錯視 日誌

2015年11月の記事一覧

フレーザーのねじれ紐を用いた双曲型錯視


大脳皮質V4野のニューロンに関するGallantら(1996, 1993)の神経科学的な実験結果から、次の錯視が起こることを理論的に推測。実際に作ってみると、予想通りの錯視が現れました。
下の図で、中央の青い矢印に示された方向に進むとどこに到達すると思いますか?
目線だけで追ってみて下さい。
正方形の右上の頂点に到達できましたか?

双曲型錯視



実際に、矢印の先に線を延ばしてみましょう。

双曲型錯視


詳しくは次の文献をご覧ください。
H. Arai and S. Arai, Framelet analysis of some geometrical illusions, Japan J. Ind. Appl. Math., Volume 27, (1)  pp 23-46, 2010
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ものづくり企業に役立つ応用数理手法の研究会

日本応用数理学会主催の
「ものづくり企業に役立つ応用数理手法の研究会」
(於 中央大学、2015年12月4日)
で講演をします。
タイトルは
『視覚と錯覚の数理からアート、そして画像処理へ』
です。今回は研究会のタイトルにあるように、「企業に役立つ」話にできればと思っています。
参加には事前登録が必要です。詳しくは下記のサイトご覧ください。
http://na.cs.tsukuba.ac.jp/mono/wp-content/uploads/2015/11/seminar9.pdf
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ゆるキャラグランプリ2015 みきゃん第2位

ゆるキャラグランプリ2015の結果が先ほど発表されたようです.
愛媛県の「みきゃん」は惜しくも第2位でした.とはいえ昨年は第3位だったので,着実に順位を上げています.
1位は浜松の「出世大名家康君」.
ポイント差は1位 695346点,2位 6915774点ですが,3位は4011758点なので,大健闘です.
第2位おめでとうございます.

昨年,愛媛県立総合科学博物館からの依頼で展示作品『みきゃんの浮遊錯視』を作成しました.また,みきゃんの浮遊錯視のウチワも同科学館で販売されました.写真なので錯視量はかなり減っています.裏(表?)は科学博物館のマスコットのカハクンの浮遊錯視です.

みきゃんの浮遊錯視


来年もがんばってください.
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これからの数理科学についての雑感

 これまで数理科学の舞台は,物理,情報,工学,経済,化学,生命科学などが主でした.今世紀になって新しい先端的な数学も生まれつつあります.21世紀にはこれらの分野に加えて,視知覚はもちろん,五感や認識に関する分野との「協働」も増えていくと思われます.まだ胎動の段階といえますが,私自身はこのようなプロジェクトを始めることを考えております.
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わい同心円錯視

 歪同心円錯視(Distorted circluar illusion)についてです。
 フラクタル島という数学で知られた図形を少し縦長にして同心円状に配列すると、渦巻いて見えます。フラクタル螺旋錯視(H. Arai & S. Arai, 2007)です。






 下の画像をじっと見つめてくさい。フラクタル螺旋錯視画像の上に、4個の緑の円が同心円状に並んでいるのですが、同心円には見えず、がぐにゃぐにゃして見えませんか。
歪(わい)同心円錯視(H. Arai & S. Arai, 2012)といいます。






 ちなみに、1908年にフレーザーは、ねじれ紐模様の円をいくつか同心円状に並べて、ゆがんで見える錯視を作りました。しかし、歪同心円錯視はそれとは違って、何の模様もない円を並べたものです。これがフレーザーのものとの違いです。
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動くフーリエ級数




 パソコンを上下にゆっくりとスクロールすると、フーリエ級数が動いて見えます。
フーリエ級数の浮遊錯視ですが、作るのに使ったのはフーリエ解析ではなく、かざぐるまフレームレット解析。これはウェーブレットを、視覚・錯視の数理モデル研究のために考案した新しい数学。ウェーブレットを進化させたようなものです。

新井仁之(東大数理)
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サイエンスの中の数学、数学というサイエンス

 いろいろな分野に溶け込んで発表をすることは、数学や数学イノベーションを広くアピールすることにつながるだけでなく、「数学ってサイエンスだね」と実感していただくのにも効果的であると、最近特に思っています。
 サイエンスアゴラ2015 の日本科学未来館会場で行われた『五感で感じる産学連携』(JST産学連携事業)で、視覚の部門を担当することになり、展示&デモを行いました。実際に展示・デモをしてみて次のようなことを感じました:

 数学系機関・グループ主催のイベントに来る人は、ある程度数学というものに関心があるから、来られるのだと思います。しかしそれとは違って、サイエンスアゴラのような催しには、数学以外のサイエンスに関心のある方も大勢来られます。そのため、特に数学を意識されていない方にも「数学というサイエンスの面白さ」、あるいは「現代数学の応用っていろいろあるんだな」とわかってもらえるチャンスがあるのではないかと思います。特にサイエンスアゴラでは、小学生、中学生、高校生、大学生、社会人、企業の方など幅広い方々が来られます。今回もそういった多くの方とサイエンスコミュニケーションができました。もちろん、準備のための労力と時間がかなり必要です。たとえば来られた方の年齢やバックグランドに応じて説明の仕方が変わるため、いくつかのシナリオを頭の中に準備しておかなければなりません。当日も大変と言えば大変です。今回は、朝10時から夕方5時近くまで、二日間、昼休みを除いて、私も含めて説明者3名~4名が全員総出でずっと立ったまま説明とデモを続けてました。しかし、それだけに、
『数学ってこんなこともできるんですね』、
『すごい!』、
『おもしろい!』
といった反応があると、うれしくなってきます。また、目の前にいる人に数学というサイエンスの面白さを感じてもらえたと実感できます。

 今年度は、例年以上に数学系機関主催ではない催しに呼ばれることが多く(日本医学放射線学会<特別講演>、販促EXPO<技術提供>、JSTフェア<講演&企業と展示>、ロボット学会<セミナー講演>、サイエンスアゴラ<展示&デモ>)、時間の許す限り参加しました。どれも数学というサイエンスの有用性をアピールできる絶好の機会でもあったと思います。こういう機会はこれからも大切にしたいものです。

新井仁之(東大数理)
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サイエンスアゴラの展示「数学から生れる画像処理技術・・・」終了!

