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論文紹介:クラウドによって作られる”科学”

論文紹介 2018/8 Ikkatai Y, Mckay E, Yokoyama M H (in press) Science created by crowds: a case study of science crowdfunding in Japan. Journal of Science Communication. Science created by crowds: a case study of science crowdfunding in Japan

クラウドによってつくられる科学

一方井祐子、横山広美
概要
 科学は誰がどのように決めるのか。「境界画定作業(“Boundary Work”)」の議論は長く続けられてきました。中でも各ジャーナルがその時々に判断をして線引きをするジャーナル共同体(“journal community”)の概念はピアレビューシステムの根幹です。 今回、我々は、近年盛り上がりを見せる科学のクラウドファンディングでは、従来の科学にある予算申請時のレビューがないことに注目をしました。そして、従来の科学は、ジャーナル共同体によるレビューの前に、この論文で新たに定義した予算共同体(“budget community”)によるレビューがあることを指摘しました。 さらに、予算共同体から自由になった、クラウドファンディングによって生まれた科学を”クラウドが支援する科学(Crowd-supported science)”と呼び、この特徴について議論しました。

対象と方法
・ 一般市民(男女950名)と研究者(クラウドファンディングの参加経験がある20名)を対象にオンラインのアンケートを行い、クラウドファンディングのレビューシステムについてどのように考えるかを選択式で尋ねました。

結果

・ 研究者の90%(18名)は、クラウドファンディングのレビューシステムは現行のままで良く、従来の科学に見られるジャーナル共同体のピアビューは必要ないと回答しました。 ・ 一方、一般市民の約30%(306名)は、クラウドファンディングにもジャーナル共同体によるピアレビューシステムがあるとよいと回答しました。

考察
・ 研究者と一般市民の間には、クラウドファンディングのレビューに関して認識のずれがあることが分かりました。
・ 一般市民の約30%がクラウドファンディングにもジャーナル共同体によるピアレビューがあった方がよいと回答したことは、研究不正や疑似科学への不安からくるものかもしれません。

・ ボランティアの科学者による緩やかなピアレビュー(“gentle-peer review”)などを取り入れることによって一定の質が担保され、一般市民の不安感も拭えるのではないでしょうか。
・ クラウドファンディングよりクラウドが支援する科学という新しい領域が生まれる可能性があります。この領域では、研究成果のアウトプットは論文だけに留まらない可能性があります。
・ クラウドファンディングは公衆の科学への参加を促進させる方法のひとつです。

 論文 Ikkatai Y, Mckay E, Yokoyama M H (in press) Science created by crowds: a case study of science crowdfunding in Japan. Journal of Science Communication.