研究ブログ

2015年12月の記事一覧

2015年の回顧と2016年の展望

今日で2015年も終わり、明日から2016年が始まります。


この1年間を振り返ると、今年も様々な新しい体験、貴重な経験を重ねることができました。


研究面においては、何よりも私の申請した研究課題「戦前の民間組織による対外的情報発信とその影響:英語版『東洋経済新報』を例として」が4月から3年度間、日本学術振興会の科学研究費助成事業に採択されたことが挙げられます。これにより、これまで以上に主体的、積極的に研究に取り組むための基礎が整ったことは、大変にありがたいことでした。現在、調査と研究会の開催などで課題に取り組んでおり、自ら設定した目的を達成できるように努めております。


また、日本国際文化学会の理事を拝命したことは、少壮の私には大役であるとともに、2004年以来様々な形で関わってきた学会の発展にいささかなりとも寄与できればと、意を新たにしたところです。


教育面では、昨年度から担当させていただいている法政大学社会学部の演習3に加え、比較文化論I・II、さらに、法政大学交換留学生受け入れプログラム(ESOP)の橋渡し科目として「日本の近現代史(日本語)」を新たに担当させていただくことになったのは、私自身にとっても大きな経験となっています。


とりわけ、「日本の近現代史(日本語)」は2015年度秋学期に新設された科目であり、どのような形で進めるべきかと思案したこともあったものの、実際には受講される皆さんが大変積極的であり、毎回、充実したやり取りができていることは、実にありがたく思われます。


あるいは、執筆面では、4月から日刊ゲンダイにおいて4週に1回ずつ連載「読むメジャーリーグ」を担当させていただき、大リーグを米国の政治、経済、社会、文化といった側面から分析するという、私にとっては理想的な題材で毎回原稿を作成することができたのは、意義深いことでした。


また、2015年5月17日(日)からは、毎週日曜日にWikitree Golobal Editionに評論を寄稿する機会を頂戴し、今年は30回にわたって記事を書かせていただきました。


毎週連載を担当するということも、英文を主とし、日本文を従とするという形態も、いずれも私にとって初めての経験であり、どの回も新鮮な心持ちで起稿することができました。


このように、思いつくままに事柄を挙げても、この1年間は例年以上に実り多い日々であったこと、そして、全ての出来事が数多くの方のお力添えによって実現したことが、改めて実感されます。


来るべき2016年も、これまで以上に精進し、皆さまから寄せられたご期待に応えるとともに、一層の自己研鑽に励む所存です。


引き続き皆様のご指導、ご助言をよろしくお願い申し上げます。


<Executive Summary>
A Review of the Year 2015 and the Preview to the Year 2016 (Yusuke Suzumura)

The year 2015 will close soon and the new year, the year 2016, will start on 1st January. On this occasion, I review the year 2015 and make the preview to the coming year.

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2015年の研究業績一覧

本日、私の所属する法政哲学会に2015年の業績一覧を提出しました。


そこで、今回は2015年中に私が携わった諸活動のうち、学問的な分野に関わる事項を「2015年の業績」として備忘的にご紹介させていただきます。


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(1)著書

  • 福田俊昭, 藏中しのぶ(編).『茶譜』第七巻 (分担執筆). 大東文化大学東洋研究所, 2015年3月.


(2)論文

  • Nuttawuth Muenjohn, Prem Chhetri, Yusuke Suzumura, Jun Ishikawa. Leadership, design process, and team performance: A comparison between the Japanese and Australian R and D teams. The Journal of Developing Areas, 49(6): 489-496, June 2015.
  • 鈴村裕輔. 石橋湛山による分断的な力としてのイデオロギーへの批判. <日本意識>の未来--グローバリゼーションと<日本意識>, 法政大学国際日本学研究所, 163-177, 2015年3月.
  • 鈴村裕輔. 石橋湛山のアジア論の構造と特徴―小日本主義と「東洋の盟主」の概念を中心に. 日本のアイデンティティとアジア, 法政大学国際日本学研究所, 77-91, 2015年1月.


(3)翻訳

  • 金森修(翻訳:鈴村裕輔). 現代日本社会の生政治学. 受容と抵抗-西洋科学の生命観と日本-, 153-163, 2015年2月.
  • ガブリエル・デカマス(翻訳:鈴村裕輔). 近現代の芸術における芸術と科学の「内的な相互作用」について. 国際日本学, (12): 17-35, 2015年1月.


