2016年7月の記事一覧
第93回企画展「現代女性歌人展」みずつき(2/2) 試作
第93回企画展「現代女性歌人展」みずつき(1/2) 試作の続きです。30人分の与件(data)がresearchmapの仕様(制限)を超えてしまったために分割したものです。どちらから見なければいけないという順序はありません。
第93回企画展「現代女性歌人展」2016年7月16日-9月19日資料
に追記していたら容量超過で保存できなくなったために分割したものです。「みずつき」の視点を取り入れる前の
第93回企画展「現代女性歌人展」2016年7月16日-9月19日
資料はこちらです。合わせて御利用ください。の歌人の歌集から、
みずつき もしくは 水に関する歌を六首づつ引いてみる。
これは、千原こはぎさん企画の 「みずつき3」と「みずつき4」を拝読し、「みずつき5」に投稿させていただき、水に関する短歌に集中的に溺れてみると、水に関する短歌で比較すれば、歌人のある側面での特徴がつかめると感じたためです。
また、それ以外に、水に関する短歌であれば、自分の不得意な領域の短歌でも、水に流しながら拝読できるという、意味不明な読み方ができることに気がついてしまったとも言えるかもしれません。
千原こはぎさんの 軽妙なる感覚に、すごく感謝しています。
三十人の歌人を理解するのに、「みずつき3」、「みずつき4」、「みずつき5」を拝読していることが、すごく力になっていると感じてます。思い込みなんですが、思い込まないと大量の短歌を拝見して、本当に溺れるだけになってしまうので。
三十人の歌人の方の歌集を拝読してきました。順次、こちらに掲載させていただく予定です。
16 中川佐和子
16.1
言の葉は滝にてあれば家のうち滝が流るるわれ泣かしめて
横浜港平の闇に音のなく梔子色の花火あがりぬ
水辺より出でて水辺へ帰りゆく想いのありて葉月曇天
池の端の動かぬ青鷺告げざりしわれの想いにもっとも近し
大雨の上野に立ち寄り黄の花のふぁんふぁつぁいの熱き麺すする
海べりの昔の家にいちぢくのむやみに熟れて羞しかりき
16.2 海に向く椅子―中川佐和子歌集
ひしひしと海に無数の傷跡があることを君は知ってるだろか
桃に刃を当てるがごときかなしみを雨降り頻る海見て思うよ
洗いたる髪をうしろに束ねおり石に彫られし貴婦人のように
膝を寄せ君と見ている夕立は悲しきまでにましぐらに降る
海ひかるケープタウンの航行の難しかりしをわれに語りつ
少女期のわれの記憶に沁みとおるスエズ運河の何かを知らず
17 松平盟子
17.1
歌集 天の砂 (現代三十六歌仙)
松平 盟子 砂子屋書房(2010/09/23) 値段:¥3,240
七月はわが生まれ月水浸しと酷暑を半ばあわせもつ月
浴槽に身を沈めればその縁を苦きものらは零れてざんざ
湿度なきパリの小雨に諭されて弥生尽帰国せし日も小雨
氷雨のもと昭和天皇崩御せり梅雨の晴れ間を皇太后逝けり
さびしさは背骨がすすうと抜け落ちて呑川に落ちる音の小ささ
呑川は流れて羽田沖に出るたゆたう水の重さに押されて
17.2シュガー 松平盟子歌集
春雨はさくらはなびら抱きて落つさくらのいのち濡れておちゆく
ひとひらづつ桜はちりて深井戸のなかばよりさくらゆくへ見えざり
梅雨の昼果てなく氷しうつしみはけふ失語症の大かたつむり
つかのまの雨間を鳥はさへづりてわが鬱の表皮ほのか明るむ
女詩人石牟礼道子よ死にちかき海を描きてかく強靭(つよ)かりし
いつぱいの水のみ終へて身震へるこの生物がわが夫(つま)である
17.3 青夜―歌集 (1983年)
夜の海のをりをり裂けてほのじろき臓腑のごとき波は見ゆ首夏
真夜(まよ)の海に沈みゆくとき身ごもれるわれは透きゐつくらげのやうに
岩を噛む海の歯の白く臭きこと寝ねぎはの夢のさかひに顕ちぬ
のぞくときマンホール奥の暗みより遠ひびきする水の鼓動は
地の底を水路の網はうるほひて晩夏の都市は輝きふかし
浴槽に日差し沈みをりしまらくを時はしづかに翼をやすむ
18 米川千嘉子 #短歌 #現代女性歌人展
18.1梅雨寒や幾百万の母たちの暗がり擦りて崩れゆく母
梅雨晴れに線香の香はかなけれわれは小さく献花台見えず
雨の降る若葉の夕べ産んだ子も平成のこんなしづかな青葉
空知川幾春別川名づけとはかなしみに名を与へるならむ
三崎なる路地には海の光飛びフウセンカヅラはいつふくらまむ
海賊船ロマンでありし世などなく飢うる地(つち)よりみつみつと湧く
18.2 一夏 米川 千嘉子
細雨来て敦煌に土の香はたてりさまざまに生あることさびし
実を終へし糸瓜(へちま)なれども大き葉はせいせいと三日の雨をよろこぶ
留鳥といえどはげしきさすらひの眼もて濁水をくだき来にけり
この沼に歌書のすべてを沈めむと夜の怒りに君は言ひたり
はじめての吾子の夜より朝にわたる若葉の雨の音、時の音
18.3 夏空の櫂
雷雲の裂けると見えてほろぼろと山脈は紫おびて濡れゆく
宇宙の霧榛をしめらせ降りてゐきくちづけの音の記憶のなかを
離れゐしひと冬を君が読みしといふ波郷の泉いまか暮れゆく
菖蒲湯の香は夜にながれ直接に父の問はざる恋のなりゆき
われら姉妹浴みて終りし菖蒲湯やしづかに怨し来しのみの父
アールグレイや林檎やナイフの香のひかり春まだ浅く君まだとほく
19 小島ゆかり
19.1 さくら―小島ゆかり歌集 (コスモス叢書 第 925篇)
宍道湖の水なめらかにうねりつつ貝のにほひの冬のあけぼの
あまりにも長湯の娘見にゆけばお風呂のなかで「春琴抄」読む
ハンカチを落とす遊びをなつかしむ小でまろしき傘雨忌のころ
叔父亡しといくたびも胸にたしかめて梅雨晴れのひろき街路をあゆむ
雨台風近づくゆふべ豆腐切りて包丁の刃の重たくなりぬ
19.2
あを曇る街を見下ろし高層に湖(うみ)の寒さの蓴菜(じゅんさい)を食む
自動車が雨中を走る夜の音過ぎてひそけく樹が走る音
飛ぶ鳥の明日からのことわからねば春の川原に草ちぎりをり
浄水場にゆぶべのあをき雨霧(ガス)たちて煙草を点す人小(ち)さく見ゆ
温水(ぬるみづ)の田螺おそるべし藻を食みてじつと交(つる)みてぞくぞくと殖ゆ 缶ジュース飲む前にまづ底を見る二十世紀末の子供のこころ
20 水原紫苑
20.1
うつしみを滝落つるなりきみあらぬこのうつしいを華厳の落つる
流氷のこゑ聴きたしと言ひけるを時知る耳など思はざる
