しています。上記のページにもリンクがありますが、Power Outage Detection Images For The March 11, 2011 Japan Earthquakeには、東北地方太平洋沖地震後の東北地方における夜のあかりの変化が見えています。停電になると前日と比較して暗くなりますので、その変化を見るのです。曇っている日は使えない、解像度もあまり高くない、といった弱点があることから精密な被害推定にはあまり使えませんが、宇宙からリモートセンシングを用いて地球を観測すると、「地震の爪痕は地球の夜景の変化として見える」ことは覚えておいてよいと思います。
さて今回の大震災では、東北地方だけでなく関東地方でも、計画停電の影響で真っ暗な夜を迎えた地域がありました。この計画停電の心理的なインパクトは相当に大きかったと思います。大震災前には電気エネルギーの問題を真剣に考えてきた人は少なかったかもしれませんが、計画停電で否応なく現実を突き付けられ、さらに原発の再稼働問題が全国的に拡大することで、電気エネルギーの問題は全国民が影響を受ける問題に拡大してきました。
そんな中、本日の夜は、NHKでシリーズ原発危機 第3回 徹底討論 どうする原発 第一部・第二部という番組を見ました。原発に賛成する人たち、反対する人たちを同じテーブルにつけて、日本の政治や各国の動向も踏まえながらお互いに議論しようという趣旨の番組です。番組に寄せられる意見の数からしても、視聴者の関心は大変に高いことが伝わってきました。
私自身も、最近は電気エネルギー問題に関していろいろな資料を読んでいます。その過程で感じるのは、一人の人物、一冊の本を鵜呑みにして何かを判断するのは危険だということです。あくまで私の印象ですが、この分野では「ポジショントーク」、つまり自分の立場が有利となるように言説が組み立てられている点を割り引いて考えないと、公正な比較は難しいのではないでしょうか。本日のNHKの番組でも、自分に有利な点を話し、自分に不利な点は話さないという偏りは、両陣営に見られたと思います。両陣営のトークの真ん中ぐらいが正しいよ、というような率直な(?)発言もありました。
福島第一原子力発電所におけるこれだけの大事故を見てしまっては、再生可能エネルギーの推進に向かうのも自然な流れでしょう。ところが「脱原発」と叫ぶだけで満足してしまっては、「ではどのような再生可能エネルギーを使うの?」という具体的な話に発展していきません。そして、具体的な話に入っていくと、風力派もいれば太陽光派もいるし、地熱派もいる、また系統の問題や発送電の分離など、各論では一筋縄にいかない部分も出てきます。そこをすっ飛ばして、わかりやすいメッセージだけで満足してはいけないと私は思います。
そこで必要になるのがデータです。番組の最後には「正確なデータが欲しい」ということが繰り返し語られていました。データがなければ正しい判断はできない。政府や電力会社はもっと公正なデータをオープンにすべきではないか、と。
私も同じ考えです。情緒や思いつきではなく、公正なデータの分析に基づいて政策決定すること、これが今の日本で強く求められていると思うし、私もそういう部分に貢献したいと考えています。本日公開した「夜のあかり」データは、これだけで何かを判断できるものではありません。しかし今後は、大震災を機に浮上したエネルギー問題に対しても、何らかの有用なデータを出していければと考えています。
そう、節電の夏。今年の人々の大きな関心事はエネルギー問題です。そのエネルギー問題を啓発する時によく使われる素材が「地球の夜のあかり」の画像です。そこで本日、以下のサイトを公開しました。
夜の地球:DMSP衛星によるNighttime Lights Time Seriesデータ(1992年〜2009年:Google Maps版)
これは、DMSP衛星という夜のあかりを観測できる衛星を用いて作成した、各地の1年平均の明るさ画像です。明るい場所ほど明るい色づけになっており、日本では関東地方や関西地方、そしてそれらをつなぐ太平洋ベルト地帯が特に明るいことがわかります。厳密にいえばこの明るさは必ずしもエネルギー消費に比例するものではなく、関東地方などは振りきれてしまっていますが、発展途上国などであれば夜の照明がエネルギー消費を比較的よく表すことから、これを使った人口分布や経済活動などの推定に関する研究が進んでいます。