(4)講演・口頭発表

  • Yusuke Suzumura. A Relationship between Human and Nature: Focusing on Ishibashi Tanzan’s Arguments on the Agricultural Policy in the 1920s. 国際シンポジウム「中心と周縁―搾取に抗う環境・自然」, アルザス欧州日本学研究所, 2015年11月22日.
  • Yusuke Suzumura. The Development of Religion in Japan: Focusing on Its Relationship with Politics. Hosei University Lecture Series for Daiwa Scholars 2015, 法政大学, 2015年11月10日.
  • 鈴村裕輔. 戦後における石橋湛山の国家論の特徴と構造――再軍備と日本国憲法第九条への態度を中心に. 第4回中日韓朝言語文化比較研究国際シンポジウム, 延辺大学, 2015年8月19日.
  • 鈴村裕輔. 「伝統」はいかに評価されるか――ユネスコ無形文化遺産を中心に. 日本国際文化学会第14回全国大会, 多摩大学, 2015年7月5日.
  • Yusuke Suzumura. Is Asia One?: The Structure of the Argument over Asia in Okakura Kakuzo’s “The Ideal of the East”. 東アジア文化交渉学会第7回年次大会, 開成町福祉会館, 2015年5月10日.


(5)その他

  • 鈴村裕輔. 「投手・イチロー」への好意的な評価がもたらす弊害. 体育科教育, 63(12): 61, 2015年12月.
  • 鈴村裕輔. ドーピング疑惑報道を受けて陸上界は何をなすべきか. 体育科教育, 63(11): 65, 2015年11月.
  • 鈴村裕輔. 「新国立問題」が映し出す無責任の構造. 体育科教育, 63(10): 57, 2015年10月.
  • 鈴村裕輔. 「8万人ボランティア計画」が抱える問題は何か. 体育科教育, 63(9): 35, 2015年9月.
  • 鈴村裕輔. 国際政治の観点から分析するFIFAの汚職事件. 体育科教育, 63(8): 72, 2015年8月.
  • 鈴村裕輔. スポーツ庁の新設の何が問題か. 体育科教育, 63(7): 15, 2015年7月.
  • 鈴村裕輔. スポーツが教える米国とキューバの国交回復の負の側面. 体育科教育, 63(6): 57, 2015年6月.
  • 鈴村裕輔. 「アギーレ問題」の真の問題は何か. 体育科教育, 63(5): 57, 2015年5月.
  • 鈴村裕輔. 書評『学生に賃金を』. 週刊金曜日, 23(14), 53ページ, 2015年4月.
  • 鈴村裕輔. 東京オリンピックにおける文化の地位の軽さを示唆する日本青年館の解体. 体育科教育, 63(4): 25, 2015年4月.
  • 鈴村裕輔. 「マッシーからザ・トルネードへの31年」が示す日本球界の無為の日々. 体育科教育, 63(3): 71, 2015年3月.
  • 鈴村裕輔. 竹田恒泰氏は読者を軽視してるのか? 『現代語古事記』のあきれた"超訳". 週刊金曜日,   23(5): 26, 2015年2月.
  • 鈴村裕輔. バッハ体制の権力基盤強化のための儀式としての「五輪改革」. 体育科教育, 63(2): 71, 2015年2月.
  • 鈴村裕輔. 川田順造『<運ぶヒト>の人類学』が教える「ヒトとスポーツの関係」. 体育科教育, 63(1): 71, 2015年1月.

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<Executive Summary>
Academic Achievements of 2015 (Yusuke Suzumura)


I submitted my academic achievements of 2015 to the Hosei Society for Philosophy on 30th December 2015. On this occasion I introduce my achievmetns of 2015 for the readers of this weblog.

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『スター・ウォーズ』シリーズをめぐる雑感

去る12月18日(金)に日本でも公開が始まった映画『スター・ウォーズ』の最新作「フォースの覚醒」は、公開後最初の週末の北米興行収入が2億3800万ドル1、公開から12月20日までの世界の週末興行収入が5億2900万ドルと、史上最高額を記録したとのことです2


連作の7話目に当たる本作が世界的な人気を博していることは間違いのないところであり、制作したジョージ・ルーカス氏も、配給するウォルト・ディズニー・カンパニーも、会心の笑みを浮かべていることでしょう。


一方、『スター・ウォーズ』に対する私の見方がやや懐疑的であるのは、本欄でもすでに紹介する通りです3


すなわち、当初は娯楽作品の側面を濃厚に示していた『スター・ウォーズ』(1977年公開)の話の筋立てが三部作として次第に複雑化し、さらにこの三部作の前史を担う新三部作が1999年から2005年にかけて制作されると、もはや冒険活劇という第一作の面影が姿を消していたのは、作品の成長というだけでなく、物語の変質でもあろうというのが私の見立てです。