摩周湖の霧晴れたるを思ひいづ霧隠れにしもきみ生きてまし
一目よりかくと知りけり滝の水とどまりあへず鳴る滝の水
わが名叫びくれしただひとたびよ蔵王なる山の温泉に溺れしとおもひ
夏の部屋白く波立ち波の秀のひとつひとつにきみが表情
20.2
なかぞらになすな恋とぞ泉湧きみづ飲みたまふ原爆の死者
十年(ととせ)まへ鴨川に見し白鷺が医師(くすし)となりて来たり候
浮舟のたゆたふ末は知らなくにおのれが髪をおのれ切りけり
同性を愛するけもの在りと聴き冬のくちびる水に寄せたり
水上ぐる老いたる薔薇(さうび)病みてのち初めてけふはベッドに坐る
船よ有情の大河をくだれと去りゆけるあくがれびとよわが分身は
21 花山多佳子
21.1
歌集 木立ダリア(塔21世紀叢書)
花山多佳子 本阿弥書店(2012/08) 値段:¥2,808
秋晴れの幾日かすぎて卒然と暗い風ふき暗い雨ふる
ダム湖のほとりで夜通し踊ってきたといふ息子にはときどきそんな夜がある
不忍池のほとりの骨董市に夫が購ひたるティーカップ三客
退屈な冬だと思ふ風音も雨音もなき夜のつづきて
雨の日に春一番とやらが吹きそののち少し冬らしくなる
月島のがらんとしづかな大通り青みどり澱む運河をわたる
21.2 空合 花山多佳子歌集
あたたかき雨の上がりて星の下にカクレミノの葉びらびら吹かる
横ざまのはげしき雨は欅の幹をなめらにくだる水となりつつ
網ごしに噴射されたる種子の咲かすくさぐさの花堀川の辺に
まぶた湿らす水の容器をかたはらに置きておみな子夜を勉強す
新宿駅の裏手に浄水場ありしことその茫漠のかなたに「独歩」
波打ち際に立ちて見てをり世に出でてしばしを経つる二つのあたまを
21.3 草舟―歌集
生ぐさき水の中にて冬越せるアメリカザリガニ春に腐れり
夜の歩道に溜れる水も信号のみどりとなれば身ぶるいて超ゆ
降っては巳む小雨のなかにみなたわむ蜘蛛の網こそきらきらしけれ
池の水溢れしことに関わりのあるや樹立ちに鴉さわげる
二家族河原に寄れる幸いの彼方かすかな稲光りあり
なめらかに渇きて割るる泥土の一枚拾えり利根川の辺に
22 川野里子
22.1 太陽の壷―川野里子歌集 (かりん叢書 (159篇))
ざらざらとざらざらと雨は降りてをりからだの内部に外部にやがて暗部に
金欲しき生ぞ尊し一葉の日記にはげしくふる雨と雪
大鯨海をあふれて暴るるを描きし國芳泣きしか笑ひしか
コンビニのソーダー水のなかに棲む龍がときをり身じろぎをする
まことしづかな浜昼顔とし吾は咲き海を見てをり百年がほど
22.2 青鯨の日 歌集
炎天下子によき水を買ひにゆくよき水は遠く退るかがやき
湯豆腐のほのあかり運ぶ夫の箸ふるへながらに運び終へたり
牛頭馬頭も首さしいれて憩ひけり豆腐煮てゐるここ闇浮堤(ゑんぶだい)
東京湾にフランケンシュタイン泣く声はをんをんと走り子は耳聡し
房総半島を金粉のごとき魚群巻き冬の朝(あした)は足より目覚む
鯨座は南天にのぼる眠る間のわれのさびしき海原の上
23 日高堯子
23.1玉虫草子
手にふるる水のすずしき齢きてあの人この人しきりに恋し
雨弱りしてゐし蝶がゆつくりと垣こえてゆく生絹(すずし)の空へ
水の辺に巨大卵しろく描かれてこの世は鳥の夢かもしれぬ
水つぽき夏至の陽が射し病質のいづこもあをし蚊紋がうかぶ
海岸線に春の潮がもりあがり胞子ぴかぴかほんだはら来る
膚さむくけばだち目覚む安房の海の海境昏し明けの風吹く
24 尾崎左永子
24.1
足音の近づくに似てこの闇を過ぐる時雨か紅葉づるは何
鳳仙花の終わりの花に雨そそぎ哀しみはかく蓄へられん
空間の埃を洗ふ雨過ぎて高層ビル群午後のかがやき
時のまの霙すぎたる広場には空浄く据ゑて水たまりいくつ
池の反照眩しきまひる沈痛の思ひは時にゆゑ知らず来る
不意に顕(た)つ羞恥のひとつ音立てぬ時雨のまにま漂ひゆかん
24.2
噴水の水に時のまの虹立てば如何ならん明日わがために待つ
夜の渚やや明るくて折れし櫂白き貝殻など見えてゐる
潮ひきしあとの渚をあゆみゆく渚の砂は夜もあたたかし
風紋を保てるままに潮満ちし底(そこひ)の砂に光揺れをり
砂粗きここの渚に海藻のたぐひ寄り来てかわく秋陽に
雨とならん夜の海のうへ遠くより灯動きて船還りくる
24.3
雨過ぎて遠く澄みゆく夕ぐれと思ふ高層のガラスが青し
雨匂ひ鉄匂ひまた人匂ふ駅の階寒く下りてゆけば
蕗の群つばらかにしていつしかも梅雨に入りたる霧雨そそぐ
雨後の風あかるき季(とき)ぞ草のかげ長くなりたる夕日山原
時雨して黄なる竹群もろともに心冷えゆく夕べと思ふ
櫟(くぬぎ)原雨音みちて踏みて行く土にも深き雨の香ぞする
24.4 さるびあ街
少しづつ潮退(ひ)きゆけば渚べは砂なめらかに光を保つ
若葉濃き木立を遮断する如く雨降りしきる坂下りゆく
まぶしきまで明るき部屋に吾の咽喉渇き別離を告げんとしたり
台風の吹きつのりくる夜の更けに汚れし足を拭ひて寝ねむ
引潮の遺しし水に日が透り砂の色もつ魚(うろ)くづおよぐ
25 蒔田さくら子
25.1 森見ゆる窓―歌集 (現代短歌社文庫)
むし暑き雨季の店先くだものの徐徐に熟れゆく気配が重し
驟雨きて駅前広場の黄なるベンチ近寄る人もなきまま昏るる
川開き知らす花火がこもごもに川沿ひの町の昼をゆるがす
こざかしき智慧にてたちまはり居しくやしさに深夜漏水を沁みて聴き居つ
海の土産のひじき煮て居る旅疲れ潮騒はもうここにとどかぬ
26 久々湊盈子
26.1
まだ明けぬ梅雨を嘆けば忍冬、くちなし、素馨(そけい)しるく匂える
糠雨に尾灯うるみて思い出という生ぬるき過去より戻り来
間をおきてまた噴きあがる公園の水が初冬の虹を作れる
好きなもの空いてるプール、休日の外環、まばゆき朝のゲレンデ
雨ののち荒東風吹きて蒼穹とはこれぞと胸張るごとき高空
他人の庭に牡丹が咲きて雨の日は蝙蝠傘をふかぶかと差す
---
かかえきて夜ごとせがみし「ぐりごぐら」わが子に読みやる息子の声がす
猫でいることも悪くはないぜと目を細めシロ、三毛、トラが冬の日だまり
さっきまで舌に転がしきしことばココア飲むときふっと消え去す
26.2 久々湊盈子
継ぎ目なき時間、継ぎ目なき水のおもてを割りてボラが跳ねたり
雨後の垣根にさざんか白しふるさとに七人家族ありしよ昔
亡き母のしてくれしごと熱き湯に葛を溶くなり人に疲れて
風に痩せ雨に痩せたる裏山にきょうはまどかな月がのぼりぬ
熱湯に放つか水から煮てゆくか泡ふく蟹を前に思案す