私のウェブサイトでも、夜の地球:DMSP衛星によるNighttime Lights of the Worldデータというページで、1994年から1995年の画像をずいぶん以前から公開していました。今回は別のデータセットを用いて、1992年から2009年の1年ごとの画像をグーグルマップで拡大縮小できるようにしました。以前のバージョンよりはだいぶ便利になったと思います。
この画像からは、いろいろなことがわかります。日本は1992年から2009年の間にあまり変化していませんが、中国にスクロールしてみると、この期間に大きく変化している(=明るくなっている)ことがわかります。もちろんそれに合わせて、同国のエネルギー消費量も飛躍的に拡大したのです。またこの画像の一種の「名所」となっているのが、韓国と中国に挟まれた某国です。ここ、周囲に比べると不自然に暗いですよね。1か所だけぼんやりとしたあかりが見えますが、他は真っ暗です。しかも国境線みたいなものまで見える。まあ、この国のエネルギー消費が少ないことは一目瞭然ですが、かといって北朝鮮を「エコな国」と呼んでいいのかは微妙なところです。
またこの画像は、災害時における被害推定にも関連しています。上記のページにもリンクがありますが、Power Outage Detection Images For The March 11, 2011 Japan Earthquakeには、東北地方太平洋沖地震後の東北地方における夜のあかりの変化が見えています。停電になると前日と比較して暗くなりますので、その変化を見るのです。曇っている日は使えない、解像度もあまり高くない、といった弱点があることから精密な被害推定にはあまり使えませんが、宇宙からリモートセンシングを用いて地球を観測すると、「地震の爪痕は地球の夜景の変化として見える」ことは覚えておいてよいと思います。
さて今回の大震災では、東北地方だけでなく関東地方でも、計画停電の影響で真っ暗な夜を迎えた地域がありました。この計画停電の心理的なインパクトは相当に大きかったと思います。大震災前には電気エネルギーの問題を真剣に考えてきた人は少なかったかもしれませんが、計画停電で否応なく現実を突き付けられ、さらに原発の再稼働問題が全国的に拡大することで、電気エネルギーの問題は全国民が影響を受ける問題に拡大してきました。
そんな中、本日の夜は、NHKでシリーズ原発危機 第3回 徹底討論 どうする原発 第一部・第二部という番組を見ました。原発に賛成する人たち、反対する人たちを同じテーブルにつけて、日本の政治や各国の動向も踏まえながらお互いに議論しようという趣旨の番組です。番組に寄せられる意見の数からしても、視聴者の関心は大変に高いことが伝わってきました。
私自身も、最近は電気エネルギー問題に関していろいろな資料を読んでいます。その過程で感じるのは、一人の人物、一冊の本を鵜呑みにして何かを判断するのは危険だということです。あくまで私の印象ですが、この分野では「ポジショントーク」、つまり自分の立場が有利となるように言説が組み立てられている点を割り引いて考えないと、公正な比較は難しいのではないでしょうか。本日のNHKの番組でも、自分に有利な点を話し、自分に不利な点は話さないという偏りは、両陣営に見られたと思います。両陣営のトークの真ん中ぐらいが正しいよ、というような率直な(?)発言もありました。
福島第一原子力発電所におけるこれだけの大事故を見てしまっては、再生可能エネルギーの推進に向かうのも自然な流れでしょう。ところが「脱原発」と叫ぶだけで満足してしまっては、「ではどのような再生可能エネルギーを使うの?」という具体的な話に発展していきません。そして、具体的な話に入っていくと、風力派もいれば太陽光派もいるし、地熱派もいる、また系統の問題や発送電の分離など、各論では一筋縄にいかない部分も出てきます。そこをすっ飛ばして、わかりやすいメッセージだけで満足してはいけないと私は思います。
そこで必要になるのがデータです。番組の最後には「正確なデータが欲しい」ということが繰り返し語られていました。データがなければ正しい判断はできない。政府や電力会社はもっと公正なデータをオープンにすべきではないか、と。
私も同じ考えです。情緒や思いつきではなく、公正なデータの分析に基づいて政策決定すること、これが今の日本で強く求められていると思うし、私もそういう部分に貢献したいと考えています。本日公開した「夜のあかり」データは、これだけで何かを判断できるものではありません。しかし今後は、大震災を機に浮上したエネルギー問題に対しても、何らかの有用なデータを出していければと考えています。