私の理解するスター・ウォーズの真面目は冒険活劇的な側面にありますから、話が徐々に陰惨な雰囲気を帯びつつも牧歌的な様子を残していた『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』や『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』は連作として楽しめても、『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(1999年公開)に始まるいわゆる新三部作にはなかなかなじみがたいところがあります。


しかも、技術の進歩により映像は滑らかになり、今までは実現できなかった場面も実際に表現できるようになったことは大きな収穫ではあるものの、コンピュータ・グラフィックスの多用はかえって映像そのものの重量感が低下し、全体として軽量な仕上がりになっていたのは、物語の陰惨さとの対比において一層顕著な新三部作の特徴といえるでしょう。


思えば、今でこそ成長物語としても理解されるスター・ウォーズではあるものの、1980年代半ば頃まで日本ではそれほど深刻な内容の作品とは捉えられていなかったのではないか、というのが私の印象です。


何より、1985年10月11日(金)に日本テレビが「金曜ロードーショー」で『スター・ウォーズ』を放映した際、マーク・ハミルが演ずるルーク・スカイウォーカーの日本語吹き替えを担当した水島裕が「『スター・ウォーズ』はテレビゲーム感覚で楽しめるSF映画」という趣旨の説明を行っていたことは、日本においてテレビゲームが一般化した時期と重なっていたとはいえ、当時の日本人の『スター・ウォーズ』に対する理解の一端を示唆しているといえるかもしれません。


かつては「楽しい映画」と思われていた『スター・ウォーズ』が「深刻な内容の映画」として捉えられる過程は、あたかも交響管弦楽の支援者が王侯貴族から市民に移行した19世紀のヨーロッパにおいて、市民の聴衆が自らの聞く作品の正当化を図るために音楽家の肖像画の描き方を変えたよう4に、そのような理解をすることによって自らが鑑賞する作品が鑑賞に値するものであることを証明しようとしているかのようです。


いずれにせよ、今後第9作まで制作される予定の『スター・ウォーズ』の連作がどのような性格のものとなるか、今後の推移が興味深く思われるところです。


1 「スター・ウォーズ」北米興行収入、過去最高の288億円. 日本経済新聞, 2015年12月22日朝刊13面.
2 週末興行収入最高に. 日本経済新聞, 2015年12月22日夕刊14面.
3 鈴村裕輔, 「フォースの覚醒」で始まる新しい『スター・ウォーズ』の物語. 2015年12月23日, https://researchmap.jp/joa9fha3f-18602/#_18602.
4 なお、ヨーロッパにおける交響管弦楽の担い手の変化が音楽家の表象の変化に与えた影響については、次の文献を参照せよ。渡辺裕, 聴衆の誕生. 春秋社, 1989.


<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions on the "Star Wars" Series (Yusuke Suzumura)


The latest episode of the Star Wars series, Star Wars: Force Awakens, released on 18th December 2015. On this occasion I express my miscellaneous impressons on the "Star Wars" series.

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安倍首相が長期政権を維持できる要因は何か

毎週日曜日にWikitree Global Editionに連載させていただいているコラムに最新の記事"Why Can Prime Minister Shinzo Abe Keep His Cabinet for 3 Years?"が更新されました1


本欄では、日本語訳の記事「安倍首相が長期政権を維持できる要因は何か」2を一部加筆、修正した評伝をご紹介いたします。


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安倍首相が長期政権を維持できる要因は何か
鈴村裕輔


安倍晋三首相が2012年12月26日に第二次政権を発足させてから満3年が経ちました。


当初は高い人気を誇ったものの閣僚の不祥事による更迭や参議院選挙での敗北などによって366日で退陣した第一次政権のことを思えば、3年にわたって政権を維持していることは注目に値します。


しかも、集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈を閣議決定し、特定秘密保護法や安全保障関連法制を成立させ、あるいは国家安全保障会議を発足させるなど、安倍首相が自らの素志である政策を次々と実現させる姿は、奇跡的とも言えるでしょう。


それでは、「2020年の東京オリンピックまで政権を担当する」という冗談が冗談に聞こえないほど磐石の態勢を築いたかのような安倍は、日本の憲政史の中でも傑出した存在なのでしょうか。


