研究ブログ

2021年8月の記事一覧

ヨーロッパのオーガニック事情(後半)

 

 

トマトの収穫 ©Yoshiko MATSUDA

 


「私たちは有機食品を口にしたい。」


そんな静かな市民活動とも言える

BIOブームを受けて、

 

2021年現在では、

各ショップで商品を購入する際に、

陳列棚に並ぶ商品の写真やバーコードを

「ピッ」とスキャンするだけで、

 

栄養ランクが表示される、

「食材アプリケーション」競争まで

始まっています。

 

<アプリケーション例>

Yuka
FoodVisor
Fruits et légumes de saison
Maïa Coach
Kwalito
Frigo Magic
Etiquettable ほか

 

例えば、”Yuka”というアプリであれば、

1,商品名

2,商品外観

3,トータル商品ランク(購入価値)

のほか、

 

「マイナスポイント」として

4,依存性

5,糖分

6,カロリー

7,塩分

の表示、

 

そして「プラスポイント」として

8,食物繊維

9,タンパク質

がポイント制で色分け表示されます。

 

今はまだピンと来ない

感じがするかもしれませんが、

 

このように、商品選びアプリが

実際に普及して活用されている事は

海外の食糧事情を物語るにあたって、

非常に面白い現象です。

 

 

スーパーの食品棚に並ぶ商品をスキャンするだけで、その場で商品の「価値」を判定。あなたの食材選びを助けます!

https://yuka.io/en/

 

そして、筆者の印象では、

 

ヨーロッパの富裕層こそ、

「田舎」や「自然」そして「自給自足」に、

憧れを抱いているイメージがあります。

 

毎年、農期になると診療所を閉め、

麦わら帽子を被って、

自らマイ・トラクターで町を走り回る

町のホームドクターたちや、

 

豪華を極めたヴェルサイユ宮殿に

「プチ・トリアノン」なる

マリー・アントワネットらの例を

実際目にすることも多いからです。

  

私たちが日頃の忙しさから離れて

夢物語にひたることができる

海外旅行に憧れるように、

 

彼らにとっては「農作業」こそ、

「非日常」であり「贅沢」という

感覚なのかもしれません。

 

一方で、

 

長い侵略戦争が続いた

ヨーロッパだからこそ、

比較的平和な今でも、

 

「心の奥底から安心できない」

「万が一の時、頼るのは自分しかいない」

 

というような、

 

他者への根深い疑いの眼差しと、

切羽詰まった緊張感が

人々の記憶の中から拭えません。

 

例えば、ここベルギー王国ワロン州は

平均各25km平米にひとつはお城のある

世界一お城の多い「騎士文化」の

中心地ですが、

 

これまで見学した「王様の住居」や「古城」、

そして貴族の住む「マノワール(大邸宅)」には、

華やかな「花壇」だけではなく、

 

必ず自給自足のための

「大菜園」と「果樹園」がセットであり、

今も現役で専属の従事者が働いています。

 

フランス一美しい”Le château de Chambord”の自家農園。
(以下のリンクのページ最後の動画で見られます。)

https://www.rtbf.be/emission/jardins-et-loisirs/detail_jardin-de-reve-les-potagers-du-chateau-de-chambord?id=10839690

 

比較的裕福な友人たちも

高級車に長靴を常備して、

自ら栽培・収穫を行い、

 

大きなワイン用葡萄畑を含む

野菜づくり専用の土地を所有し、

養鶏や養蜂もこなします。

 

食べ物は健康への投資!©Yoshiko MATSUDA

 

彼らは夫婦で主食のジャガイモから作り、

保存や調理までこなすので

いつも感心させられています。

 

そして、このようなヨーロッパ人は

実は結構多いです。

 

望めばBIO専門店に

いつでも通える彼らでも、

 

最終的に信用できるのは、

自分で作る食材しか無いことを

知っているからです。

 

いくらBIOのイメージを

全面に打ち出したところで、

これも典型的な「ブーム」に乗せた

マーケティング手法の一環であり、

 

エコのピュアなイメージを利用した

政治運動の一端を担っているという

側面はぬぐえません。

 

確かに「BIOラベル」は

厳しい基準をクリアした製品にしか

与えられませんが、

 

