研究ブログ

2021年4月の記事一覧

近況

・三島由紀夫「恋文」が、多くの方に読まれているようで、うれしいです。

・先日の公開講座のレポートをTwitterにあげてくださっている方が。徳が高すぎる…! 感謝。

・大阪大学での授業、1回目はすべて対面でできました。

・しかし2回目から当分オンラインになります。

・それでも「いちど顔を合わせられたこと」は、去年に比べればとても大きい、と思って前を向きます。

 

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三島由紀夫全集未収録作品『恋文』の発掘について

昨日(2021/4/6)の「朝日新聞」東京版朝刊・デジタル版で報じられたことを皮切りに、毎日新聞、時事通信、共同通信など、各報道機関で伝えられているように、本日発売の「新潮」5月号に、三島由紀夫の全集未収録作品が掲載されています。
「恋文」という掌編です。400字程度ですが、とても面白い作品だと思います。
発掘者として短い解説を書いているので、併せて読んでいただけると嬉しいです。
詳細は解説に譲りますが、三島が400字の中に「PX」という2文字を刻んだことが、この掌篇を占領下文学の一つとして奥深いものにしていると思います。
「PX」は、平野共余子『天皇と接吻 アメリカ占領下の日本映画検閲』草思社、1998)によれば、当時の映画において、会話に入れるのは許されたが、撮るのは禁止、もしくは極力避けるようにさせられた場だった(87頁)といったことも念頭に置いて読まれると、同時代の状況がより鮮明になるかと思います。

今回の発掘も、これまでの発掘と同様に、従来の三島由紀夫研究の蓄積に多くを依拠しています。新出資料ちゃうか、と思ってすぐに大体のところまで調べられるほど書誌の研究が進んでいる作家は、それほど多くありません。発掘直後にアドバイスいただいた三島研究者の方々にも感謝します。

なお、三島の作品と併載されている梅崎春生の『流年』も、全集未収録です(前年に発表された同名の短編は収録されているが、別の作品)。
この時期の大阪版や西部版の文藝欄の目録は、いずれどこかに発表したいと思います。

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