研究ブログ

【再掲NIED-DILメールマガジン:6回】災害被害統計から想像する

 Maplecroft (メイプルクロフト) というリスクコンサルティング会社が出し
ているナチュラル・ディザスター・リスク・インデックスという指標がありま
す。その会社が発表した2010年のランク付けで、世界一番リスクの高い国とし
てバングラディシュがランクされました。ちなみにランクを高い順に見てみる
と、バングラディシュ以下は、インドネシア、イラン、パキスタン、エチオピ
ア、スーダン、モザンビーク、ハイチ、フィリピン、コロンビアと続きます。
  インドネシアやハイチなどは近年の地震による被害と結びついて、想像しや
すかったのですが、バングラディシュが一番にランクされるのは、なぜだろう
と疑問に思いました。
 以前所内の学習会で、バングラディシュを襲った過去の大きな災害、特に
1970年と1991年に大型のサイクロン災害について土地環境の視点から学ぶ機会
がありましたが、そのとき、50万人および14万人の死者が出たというデータに
驚くと同時に、その被害の内訳を示した表を見て「おや」と疑問に感じたこと
を思い出しました。
  それは、被害に関する数字です。建物被害や人的被害や家畜の被害が列記し
てあったのですが、例えば、1991年のサイクロン災害では、家屋被害1,630,543、
人的被害 (死者・行方不明)140,000、家畜被害584,471となっていたからです。
そう、人的被害が大まかな数字のように思え、一方、家屋被害、家畜被害が一
桁まで細かく書かれていたからです。そしてバングラディッシュという国は、
どういう国なのか、調べたところ、いわゆるカースト制、宗教、そして家畜の
意味、などなど数字の背景が見えてきました。また1970年における死者・行方
不明者に関しても、正確な数字はなく、20万人から55万人とされるなどの報告
も各方面の資料でも見ました。
  災害があると被害に関する数字が出ますが、どこからその数字が出されたか、
その数字から何が想像できるか、考えて見ることは非常に重要な視点だと思い
ました。ちなみにメイプルクロフトのサイトは、
http://www.maplecroft.com/about/news/natural_disasters.html です。

 2010年7月5日発行  第6号
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「自然災害情報の収集・発信の現場から」
                           発行:防災科学技術研究所 自然災害情報室

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