研究ブログ

2018年8月の記事一覧

弦子先生と管太郎の「青フィル第49回外苑祭コンサートの聞きどころ」(3)

来る9月1日(土)、2日(日)に青山フィルハーモニー管弦楽団の第49回外苑祭コンサートが行われます。


そこで、今回は外苑祭コンサートの聞きどころを紹介する「弦子先生と管太郎の「青フィル第49回外苑祭コンサートの聞きどころ」」の第3回目をお送りします。


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管太郎:さ、弦子先生、ブラームスの大学祝典序曲の話にしましょう!
弦子先生:しっかり休憩できたみたいね?
管太郎:もうばっちりですよ!
弦子先生:それはよかったわ。青フィルが外苑祭コンサートでブラームスの大学祝典序曲を演奏するのは2014年の第45回以来4年ぶり6回目のことよ。
管太郎:6回目ですか!僕はその2014年のときの外苑祭コンサートしか聞いていない気がするから、2回目ってとこですかね?
弦子先生:そうね。4年前に話したこと、管太郎君は覚えてる?
管太郎:……おぼろげながら覚えてるようなきがしますね……ブラームスがどこかの大学で表彰されたお礼に、当時の学生が歌っていた歌を使って作曲した、とか……確かそんな感じだったような……?
弦子先生:そうね。大筋は合ってるわね。
管太郎:あ、当たってましたか!やった!
弦子先生:1879年にブラームスがドイツのブレスラウ大学から名誉博士号を授与された返礼として、1880年に作曲したのが大学祝典序曲よ。
管太郎:確かに当たってるような…!
弦子先生:そうね。そして、ブラームスが取り入れたのが、「われわれは立派な学び舎を建てた」(Wir hatten gebauet ein stattliches Haus)、「祖国の父」(Landesvater)、「あそこの山から来るのは何だ?」(Was kommt dort von der Höhe?)、「さあ、楽しもう」(Gaudeamus igitur)の4つの学生歌ね。
管太郎:びあはってん……?
弦子先生:そう。ヴィア・ハッテン。いずれも、当時の大学生がよく歌っていた学生歌だったのよ。
管太郎:確か、今のはやりの曲をオーケストラの中に取り込む、みたいな話でしたよね?
弦子先生:そうね。その通り。
管太郎:だから、どこかで聞いたことのあるメロディーだから、皆親しみを持てた、ってことですね?
弦子先生:そうね、その通りね。しかも、親しみやすい旋律だけではなく、形式の面ではソナタ形式を採用して曲をしっかりと構成しているから、一つひとつの学生歌を知らない私たちでもブラームスの作曲の力を十分に堪能できるのよ。
管太郎:一粒で二度おいしい的な曲ですね!
弦子先生:……まぁ、そう言えるかも知れないわね……
管太郎:でも、今回の外苑祭コンサートもトリッチ・トラッチ・ポルカに「新世界より」、それに大学祝典序曲、魅力的な曲が揃ってますね!
弦子先生:そうね。どれも一度聞いたら忘れられない曲ばかりよ。
管太郎:今から楽しみですね!
弦子先生:外苑祭コンサートは9月1日の土曜日と2日の日曜日、12時30分から青山高校体育館で開演だから、時間に遅れないようにしないとね。
管太郎:そうですね!プレコンサート・トークも12時15分からあるみたいですから、明日は12時10分頃には会場に着くようにしてます!
弦子先生:分かったわ。じゃあ、明日と明後日は、会場で待ち合せね。
管太郎:はい!……弦子先生、今日はありがとうございました!
弦子先生:こちらこそありがとう!
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<Executive Summary>
Feature Story: Aoyama Philharmonic Orchestra the 49th Gaien Festival Concert (3) (Yusuke Suzumura) 


The Aoyama Philharmonic Orchestra will hold the 49th Gaien Festival Concert on 1st and 2nd September 2018. In this time I introduce a feature story, a conversation between Ms. Tsuruko and Mr. Kantaro, to explain the concert.

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弦子先生と管太郎の「青フィル第49回外苑祭コンサートの聞きどころ」(2)