もちろん、2007年に退陣してからの5年間、側近や有識者を集め、政権への復帰を目指して政策の研究を重ねてきたことは広く知られるとおりであり、現在の安倍首相の隆盛はこれまでの努力の成果であるといえるかもしれません。


しかし、政界を一瞥するだけで、われわれは安倍首相よりも優れた見識や崇高な理念、あるいは人格的な魅力を備えた人物をすぐに挙げることができます。


これは、安倍首相が偉大な才能を持つがゆえに長期にわたって政権を維持できているのではないということを示唆します。


むしろ忘れてはならないのは、安倍首相が政権を再び担当するためには、本人の努力だけでなく、外的な要因があったということです。すなわち、その要因とは、自民党総裁として安倍首相の前任者であった、谷垣禎一氏です。


1つの選挙区から複数の当選者が出る中選挙区制と異なり、小選挙区制はたとえ1票差であっても比較1位の候補者のみが当選する制度です。


そのため、集票力を落とすような党の分裂とそれに伴う党の規模の縮小化は避けるべき行為です。


消費税の増税や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加入交渉の問題などによって党の分裂を招いた野田佳彦首相は、党の利益を損ないかねない選択を行ったという点で、民主党の党首としては責められることになります。


一方、谷垣禎一氏は、自民党が下野してからの3年間を野党第一党の党首として、衆議院からほとんど離党者を出しませんでした。


また、東日本大震災や福島第一原子力発電所の事故などに際しては、政権への協力を求めた当時の菅直人首相の要請を拒絶し、その後も特例公債の発行を巡って菅首相を辞任に追い込むなど、民主党政権が震災からの復興の政策を展開することを可能な限り妨げ、最終的に野田首相に解散総選挙を決断させることに成功しました。


実際には、谷垣氏は3年の任期を満了したものの党内の支持が広がらなかったため、2012年9月に総裁を退任せざるを得ませんでした。


しかし、党内の結束を維持し、民主党政権に解散を余儀なくさせ、政権への復帰を現実ものにしうるところまで自民党を牽引したのは他ならぬ谷垣氏であり、谷垣氏を継いだ安倍晋三総裁でなかったことは、ささやかな点ではあるものの、決して見逃されるべきではないのです。


今や我が世の春を謳歌する安倍首相も、谷垣氏が党内の統制を維持できていなければ、たとえ総裁となっても政権を獲得することは出来なかったかもしれません。


それでは、谷垣氏は何故安倍首相を支持することになったのでしょうか。


谷垣氏による「安倍支持」の直接的な要因として考えられるのは、次の4点について何らかの「密約」が交わされたからではないかと推察されます。


(1)退任後に谷垣氏に禅譲する。
(2)谷垣氏を党ないし政権内で優遇する。
(3)谷垣氏の政策の受け入れる。
(4)谷垣派を優遇する


これまで、自民党には「野党時代の総裁」は河野洋平氏しかいませんでした。


その河野氏が最後は衆議院議長に祭り上げられて政治の第一線から退く形になったことを考えれば、総裁退任時にまだ60歳代であった谷垣氏には「第一線から退くのは嫌だ」という考えがあったことは用意に推測されます。そのため、安倍氏が首相に就任する場合でも、その後谷垣氏に政権を譲る、といった事項を口頭ないし文書で交わすことで、谷垣氏をなだめるということは大いにありえます。


また、谷垣氏は第二次安倍内閣成立後に法務大臣となり、第三次安倍内閣が成立すると幹事長に転任したほか、現在、谷垣派から防相と五輪相を送り出すことで党と政府の主流派を占めている点、さらに、今秋の軽減税率問題でも当初は公明党との折衝の主導権を握っていたことも、安倍氏と谷垣氏の間に何らかの「密約」があったことを示唆するといえます。


いずれにせよ、その意味で、誰よりも自らの幸運さを実感しているのは、他ならぬ安倍首相その人であることに間違いはないでしょう。
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1 Suzumura, Y. Why Can Prime Minister Shinzo Abe Keep His Cabinet for 3 Years?. Wikitree Global Edition, 27th December 2015, http://www.wikitree.us/story/9746.
2 鈴村裕輔, 安倍首相が長期政権を維持できる要因は何か. Wikitree Global Edition, 2015年12月27日, http://www.wikitree.jp/story/9746.


<Executive Summary>
Why Can Prime Minister Shinzo Abe Keep His Cabinet for 3 Years? (Yusuke Suzumura)


My latest column "Why Can Prime Minister Shinzo Abe Keep His Cabinet for 3 Years?" is available on Wikitree Global Edition on 27th December 2015. Today I show the Japanese version translated by myself to readers of Japanese.

