研究ブログ

2008年8月の記事一覧

【追悼】ホルスト・シュタインさん

去る7月27日(日)、指揮者のホルスト・シュタインさんが逝去しました。享年80歳でした。

日本ではNHK交響楽団の名誉指揮者として知られるシュタインさんは、合唱指揮者から身を起こし、歌劇の分野で実績を残した指揮者のひとりでした。

「指揮者コンクールでの優勝」が檜舞台への近道となった現在では合唱指揮やコレペティトゥーアから活動の経歴が始まる指揮者も少なくなりました。シュタインさんは、そうしたヨーロッパ音楽界の伝統にのっとった最後の世代といえるでしょう。

さて、シュタインさんというと、忘れられない演奏会があります。1998年11月5日にサントリーホールで開かれた、バンベルク交響楽団との来日演奏会です。

前半に演奏されたブラームスの交響曲第4番は、冒頭から切れ目なく、それでいて決して騒がしくない、息を呑むような音楽が紡ぎだされた快演で、そのときの響きは今でも耳の底に残っています。

その頃から足取りも覚束なく、「もうこれで終わりかも」と思ったものですが、その予感が当たってしまったのは残念な限りです。

バイロイト音楽際のさなかにその生涯を終えたのも、ワーグナー指揮者として名声を博することになったシュタインさんらしいところですが、今はただ、ご冥福を願うばかりです。
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