来る9月1日(土)、2日(日)に青山フィルハーモニー管弦楽団の第49回外苑祭コンサートが行われます。


そこで、今回は外苑祭コンサートの聞きどころを紹介する「弦子先生と管太郎の「青フィル第49回外苑祭コンサートの聞きどころ」」の第2回目をお送りします。


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弦子先生:管太郎君、しっかり休めた?
管太郎:はい!しっかり休みましたよ!
弦子先生:それはよかったわ。なら、青フィルの第49回外苑祭コンサートの曲のお話を始めましょうね。
管太郎:お願いします!……最初はシュトラウス2世のトリッチ・トラッチ・ポルカですね!
弦子先生:そうね、トリッチ・トラッチ・ポルカね。
管太郎:先生、この「トリッチ・トラッチ」って、どういう意味なんですか?初めて聞く言葉なんですけど……?
弦子先生:いいところに気付いたわね、管太郎君。
管太郎:あ、そうなんですか?……いいところに気付いたことに気付かなかった……
弦子先生:……この「トラッチ」というのはドイツ語でTratschと書き、噂話のことなのよ。
管太郎:……へぇ……ドイツ語、知らないんでよく分かりません……「トリッチ」も噂話のことなんですか……?
弦子先生:「トリッチ」はTritschと書き、Tratschに引っ掛けた言葉遊びなのよ。「トリッチ」と「トラッチ」だと、音が似てると思わない……?
管太郎:……何となく似ているような……?
弦子先生:……シュトラウス2世がこの曲を作った頃にウィーンでは有名人の噂話などを描いた『トリッチ・トラッチ』という雑誌が出ていて、人気だったの。今の芸能雑誌のようなものね。
管太郎:あ、パパラッチですね?
弦子先生:そうね、似たようなものね。
管太郎:で、曲とパパラッチとはどんな関係にあるんですかね?
弦子先生:当時、シュトラウス2世はロシアの貴族の家柄出身の女性と交際していたの。
管太郎:そうなんですね!といういことは、付き合っていることが雑誌に載ったんですかね?
弦子先生:雑誌には載らなかったよなのだけど、ウィーンではちょっとした評判の話題だったようなの。そして、シュトラウス2世は周囲の人たちが自分の交際の話をあれこれ噂していたから、新しく作ったポルカの題名に『トリッチ・トラッチ』という雑誌の名前を使ったのよ。
管太郎:へぇ!何だか腹いせみたいな感じですね?
弦子先生:もしかしたらそうかも知れないわね。でも、曲だけを聞くなら、軽やかなポルカではあっても、「噂話」という印象は持たないかも知れないわね。
管太郎:そうなんですか?
弦子先生:そう、決してゴシップ記事を扱う雑誌を描いた曲ではないから、注意が必要ね。
管太郎:分かりました!……で、次がドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」の第4楽章ですね!
弦子先生:そうね。
管太郎:「新世界より」なら、僕も知ってますよ!5時になったら流れてた、あの曲ですよね?
弦子先生:そうね、それは「新世界より」の第2楽章ね。
管太郎:そうですよね!小さいとき、公園であれが流れると、「早く帰らなきゃ」って思ってました!
弦子先生:そう、それは良い思いでね。
管太郎:…あ、どうもありがとうございます…!
弦子先生:……どういたしまして。
管太郎:で、先生、4楽章はどんな感じなんですかね?
弦子先生:4楽章はオーケストラ全体で演奏する冒頭が印象深いわね。
管太郎:ふむふむ。……でも、何で「新世界より」なんですかね?
弦子先生:あら、管太郎君、また良い点に気付いたわね!
管太郎:え、そうなんですか?
弦子先生:そうよ。交響曲第9番は1892年から1895年までドヴォルザークがニューヨークのナショナル音楽院の院長を務めていた時に作られたのよ。
管太郎:ふむふむ。
弦子先生:アメリカはヨーロッパに対して「新世界」と呼ばれたことは管太郎君も知ってるでしょ?
管太郎:あ、コロンブスの新大陸発見の、あれですね?
弦子先生:そうね。そして、アメリカで生活したドヴォルザークは、黒人の音楽や当時は「インディアン」と呼ばれていた先住民の音楽が、自分の故郷であるチェコの音楽とよく似た特徴を持っていたことに気付いたの。
管太郎:ふむふむ。
弦子先生:だから、この「新世界より」はそれまで音楽を通して民族の自覚の確立を促そうと思って活動してきたドヴォルザークが、チェコの音楽が大西洋を隔てた新大陸の音楽に通じる要素を持っていることに気付いた結果生まれたものなのよ。
管太郎:……??……??
弦子先生:分かりやすく言えば、アメリカで経験した音楽のあり方に着想を得て出来た曲、ということね。
管太郎:……アメリカにインスパイヤされた、って感じですか……??
弦子先生:……一言で表現するなら、それも間違いではないわね。
管太郎:……で、4楽章はインスパイヤされたんですね?
弦子先生:……オーケストラが序奏した後、金管楽器が第1主題を演奏するわ。
管太郎:ふむふむ。
弦子先生:そのあとに柔らかな第2主題と勇ましい結尾主題が置かれてるの。
管太郎:……なるほど……・
弦子先生:曲の表情が変わる展開部では、1楽章から3楽章まで主要主題を含めたさまざまな旋律が展開されるわ。
管太郎:なるほど…!
弦子先生:そして、トロンボーンが第1主題を吹く箇所があるけれど、ここが再現部ね。
管太郎:トロンボーンですね!覚えておきます…!
弦子先生:そして、曲の最後にあるコーダでは、4楽章の第1主題と3楽章までの主要主題とが重ね合わされながら、とても印象深い終わりを迎えるわ。
管太郎:そうなんですね!どんな印象なんですかね……?
弦子先生:感じ方は人それぞれだと思うけれど、私は夕陽が地平線の彼方にゆっくりと沈んでゆく、という様子を思い浮かべるわね。あたり一面が夕陽に染まりながら。
管太郎:へぇ!それはロマンチックですね!
弦子先生:そうね、もしかしらたらロマンチックかもしれないわね。
管太郎:……あの……弦子先生……?
弦子先生:どうしたの?一休みする?
管太郎:さすが弦子先生!いい勘してますね!
弦子先生:……あ、ありがとう……
管太郎:もう、トリッチ・トラッチとかパパラッチとかで頭が一杯なんで、ちょっと一休みします!
弦子先生:分かったわ……そうしたらお茶でも入れましょうね。
管太郎:ありがとうございます!……あ、あとお菓子もお願いします!
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<Executive Summary>
Feature Story: Aoyama Philharmonic Orchestra the 49th Gaien Festival Concert (2) (Yusuke Suzumura) 


