研究ブログ

オンライン授業(オンデマンド型ブログ講義)をやってみた話

個人ブログに書いたものですが、こっちに書いておいた方がよい気もするので転記します。

https://negadaikon.hatenablog.com/entry/2020/07/31/000506

 

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 オンライン授業の実践について、やったことの記録を備忘のために書き残します。この教育効果については、半期だけでどれだけの成果が出たかは議論しにくいとは思うので、その評価は置いておきます。

 

 いわゆるオンライン授業には、①テレビ会議を使った同時双方向型というのと、②授業資料をダウンロードして期限までに課題に取り組むオンデマンド型というのと、2種類があります。

 私は講義系科目は全部オンデマンド方式で実施しました。

 最初は昨年度の授業で使用したプリントとPowerPointのスライドをPDFにして大学のLMSにアップしようかとか、スライドに音声を吹き込んで動画化し、個人で取得したYoutubeアカウントにアップしようかとか、色々と考えたのですが、スマホで受講する学生が通信制限が来たときに、それでも重いのではないか?と考えて、家族と話しているうちに閲覧にパスワードがかけられるブログ形式がよさそうだという結論にいたり、この方式を採用しました。

 URLも検索除けしており、知らない人は閲覧ができないようにしています。

 

 オンデマンド授業は、一応要件がいくつかあって、文科省の説明スライド(PDF)によると

  1. 当該授業を行う教員若しくは指導補助者が当該授業の終了後すみやかに インターネットその他の適切な方法を利用することにより、設問解答、添削指導、質疑応答等による十分な指導を併せ行うことが必要
  2. 当該授業に関する学生の意見交換の機会の確保が必要

となっていました。自宅で受ける学生に課題を投げっぱなしにするなという趣旨だと思います。

 1については、出席をGoogleフォームで取るときに合わせて質問を募集し、集計後可及的速やかに匿名でブログ上に回答を乗せることで解決しました。

 2は、大学のHPに掲示板を作るとか、LMSとかにコメントができるようになっていれば十分なのだそうですが、授業連絡用でLINEオープンチャットを作り意見交換の機会を確保しました(確保しただけであんまり機能しなかったのと、ちょっとそのほかにもデメリットはあったので、後述します)

  こんなブログ授業。学生も、最初は、なんじゃこりゃと思ったみたいなんですが、終盤になると意外に好評だったので、秋学期もオンラインで授業をする方の参考にもしなるのであれば幸いです。

 

画面例 

 

ブログ授業・概要

  • ブログは、使い慣れているのではてなブログを利用しました。
  • 1科目につき1つブログを作成しました。
  • 授業なので広告を入れたくないなと思い、有償版にアップグレードして使いました。
  • そもそもリンクを知らなければブログにたどり着けないのですが、更に、ブログの閲覧にはパスワードを設定しました。このパスワードはLMSを通じて学生に周知しました。念のため学生にも第三者への配布を禁じる指示を出したので、機密性は保持できたかと思っています。
  • オンデマンドの場合、授業資料は授業開始48時間前までに余裕をもって配信するように大学から指示があったので、前々日の午前0時の配信を基本にしました。火曜授業の場合は、日曜になったら見られる状態にしておくということです。
  • ブログは、前年度の授業プリントをベースにして、講義録を文字起こしする形にしました。
  • できるだけ写真や図版、参考となるサイトへのリンクを盛り込みました。出所が確かなものは(著作権法に抵触していないものを確認して)Youtubeの動画も入れました。昨年度作成したPowerPointスライドがある科目は、スライドをJpeg形式で出力し、要点を書きだしたスライドを文章中に図版として挿入することで、授業の実況中継をしつつ板書も再現するような見え方になったみたいでした。
  • 授業プリントはPDF化して、LMSを通じて学生に配信しました。
  • 毎回、出席確認用にGoogleフォームを作成して、記事の末尾にリンクを貼りました。氏名、学籍番号、所属などを入れてもらうほかに、出席を確認するための最低限の小テスト(4択クイズ程度)を付しました。長文を「読む」こと自体を課題としてとらえました。期末課題も出すので、講義中の課題は極力少なくすることを方針にしました。忙しければ読み飛ばす人が出てもやむを得ないが、その人は期末でしんどくなるだろうという考え方です。
     