1年に1回程度の立ち入り検査では、

消費者は「BIOラベル」を見て

その品質を信用せざるを得ず、

 

「実は従来の工場生産品に過ぎず、

私たちは割高で買わされているだけ」

 

という根強い指摘もあります。

 

ともかく、

 

戦前までは世界中どこでも

自然に育てた作物が当たり前だったのに、

 

健康を維持するのために、

ここまで私たちが有機製品を

求めなければならないようになったのは、

実に皮肉なことです。

 

それでも尚、

 

世界中で食品業界への不信が根深い今日、

「BIOラベル」のついた製品を選ぶことは、

 

ひとりの消費者として

不要な製品を生産する企業への

「No!」という意思表示ができる

唯一の手段であることに変わりありません。

 

販売利益はそのまま

企業の明暗を分けるのですから、

  

食品産業を含め、

社会全体の健全化を図り、

大切な人の健康を守るための、

せめてもの消費者努力と言えます。

 

そうは言っても、

 

頭では分かっていても、

筆者もせめて子どもの口に入る食べ物は

BIO製品で揃えたいと思っていても、

なかなかそうはいかなかったのが現実です。

 

そうやってここまで

生き延びて来たのですから、

単に先進国発の

贅沢品を紹介したい訳でもありません。

 

目の前の食材がたとえBIOでなくても、

今日一日の生命を

つないでくれる食べ物に、

 

素直に手を合わせる

感謝の心を忘れてはいけないと思います。

 

自家製卵という贅沢。©Yoshiko MATSUDA(ヨーロッパでは日本のように卵が新鮮ではありません。)

 

世界にはまだまだ

貧困地域があり、

先進国の助けだけでは

足りません。

 

私たちの御先祖様だって、

そんな時代を生き抜いてきました。

 

もっと言えば、

今この瞬間の日本国内にだって、

 

人々が目を向けるべき、

救いの手を差し伸べるべき、

厳しい環境下を生きる

人々の存在があります。

 

それなら、なおさらのこと、

 

食べ物を選ぶ自由が

許されている立場にある

私たちこそ、

 

生命を繋ぎ、

大切な自分という身体に

ダイレクトに影響する食べ物に

もっと関心を寄せることで、

  

未来にあるべき社会の姿を

牽引してあげられる役割を

担えるというものではないでしょうか。

 

ヨーロッパのお金持ちさえ、

日頃からこまめに意識しなければ

手に入れることができないものー。

  

御先祖様が伝えてくれた

「農業」というかけがえのない

伝統の価値をもう一度思い出し、

 

「敗戦国」という遠慮を捨てて、

戦後導入された様々な「改革」を

私たち国民の目でもう一度見直す時期が

来ているのを感じます。

 

既存の体制が変えられないのなら、

一部自分のできる範囲で自家製にしたり、

地域の生産者から直接購入することも

十分有効な方法です。

 

可愛いネギの花 ©Yoshiko MATSUDA

 

産業革命に始まり、

物質主義を極めたヨーロッパの人々が、

 

アジアの私たちより一足早く理解した

何よりも大切な自分や家族の

心と身体の健康を守ること、

 

そして、

 

大切な自分たちの生命を

繋ぐことのできる地球環境を守ること、

  

そんな”主体性”を持てる贅沢に感謝し、

 

「本物の贅沢とは何か」という

既存の価値観への問いかけを、

そろそろきちんと理解して、

 

子どもたちへと教える準備を始めても

良い頃だと思うのです。

  

【参考文献】

EU POLICY, Organic Farming, AGRICULTURE AND RURAL DEVELOPMENT, https://ec.europa.eu/agriculture/organic/eu-policy/ (参照2017.02-10)

Kei Okishima「ビオを知ろう!」フランスニュースダイジェスト
http://www.newsdigest.fr/newsfr/features/4777-about-bio.html
(参照2016-02-15)

Satomi Kusakabe
「フランスで『ビオ』ラベルが踊る」フランスニュースダイジェスト
http://www.newsdigest.fr/newsfr/features/7084-fast-growing-bio-market.html
(参照2016-02-15)

高崎 順子「BIO(オーガニック製品)のお勉強」フランスの食ネタ帳
http://shokuneta.exblog.jp/21406814/
(参照2016-02-15)

 

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