The Aoyama Philharmonic Orchestra will hold the 49th Gaien Festival Concert on 1st and 2nd September 2018. In this time I introduce a feature story, a conversation between Ms. Tsuruko and Mr. Kantaro, to explain the concert.

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コミッショナーの球団拡張構想とレイズの本拠地移転計画の因果関係

8月13日(月)に発売された日刊ゲンダイの2018年8月14日号に、私が隔週で連載させていただいている「メジャーリーグ通信」の第32回「コミッショナーの球団拡張構想とレイズの本拠地移転計画の因果関係」が掲載されました[1]。


今回は、大リーグのロブ・マンフレッド・コミッショナーが今年7月17日に明らかにした大リーグの球団拡張構想について、タンパベイ・レイズが計画している本拠地の移転と新球場の建設問題との関係から検討しています。


本文を一部加筆、修正した内容をご案内いたしますので、ぜひご覧ください。


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コミッショナーの球団拡張構想とレイズの本拠地移転計画の因果関係
鈴村裕輔


一見すると、「球団拡張」と「本拠地移転」という二つの話題の間には関連がないように思われる。何故なら、既存の球団に加えて新たな球団がリーグに参画する「球団拡張」と既存の球団が本拠地を移転させる「本拠地移転」とは、自ずから性格が異なるからだ。


しかし、既存の球団が本拠地を移転させるとともに、新たな球団がリーグに参画することはあり得るから、「球団拡張」と「本拠地移転」とが同時に起きる可能性は皆無ではない。


そして、大リーグ・コミッショナーのロブ・マンフレッドが在任中に大リーグの球団数を現行の30から32に拡張させる計画を発表したこととタンパベイ・レイズが新球場の建築計画を公表したことも、一見すると互いに関係のない出来事のように思われながら、実際には密接な繋がりを持っているのだ。


マンフレッドは、7月17日(火)にFOXスポーツの番組で米国のポートランド、ラスベガス、シャーロット、モントリオールなどの7つの都市を挙げて球団拡張に意欲を示した。


ポートランドやラスベガスはこれまでも球団拡張が行われるたびに本拠地の候補として名前が挙がっているし、シャーロットなどにはマイナーリーグや独立リーグの球団が所在する。また、モントリオールはナショナルズの前身のエクスポズが2004年まで本拠地としていた。


いずれも野球とかかわりの深い都市だけに、球団拡張の際の候補地として適切と言える。


だが、マンフレッドは「自らの在任中」と述べるものの具体的な時期を示していないことから、本当に球団拡張を実施する意欲があるのか疑う向きもある。


その一方で、マンフレッドの談話の1週間前にレイズが新球場の建設計画を明らかにしたことは興味深い。


セントピーターズバーグ市のトロピカーナ・フィールドに本拠地を構えるレイズの悩みの一つは観客動員数の低迷で、2007年以来、より来場者数の増加を見込める都市に新球場を建てることを目指してきた。


今回、レイズはタンパベイの対岸のイーボーシティに新球場を建設する計画を示したものの、8億9200万ドルとされる総工費を地元自治体との間でどのように案分するかについては詳細を明らかにしていない。


だが、レイズによる計画の公表後にマンフレッドが球団拡張の方針を示したことの意味は大きい。何故なら、今後レイズは自治体側との交渉の際に、「建設費を負担しないなら球団拡張に合わせて本拠地を移転する。それが嫌なら柔軟ない対応を」という一言を取引材料として手にしたからだ。


それだけに、マンフレッドによる球団拡張の構想も、レイズの新しい本拠地の建設費の負担額が決まった後には、過去の計画と同様に立ち消えになる可能性が高いと言えるのである。
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[1]鈴村裕輔, コミッショナーの球団拡張構想とレイズの本拠地移転計画の因果関係. 日刊ゲンダイ, 2018年8月14日号25面.


<Executive Summary>
Will the MLB Expand to 32 Teams? (Yusuke Suzumura)


My latest article titled "Will the MLB Expand to 32 Teams?" was run on 13th August 2018. Today I introduce the article to the readers of this weblog.