昔から温湯温燗きらいにて手組みの帯締めきしきし結ぶ
27 阿木津英
27.1
地下壁の広告見れば蛍光に透く青き波。ー青は慰め
眠りたがるたましひをわがひきずり出す膠ろう拱廊(アーケード)より雨降る中庭(パティオ)へ
街なかの水溜りある空地にてセイタカアワダチソウのゆらゆら
降りつづく雨を枕にありて聴くなべて暗きへおちゆくまでを
夕靄けぶる樹群(こむら)にもろもろの声うごきゐて噴水広場
27.2 天の鴉片―歌集 (1983年)
波打ちてつらなる雲の朱(あけ)のいろ渇きも饑もなくて候
水岸に繁りてそよぐ青芹の正しさよわが跼まるまえに
遠山のうつれる影を愛撫してくだる緑川水系の水
雨はれて声挽くごとき油蝉なにゆえ平等欲の醜し
陶工つくりしからに朝夕(あさよい)を水を湛えて潤う壺は
27.3
ぬるま湯の底ひにまなこを開(あ)くごとし硝子に梅雨のにじむ日およぶ
水底のたかき額はすずしくてまぶたの縁(へり)の睫毛ととのふ
噴水のしぶきの音す雲垂りてひかりを孕むそらのましたに
水塊(すいくわい)の砕け放てるひとすぢの勢ひの見ゆ曇りのなかへ
噴き上げの水つぎつぎに落ちゆきて寒の雀の翅(つばさ)ひらめく
小雨ふる街裏路はひともとの梢ゆたかなる白さるすべり
28 沖ななも
28.1
「鼠ケ関」と標識のある古路の海風温気(うんき)ただようところ
雨のあと虹に魅せられいし咎に傘の一本我から逃ぐる
大雨を報じられしがいっこうに降りだしはせぬ旅先薄暮
出水という名をもつ村をおびやかす夜を徹する降水量は
列島に長く伸びたる雨雲(くも)にそい北上すれば終始水底
どうやら雨は峠越えしか水たまりに降る雨足の足首細し
28.2 一粒―歌集 (個性叢書)
青葉時雨の谷間にいまし踏み込める念仏三昧の寺なるここは
方の通る道あればひたと誘われて青葉時雨の谷間をゆく
せせらぎの音を右耳に聞きながら貴船街道を芹生に向かう
鞍馬道貴船川から加茂川に流れ込みゆくまでの安穏
うずまくとみせてS字にくずれゆく川の流れのなかのながれは
29 渡英子
29.1 レキオ琉球―渡英子歌集
ゆふやみに海の光はおとろへてフランス窓打つ白蛾来てゐる
あかい水を雫したるやう夕焼けにわれも一人の犍陀多(かんだた)である
ぷらちなの天雲のうへラピュタ過ぎ池のおもてに展くみづの輪
ほんたうにシベリアへ飛んでゆくのかと水辺のわれは水鳥にいふ
琺瑯(ほうろう)の鍋にココアを温めて恋猫のこゑ、のやうに甘くす
草つゆに濡れし軍手の重たさに国家は低くうたひ出すなり
<ふりがなは読者用>
29.2
飛行機を乗りかへてゆく与那国は朝(あした)の雨を脱ぎて耀ふ
波多浜(なんたはま)より海沿ひにゆけばかろき沙かすかに混じる風に吹かるる
舟溜りに船は軋んで遠つ世よりたくはへて来し寂しさをいふ
消波ブロックのむかうに白く波砕け海からこはい夕闇が来る
黒潮の遠鳴りのなか銀漢をまとひて睡る死者も生者も
まづ海が濡れてゆくなり雨雲のひつたりと集る沖の暗さに
30 俵万智
30.1
空の青海のあおさのその間(あわい)サーフボードの君を見つめる
砂浜のランチついに手つかずの卵サンドが気になっている
捨てるかもしれぬ写真を何枚も真面目に撮っている九十九里
寄せ返す波のしぐさの優しさにいつ言われてもいいさようなら
ごめんねと友に言うごと向きおれば湯のみの中を父は見ており
落ちてきた雨を見上げてそのままの形でふいに、唇が欲し
30.2
記憶にはなき父の顔シャボン玉吹きつづけおり孫と競いて
親は子を育ててきたと言うけれど勝手に赤い畑のトマト
スーパーに特売の水並びおり子は買うものとして水を見る
はじめての波はじめての白い砂はじめての風はじめての海
ぼくの見た海は青くなかったと折り紙の青持ちて言うなり
夢の中で夢の水などこぼしたか「あーあ」と言って寝返りをうつ
現在の作業経過
氏名 | しめい | 所属 | 生年月日(wiki) | 和暦 | |||||||
1 | 春日真木子 | かすがまきこ | 水甕 | 1926年2月26日 | 昭和1年 | 5 | 4 | 北国断片 | 生れ生れ | 百日目 | 火中蓮 |
2 | 尾崎左永子 | おざきさえこ | 星座 | 1927年11月5日 | 昭和2年 | 24 | 4 | 炎環 | 彩紅帖 | 土曜日の歌集 | さるびあ街 |
3 | 馬場あき子 | ばばあきこ | かりん | 1928年1月28日 | 昭和3年 | 4 | 2 | あかゑあをゑ | 鶴かへらず | ||
4 | 蒔田さくら子 | まきたさくらこ | 短歌人 | 1929年1月11日 | 昭和4年 | 25 | 1 | 森見ゆる窓 | |||
5 | 森山晴美 | もりやまはるみ | 新暦 | 6 | 3 | 雲南 | グレコの唄 | 月光 | |||
6 | 久々湊盈子 | くくみなとえいこ | 合歓(ねむ) | 1945年2月10日 | 26 | 2 | 風羅集 | 鬼龍子 | |||
7 | 日高堯子 | ひたかたかこ | かりん | 1945年6月29日 | 23 | 1 | 玉虫草子 | ||||
8 | 沖ななも | おきななも | 熾(おき) | 1945年9月24日 | 28 | 2 | 三つ栗 | 一粒 | |||
9 | 香川ヒサ | かがわひさ | 好日/鱧(はも)と水仙 | 1947年3月1日 | 7 | 3 | Theblue | Perspective | PAN・パン | ||
10 | 佐伯裕子 | さえきゆうこ | 未来 | 1947年6月25日 | 1 | 3 | 春の旋律 | 流れ | みずうみ | ||
11 | 道浦母都子 | みちうらもとこ | 未来 | 1947年9月9日 | 8 | 3 | 花やすらい | 無援の抒情 | 水憂 | ||
12 | 池田はるみ | いけだはるみ | 未来 | 1948年3月5日 | 15 | 2 | 正座 | 南無晩ごはん | |||
13 | 花山多佳子 | はなやまたかこ | 塔 | 1948年3月5日 | 21 | 3 | 木立ダリア | 空合 | 草舟 | ||
14 | 阿木津英 | あきつえい | 八雁(やかり) | 1950年1月25日 | 27 | 3 | 青葉森 | 天の鴉片 | 巌のちから | ||
15 | 今井恵子 | いまいけいこ | まひる野 | 9 | 3 | 分散和音 | 白昼 | 渇水期 | |||
