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「大谷翔平の満票でのMVP選出」の持つ意味は何か

現地時間の11月18日(木)、大リーグで2021年の最優秀選手(MVP)が発表され、ナショナル・リーグはフィラデルフィア・フィリーズのブライス・ハーパー選手、アメリカン・リーグはロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が選出されました。ハーパー選手は2回目、大谷選手は初の受賞です。


大谷選手はMVPの選考を行う全米野球記者協会に属する30名の記者の全員が1位の票を投じており、1931年にMVPが制定されてから史上19人目、アメリカン・リーグとしては2014年のマイク・トラウト選手(エンゼルス)以来7年ぶり11人目の満票での選出となりました。


今回のアメリカン・リーグのMVPについて、打撃に限れば投票結果で第2位となったブラディミール・ゲレーロ・ジュニア選手(トロント・ブルージェイズ)や第3位のマーカス・セミエン選手(トロント・ブルージェイズ)も十分な成績を残しています。


そのため、大谷選手の選出は当然の結果というものではありませんでした。


しかし、大谷選手は投手としても1年を通して活躍し、勝利数、投球回数、奪三振数のいずれにおいても球団最高の成績を残しています。


このように、打者としても投手としても優れた成果を上げたことが高く評価された結果が、今回のMVP受賞となったといえるでしょう。


近年の大リーグでは野球統計学の発展と多様化により、ある選手が同じ守備位置の控え選手に比べてどの程度勝利に貢献したかを推計するWARなどの指標が選手の評価のために活用されています。


投打のいずれにおいても活躍した大谷選手は、そうした新しい指標の枠組みそのもので評価できる部分と、そのような手法では覆いきれない部分とが何であるかをわれわれに教えます。


それとともに、どれほど野球統計学的な手法が発達しても、最終的に球を投げ、打ち、拾うのは一人ひとりの選手であること、そしてこうした一つ一つの取り組みの総体が野球の試合であることを、改めて示したと言えるでしょう。


その意味でも、今回の大谷選手のMVP受賞の持つ意味は、野球史の観点からも決して小さくないのです。


<Executive Summary>
What Is a Meaning of Mr. Shohei Ohtani's Efforts for Unanimous American League MVP? (Yusuke Suzumura)


Mr. Shohei Ohtani of the Los Angeles Angels won 2021 American League MVP on 18th November 2021. In this occasion we examine a meaning of this result seen from the Baseball History.