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さくらももこさんについて思い出されるいくつかのこと

昨日、漫画家のさくらももこさんが8月15日(水)に逝去していることが公表されました[1]。享年53歳でした。


さくらさんの代表作は1986年から集英社の月刊漫画雑誌『りぼん』に連載を開始した『ちびまる子ちゃん』であることは衆目の一致するところです。


『ちびまる子ちゃん』の連載が始まった1986年当時、私は定期的に『りぼん』に目を通す機会がありました。そのため、1986年8月号に掲載された『ちびまる子ちゃん』の第1話も読んだものでした。


しかし、小学校4年生であった私は、その頃の『りぼん』に連載されていた作品の中では一条ゆかりさんの『有閑倶楽部』や池野恋さんの『ときめきトゥナイト』のように展開に明瞭な起伏のある筋立ての話に興味があり、作者であるさくらさんの体験に基づいて描かれた『ちびまる子ちゃん』は少し古めかしい話のように思われるとともに絵日記の一種のような作品だと感じられ、必ずしも魅力的とは思われませんでした。


そのため、『ちびまる子ちゃん』がテレビアニメとして制作されるという予告を耳にしたときには意外な感を覚えたものでしたし、1990年1月7日(日)に放送が開催された際にはかつて日曜日の18時から放送されていた『あんみつ姫』や『のらくろクン』のように1年間で終わるものと思っており、一時的な中断を経て今日に至るまでフジテレビの人気番組として制作され続けるとは思いもよらないものでした。


今にして思えば、『りぼん』で『ちびまる子ちゃん』の第1話を目にしたときに感じた古めかしく絵日記のような作品という印象はさくらさんが自らの体験に即して描いた結果でありました。さらに、自らの体験に即すという出発点があったからこそ、後にテレビアニメ版の『ちびまる子ちゃん』の逸話が創作的な内容を主とするようになっても作品の人気が衰えなかったのでしょう。


このような『ちびまる子ちゃん』の魅力に気付くには、小学校4年生の私は力不足でったのかも知れません。


ところで、戦後の日本の漫画とテレビアニメの発展に絶大な貢献をした手塚治虫さんが死去したのは、昭和時代が終わった1989年1月7日(土)から1か月後の2月9日(木)のことでした。


手塚さんの死があたかも漫画界における戦後の終焉を象徴したかのように、2019年5月1日(水)に改元が予定されている平成という時代の末期に、平成になって国民的な人気を博した『ちびまる子ちゃん』を生み出したさくらさんが長逝したことは、テレビアニメ界の一つの時代の幕切れを示しているかのようだと言えるかもしれません。


[1]さくらプロダクションからお知らせです。. さくらももこオフィシャルブログ, 2018年8月27日, https://lineblog.me/sakuramomoko/ (2018年8月28日閲覧).


<Executive Summary>
Miscellaneous Impressions of Ms. Sakura Momoko (Yusuke Suzumura)


Ms. Sakura Momoko, a manga author including Chibi Maruko-chan had passed away at the age of 53 on 15th August 2018. On this occasion I remember some episodes concerning on Ms. Sakura.

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【評伝】ジョン・マケイン氏--自らの経験を最大の資産として活用できた政治家

現地時間の8月25日(土)、米国の連邦下院議員のジョン・シドニー・マケイン3世氏が逝去しました。享年81歳でした。


マケイン氏が祖父と父がいずれも海軍大将という職業軍人の家に生まれ、自らも海軍少佐としてヴェトナム戦争に従軍したこと、さらに北ヴェトナムの爆撃作戦に参加していた1967年10月26日に操縦していた戦闘機が撃墜され、北ヴェトナム軍の捕虜となったことでも知られています。


捕虜としての5年半に及ぶ歳月は種々の困難を伴ったものの、当時父のジョン・シドニー・マケイン2世氏が在欧米軍海軍最高司令官を務めていたこともあり、10月27日に南ヴェトナムのサイゴンからの特電として10月28日付のニューヨーク・タイムズの1面と4面で大きく扱われるなど[1],[2]、米国社会の注目と関心の度合いは高いものでした。


実際、1973年に釈放されて帰国するとマケイン氏は「ヴェトナム戦争の英雄」と呼ばれることになりました。さらに、大佐に昇進していた1981年に海軍を退役すると翌年には高い知名度を活かす形でアリゾナ州から連邦下院議員選挙に共和党候補として当選を果たし、1987年からは連邦上院に転身して議席を占めています。


上院議員になってからのマケイン氏は、同性婚、人工妊娠中絶、銃規制といった米国の世論を二分する問題について保守的な立場を取りつつも反対派の見解にも理解を示し、環境問題についても地球温暖化防止策を重視するなど、共和党の中でも中道派を代表する人物として知られています。


