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2018年1月の記事一覧

「10歳の壁」の虚妄:箕面市「子ども成長見守りシステム」データから読みとるべきこと

昨年12月25日、 読売新聞社サイト YOMIURI ONLINE 「深読みチャンネル」に「「10歳の壁」から貧困家庭の子どもを救え」と題する記事が載りました: http://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/ichiran/20171222-OYT8T50029.html

「Yahoo! ニュース」でも、年明けの1月7日に、おなじ記事が配信されました: https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180107-00010000-yomonline-life

毎日新聞も、2017年12月30日大阪朝刊に「学力格差:「貧困」小4から 「学習・生活習慣、身につかず」 日本財団が箕面で調査」という記事を載せています: https://mainichi.jp/articles/20171230/ddn/041/040/019000c

これらの記事のもとになっている、箕面市の「子ども成長見守りシステム」データを使った日本財団の研究について、資料を集めて検討した結果、トンデモであるとの結論に達したので、解説します。

http://d.hatena.ne.jp/remcat/20180111/minoo


要点はつぎのとおり:

  • データをみるかぎり、貧困世帯の子供の「学力」は全国平均にくらべてやや低い程度であり、大きな格差はない
  • 貧困世帯の子供の「学力」が成長にしたがって低下するという解釈をデータから導くことはできない。むしろ、全国の児童生徒の平均的な傾向と同様に、貧困世帯の子供も順調に学力を伸ばしていることが、データからは示唆される
  • 「小学校4年(10歳ごろ)時に、家庭の貧富の差による「学力格差」が急拡大する」というのは根拠のないデマ
  • 経済状態による格差よりも地域間の格差のほうが大きそうである。このことを考慮せずに、特定の地域のデータの分析結果を一般化するのは非常に危険
  • 「学力」を測定しているとされる調査やそれを使って算出したスコアの測定・算出方法が不明であり、またその妥当性・信頼性・代表性が吟味されていない

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