カウンセリング研究ブログ

多元的ブリーフセラピーの効果研究

本当に久しぶりの更新になります。学科長になったこともあり、なかなか時間が取れません。まあ、ぼやきはともかくとして、新しい成果を書き込みたいと思います。

すでにあったデータをまとめたものですが、私なりに工夫して作った短期療法の方法、多元的ブリーフセラピーの効果研究がかたちになりました。かなり前に出来上がっていたのですが、こうしてアップする暇もなくて、やっと初公開です。

効果量の算出と臨床的有意性の検定を行いました。効果量とか、臨床的有意性の考え方は、まだまだ日本の臨床心理学の世界では馴染みがないのですが、世界的なスタンダードに従った効果研究です。もちろん、いろいろな限界を含んでいるのですが。

結果は驚きです。我ながら驚きました。効果量が大であったり、臨床的有意性がクリアされたりで、出木杉の結果なのです。おそらく、数多くのバイアスを含んでいることは確実でしょう。しかし、脂の乗り切っていた頃の私の治療成績を反映しているとも言えるわけでして、きわめて私的な効果研究と考えていただけると幸いであります。

論文執筆にあたって必須の、効果量と臨床的有意性については、また機会を改めて書かせていただこうと考えています。では、効果研究の要約部分のみ記載することにします。この論文は、おそらく来年度に発表できるでしょう。

要約


 本論は、筆頭著者の私設心理相談室に来談したクライエントについてセラピーの成績を分析した、きわめて個人的な効果研究である。

 第一研究における分析の対象は、ある期間に私設心理相談室に来談した53人である。彼女らを、時間制限短期療法である多元的ブリーフセラピーに導入した。インテークから初回セッションまでが○○±○○日、初回セッションから最終セッションまでが○○±○○日、最終セッションからフォローアップまでが○○±○○日、平均セッション回数が○±○回、であった。対象者には、インテーク、最終セッション、フォローアップの際に、STAIPOMSを計3回実施した。分析の結果、フォローアップの時点で、STAIの特性不安(d=1.47)POMSの緊張-不安(d=1.31)、抑うつ-落込み(d=1.74)、怒り-敵意(d=0.93)、活気(d=0.88)、疲労(d=0.78)、混乱(d=1.20)について、中から大の効果量(d=0.781.74)が認められた。

 第二研究における分析対象は、上記の心理尺度についてインテーク時に逸脱値を示した高得点者である。フォローアップの時点で、STAI特性不安(N=45, d=1.79, 改善率68.89%, 臨床的有意性[アリ])POMS緊張-不安(N=35, d=1.23, 改善率71.43%, 臨床的有意性[アリ])抑うつ-落込み(N=43, d=2.49, 改善率74.42%, 臨床的有意性[アリ])怒り-敵意(N=26, d=1.81, 改善率80.77%, 臨床的有意性[アリ])活気(N=34, d=1.29,改善率64.71%, 臨床的有意性[ナシ])疲労(N=30, d=1.52, 改善率60.00%, 臨床的有意性[ナシ])混乱(N=41, d=1.69, 改善率70.73%, 臨床的有意性[アリ])について、効果量の算出と臨床的有意性の検定を行った。その結果、すべての変数が大の効果量を示し(d=1.232.49)、活気と疲労以外の5変数に臨床的に有意な低減効果が認められた。

 以上の結果から、多元的ブリーフセラピーは、不安、抑うつ、怒りなど、クライエントの気分の落ち込みや感情の高ぶりに対して、私設心理相談室という構造的枠組みのなかできわめて高い静穏効果を発揮することが理解された。