その一方で、外交問題におけるマケイン氏は上院議員1期目の1989年に在日米軍経費の分担拡大要請などを明確な形で法律に盛り込んだ1990年度国防歳出権限法案の共同提出者となって日本が軍事関係機器の輸出国になる可能性を低めようとし、2003年のイラク戦争では武力行使の決議を議会に提出するなど、米国の安全保障上の利益を最重要視する強硬派でした。


内政問題における穏健派と外交問題での強硬派という二つの側面を持つマケイン氏の名前が国際的に知られるようになったのは、8年間に及ぶ民主党のビル・クリントン大統領の後継の座を巡って争われた2000年の大統領選挙でした。


ビル・クリントン大統領が女性問題に関する醜聞を念頭に置いて自らの浮気が原因で前妻と離婚したことを公表したこと、さらに「捕虜となっても最後まで祖国への忠誠心を貫いたヴェトナム戦争の英雄」という世評を強調することで、マケイン氏は有権者に対して「正直で勇敢な政治家」という印象を与えることに成功します。


そのため、当初は早期の撤退が予想されていたマケイン氏は優勢が伝えられていたジョージ・ブッシュ氏に対して善戦したことで、元来は中道的な公約を掲げていたブッシュ氏は妊娠中絶を認めない党綱領を支持するなど、共和党保守派の支持を得るために方針の転換を余儀なくされたほどです。


結果的には2000年の大統領選挙の頃がマケイン氏の政治家としての全盛期で、共和党の候補として臨んだ2008年の大統領選挙では、自らの中道的な態度を補完するために保守派のサラ・ペイリン・アラスカ州知事を副大統領候補としてものの、保守政治家としての魅力よりも資質の点での見劣りが目立ったペイリン氏が足枷となり、「黒人初の大統領」を目指すバラク・オバマ氏と新進気鋭の大統領候補を支える老練なジョー・バイデン氏という民主党の正副大統領候補の前に敗れ去っています。


このようにマケイン氏は20世紀末から21世紀前半の米国を代表する政治家の一人でした。それとともに、「ヴェトナム戦争の英雄」という世評を巧みに利用して「誠実で信用できる政治家」という像を確立したり、政治理念の点で隔たりのあるサラ・ペイリン氏を副大統領候補に据えたこと、あるいは2017年1月の政権発足前からドナルド・トランプ氏を「大統領の資質に欠ける」と批判しながらもトランプ大統領の弾劾の可能性が示唆されると「弾劾はよい方法ではない」と否定的な態度を示すなど、マケイン氏は表面的な一徹さとは異なり、状況に応じて立場を変えることをいとわないしたたかさを兼ね備えていました。


さらに、「マケイン旋風」と呼ばれるほどの健闘を見せた2000年の大統領選挙でマケイン氏を支持したのがベビー・ブーマーであったことは示唆に富みます。


すなわち、ヴェトナム戦争の際には反戦運動の中心であったベビー・ブーマーが「ヴェトナム戦争の英雄」であるマケイン氏を支持したことは、米国の社会の保守化とともに、親の世代が第二次世界大戦の勝利を経験しているにもかかわらず、自らはそうした「成功体験」を持たないベビー・ブーマーにとって、マケイン氏が欠けた輪を補う役割を果たしたと考えられるのです。


今なお米国史において種々の議論がなされるヴェトナム戦争において、マケイン氏は米国民が肯定できる存在であり、それ故に党派を超えた政治活動を行うことが出来たと言えるでしょう。


その意味で、自らの体験を政治的な資産として最大限活用できた政治家が、マケイン氏だったのです。


<Executive Summary>
Critical Biography: Senator John Sidney McCain III-- A Stateman Who Applied His Experiences Thoroguhly (Yusuke Suzumura)


Senator John Sideny McCain III, the Republican Presidential Candidate for 2008, had passed away at the age of 81 on 25th August 2018. Senator McCain was a stateman who applied his experiences as a naval officer during the Vietnam War and became one of the remarkable person of the U.S. since the 1990s.


 