16 | 渡英子 | わたりひでこ | 短歌人 | 29 | 2 | レキオ琉球 | 夜の桃 | ||||
17 | 今野寿美 | こんのすみ | りとむ | 1952年5月10日 | 10 | 2 | 雪占 | かへり水 | |||
18 | 松平盟子 | まつだいらめいこ | プチ★モンド | 1954年7月24日 | 17 | 3 | 天の砂 | シュガー | 青夜 | ||
19 | 栗木京子 | くりききょうこ | 塔 | 1954年10月23日 | 14 | 2 | 水仙の章 | 万葉の月 | |||
20 | 中川佐和子 | なかがわさわこ | 未来 | 1954年11月5日 | 16 | 2 | 霧笛橋 | 海に向く椅子 | |||
21 | 尾崎まゆみ | おざきまゆみ | 玲瓏(れいろう) | 11 | 2 | 明媚な闇 | 微熱海域 | ||||
22 | 小島ゆかり | こじまゆかり | コスモス | 1956年9月1日 | 19 | 2 | さくら | 小島ゆかり歌集 | |||
23 | 水原紫苑 | みずはらしおん | 1959年2月10日 | 20 | 2 | 武悪のひとへ | さくらさねさし | ||||
24 | 川野里子 | かわのさとこ | かりん | 1959年5月27日 | 22 | 2 | 太陽の壷 | 青鯨の日 | |||
25 | 米川千嘉子 | よねかわちかこ | かりん | 1959年10月29日 | 18 | 3 | あやはべる | 一夏 | 夏空の櫂 | ||
26 | 俵万智 | たわらまち | 心の花 | 1962年12月31日 | 30 | 2 | サラダ記念日 | たんぽぽの日々 | |||
27 | 東直子 | ひがしなおこ | かばん | 1963年12月23日 | 13 | 2 | 春原さんのリコーダー | 今日のビタミン | |||
28 | 辰巳泰子 | たつみやすこ | 月鞠(げっきゅう) | 1966年1月10日 | 2 | 4 | 仙川心中 | アトム・ハート・マザー | 恐山からの手紙 | いっしょにお茶を | |
29 | 大口玲子 | おおぐちりょうこ | 心の花 | 1969年11月17日 | 12 | 2 | 東北 | 海量 | |||
30 | 梅内美華子 | うめないみかこ | かりん | 1970年4月28日 | 3 | 4 | エクウス | 火太郎 | 若月祭 | 横断歩道 | |
75 |
第93回企画展「現代女性歌人展」みずつき(1/2) 試作
第93回企画展「現代女性歌人展」みずつき(1/2) 試作
第93回企画展「現代女性歌人展」みずつき(2/2) 試作の続きです。30人分の与件(data)がresearchmapの仕様(制限)を超えてしまったために分割したものです。どちらから見なければいけないという順序はありません。
第93回企画展「現代女性歌人展」2016年7月16日-9月19日資料
に追記していたら容量超過で保存できなくなったために分割したものです。
「みずつき」の視点を取り入れる前の
第93回企画展「現代女性歌人展」2016年7月16日-9月19日
資料はこちらです。合わせて御利用ください。
の歌人の歌集から、
みずつき もしくは 水に関する歌を六首づつ引いてみる。
これは、千原こはぎさん企画の 「みずつき3」と「みずつき4」を拝読し、「みずつき5」に投稿させていただき、水に関する短歌に集中的に溺れてみると、水に関する短歌で比較すれば、歌人のある側面での特徴がつかめると感じたためです。
また、それ以外に、水に関する短歌であれば、自分の不得意な領域の短歌でも、水に流しながら拝読できるという、意味不明な読み方ができることに気がついてしまったとも言えるかもしれません。
千原こはぎさんの 軽妙なる感覚に、すごく感謝しています。
三十人の歌人を理解するのに、「みずつき3」、「みずつき4」、「みずつき5」を拝読していることが、すごく力になっていると感じてます。思い込みなんですが、思い込まないと大量の短歌を拝見して、本当に溺れるだけになってしまうので。
三十人の歌人の方の歌集を拝読してきました。順次、こちらに掲載させていただく予定です。
1 佐伯裕子 さん
1.1 春の旋律
海底におちゆく船の速度もて唄に眠らん眠りて死なん
海中に眼をあきてするキスなれば暗き数秒を競いあうなり
ロシア紅茶に埃浮きつつひとり繰るトランプ遊び幸福(しあわせ)めくり
サヨナラももう秒読みの雨あがり雲も街路も流されゆく
青年の君と思いぬ口すすぐ麻の真水をいっさんに吹き
わが篭る窓辺をそれて吹く風を海へまっすぐ漁師らよゆけ
1.2 流れ
川がつなぐ街をたどれば思い出は生まれる前の花野を行けり
渋谷川は路の下なりぽぽぽぽぽ暗渠のうえに紅葉がたまる
懐かしき未生の川へ帰りたいと穏やかならぬ今日の胃袋
昌平橋万世橋にもたれては流れるもののちから羨しむ
水底より仰ぎみあげる空のように揺らめきやまぬ母といもうと
たっぷりと運河は流れいつの世か死びとを運ぶ舟も曳かれし
五万トンの水槽地下に光らせてスーパーカミオカンデの孤独
水槽は地下1000Mに静かなりヒト死に絶えし日々のようなり
荒波の淋しい浜に消えたのはわたしの国の大事な少女
荒波やアルミホイルにこびりつく米粒がとても大切に見ゆ
ぼろ船の過ぎれば浜は隈もなく月明かりせり向こうの国まで
帰国者のメガネの奥のみずうみを窓とし明日を覗かんとする
2 辰巳泰子 さん
2.1 仙川心中
東京の水は甘いかしょっぱいかしょっぱいだけなら冥(つむ)って飲むが
重そうに前髪を払ふひとの後ろくらげ殖えてゆく棒状の海
まなこなくして蛍見ゆるか水増さり鉄(かね)を濡らしてゐたる仙川
おとうさんになったりおかあさんになったりして沈みました後楽園プールで陰画になって。
君は来で雨に庇のゆふまぐれ去年(こぞ)の残りの花火してゐる
雨に散る山茶花、都市といふ原に息づいてゐる精神のこと
2.2 アトム・ハート・マザー
羊水搾り血を搾り肉しぼりさいごに涙しぼれるわれか
百日をこの子生き抜き母となりしあはき疲れは宵湯に透る
梅雨晴れの電線に張る大鴉はるかな谷を透き視てをらむ
梅雨いりを天(あめ)のいづくより告げらるる序列ただしき団地のあかり
