研究ブログ

天理図書館の利用とオンライン蔵書目録における和漢古書の検索について

 弊館(天理図書館)のホームページ一新にあたり、弊館の利用に関して案外知られていないのではないかと思われること、ならびにオンライン蔵書目録における和漢古書の検索について記しておこうと思います。

 弊館では、どなたでも、貴重書を除く和漢古書(一般本・準貴重書)の現物を当日申請で閲覧いただけます。江戸時代以降の和漢古書の多くはここに属します。

 私が知る範囲ですと、国立国会図書館国立公文書館東京都立中央図書館大阪府立中之島図書館西尾市岩瀬文庫名古屋市蓬左文庫神宮文庫(木・金・土曜)、東京大学総合図書館京都大学附属図書館九州大学附属図書館中京大学図書館(要利用者登録)などが同様の取り扱いをしています。(訪問の際は各自でご確認願います)

 また、弊館内では、指定品等をデジタル画像で、綿屋文庫や吉田文庫の大部分をマイクロフィッシュやCD-ROMで、それぞれ当日申請でご覧いただけます。デジタル画像やCD-ROMのある資料については、来館者に限り当日複写が可能です。

 特別本(貴重書など)については、2週間以上の余裕を持った予約が必要で、平日開館日に閲覧可能です(特別本閲覧停止期間を除く)。閲覧時間は9:00-16:30で、12:00-13:00の間は出納を行っておりません(午前から引き続いての閲覧は可能です)。準貴重書(配架場所が「貴重書庫別置」の資料)は当日申請でご覧いただけますが、閲覧可能日時は特別本に準じます。

 一般本・準貴重書の多くはOPACで検索可能です。特別本については、一部が冊子体目録に収載されているものの、OPACやカード目録を併用して探していただく必要があります。冊子体目録のうち、絶版となった『天理図書館稀書目録和漢書之部 第一(~三)』『吉田文庫神道書目録』『天理図書館稀書目録洋書之部 第一(~三)』『Catalogue of special books on Christian missions. Vol.1(・2)』は透明テキスト付PDFファイルを公開しており、目録を検索することができます。カード目録は館内に設置しています。書名・著者名・書架記号の3種類がありますが、書架記号をお使いになることをお勧めします。

 OPACでは、詳細検索で「請求記号」欄に「*//イ*」と入力すると貴重書に限定して検索することができます。ただし、OPACへは順次データを追加しているものの、冊子体目録に収載されている特別本は未入力であり、ごく一部の貴重書にとどまることにご留意ください。

 請求記号について、OPACではシステムの都合上「//」で各段(1~3段)が区切られていますが、弊館『稀書目録』などでは「-」で区切っています。また、出納業務の都合上、一般本・準貴重書ではOPACの「請求記号」において、「曽根崎心中」(H911.7//699)のように冒頭にアルファベットが記載されているもの、「豪傑川上作太郎」(B913.77//139//10講)のように3段番号末尾に「講(並・荷)」が記載されているものがありますが、これらは論文引用の際などは削除ください(例:911.7-699、913.77-139-10)。

 さらに、館内設置の『天理図書館 図書分類表 新訂版』などで書架記号を調べることによって、分類ごとの一覧も検索できます。たとえば、「日本文学」(900番台)の「詩歌」は書架記号「911」ですので、「請求記号」欄に「911*//イ*」と入力して検索すると、「日本文学」の「詩歌」に分類されるOPAC入力済の貴重書が一覧できます。なお、弊館の書架記号は日本十進分類法(NDC)2版を基としていますが、異同もままありますのでご注意ください。オンラインでジャンル別に検索したい場合はOPACの「分類検索」で分類記号を用いてお探しください。書架記号と分類記号にはまま異同があります。

  ほかにも、このように条件を指定することによって、最近登録された和漢古書を検索することができます。こうすると貴重書に限定できます。(力業なので若干の遺漏はあります。)

 