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【開催1週間前】東京都立青山高等学校第72回外苑祭

去る8月12日(日)にもお伝えしたとおり、来る9月1日(土)、2日(日)、東京都立青山高等学校の文化祭である第72回外苑祭が開催されます。

1947年に始まった青山高校の文化祭は、昨年第1回目の開催以来満70年目の節目の年を迎えました。

一昨年の第70回に続いて3年連続で全ての開催日が9月に設定され外苑祭に、皆様がいらしてくださることをお待ちしております。

なお、外苑祭の概要は以下の通りとなっております。

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東京都立青山高等学校第72回外苑祭

[時程(両日共通)]
(1)第1学年および第2学年(各教室)
第1公演
9時から10時20分


第2公演
10時50分から12時10分


第3公演
12時40分から14時


第4公演
14時40分から16時


(2)第3学年*
第1公演
9時から10時20分


第2公演
11時から12時20分


第3公演
12時50分から14時10分


第4公演
14時40分から16時
*第3学年の第1公演は招待券所有者のみ、第2公演以降は整理券所有者のみ鑑賞可。


(3)青山フィルハーモニー管弦楽団第48回外苑祭コンサート(体育館)
12時30分から13時30分


(4)軽音楽部(音楽室)
10時50分から


(5)ダンス部(5階ホール)
9時から10時20分


(6)生物部(生物室)
常時開放


(7)漫画研究部
常時開放


(8)アルペン部
常時開放


(9)学習コーナー(1階第2学習室)
第1回
10時10分から10時50分


第2回
11時10分から11時50分


第3回
12時10分から12時50分


第4回
13時10分から13時50分


第5回
14時10分から14時50分


(10)演示実験
第1回
9時10分から9時50分


第2回
11時10分から11時50分


第3回
13時から13時40分


第4回
14時50分から15時30分


(11)生徒会飲食販売(1階自習室)
9時から完売まで


(12)進路コーナー(1階第2学習室)
常時開放

[詳細情報]
東京都立青山高等学校公式サイト外苑祭特設ページ
http://www.aoyama-h.metro.tokyo.jp/2018gaiensai.html
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<Executive Summary>
Second Announcement: The 72nd Gaien Festival of Tokyo Metropolitan Aoyama High School (Yusuke Suzumura)

The 72nd Gaien Festival of Tokyo Metropolitan Aoyama High School was held on 1st and 2nd  September 2018. We wait your participation with the Gaien Festival, which is one of the most remarkable high school's festivals in Japan.

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【開催1週間前】青山フィルハーモニー管弦楽団第49回外苑祭コンサート

8月11日(土)、8月18日(土)の本欄でもお伝えしたとおり、来る9月1日(土)、2日(日)、青山フィルハーモニー管弦楽団の第49回外苑祭コンサートが開催されます。

今回の青フィルは、1年間を通して演奏する「年間曲」として2014年度以来4年ぶり6回目となるブラームス大学祝典序曲を取り上げます。

また、2016年度から始まった、定期演奏会で演奏する交響曲のうちの1つの楽章を取り上げる試みについては、外苑祭コンサートとしては初演となるドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」より第4楽章が、また、やはりアンコール曲を除いては外苑祭コンサートの世紀の曲目として初めてとなるシュトラウス2世のトリッチ・トラッチ・ポルカが演奏されます。

ブラームスの知遇を得て楽壇の注目を集めたドヴォルザーク、そしてブラームスをして「自分にはあのような音楽は作れない」と言わしめたシュトラウス2世と、19世紀後半のヨーロッパの交響管弦楽の一断面を描き出すのが、今回の外苑祭コンサートです。

2018年度の青フィルの最初の主催演奏会となる外苑祭コンサートへの皆様のご来場をお待ちしております。

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青山フィルハーモニー管弦楽団第49回外苑祭コンサート

日時
2018年9月1日(土)、2日(日)

開場時間
11時

開演時間
12時30分

会場
東京都立青山高等学校体育館
(東京地下鉄銀座線「外苑前」駅、JR総武線「千駄ヶ谷」駅下車)

入場料
入場無料、全席自由

曲目
ブラームス/大学祝典序曲
ドヴォルザーク/交響曲第9番「新世界より」より第4楽章
シュトラウス2世/トリッチ・トラッチ・ポルカ

指揮
小田綾音(ブラームス)
濱島充長(ドヴォルザーク)
桑野愛(シュトラウス2世)
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<Executive Summary>
Third Announcement: Gaien Festival Concert Series No. 49 of Aoyama Philharmonic Orchestra (Yusuke Suzumura)

Aoyama Philharmonic Orchestra's Gaien Festival Concert Series No. 49 will be held on 1st and 2nd September 2018 at Gymnastic Hall of Tokyo Metropolitan Aoyama High School. Why don't you join this concert?
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「甲子園改革」を巡る議論で求められる現実的で科学的な態度

2018年7月の月平均気温がが1946年の統計開始以来7月としては記録的な高さであったこと[1]、さらに決勝戦に進んだ秋田県立金足農業高等学校の吉田輝星投手が登板した6試合で合計881球を投げたということ[2]もあり、第100回全国高等学校野球選手権記念大会は例年以上に猛暑の中で試合を行うことや投手の負担に注目が集まりました。


こうした状況を受け、日本高校野球連盟(高野連)の竹中雅彦事務局長が「タイブレイクだけでなく、投球回数、投球数の制限も検討する」と指摘するなど[2]、「夏の甲子園」の愛称で親しまれる全国高等学校野球選手権大会を巡り、変革の機運が高まっています。


今後、高野連を中心に夏の甲子園や選抜高等学校野球大会のあり方を考える議論がなされることでしょう。


このような議論に際し、検討に参加する有識者が所説を腹蔵なく開陳し、真摯な意見の交換を行うことは、夏の甲子園や春の選抜をよりよい大会にするためにも重要な取り組みとなります。


それとともに重要なのは、論者が思いなしではなく事実に基づいて議論するということです。


例えば、大会を神聖視し、たとえわずかであっても現在のあり方を改めることを拒絶する意見が提出されることは容易に想像されますし、大会を根本的に改めることを主張する人がいるとしても不思議ではありません。