ぼうふらは水もろともに土に撒かれ昇天したか 孑孑座
猫家出してより時雨れぬ ひとしづく覗いてみれば今年の一夏
2.3 恐山からの手紙―歌集
あつけらかんと用水路の臭さ言ふ子なり ここに集まりし半島の産業
田名部川 木の欄干に立たせをり 何度抱きても生きてをる子を
どこまでも御山は石と水と砂 指で、つまんでみたら恐山
霧ふかき湖(うみ)に浮かぶは鴨のかげ このひとつきりのたましひの型
八一君そろそろごきげんんなほしいや薬石はこごめ天ぷらのごちそう
濁流となる蓮華水 逢ひたくて笑ひたてつつ奔(はし)りてゆけり
2.4 いっしょにお茶を
朝ぼらけ袋小路のその下を蛇行し急ぐみずの在りたり
叱られてあの絵の中に入りたい雨降りこめる掛け軸の絵の
いまだ言葉に感じやすくて穂をぬらしけぶり増されり吾亦紅の雨
喧嘩して灰皿のない乙女駅 欄干に腰かけてみずを聴く
絶望を描いて仕事にしなさんな川はあしたもながれてゆくし
おかあさんの愛の理想は縁側で、いつ、いつの日にかいっしょにお茶を
3 梅内美華子 さん
3.1 歌集 エクウス (角川短歌叢書)
雨の字の四つの点を顔に描きわたくしも雨 渋谷の谷に
ヒャラヒャラホーイ、ホーイヒャラヒャラ夜の川をまたぎて橋も真っ黒になる
雨水をこぼして落ちるう紅の椿の少女きさらぎの夢
水底に三日月沈み青ひかる海鼠(なまこ)となりて太りゆくかも
津軽野に新種のメロン育つといふ梅雨に入りゆくアジアの果てに
芝の原光量倍増雨後なればそのかがやきにああ寝転べない
3.2 火太郎
雨が来る 腕に蛇口を取り付けしつげ義春の雨が来るなり
湿度計の針の振れるを見しことなしいっぱいに茄子の浮かぶ水桶
声はかなし 小舟渡海岸の草むらにちぎれて落ちし海猫の嘴(はし)
火太郎(ほたろう)のほたるやひとつ夏の田の水に添いつつわれを曳きゆく
朝顔の花のかたちの拡声器プールの空に休憩を告ぐ
さし入れて水に産みゆくやんまの尾杭のごときが震えておりぬ
3.3 若月祭
「水のなかの話をして」と青芝にシャツの背風にふくらませつつ
雨降ればネガとなる街つくづくと子を抱くひとをわれは見ている
喉鳴らし水のむ真昼じいじいとねじ巻く音の虫が来ている
水底はみえねど鯰ふくふくと頭平たきままに沈むを
「大阪の海は悲しい色やねん」天保山に夕暮れ垂れて
雨の電車のなかに蒸れつつ花びらが花粉に汚れてゆく束を抱く。
3.4 横断歩道
泡立てしシャボン溢るる手の平におぼれもせずに顔洗うひと
釣糸のごとく降りくる蜘蛛はひかり雨上がりたる匂いを揺らす
毎晩の君の電話を喜ばす夏の水ひかるビーチボール蹴る
飛び込みしのちのわたしに泡立ちてプールに三時のあつき陽は差す
雨誘う君の吐息をもういちど確かめたくて黙す助手席
水槽をたどれば指に寄ってくるグッピーは十匹の暗さを成せり
4 馬場あき子
4.1 歌集 あかゑあをゑ (かりん叢書)
年改まりわれ改まらず川に来て海に引きゆくかもめみてゐる
夕ぐれの鵜の森に鵜は帰りきて川闇重くふくらみはじむ
鷺の木に鷺居り鵜の木に鵜の居りて春の川の辺なにかはじまる
桜鯛は賓客桜鱒は旧友多摩川の桜石斑魚(うぐひ)と遊べ
オペラ座の怪人のやうに身を吊りて降る勝鬨橋地下水面下
夜に入りて降り出した雨多摩川の鉄橋の下に住む人もゐて
4.2
めでたきは釣り荒磯にかさごなど上げたるときの渾身の愛
金いろにかがやいてゐる大口のかさご海ごと引き寄せるなり
水に棲むみづがねいろの魚の息お祭りとなるまつかな夕日
水仙は韓国(からくに)渡り昼星の白き香りを放つ海辺に
春あらし過ぎし二日をあけぼのの水ことごとく鳥をとどめず
白鳥のあかつき立ちをせんとする水ほのぼのと白く静けく
5 春日真木子
湧かざりし愛への挽歌入海を顫わせて干く潮にのせやる
辛抱づよく自愛に生きる他はなし裂けし唇潮風に向けて
未来への危惧に苦しむ吾を映し素裸に海に入りゆく太陽
清冽なる水紋とどむる川石にほてる足裏をのせて眠れり
日照雨に濡れつつ下着のはためきてここに峻烈なる自由を知れり
銭苔の湿潤母が耳鳴りを振りはらえずて低温の夏
秀を揃う針葉樹林にエゾ梅雨の注ぐ寂しさ車窓より見つ
5.2
羊水に浮ける胎児の明らむを思へば魚(いを)をさばきがたしも
羊水の塩分濃度はいかほどか春立つ朝のスープ光りぬ
みどりごはなぜにみどりぞ艶めける産湯の足裏(あうら)蚕豆に似る
千年紀継目儚し積みあぐるペットボトルの水のかたまり
交換価値ゼロなしり水をなつかしむ手押しポンプの汲みぐちの先
5.3
水溜まりに映るしばしの雲とわれ裡なる怯え測れざりけり
洗はれて春の潮に尖りしか針魚のあをき口拭ひつつ
日月は流れて残る私(わたくし)は自我ほそぼそと秋雨のなか
地下一○○○米のボトルの水を飲みつぎぬわれは濡れた木青空に向く
花の王薔薇にひととき仕へむか寒九の水に水切りをせり
雪解けの水のせせらぎCDに聴きつつわれは足より潤ふ
5.4
春日 真木子 短歌新聞社(2003/02/26) 値段:¥ 720
雨の夜の硝子に音なくなだれくるさくらは巨きひかりとなれり
波のやうにわが肩を越え飛沫きしは何の生まるる太初(はじめ)なりしぞ
きほひひらく白木蓮に雨注ぎうすじろきかな今日のま昼は
かろがろと白ひるがへす木蓮に水明かりつつ沼は瞠(みひら)く
水明りまとふ嬰児を芯としてま夜をさわだつわが小家族
あかときの水に硯を洗ひをり墓参の坂をよびおこしつつ
6 森山晴美
雨の水、水道の水と異ならむ除湿器の水ふと舐めてみる
サッカーの泥の一団を見しのみに雨中をもどる心冴えつつ
雨しづくはらひて卓に並べ置く沙羅の白花の縁にフリルあり
水の上かすめつつゆく蜻蛉の眼 光、風、餌、折れ葦、光
アメンボが四肢はりて立つ水の面はなめらかにして常に動けり
いと小さき七星天道虫おほつぶの雨の雫にもんどりを打つ
6.2
すこし汚れし哀しき思ひも秋雨の光る夜帰りゆけば跡なし
沖の永良部に台風の波黒き夜前ゆくトラックの幌しとど濡る
切なきを戸を閉て隔つ息つかず鳴き頻(し)く虫は雨間の草に
風の音はた雨の音眼を凝らす萩のしげりは彩づく下葉
緊張の紅海に入りタンカーが挙ぐる日の丸は平成のもの
押せば退き水のごとしと我を言ふさなり水なり変幻もする
6.3
森山 晴美 花神社(1998/11) 値段:¥ 3,240
川霧はここの低地に立ちまよひわが帰りゆく丘の上の灯
冷雨の中の葬り見てゐてずぶぬれの昭和と人が言へりさうかな?
