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【再掲NIED-DILメールマガジン:4回】災害情報(1)

□■災害警報(1)■□
2008年2月、調査で、ハワイの太平洋津波警報センター(PTWC)に行く機会が
ありました。ハワイでの調査では、太平洋津波警報センター(PTWC)の所長に
インタビューしましたが、まず興味を引いたのは、メディアの役割でした。所
長は、公的な津波避難警報のためには出来事のまえ3時間を必要とし、時間的
な制約がありすぎるが、メディアは早いのが有利な点であるとしていました。
しかし様々な制約もあり、例えば国際的な枠組みの中での警報では、各国政府
が警報の判断をするため、メディアにはそのような権限をあたえていない、と
のことでした。今年2月のチリで起こった地震津波の被害におけるチリ海軍の
対応を思い出しました。

次に興味深かったのは警報判断の基礎となる科学技術やデータについてです。
普通警報は、現状や過去のデータをもとに判断すると思うのですが、特に津波
警報について所長は、津波は、もともとの地震のデータにも誤差があるし、タ
イドゲージ(検潮器)にも誤差がある。それらをまとめて判断するため、警報
は、99.99パーセントがエラーとなるとおっしゃっていました。過去の
データについてもあまり参考にならないこと、それは、過去のデータの出し方
や装置などが日進月歩で変わってきており、信頼しにくいからとのことでした。

これらから、総じて気づいたのは、災害警報とは、警報を出す側からは、科学
技術の進展と実際警報を出す担当者及びその所属機関の力量のコンビネーショ
ンによるものだということで、これにその警報の受け手、地域住民の心理や社
会状況、そして諸制度などの変数が加わるというなかなか難しい問題だという
ことでした。
2010年5月6日発行  第4号
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「自然災害情報の収集・発信の現場から」
            発行:防災科学技術研究所 自然災害情報室

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