このような意見は極端であるがゆえに論旨が単純化され、単純であるために力強さを持つことでしょう。


しかし、現行の制度を何も改めないことは少なくとも事態の改善をもたらさないという点で保守頑迷の誹りを免れませんし、根本的な改変を唱えるとしても、実現性に乏しい案を出すだけでは空理空論を重ねるだけになります。


その一方で、2000年代以降、日本国内では運動生理学や整形外科、理学療法などの分野を中心に投手の肘や肩の故障の問題を検討する種々の研究が盛んになされていることは周知の通りですし、米国でも1970年代から様々な研究がなされています。


特に、かつては投球数の多さが投手の故障に繋がると考えられていたものの、近年では投手の球種や投球時の重心の位置と故障との間に関係性が認められること[3],[4]や、9歳から14歳の選手の場合、1年間に100イニング以上登板した投手は100イニング未満の投手に比べて肘や肩を怪我する割合が3.5倍高いこと、あるいは高校野球投手の場合では1試合当たりの投球回数が8イニング以上、投球数が100球以上になると投球時の肩肘痛が大きくなるとの報告されています[5],[6]。


これからなされる議論においては、こうした先行研究の知見に基づき、投手だけでなく野手を含む選手全体の健康をいかに保全し、適切な環境で試合を行えるかが検討されねばならないでしょう。


夏の甲子園や春の選抜以外にも「甲子園」の語が用いられることが示すように、今や「甲子園」は高校生だけでなく各種の大会などに用いられていることは周知の通りです。


それだけに、求められるのは、保守頑迷でも空理空論でもない、予断と予見を排した現実的で科学的な議論なのです。


[1]7月の天候. 気象庁, 2018年8月1日, https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/stat/tenko1807.pdf (2018年8月24日閲覧).
[2]負担軽減へ改革元年. 読売新聞, 2018年8月22日朝刊20面.
[3]平本真知子, 森原徹, 松井知之ら, 球種と肩肘の投球障害との関係. 日本臨床スポーツ医学会誌. 26(2): 230-235, 2018.
[4]土山耕南, 大井雄紀, 高木陽平ら, 投球動作中の身体重心位置移動の客観的評価と肩・肘関節への影響. 肩関節, 41(3): 808-812, 2017.
[5]Fleisig GS, Andrews JR, Cutter GR et al, Risk of serious injury for young baseball pitchers: a 10-year prospective study. Am J Sports Med. 39(2): 253-7, 2011.
[6]宇野智洋, 丸山真博, 原田幹生ら, 高校野球投手における試合時の投球数、イニング数と体の痛みおよび投球パフォーマンスとの関係. 日本整形外科学会雑誌, 90(3): S811, 2016.


<Executive Summary>
What We Want to Discussion on Reforming of the National High School Baseball Championship Is Realistic and Scientific Examination (Yusuke Suzumura)


The National High School Baseball Championship is recognised to be reformed, since there are some remarkable problems for players' health condition. On this occasion we point out that what is the most important viewpoint is to discuss the solutions for the problems based on evidences.

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われわれは国民民主党代表選挙に何を望むのか

昨日、国民民主党の代表選挙が告示され、玉木雄一郎共同代表と津村啓介元内閣政務官の2氏が立候補しました[1]。


投開票は9月4日(火)に開催される臨時党大会で行われ、新しい代表が選出される予定です。


今年5月7日(月)に設立された国民民主党は民進党と希望の党の所属議員の完全な合流が実現せず、衆議院の野党第二党、参議院では最大野党であるにもかかわらず各種の世論調査での支持率が低迷するなど、党勢が不振であることは周知の通りです。


現在の国民民主党の置かれた状況は、このまま来年7月の参議院議員選挙を迎えれば改選前の議席を維持することが難しいばかりか、55名を擁立しながら17名の当選に留まった2013年の民主党のように惨敗を喫する可能性が高いというものです。


それだけに、党の存在感を高めるとともに、有権者の認知度が高くない玉木氏とほとんど無名というべき津村氏が知名度を向上させるためにも、国民民主党が代表選挙を有効に活用することが望まれます。


その一方で、菅直人氏と小沢一郎氏が熾烈な争いを繰り広げ、後に野田佳彦内閣で消費増税問題を理由に小沢氏が民主党を離党する遠因となった2010年の代表選挙のように、党内の深刻な分断をもたらす対立も避けられねばなりません。


実際、国民民主党の前身である民進党、さらには源流である民主党は、大同よりも小異を優先し、意見や立場の相違が党の分裂に繋がるという過程を経てきました。


このような民主党と民進党の離合集散の歩みは小異はあっても最後は大同につくことで党の分裂を最小限に留めてきた自民党の歴史と著しい対比をなしています。


1960年の総裁選挙で大野伴睦氏や石井光次郎氏ら党人派を押したものの官僚派の池田勇人氏に敗れたことで新党結成の動きを見せたものの、最終的には大野氏の仲介で翻意した河野一郎氏などは、小欲を捨てて大利を優先する自民党の姿の典型的な事例と言えるでしょう。