梅雨のあめ切りて特快おし渡りホームに立てるわれらは戦(そよ)ぐ
潮引けば黄の海鼠がもつたりと温(ぬく)とき石の間(あひ)に陽を浴む
雨後の陽よ蚯蚓の数多(あまた)死にゐるは如何なる恐怖(パニツク)の襲ひしならむ
大欅ときをりどつと雫せり甲州街道の雨の渋滞
7 香川ヒサ #短歌 #現代女性歌人展
7.1 The blue―香川ヒサ歌集
日の翳りたちまち寒き風となり湖のうへ低く吹き過ぐ
出てゆくを見てゐしフェリーが戻り来る一往復二時間かけて
救命ブイ50ヤード毎に設置して「湾の十字路」とふ港町
最高の海の眺望確保して海軍戦死者慰霊碑立てり
水兵の慰霊碑掟の形なり雨の雫を滴らせつつ
川縁にある駅出でてしばらくを電車は川に沿ひて走れり
7.2
香川ヒサ 柊書房(2007/12) 値段:¥ 3,086
噴水の光浴びつつ坐す我を溢れて我は空に触れつも
堤防の海に突き出た先端に灯台が在りただそれとして
堤防の先の灯台その先に空と海とふ物質満つる
海の青に染まらず白鳥漂へる海の青に染まらぬ灯台
四○日続いたノアの洪水の後でも世界は変はらなかつた
アバディーンホームに見上げる駅の名はディー川の水の冷たさまとふ
沖を行くオレンジ色の船体はタンカーならむがいつしか消えて
7.3
その前もその直中も語れない大洪水の後の言葉は
薔薇窓をつたふ水滴世界からはみ出して来た透明ならむ
水滴が潅木の枝に光りをり大洪水後いく度目の雨
日照雨過ぎムーアの丘に虹立てり大洪水後いく度目の虹
洪水も日照りもあるがあの時は大洪水が選ばれたのだ
ともかくも神が存在するかぎり洪水対策立てねばならぬ
8 道浦母都子 #短歌 #現代女性歌人展
8.1
とどこおる時間のように水座る隠国初瀬室生の川は
群青の流れの彼方あかときの川は未生のじかんをひらく
澄明の抒情を運ぶ一縷なれ熊野の川は夏のきらめき
ここに来て熊野の河の二分かれ取りになるかも風になるかも
雨集め太りゆくなり熊野川かくのごときに生きたきものを
せせらぐよう老いは来るゆえ情念の淵にざんざん雨降りそそげ
8.2
姉に似しわれなれば雨の隊列にいるなといいて去りし少年
海見つつ夜は明けんとす君も君も言葉なし今日は10.21
誇り持ち貧しさ選ぶと言いきりて君のかたえに海風を受く
半年ぶりの紅茶と告ぐる者の為手痛きまでレモンしぼれり
いつしか涙と溶け合い流れゆく雨が私を惨めにするごとく降る
自らを見失うことなく生きん振り返るとき湖が輝く
8.3
たましいの不安のごとく広がれる梅雨雲がありその下を行く
見てはならぬあたま見て来し両の眼を水とうやさしきものにて洗う
粉うなく己れなりけり透明の葛湯を飲みてあたたかき肉
錆くさき己れなるかな水辺の蒼き光にあわれみにけり
水潜るごとき思いに冬越ゆるこのうつしみは笑わざりなる
<生理食塩水>二百グラムを呑み込みて護謨の生木のごとくに立てり
9 今井恵子
9.1 分散和音―歌集 (1984年) (音叢書)
水割りのまるき氷を噛み砕く敵をもたぬと批判されつつ
ゆうぐれの水の放てる韻律や窓閉ざすときわれをあふるる
飲む水のおちゆく喉春の闇ことばの花火しずかに開く
クラクション短く鳴らしわれを呼ぶフロントガラスに雨降らしつつ
淡水の濁れる面に釣られたる虹鱒の眼ほどのかなしみを持つ
野をぬらす雨聴きおればたわむれの君の約束ふいにしたしき
枕辺に水の流るる音のして夢の中にも時過ぎてゆく
9.2
怒るなら綿糸のごとき率直さ雨にスカート湿れる午後は
水仙を植えんとおもう庭土に雨脚ほそく降り続くなり
傘たての透明の傘雨の日のひぐれの底に雫をおとす
低いよりたちのぼりゆく連続の気泡ふたすじ夜の水槽に
とおり雨すぎたるのちの水溜り本当のわがものを覗くごとくに
チャッポンプンいちにち水の滴りの止まぬ蛇口のまえを行き来す
地の底へくだる重さをもちながらわれの内部を水音は過ぐ
9.3
まっしろな豆腐を水に放ちたり娘が家を出ていった朝
はるかなる記憶に青く揺れている水あるごとし油蝉啼く
2002年荒川の土手みずからの息する聞こゆ自転車をこぐ
雨降れば雨に濡れつつ葉の陰に椿の蕾まだまだ固い
水鳥の喉をくだれる水の冷え政治的決着に事はおさまる
覗きみる水の面に顔ふたつまだ蓮池に蓮の葉あらず
10 今野寿美
10.1
小石川植物園の池の面にぬぬぬと亀の浮くマイペース
くつと飲む水は喉(のみと)にしらたまの一月四日つぐみが来たり
念入りに水浴びてゐるつぐみなりなかば浸りて妄想もして
よき酒をたいせつに呑む心にはとほき若さや白梅つぼむ
気仙沼はカモメ群がる港町にぎりにフカの鰭のるところ
松原をおびやかしくる水暗しロイター共同tsunamiを写す
10.2
つゆの世のしたたりのごと一秒を眠りて醒むる馬立ちながら
浜名湖・・・と隣に呟く声のまま見る平らけき水も喪のいろ
波たたぬめぐり、ゆくたて山峡(やまかひ)をひとすくひして甲斐市とはなる
着水のまえの翼は騒がずに風に乗るとふことさやかなり
水の面を蹴る両足は飛ぶための儀式にふさふつややかな黒
病みゐると見えずに病んでゐる木なり芯にせつなき水のぼりくる
11 尾崎まゆみ
11.1
うちがはにこもるいのちの水の色青条揚羽みづにひららく
みづに文字書くやうに掻く真昼間のプールに水のからだうかべて
皮膚いちまい隔ててきつつ馴れにしはじんわり沁みるみづの揺らめき
みづに微睡むゆららゆらめく感情のたまゆら声のふれあふを聞く
ざわめきのプールサイドの長椅子にすわれば時の跡のけざやか
陽のあたる部分の水はゆつたりと汗のながれに搦めとられる
11.2 微熱海域 歌集
書肆季節社, 1993.2.
一触即発蕾蕾の雨の日の記述ミモザの花粉こぼれる
葉書一枚ほどの空白水たまり溢れるやうに空をかぶせる
雨降る朝のからだ支える「銀の匙」一匙の蜜昨日夕映
雲雀料理の後にはどうぞ空の青映しだしたる水を一杯
手をかざし見るプールサイドにわたくしの蜃気楼立つ微熱海域
雨のうしろに立つは記憶の照りかげり付きの光にフォーク突き刺す
そしてこころは一枚の布雨音と白い秋指先ににたっぷり
12 大口玲子
12.1
東北 大口玲子歌集
考へて便箋をしまひはがき書く今朝のこころを草魚泳げる
梅雨明けののちの心を差し出せばふかぶかと君が吐く杉の息
すさまじく秋風秋雨君に我は殺すに値せぬ1人か
病棟の湖底の寒さへはひりゆき踏めり誰かのほそきしつぽを
病室に踏み入らぬ時たちこむる水の匂ひや木肌の湿り
川見えて川音届かざる部屋の窓は暮れたりカーテンをひく
12.2 海量 歌集 雁書館, 1998.11.