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【開催10日前】第22回全国高等学校選抜オーケストラフェスタ

11月6日(金)、12月6日(日)にご案内した通り、来る2016年1月6日(水)から8日(金)まで、文京シビックホール大ホールにおいて第22回全国高等学校選抜オーケストラフェスタが開催されます。

1995年1月7日(土)、8日(日)に行われた第1回から昨年の第21回まで会場として使用されていた日本青年館が、新国立競技場の建設のために移築し、開館は2017年6月の予定であるため、今回のオケフェスは文京シビックホールで開催されることになりました。これにともない、開催日も2004年の第10回以来12年ぶりに1月の開催となり、会期も2012年の第19回以来3回ぶりに4日間から3日間となります。

参加校の数は従来よりも少ない64校60団体となったものの、各団体の演奏時間の上限をこれまでの1団体あたり15分から7分に短縮し、期間の縮小に対応する予定です。

恒例の選抜オーケストラと選抜弦楽アンサンブルについては例年通り行われる予定で、選抜オーケストラがワーグナーの歌劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』より第1幕への前奏曲(指揮:河地良智)、選抜弦楽アンサンブルがアレンスキーの「チャイコフスキーの主題による変奏曲」(指揮:大川内弘)が演奏されます。

なお、青フィルは大会第1日目となる2016年1月6日(水)の14時27分から出演する予定です。

また、オケフェスの最新情報は全日本高等学校オーケストラ連盟の公式ウェブサイト(http://www.nippon-seinenkan.or.jp/orchestra/index.html)でも適宜公開される予定ですので、ぜひご覧ください。

初めて日本青年館大ホールを離れて行われる第22回オケフェスへの皆様のご来場をお待ちしております。

<Executive Summary>
Third Announcement: The 22nd All Japan Selected High School Orchestra Fest
(Yusuke Suzumura)

The 22nd All Japan Selected High School Orchestra Fest will be held at the Bunkyo Civic Hall on 6 – 8 January 2016.
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FRBの利上げもMLBの好況も粉飾だ

12月21日(月)に発売された日刊ゲンダイ2015年12月22日号の33面に、4週に1回ずつ連載させていただいている「読むメジャーリーグ」の第9回「FRBの利上げもMLBの好況も粉飾だ」が掲載されました1


先日公表された米国連邦準備制度理事会(FRB)によるゼロ金利の解除の決定と史上最高額での契約が実現した大リーグの状況を対比させつつ、両者が含む懸念が何であるかを検討しました。

本欄では、掲載された記事を加筆、修正した内容をご紹介しますので、ぜひご覧ください。


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FRBの利上げもMLBの好況も粉飾だ
鈴村裕輔


アメリカの中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)は、2008年にいわゆるリーマンショックが起きてから7年間続けてきたゼロ金利政策を解除して利上げを始めることを決定した。12月16日のことである。


FRBのジャネット・イエレン議長は、利上げを決定した理由として、雇用の改善、物価の緩やかな上昇、家計支出と民間設備投資の拡大などを挙げた。


だが、米国経済の実態とイエレン議長の説明とは必ずしも一致していない。例えば、米国経済の中心である個人消費は減少しているのである。


個人消費が低迷する理由は、所得の減少によって中間層から貧困層に転落する人が増えたためで、1971年の時点で人口の約61%を占めていた中間層は、現在では約1億2080万人となり、富裕層と貧困層の合計を下回っている。すなわち、米国において中間層は総人口の50%を割り込み、富裕層と貧困層という両極の方が多数派を占めているのだ。


今や、「アメリカン・ドリーム」は「マイホームを持つこと」から「仕事を持つこと」に後退したといってもよく、そのような状況の中で個人消費が拡大する可能性は低くならざるを得ないのである。


それでは、何故、イエレン議長は雇用の改善や家計支出の拡大などを挙げたのか。ゼロ金利のままでは、借りた金利よりも高い利率で金を貸出し、その差額を儲けとする利ざやが減り、金融機関の経営が苦しくなる。実際、米欧の大手銀行11行は、今年になって従業員の約1割に相当する10万人を解雇している。