こうしたある種の巧妙さあるいは老練さが1993年と2009年の2度にわたって下野しながら再び政権党となった自民党の力強さの源泉の一つであることは論を俟ちません。


さらに、1996年の結党以来民主党がこうした「自民党的なもの」を乗り越えるために行動し、一度は政権を獲得できたものの最後は党の分裂によって崩壊したことも事実です。


従って、玉木氏と津村氏のいずれが代表選挙で勝利を収めたとしても、敗者を推した陣営は新しい代表の下で一致団結し、有権者の支持と党勢の拡大とを促進させる必要があります。


くれぐれも、代表選挙で生じた路線の対立を回復できず、党が設立されてから最初の代表選挙が最後の代表選挙となるような事態は慎まなければならないのです。


[1]代表選告示、津村・玉木両議員が立候補を届け出. 国民民主党, 2018年8月22日, https://www.dpfp.or.jp/article/200462/%E4%BB%A3%E8%A1%A8%E9%81%B8%E5%91%8A%E7%A4%BA%E3%80%81%E6%B4%A5%E6%9D%91%E3%83%BB%E7%8E%89%E6%9C%A8%E4%B8%A1%E8%AD%B0%E5%93%A1%E3%81%8C%E7%AB%8B%E5%80%99%E8%A3%9C%E3%82%92%E5%B1%8A%E3%81%91%E5%87%BA (2018年8月23日閲覧).


<Executive Summary>
What Is the Most Important Point for the Leadership Race of the DPFP? (Yusuke Suzumura)


The Leadership Election of the Democratic Party For the People (DPFP) will be held on 4th September 2018. It might be very remarkable opportunity for the DPFP to promote its presence and expand its power through the campaign without serious conflicts.

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「岸野小石」か「小野岸石」か--自民党は総裁選挙で人材の豊かさを示せ

自民党は、安倍晋三首相の任期満了に伴う総裁選挙を9月7日(金)に告示し、9月20日(木)に実施することを決めました[1]。


2015年9月に行われた前回の総裁選挙は安倍晋三首相以外の立候補者がいなかったため無投票となりました。一方、今回は石破茂元幹事長が出馬を表明しているため、2012年9月以来6年ぶりに選挙が実施される見込みです。


今のところ、現職の安倍晋三首相の優勢は揺るがない情勢です。そのため、今後は対立候補にどれだけの差をつけて勝利を収め、体制の基盤の強固さを示せるかに注目が集まります。


ところで、安倍総裁が退任した後の総裁候補として取り沙汰されるのが石破茂元幹事長、野田聖子総務大臣、岸田文雄政調会長、あるいは小泉進次郎筆頭副幹事長などであることは、各種の世論調査の結果などが示すところです。


かつて佐藤栄作首相の後継者の座を巡って争った三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘の各氏が「三角大福中」と呼ばれ、中曽根安弘首相の後を継ぐと目された安倍晋太郎、竹下登、宮澤喜一の各氏が「安竹宮」と称され、熾烈な主導権争いを繰り広げたことは周知の通りです。


その一方で、小泉純一郎首相の後継者として「麻垣康三」こと麻生太郎、谷垣禎一、福田康夫、安倍晋三の4氏が有力視され、実際に安倍、福田、麻生の各内閣が誕生したものの、国民の支持を得られず、2009年9月の総選挙で民主党に敗れて下野したことは、われわれの記憶に新しいところと言えるでしょう。


そして、こうした有力な総理総裁候補の氏名を組み合わせるという自民党の歴史に倣えば、石破、野田、岸田、小泉の4氏の呼び名はさしずめ「岸野小石」や「小野岸石」となるでしょう。


しかし、「岸野小石」(きしのこいし)ではいかにも岸辺に転がる小石のような小物揃いという響きを持ちますし、「小野岸石」(おのがんせき)では偏屈な芸術家のようで親しみを持ちにくいものです。


何より、現時点で4氏をまとめて称することがありませんから、このあたりにも、「安倍首相の後は安倍首相」という現在の自民党の雰囲気が表れているのかも知れません。


それだけに、今回の総裁選挙では人材の枯渇さえ懸念される自民党の現状を打破するだけの、真摯な論戦の行われることが期待されるところです。


[1]総裁選挙の施行日程が決定. 自由民主党, 2018年8月21日, https://www.jimin.jp/news/activities/137963.html (2018年8月22日閲覧).


<Executive Summary>
What Do We Want to the Race for the President of the Liberal Democratic Party of 2018? (Yusuke Suzumura)


The Liberal Democratic Party (LDP) announces that a Race for the President of the LDP will be held on 20th September 2018 on 21st August 2018. It might be remarkable opportunity for the LDP to show depth and strength of its human resources.

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