くちびるを押し開かるるごと苦し雨夜ひとりの名前を呼べば
日本の歌請はるれば「アカシアの雨が止む時」いつも歌ひき
南湖の量、否、海の量の酒を飲み語らむと逢う夕暮れはよし
上半身裸の祖父が河渡り満州をゆく写真も褪せぬ
トラックに満載のあひるぐつたりと雨に濡れつつわれを過ぎゆく
ストーブの持ち去られたる広さあり煙草と水を買ひて戻れば
13 東直子
13. 1
そぼそぼと降る雨音のおだやかさ愛した人の悪口を言う
ゆだちの生まれ損ねた空は抱くうっすらすいかの匂いのシャツを
フラスコの中は今でもひんやりと緩衝液に満たされている
井戸の底に溺死しているおおかみの、いえ木の枝に届く雨つぶ
日曜日に似合いの空と隅田川ぽんぽん船に乗る鳩もいる
どうぞどうぞ上がって下さい熱い熱い烏龍茶などお淹れしますよ
13. 2
湯の底に蛤ひらき海にさすひかりのことをつたえてくれた
スープ用うつわの中にイニシャルがもつれあいつつ春の陽のなか
内にいる安堵のなかにまわるもの縷々雨のふるふくらむバター
米櫃に指をひんやりさし入れてサヨナラ清い川にながれる
正妻は夕焼け色の湯を沸かし決意のような笑みを返した
うすあかい氷水にじんわりと想っています秋刀魚のままで
14 栗木京子
14.1
体温の高き海なりこの海は敗れて後鳥羽院の見たる紺碧
荒波にゑぐられし崖眺めをりわれら船上に声からませて
潮風に吹かれ隠岐牛立ちてをり遠き灯のごと一頭二頭
夜の海を航く灯のあれば思ふなり後鳥羽院の手照らしたる火を
音の袋きゆつと締められたるごとしさざ波だけがひびく隠岐の夜
山峡の雨に降り癖あるならむ右腕ばかり濡れて歩めり
空に向き噫々と叫びぬ海底より声を発して深さ知るごと
14.2
車窓より湖(うみ)ひろがれり四十代の母はわれより満たされゐしか
透明な地球儀に夜は海の光ひるは陸の光みちあふれをり
朝ごとに夫の出(い)でゆく<社会>とは深海の圧力もつ空間か
ピンセットもて帆船を組み立てる子の海原は渇きゐるべし
身の芯に冷水満てる夜の更けをわれとふグラスに誰か口寄す
紅茶へと垂らす生蜜(きみつ)にひとすぢの音(ね)はひかりつつ四月はじまる
15 池田はるみ
15.1
若き男(を)は「いややいやや」と積まれけむ補陀落渡海の小さな舟に
土に降る雨を見てをり黒々と打たるる土はなつかしきかな
この烏賊の一生といへばをかしかれど海中をゆくはたのしかりにき
もうなにも見えず匂はず海原にきえてしまへどしまひにあらず
飛ぶやうに波切りながらゆきたるは安芸の宮島清盛が好き
傘さしてわたりゆくなる百万遍ぬかしのあなたがやや膨らんで
15.2
温泉につかるといふがそれはもう簡単でなく温泉ぎらひ
誰もゐぬあひだにお湯に入らむと下りゆくなり廊のながきを
瓔珞を揺らしながらに観音が大いなる湯に浮かびて在ます
わたくしはお湯の中にてすつぽんぽん雲のながれの速きゆふべに
白雲を頂くやうな湯気の中あなたのかほもつくづくしろい
海の辺のお湯の中にてほのぼのと観音さまに会ひにけるかも
<この稿は書きかけです。順次追記しています。>
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小川清は、名古屋市工業研究所研究員で、著作権法第三十二条に基づいて、「研究」目的で、学術雑誌等で良俗となっている引用形式(書名、著者名、出版社名、ISBNまたはISSN、発行年、ページ等)をできるだけ踏襲するようにしています。
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研究範囲は、通信規約、言語(自然言語、人工言語)、自動制御(ソフトウェアの自動生成を含む)、工業標準(国際規格、JIS、業界団体規格等)。例えば、言語処理は、言語、自動制御、工業標準を含み、通信規約の一部でもあり、総合的に取り扱っています。文字フォントの今昔文字鏡、日本語語彙体系、多言語処理などの具体的なシステムやサービスを支える技術的な課題に取り組んでいます。短歌形式の言語解析、言語学習、自動生成などは、現在の研究対象の一つです。
なお、他の著作物からの引用は、それぞれの著作者の著作物で、引用に関する部分は、著作権法第三十二条2項の範囲外です。商用利用の場合には、それぞれの著作者にご確認ください。
未来短歌会 入会をお考えの方へ
を読んでも、実感の湧かない方への、ある新入会者の助言を追記した版を作成しました。
【Q1】 | 「未来」の選者制度はどのようなものでしょうか? |
【A1】 | 「未来」は選者制度をとっています。現在の選者は、岡井隆、大島史洋、米田律子、桜井登世子、佐伯裕子、山田富士郎、加藤治郎、道浦母都子、さいとうなおこ、池田はるみ、大辻隆弘、笹公人、黒瀬珂瀾、中川佐和子の14名です。 |
私見 | 選者の方の歌集を読んでみるか、未来のそれぞれの選歌欄を読んでみるか、未来の関係者の参加している歌会に参加してみるか、すでに未来に入っている方にご相談されると、いいかもしれません。 |
【Q2】 | 未来短歌会へ連絡をしたいのですが、どのような方法がありますか? |
【A2】 | メール、ファックス、または、往復ハガキか返信用切手を同封の上、下記までお願いいたします。 |
私見 | 私の場合には、メールを差し上げました。選者の方に事前にご連絡を差し上げてもいいのかどうかをお問い合わせさせていただきました。 |
【Q3】 | 「未来」を読んでみたいのですが、どうしたらいいですか? |
【A3】 | 未来短歌会あて、「見本誌」をお申し込みください。ご住所、お名前をお書きの上、「未来見本誌希望」というタイトルで未来短歌会へご連絡ください。 |
私見 | お近くの、あるいはお知り合いの未来の会員の方に見せてもらうのもよいかもしれません。国会図書館:http://www.ndl.go.jp/ 日本近代文学館 :http://www.bungakukan.or.jp に所蔵しています。京都大学図書館に2冊あるそうです。また、下記書店でも販売しています。 |
【Q4】 | 「未来」の最新号は入手できますか? |
【A4】 | 1部、1,800円(送料込)でお送りします。ご住所、お名前、お電話番号をお書きの上、「未来最新号希望」というタイトルで未来短歌会へご連絡ください。払込用紙を同封しますので、お手元に届きましたらご入金をお願いいたします。尚、在庫に限りがありますので、ご希望に添えない場合があります。 |
私見 | 国立国会図書館では、最新号は複写できません。 |
【Q5】 | 「未来」のバックナンバーは入手できますか? |
【A5】 | 1部、1,000円(送料込)でお送りします。ご住所、お名前、お電話番号、希望の号数(○年〇月号)をお書きの上、「バックナンバー希望」というタイトルで未来短歌会へご連絡ください。払込用紙を同封しますので、お手元に届きましたらご入金をお願いいたします。 |