従って、大手銀行の経営を救済し、金融システムを維持するため、FRBは「米国経済は堅調」という数値を示し、利上げを判断したのである。


ところで、このようなシステムを守るために状況を実際のあり方よりもよく見せようとする態度は、大リーグとも決して無縁ではない。


ザック・グレンキー(ダイヤモンドバックス)やデービッド・プライス(ボストンレッドソックス)の総額2億ドルを超える高額な契約、最低保証年俸や平均年俸の高さ、約95億ドルという売上高などは、現在の大リーグが好況期を迎えていることを示唆する。


しかし、現在、米国における9歳から17歳以下の野球人口は2002年に比べてほぼ半減し、青少年野球のチームの間で合併や消滅が頻繁に起きている。このような現状は、「趣味の多様化」といった言葉では済ませられない、より深刻な「野球離れ」という事態が起きていることをわれわれに告げる。


それだけに、現在の大リーグの活況はやがて起きる衰退の前の最後の輝きであるかもしれない。あるいは、確実に訪れる危機から人々の注意を逸らすために、あえて好況さを演出している可能性さえある。


その意味で、重要な事実を伏せて利上げを決断したFRBと、基礎が揺るぎ始めている現状よりも大きな姿を見せようとしている大リーグとは、同類なのである。
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1 鈴村裕輔, FRBの利上げもMLBの好況も粉飾だ. 日刊ゲンダイ, 2015年12月22日号33面.


<Executive Summary>
The Rate Rise by the FRB and the Business Prosperity of the MLB, They Are Dressed Figures (Yusuke Suzumura)


My article titled "The Rate Rise by the FRB and the Business Prosperity of the MLB, They Are Dressed Figures" was run on the Nikkan Gendai of 21st December 2015. Today I introduce the article to the readers of this weblog.

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【御礼】「研究ブログ」通算アクセス数150万件達成

昨日、本「研究ブログ」が、2010年5月21日の計測開始以来、通算で150万アクセスに達しました。


2010年5月21日(金)から2043日後、100万アクセスとなった2014年9月1日(月)以来479日後の到達はひとえに閲覧して下さる皆様のおかげと、感謝しております。


相変わらず取り立てて目を引く記事や画像をご案内するわけでもなく、気の向くまま、筆の赴くままに書き続けてきた本欄が150万件の訪問者数を記録することになったことは実にありがたく、読者の皆様の温かいご支援に改めて御礼申し上げる次第です。


今後とも皆様の閲覧に耐えうる内容をご案内できれば、と思いますので、忌憚のないご意見を頂戴することができれば幸いでございます。


<Executive Summary>
On the Occasion of the 1,500,000 Access to My Weblog (Yusuke Suzumura)


On 24th December 2015, the total amount of the access for my weblog reached 1,500,000 since 21st May 2010. I express my deepest gratitude to all readers of my weblog.

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深い意義を持つ天皇陛下の「誕生日に際してのお言葉」

昨日は天皇誕生日であり、今上陛下は今年で82歳となられました。


今上陛下はお誕生日に際して記者団と会見し、例年通り所感を表明されています1


会見において、今上陛下は2015年が第二次世界大戦の終結から70年という節目に当たることから、先の大戦についても言及されています。


その中でも注目されるのは、「軍人以外に戦争によって生命にかかわる大きな犠牲を払った人々として、民間の船の船員があります」という今上陛下の指摘1でしょう。


すなわち、「制空権がなく、輸送船を守るべき軍艦などもない状況下でも、輸送業務に携わらなければならなかった船員の気持ちを本当に痛ましく思います」とあえて制空権を喪失した状況を指摘すること1で、今上陛下は1942年6月のミッドウェー海戦に敗れたことで断続的に制海権と制空権を失った当時の戦況をわれわれに想起させることを希望されたのだと推察されます。


何故なら、今上陛下は、「戦争を知らない世代が増加していきますが、先の戦争のことを十分に知り、考えを深めていくことが日本の将来にとって極めて大切なことと思います」と発言するだけでなく1、今上陛下今年の新年の所感において「戦争の歴史を十分に学び」、その上で「今後の日本のあり方を考える」ことを率直に指摘され2、、全国戦没者追悼式においても、「戦後70年」という節目に際し、過去を直視し、平和を希求する意志を表明されていますから3、今回の発言も、過去の所感を踏まえていると考えられるからです。


確かに、天皇を大元帥とする大日本帝国の将兵が各国と交戦し、民間の船舶も「聖戦完遂」という目的のために徴用されたのですから、最後の大元帥である昭和天皇の長子である今上陛下が痛恨の情を示すことは当然のように思われます。


