研究ブログ

Kox, Lorentz on quantum theory

A. J. Kox, Hendrik Antoon Lorentz's struggle with quantum theory, Archive for the History of Exact Sciences 67 (2013): 149-170.


電子論やローレンツ変換で知られるローレンツの量子論への貢献を調べた論文.ローレンツの黒体放射の問題に関する態度は,彼の物質観(電子論)に強く影響を受けている.ローマ講演では,レイリー・ジーンズの法則,特に等分配則の問題の明晰な分析を行った.等分配則の一般性を示すときに,ギブスの統計力学理論が重要な働きをしている.彼は新しい考えを検討するときに,きわめて注意深かったし,技術的な詳細を修得しようとしたが,それは,できるかぎり古典論を維持するという目標のために生かされた(新しい量子力学は,量子仮説を不可欠のものと見る新しく若い世代から登場した).ローレンツは古典物理学者であった.しかし,ローレンツは,新しい考えに対して完全に否定的だったわけではない.それは,光量子に対する態度の変化に見てとることができる.