ブログ授業・良かった点

  • 資料の提示のしやすさ。普段の対面授業で使いにくいウェブコンテンツ、動画へのリンクなどがふんだんに貼れました(通信量の負担はあるので、参考資料として位置づけ、見たい人だけ見ればいいということにしていました)。でも文章の途中に動画があると気分転換になったようです。あと、CiNiiなどでPDFがある論文へのリンクを貼ったりとか、資料を見せるときに国立国会図書館デジタルコレクションへのリンクを貼るとか、対面だとあとで読んでおいてね。としか言えないところをもう少しフォローできる点では魅力を感じました。
  • 普段耳で聞いていると何ていったかわからなくて素通りしてしまう単語が、繰り返し読むことでちょっと意味がわかってきた、という感想が複数ありました。板書が出来ない代わりに、目で見て理解が深まるケースはあったようです。
  • 復習しやすいという声は多数もらいました。
  • はてなブログの場合、はてなキーワードの存在が思いのほか威力を発揮しました。専門用語の解説にはコトバンクなどネット辞書へのリンクも示したのですが、それ以外にも、難しい単語の意味にリンクがあって助かった、みたいな感想が散見され、思いがけずよかったことの一つでした。
  • 自分の好きな時間に早く終わらせて、通常の授業時間にほかの科目の課題に充てられて助かった。などペース配分にも貢献したらしいのは良かったです。そうでなくても課題が多そうなので少しでも負担を減らせればと思っていました。
  • 質問のフィードバックがしやすい。答えるのはそこそこ大変ですが、全質問に回答でき、その答えを返せるというのは、「何聞いてもいいんだ」という雰囲気の醸成には役立ったようでした。対面授業の通常の時間内で回答しているとどうしても全部にこたえきれないので、この方式は良かったと思っています。対面に戻った際にも、授業参考ブログとして使えるんじゃないかなと思いました。
     

ブログ授業・残った課題

  • 対面がいいという要望に最後まで答えられなかったのはしんどかったです。長文を読むのが苦手な学生に力を付けてほしいと思ってしたのですが、耳から聞いたほうがよく理解できる子は一定数はいると思われ、この方式が万全ではないとは思います。留学生も、わからないところは適宜コピーして翻訳にかけてくれればよいのですが、どの程度理解できたか、評価が難しいです。
  • 学生の意見交換の場として、ある程度匿名で会話できるLINEオープンチャットは良さそうに思えたのですが、携帯電話の契約などによって入れないという学生からの問い合わせが相次ぎ、本格運用を断念して、LMSで流している情報とほぼ同じお知らせを流す状態になった点は課題を残しました(全員が参加していればよいのですが、チャットに入れる学生と入れない学生で試験などの情報に偏りが出てはまずいため)。格安の携帯電話を契約している者のなかには留学生が多く、一番細かい連絡が必要な人に届けられない難しさを感じた次第です。
  • 準備しんどい。講義録を書き起こすというと簡単そうなのですが、よく言われるように1分間に喋れる文字数が300字として、それを単純に90分に拡大して文字換算すると普通の論文一本を超えます。そんな字数は毎週書けないし、学生も読めないと思ったので、途中途中に参考文献やサイトへのリンクをはさんで、それぞれ参照してもらうことにして、1回あたり平均8000字前後書くことにしました。多い回には1万字も超えていたと思います。それでも最後に終わったときに1科目10万字近くなっていました。3科目分講義を持ったので、30万字書いたことになります。1科目あたり新書1冊分の少なくとも情報量は出せたかと思いますが、毎週綱渡りでした(ただその話は同時に、一部の学生側にはこの担当教員が授業準備をしっかりしている、という風に伝わったようではあります)。
  • コミュニケーション不足。どうしてもメールなどでのやり取りになるけれど、質問してくれる子はまだ対応ができるのですが、そうでない子にどうしたらいいか?というのは悩ましいです。
  • 出席確認用にGoogleフォームから自動返信の拡張機能を使ったのですがG Suiteの有償版にしないと受講者が多い科目では、全員分カバーできないらしく、結局、今日出席届いていますか?という質問対応に追われることになりました。付けないほうがよかったかもしれません。
  • 講義系科目だからできたわけで、いくつか耳にしましたが、演習(ゼミナール)で活発な議論をするとかも私はできませんでしたし、史学科の古文書学とか、オンラインで成立させるのはかなりむずかしいんじゃないかという気はします。授業の性質で合う合わないが凄くあると思いました。