2012年6月の記事一覧
★ スーパーハイブリッド・アート 新しい画像表現方法
未来派の画家ジャコモ・バッラ(1871-1958)は,一つの絵の中で運動=時間を表現しようとしました.その代表作に『綱でひかれた犬のダイナミズム』があります.彼は犬の足の動きを一枚の絵の中に同時に描くことにより,犬の歩行運動そのものを表現しています.以前から,新井仁之・新井しのぶは一枚の静止画で,時間と運動を表現できないかを考えていました.そして,今回,スーパーハイブリッド手法を開発することにより,鑑賞者が画像との距離を変えることにより,静止画で時間的な変化・運動を表す新しい表現方法の一つを創りました.
註1 今回の作品は錯視日誌で発表してきたものです。
註2 スーパーハイブリッド画像は、2層だったハイブリッド錯視を3層にした新しい技法です。ハイブリッド画像は2006年にOliva, Torralba and Schyns により考えられたものです。ハイブリッド画像については、上記サイトの中の『スーパーハイブリッドへの道のり』でも解説してあります。
★ カラーハイブリッド錯視 睡蓮と紅葉 錯視日誌(26)
★ 錯視展 数学で探る視覚の不思議 (開催期間延長のお知らせ)
【錯視展 数学で探る視覚の不思議】
監修:新井仁之 (東京大学大学院数理科学研究科)
期間:2012年5月8日(火)~6月16日(土)、10:00-16:00
場所:城西大学水田美術館
入館無料、日・月休館
【概要と特色】
新井は以前より数理視覚科学の研究を進めてきました。本展覧会はその理論的な研究成果と、視覚の数理モデルを用いて作成したオリジナル錯視アートの展覧会です。
脳内の視覚情報処理の数理モデルを実装したコンピュータに
まず『錯視を真似』させ、
次に『錯視を制御』させ、
最後に『錯視を創作』させる、
という「独自のストーリー」を考案し、本展で体現しました。全く新しいタイプの「錯視サイエンスアート展」になっています。
【企画】
★ 試してみようコーナー
錯視の不思議を手にとってじっくりと体験できます。
★ 実験参加コーナー
錯視の数学的研究から生まれたいくつかのオリジナルな知覚の実験に参加できます。
★ 講演+対談融合型トーク (終了しました)
『数学で探る錯視のしくみ - 数理視覚科学への誘い -』
新井仁之 × 中村俊子(城西大理)
日時:6月2日(土) 13:20-14:50
於:城西大学1号館118教室
【水田美術館について】
城西大学水田美術館は、昨年12月に城西大学キャンパス内にオープンした新しい美術館です。美術館そのものが、モダンアーティスティックな建造物です。
【美術館・錯視展 URL】
本展覧会の詳細は下記のサイトから入ってご覧ください:
http://www.josai.ac.jp/~museum/index.html
文責:新井仁之
★ハイブリッドからスーパーハイブリッド錯視へ 錯視日誌(25)
2006年にOliva, Torralba and Schynsは、一つの画像を遠くからみたときと、近くから見たときで異なったものが現れるようにしたハイブリッド画像を発表しました。2012年に新井・新井は、「遠く」から見たとき、「やや遠くから」見たとき、「近く」から見たときで三つの異なる画像が現れるスーパーハイブリッド画像(3層ハイブリッド画像)の作成に成功しました。詳しくは錯視日誌(24)をご覧ください。
前回の錯視日誌では、スーパーハイブリッド画像として、三つの全く異なる画像を用いました。今回は、睡蓮の「つぼみ」、「やや開花した」睡蓮、そして「開花」した睡蓮をスーパーハイブリッド画像にしてみました。3層になることで、一つの画像の中に連続的に感じられる時間を封じ込めることができました。スーパーハイブリッド画像により、ハイブリッド画像ではできなかった新しい表現手法を生み出すことができました。
かなり遠くからみると、つぼみの睡蓮が見え、画像にゆっくりと近づくと、徐々に開花していくように見える。
睡蓮の開花の様子を2層のハイブリッド画像でも作ってみました。2層は画像の分離を視認しやすいですが、今回の3層スーパーハイブリッドではあえて分離が視認しずらくすることにより、一枚の画像で連続的な変化に見えるようにしました。
2層ハイブリッド錯視画像
2012年6月3日 新井仁之
関連記事
錯視日誌24 (スーパーハイブリッド画像 とまれ)
錯視日誌23 (ハイブリッド画像)
錯視日誌25(ハイブリッド画像 睡蓮と紅葉)
★ 人の視知覚・錯覚と画像処理の講演をします
講演者:新井仁之
日時:2012年6月5日(火)15:00 - 15:45
場所:東京大学大学院数理科学研究科 002教室
アクセス
プログラム