しかし、「戦争を知らない世代が増加していきます」という指摘は、後藤田正晴の「最近の人は戦の実態がわからない」という発言4を連想させるものでありることから、今上陛下は儀礼的に痛ましさを表明したというよりは、具体的な状況を念頭に置いて発言したといえるでしょう。


それだけに、国民統合の象徴である天皇陛下が、先の戦争のことを十分に知り、考えを深めていくことの大切さを明確に指摘することは、党利党略、個利個略で行動しがちな政治家では十分に実現し得ない深い意義を有します。


今年の全国戦没者追悼式でのお言葉が「戦後70年」という節目にふさわしい、われわれが大いに参照すべきものであったように5、今回の談話も、「戦後70年」という日本が避けて通ることができない出来事に深く関わる今上陛下だからこそ言葉にすることができたといえるでしょう。


1 天皇陛下お誕生日に際し(平成27年). 宮内庁, 2015年12月23日, http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/kaiken/kaiken-h27e.html (2015年12月24日閲覧).
2 天皇陛下のご感想(新年に当たり). 宮内庁, 2015年1月1日, http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/gokanso/shinnen-h27.html (2015年12月24日閲覧).
3 全国戦没者追悼式平成27年8月15日(土)(日本武道館). 宮内庁, 2015年8月15日, http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/okotoba/okotoba-h27e.html#D0815 (2015年12月24日閲覧).
4 後藤田正晴, 情と理. 下巻, 講談社, p. 314, 2006.
5 鈴村裕輔, 意義深い天皇陛下の「戦後70年に際してのお言葉」. 2015年8月16日, https://researchmap.jp/joxpvopxo-18602/.


<Executive Summary>
A Remarkable Comment by His Majesty the Emperor of Japan (Yusuke Suzumura)


His Majesty the Emperor of Japan made his comment on the occasion of his 82th birthday on 18th December  2015. This comment is so remarkable, since the Emperor epxressed an deep and renewed sense of sorrow for the dead of the Second World War.

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「フォースの覚醒」で始まる新しい『スター・ウォーズ』の物語

去る12月20日(日)、毎週日曜日にWikitree Global Editionに連載させていただいているコラムに最新の記事"Force Awakens: Starting of the New Star Wars Movie"が更新されました1


本欄では、日本語訳の記事「「フォースの覚醒」で始まる新しい『スター・ウォーズ』の物語」2を一部加筆、修正した評伝をご紹介いたします。


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「フォースの覚醒」で始まる新しい『スター・ウォーズ』の物語
鈴村裕輔


世界各国で、映画『スター・ウォーズ』の最新作「フォースの覚醒」の公開が始まりました。


ジョージ・ルーカス氏が初めて監督しない『スター・ウォーズ』であること、2012年にウォルト・ディズニーがルーカス・フィルムを買収してから最初の『スター・ウォーズ』の作品であること、ルーク・スカイウォーカーとダース・ベイダーの死闘から30年後の世界を描き、ハン・ソロやレイヤ姫なども登場することなど、公開前から人々の注目を集めているのは周知のとおりです。


かつて米国の映画界に向けられた「続編に依存する安易な姿勢」という批判が影を潜めているのは、批評家たちが『スター・ウォーズ』の支持者であったり、著名な作品の続編が興行的に成功しているという理由だけではないでしょう。あたかも、ウォルト・ディズニーというメディア・コングロマリットの力が遺憾なく発揮されているかのような一連の宣伝活動の結果であるかのようです。


連作映画の通弊として指摘されることの一つは、作品が進むにつれて話の展開が深まりを示す一方で、前作までの内容を踏まえた構成となりやすいという点です。


そのような構成は、既存の作品に親しんだ鑑賞者たちに「自分は知っている」という帰属意識や連帯感を与えるものの、しばしば新たに鑑賞する人にとっては障壁となります。


当初は娯楽作品の側面を濃厚に示していた『スター・ウォーズ』(1977年公開)の話の筋立てが三部作として次第に複雑化し、さらにこの三部作の前史を担う新三部作が1999年から2005年にかけて制作されると、もはや冒険活劇という第一作の面影が姿を消していたのは、作品の成長とも、変質ともいえるでしょう。


ところで、純情で勇敢な青年であるアナキン・スカイウォーカーが悪と冷血の化身ダース・ベイダーへと転落する過程は、ルーカスが精魂を込めて描いたことがひしひしと伝わる、『スター・ウォーズ』の連作の眼目です。