私見 | ちくさ正文館でも何ヶ月か置いています。2015年だと八月号が早めに在庫切れになっていました。 |
【Q6】 | 「未来」は一般の書店で買えますか? |
【A6】 | 最新号は、以下の書店でご購入いただけます。 紀伊國屋書店 新宿本店 東京都新宿区新宿 3-17-7 ちくさ正文館書店 本店 愛知県名古屋市千種区内山 3-28-1 京都三月書房 京都市中京区寺町通二条上ル西側 (京都銀行の北3軒目) 葉ね文庫 大阪府大阪市北区中崎西 1-6-36 古書いろどり 千代田区神田神保町1-1-13 三省堂書店第2アネックスビル5階 いずれも少部数ですので、遠方からおでかけの際は、事前に在庫を確認されることをおすすめします。 また、バックナンバーは、 古書いろどりで販売しています。京都三月書房にも、バックナンバーの在庫がある場合があります。 |
私見 | ちくさ正文館 本店は、ちくさ駅前の千種駅前店を通り過ぎて、もう一区画東です。 |
【A7】 | 未来短歌会あてにメールを出したのですが、まだ返信がありません。どのぐらいで返信は来るのでしょうか? |
【Q7】 | 事務係の作業日にまとめて返信をしています。最大7日程度、返信に時間を頂く場合がありますのでご了承ください。 |
私見 | 開封確認でメールを送ると、送り間違えをしていないか確認できるかもしれません。 |
【Q8】 | 入会方法について教えてください。 |
【A8】 | 見本誌をお送りする際、入会のご案内と入会用払込用紙を同封しています。会費が払い込まれた時点で入会となります。払い込みの控えは大切に保管してください。会費が払い込まれた月から「未来」が送付されます。 ※見本誌不要、入会用払込用紙のみをご希望の方は、その旨、未来短歌会へご連絡頂ければ手配いたします。 |
私見 | 選歌欄をよく知るために過去の10ヶ月分のバックナンバーを同時に申し込みました。知り合いの方に沢山お借りするのは申し訳ないと思い。 |
【Q9】 | 海外に住んでいます。未来短歌会に入会した場合、通常の会費以外に、海外への送料など、特別な費用がかかりますか?また郵便振替以外に、会費払込方法があれば教えてください。 |
【A9】 | お住まいの地域により、送料が異なりますので、個別にメールでお問い合わせください。海外からの払込方法に関しても、個別にご案内いたします。 |
私見 | 国ごとに郵便事情が異なります。https://www.post.japanpost.jp/int/charge/list/ にも具体的にどの地域で取り扱わないかを明記していません。政情によって変化するためと推測しています。 |
【Q10】 | 未来短歌会に入会を検討中です。学生割引はありますか? |
【A10】 | 未来短歌会では、25歳以下で学籍がある方を、学生割引の対象としています。 |
私見 | 25歳までに入会すればよかった。合計十三年間大学生(院生含む、すべて就労中)していたので。 |
【Q11】 | 未来短歌会に入会を申し込む(=会費を入金する)タイミングと、選者に入会のあいさつをするタイミングで悩んでいます。なにかルールはありますか? |
【A11】 | 最初に選者に作品を送付するときに、「今月からよろしくお願いします」といった挨拶文を同封するといいでしょう。 これまで選者と直接の面識がない場合は、簡単な自己紹介をしていただくとよいかもしれません。 入会申し込みの時点で選者が決まっていないときは、次回の会費払込時に選歌欄に選者のお名前をお書きください。 |
本当は、歌会、選者の方が講師をされている講座などを受講するとよいと思いながら、日程調整をしていましたが、うまくいかず、講座を受講されている方にメールを差し上げて、今度、選歌欄に入れさせていただこうと思っていることを連絡してから、手紙を書きました。自己紹介を書いていたら長くなってしまい、読んでいただくのは負担だろうと思い、今年の二月の歌会に参加し、事後ですがご挨拶をさせていただきました。歌会の際に、選歌欄の先輩方に、選んだ理由を聞かれました。未来のすべての選者の方の歌集を拝見し、考え方を知り、一番勉強になるからとお答えしたような気がします。 | |
佐伯裕子先生 お誕生会(ほぼ女子会)
一人、一首、佐伯裕子先生の歌を読み上げ、気持ちをお伝えするという進め方をしていただけました。
私が読み上げたのは、
「
生きようと弾む朝ありもういいと沈む朝あり卵かけご飯
」歌集 流れ 佐伯 裕子
歌集 流れ
佐伯 裕子
短歌研究社(2013/02)
値段:¥ 3,240
楽しい時も、苦しい時も、卵かけごはんさえあれば頑張れる。
だから、この歌は、自分でかってに、励ましてくれる歌として大切にしています。
という趣旨のお話をさせていただきました。
この歌は、
「なげきのといき」
の一連の一首。
鳥卵の黄身を窪みに落としこみ朝な朝なを養いて来ぬ
生きようと弾む朝ありもういいと沈む朝あり卵かけご飯
うす粥の底に透けいる泣き顔と笹の模様もいただきました
少女の血飲みつづけたる西太后の爪の長さや一つ年とる
川の面に張りたる空を吹きちらすアラウンドシックスティなげきのといき
竹林は後光放ちぬ魚屋も八百屋も天に還らんとして
卵の殻に穴をうがちて吸う特技生まれかわりてきたとて分かる
(誤植確認中、誤字・脱字があればご指摘ください。)
最後に、花束贈答がありました。
黒一点だったので、花束を贈呈する役をさせていただきました。
いつもご指導ありがとうございます
と、お礼の言葉も述べさせていただきました。まだ1月から入会したばかりの新人ですが、相当ご迷惑をおかけしていると思われるので、お詫びの意味も含めて。
ところで、御誕生会では、なんのうちあわせもなく、参加者全員が違う歌を紹介しました。
佐伯裕子先生から、みんなが違う歌を紹介したのは、それぞれが自分をもっていて素晴らしいことだとのお言葉をいただきました。
歌の紹介が順番に進むなか、それぞれの紹介する歌が異なりました。ひとはそれぞれ違うのだからと感じていました。先生のお礼の言葉が、自分が感じていたことと同じだったので、すばらしい会に参加できたと感激しました。
佐伯裕子先生、準備いただいた不忍歌会の幹事団の方々、不忍歌会の皆様に感謝いたします。
ps.
ちなみに、来年からは、六月を記念する会合名になるとのお話がありました。
この日の不忍歌会で、
第93回企画展「現代女性歌人展」2016年7月16日-9月19日
案内をいただき、捩り鉢巻きで佐伯裕子先生以外の歌人の方々の歌集を勉強中です。
上記以外の勉強の成果(作成中)はこちら。
ps.2.
不忍歌会の先輩である、故本川克幸さんが、2014年12月23日につぶやかれていました。
生きようと弾む朝ありもういいと沈む朝あり卵かけご飯/佐伯裕子「流れ」
— 本川 克幸 (@asagaonotane1)2014年12月23日