 ところで、大学図書館等、NACSIS-CATの接続機関において古典籍(和漢古書)の書誌を入力する際には、「目録情報の基準」に従い、「和漢古書に関する取扱い及び解説」(PDF)および「コーディングマニュアル(和漢古書に関する抜粋集)」(PDF)に準拠しています。なお、後者2点は『日本目録規則 1987年版 改訂2版』(NCR87R2)に準拠しています。

 和漢古書については、「和漢古書に関する取扱い及び解説」に、

 原則として、和古書は1868年以前、漢籍は1912年以前のものを和漢古書とする。
 ただし、幕末のもの、清朝末期のものにおいて、近代的印刷技法・出版形態によって大量出版されたものについては、和漢古書扱いとしなくてもよい(版毎に書誌レコードを作成し、その書誌レコードを共有する)。
また、明治期/民国以降のものであっても、和漢古書としての取扱いが適当と思われる書写資料、少数部数の刊行物などの場合は、和漢古書扱いとする。
 和漢古書は、記述対象資料毎に特有な記述が必要であるため「稀覯本」扱い(「目録情報の基準.第4 版」4.2.3 )とし、記述対象資料毎に別書誌レコードを作成する。また、その旨を最初の注記として記録する。
    例) NOTE: 和漢古書につき記述対象資料毎に書誌レコード作成
 和漢古書として登録されたレコードは、原則として一所蔵一書誌であるので、他機関とのレコード調整は行わない。

とあり、弊館では「和漢古書につき記述対象資料毎に書誌レコード作成」とNOTEフィールドの冒頭に入力しています。したがいまして、弊館OPACではキーワード「和漢古書につき記述対象資料毎に書誌レコード作成」を書名等と同時に検索することで、和漢古書に限定した検索が可能です。

 他館では、「{和書;和古書;漢籍;稀覯本}につき記述対象資料{毎;ごと}に{書誌レコード;書誌}作成」など、「~につき」や「書誌レコード作成」などの部分にバリエーションが見られますので、CiNii Booksなどで大学図書館等所蔵の和漢古書を検索する際には、キーワード「記述対象資料毎」もしくは「記述対象資料ごと」を書名等と同時に検索すると和漢古書に限定することができようかと思われます。(なお、表記の揺れについては、山中秀夫氏「現代の情報環境における和古書総合目録構築に関わる研究」の付録A〈pp.194-199〉などを参照)

  また、YEARフィールド(刊年・書写年)については、「コーディングマニュアル」に、

出版年不明の場合は、推定できる範囲までは数字で記録し、推定不能箇所はハイフンを記入する。まったく推定不能の場合のみ4桁ともハイフン「----」を記入する。

とあり、「出版年」の指定でもある程度は限定することができます。

 弊館では「出版年」が特定できない場合でも、原則として「[江戸後期 (18--)]」のように年代推定を行っていますので、OAPCの詳細検索で「出版年」を「1868」以前(清代以前の場合は「1912」以前)と指定していただくことでも、和漢古書を含むかたちで検索することができます。ただし、洋書を含みます。

 

 なお、写本については、「コーディングマニュアル」に、

写本(和古書)、鈔本(漢籍)の場合は、その旨を記録する。
    (例) NOTE:写本
    (例) NOTE:鈔本

とありますので、先ほどのものにキーワード「写本(鈔本)」を追加していただくと、写本(鈔本)だけを検索できます。また、GMDフィールドに「d」と入力することになっており、CiNii Booksですと詳細検索の「資料種別」欄で「文字資料(書写資料)」を選択すると、写本(鈔本)に限定することができます。

 CiNii Booksでは詳細検索の「統一タイトルID」で検索することによって、著作単位で検索できる書誌もあります。たとえば『源氏物語』の「統一タイトルID」「EA00316498」で検索すると、『源氏物語抄』などを除いた形で表示されます。「統一タイトルID」は国文学研究資料館の「著作ID(WID)」(『源氏物語』は「2357」)とも連携しており、CiNii Booksのフリーワード検索で「KOTEN:2357」と入力すると、『源氏物語』に限定して検索することが出来ます。ただし、これらの検索では統一書名典拠を記述している書誌しか表示されませんのでご注意ください。(必ずしも各書誌に統一書名典拠へのリンクが張られているわけではない)

 