「暗黒面」を滑落するアナキンの姿の迫力と痛ましさが観衆だけでなく映画界の関係者にも強い印象を与えたことは、『スター・ウォーズ』と同様に娯楽映画の要素を強く持っていた『バットマン』が『ダークナイト』(2008年)となり、科学の進歩と人間性への強い信頼を特徴としていた『スター・トレック』も2013年に公開された最新作では「イントゥ・ダークネス」という副題が付されたことからも推察されます。


確かに、ルーカスの脚本には「私とともにいない者は、私の敵だ」、「誇りが高ければ、それだけ深く転落する」といった、一見すると気が利いているようで、実際には定型的な表現がしばしば見出されたものです。


また、いわゆる新三部作の出演者の中には、悲劇的ともいうべき筋立てに耐えうるだけの陰影を帯びた演技ができない者もいました。


その意味で、『スター・ウォーズ』の一連の作品は、容易に目につく欠点を持ち、ときとして英雄志向の顔を覗かせ、ときに感傷過多となっているといえます。


それでも、「フォースの覚醒」に始まる新たな三部作が世に送り出されることで、『スター・ウォーズ』の物語がわれわれを楽しませることになるでしょう。

そして、これからの『スター・ウォーズ』が社会とどのように関わり、あるいは社会からどのような影響を受けるかも、注目されるところです。
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1 Suzumura, Y. Force Awakens: Starting of the New Star Wars Movie. Wikitree Global Edition, 20th December 2015, http://www.wikitree.us/story/9699.
2 鈴村裕輔, 「フォースの覚醒」で始まる新しい『スター・ウォーズ』の物語. Wikitree Global Edition, 2015年12月20日, http://www.wikitree.jp/story/9699.


<Executive Summary>
Force Awakens: Starting of the New Star Wars Movie (Yusuke Suzumura)


My latest column "Force Awakens: Starting of the New Star Wars Movie" is available on Wikitree Global Edition on 20th December 2015. Today I show the Japanese version translated by myself to readers of Japanese.


 

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愚かなる「日本のこころを大切にする党」という名称変更

昨日、次世代の党は議員総会を開き、党名を「日本のこころを大切にする党」に改めることを決定しました1


党名を変更した理由について、中野正志幹事長は「次世代の党名は国民に受け入れられず、衆院選や地方選で勝てなかった」と述べました1


確かに、「次世代の党」という名称が「次世代のための党」なのか「次世代に期待する党」なのか、あるいは「次世代へのつなぎの党」なのか判然としないという点は、すでに本欄の指摘するところです2


また、本欄では、「名前に平仮名ないし片仮名が入っている政党は短命である」という経験的な事実を踏まえるなら、新しい政党の名称の一部に平仮名を含めたことは、「新しい党は短命である」ということを自ら進んで宣言するようなものであることも指摘しています2


それだけに、「次世代のの党」という名称が国民に受け入れられないことも、党名を変更することも、ある意味で当然の結果であるといえます。


それでは、新しい党名はどのように評価されるでしょうか。


「日本のこころを大切にする党」という名称に決まった理由は「日本の伝統文化や日本人の精神の基礎が失われつつあるため」とされます1


しかし、「伝統文化」と「こころ」がどのように結び付くのか、あるいは「日本のこころを大切にする」ことが「日本人の精神の基礎」にいかなる影響を与えるかを明示できないことは、新しい名称が情緒的ではあっても具体的には何も意味しないものであることを明示します。


その意味で、「たちあがれ」という掛け声もむなしく政界再編の大きな流れに飲み込まれたたちあがれ日本、沈まぬ太陽はないことを実証した太陽の党、政界を刷新する前に自らが分裂に追い込まれた日本維新の会を母体とする次世代の党2と同様、「日本のこころを大切にする党」も、失意のうちに議席を失って消滅ないし解党するか、あるいは他の保守的な政策を掲げる政党に飲み込まれることになるでしょう。


何より、政党の名称を変えれば投票するほど有権者の民度は低くないということを理解できない「日本のこころを大切にする党」に、「日本人の心」を大切にすることは期待できないのです。


1 党名は変えた、心は変わるか. 日本経済新聞, 2015年12月22日朝刊4面.
2 鈴村裕輔, 「次世代の党」という名称が示す「石原新党」の末路. 2014年6月27日, https://researchmap.jp/jofmz4kng-18602/.


<Executive Summary>
Why Did They Change the Name?: Meaningless Naming of the Party for Japanese Spirit (Yusuke Suzumura)


The Party for Future Generations changed the name to the Party for Japanese Spirit on 21st December 2015. However it is an object of scorn, since they cannot understand that they changed the name but party members still remain unchanged.

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