 国立国会図書館については、NDL ONLINEの詳細検索のタブで「和古書・漢籍」を選択すると、和漢古書に限定することができます。刊・写、和古書・漢籍についても、選択して検索することができます。マイクロを除外したい場合は、「資料形態」欄で「冊子体」を選択します。

 公立図書館については、NACSIS-CATの参加館ではありませんので、先述の手法は適用できません。確定できない場合でも出版年を必ず入力しているのであれば、出版年によるフィルタリングが有効かもしれません。実際には個別対応となるのではないかと思われます。情報がありましたらお寄せいただけると幸いです。

 

 以下、若手研究者のために贅言します。

 先行研究に引かれている弊館蔵書について、請求記号に以下の記号があれば、多くの場合それぞれの冊子体目録で書誌が確認できます。

イ……貴重書(和漢書)……『天理図書館稀書目録 和漢書之部 第1~5』
イ……貴重書(洋書)………『天理図書館稀書目録 洋書之部 第1~4』
れ……綿屋文庫(連歌)……『綿屋文庫連歌俳諧書目録 第1・2・補遺』
わ……綿屋文庫(俳諧)……同上
ざ……綿屋文庫(雑俳)……同上
吉……吉田文庫………………『吉田文庫神道書目録』
古……古義堂文庫……………『古義堂文庫目録』
近……近世文書………………『近世文書目録 第1~5』

 上記の内、『天理図書館稀書目録 和漢書之部 第1~3』『天理図書館稀書目録 洋書之部第1~3』『吉田文庫神道書目録』は「絶版ライブラリー」で透明テキスト付PDFを公開しています。いずれも本文が検索可能で、『天理図書館稀書目録 和漢書之部 第1・2』については請求記号を追記しています。近世文書については冊子目録未収分の概要を所蔵近世文書一覧(冊子目録未所収分)にて、冊子目録所収分を含む一点単位の目録(個別史料目録)を館内端末にて公開しています。
 また、『天理図書館稀書目録 和漢書之部 第4』は刊本、『天理図書館稀書目録 和漢書之部 第5』は写本の目録ですので、刊写の別が分かっている場合には片方は検索の対象から除外できます。
 なお、貴重書の場合は、OPACやカード目録に収載されている可能性にもご留意ください。
 記号がなく、請求記号が数字のみの場合は、準貴重書か一般本です。OPACかカード目録に収載されています。
 書名や著者名しか記されていない場合は、索引などから検索します。
 上記、冊子体目録の索引やOPAC、カード目録をご覧ください。
 各冊の索引以外では、『天理図書館稀書目録 和漢書之部 第3』には第1~3の書名・人名索引が、『天理図書館稀書目録 和漢書之部 第4』には版種索引が附属しています。版種索引は古活字版や宋・元版、朝鮮版など、版種別に検索できる索引で、抜刷の形でも頒布しています。稀書目録の索引は書写者でも引けるところに特徴があります。

 上記冊子目録収載資料の請求記号について、『天理図書館稀書目録』は記載通り、『綿屋文庫連歌俳諧書目録』『吉田文庫神道書目録』は『跡云艸』(れ1.1-97)、『古事記』(吉11-1)のように分類記号と2段番号以下を合成、『古義堂文庫目録』は『易経古義』(古1-1)のように冒頭に「古」を追加ください。

 また、原則として、『国書総目録』(日本古典籍総合目録データベース)で「天理」とあるものは貴重書・準貴重書・一般本のいずれか、「天理 古義堂」「天理 吉田」「天理 綿屋」とあるものはそれぞれ古義堂文庫・吉田文庫・綿屋文庫です。

 それでも特定できない場合は、弊館特別本閲覧係にお問い合わせください。

 資料の状態によって、複写・閲覧・展覧会出品、それぞれの諾否は異なりますので、こちらもそれぞれお問い合わせいただければと存じます。

 弊館稀書目録では極力、書誌によって原態を理解できるように努めています。
 稀書目録に収載されていても、研究上、手つかずと言って良い資料は相当数にのぼると思われます。是非、ご自身の専門領域に関する箇所だけでもご一読くださいませ。