サイエンスアゴラ2015の展示&デモ「数学から生れる画像処理で脳をだます」が、無事終了いたしました。多くの方にご来場いただき、感謝いたします。
また、文字列傾斜錯視自動生成ソフト体験型デモも、大勢の方にご参加いただき、いろいろな面白い錯視が作られました。
全部をご紹介できませんので、二つほど。



さて、もともとの言葉は7文字の名詞で、そこから5文字を並べ変えてできた錯視です。元の名詞は何でしょう。

ヒント1:今、健康に良いと大変人気です。
ヒント2:飲み物です。



これは??

下の写真は展示コーナーの前に置かれたテーブルの一つです。おみやげのパンフレット(左上)、浮遊錯視絵はがき(右上)、JSTが動く錯視うちわ(左下)、それから展示品として「錯視のひみつにせまる本 第3巻」(新井仁之著、ミネルヴァ書房)。


私も含めてJSTの方ら3名~4名でご来場の方々に説明をしましたが、ほぼいつも誰かが説明をしている状態で、特に二日目の今日はほとんど常時、全員フル稼働でした。二日間、いろいろな方々と研究内容についてコミュニケーションができて、とても楽しいでした。

本展示は科学技術振興機構・産学連携事業による「五感で感じる産学連携」の「視覚」コーナーの展示で、研究者は新井仁之(東大数理)です。
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サイエンスアゴラ2015初日。数学から生れる画像処理技術で脳をだます

サイエンスアゴラ2015での展示
『数学から生れる画像処理技術で脳をだます』
の初日が終わりました。配付していた浮遊錯視絵はがきは全部完配。錯視&画像処理のカラーパンフも残部が少しとなりました。現在、増刷中です。明日、二日目にはまた新しく浮遊錯視絵はがきとパンフを補充します。
明日も視覚と錯覚の数理、そのアート、各種画像処理技術への応用に関する説明、それに文字列傾斜錯視自動生成ソフトの体験型デモも行います。
会場は日本科学未来館、1階企画展示ゾーン Aa-016 『五感で感じる産学連携』の視覚コーナーです。どうぞご来場下さい。
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サイエンスアゴラ2015 の準備 @ 日本科学未来館

14日(土)からサイエンスアゴラ2015で「五感で感ずる産学連携」(JST産学連携事業)が始まります。視覚のテーマは「数学から生れる画像処理技術で脳をだます」です。今日は、視覚コーナーの準備のため、会場の日本科学未来館に行ってきました。準備に追われているJSTのスタッフの方々のお手伝いをして(お邪魔をして?)、デモ用のパソコンの設定準備や、展示パネル、配付物の最終調整などをさせていただきました。

明日10時開場です。
会場は、日本科学未来館 1 階 企画展示ゾーン Aa-016。

お子様、小・中・高校生のかた、一般のかた、研究者、企業のかたで、錯視、数学、画像関連産業にご関心のあるかたはぜひお越し下さい。
視覚と錯視の数理、アート、各種画像処理などの融合研究を概観できます。また、錯視関連ソフトの体験型デモもあります。



会場の日本科学未来館。入館するのは今回が初めてです。
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視覚と錯視の数理における非線形性

電子情報通信学会誌98巻11号(2015)の特集は『非線形理論とその応用』です。これはNOLTA(Nonlinear Theory and Its Applications)ソサエティの発足を記念して組まれた特集ということです。
NOLTAソサエティ発足、おめでとうございます。
この特集への寄稿を依頼され、執筆した
『視覚と錯視の数理における非線形』
が同誌に掲載されました。
https://researchmap.jp/muvhc3l5q-1779138/#_1779138
にそのpdf版をアップしました。ご覧いただければ幸いです。
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文字列傾斜錯視自動生成ソフトのデモします

 文字列傾斜錯視自動生成ソフト(新井・新井作成)のデモンストレーションをサイエンスアゴラ2015で行います!
 実際にお試しになることもできます。
 期間は 11月14日(土)ー15日(日)、場所は日本科学未来館、『五感で感じる産学連携』の会場内です。 


文字列傾斜錯視自動生成ソフトの画面の一部
好きな文字列と数字を入力する。すると、その文字列を構成する文字から、(もし存在するならば)指定の文字数の文字列傾斜錯視になるような文字の配列を数学的に求めて錯視を表示する。


『五感で感じる産学連携』
は、科学技術振興機構・産学連携事業がサイエンスアゴラ2015で開催する催しです。嗅覚、聴覚、視覚、味覚、触覚という人の感覚に関するさまざまな研究成果の展示・実演・説明が行われます。


 この五感のうちの「視覚」セクションのテーマは

    『数学から生まれる画像処理技術で脳をだます』


というもので、私の研究成果の展示です。数理視覚科学の研究と、それを応用した各種画像処理の新技術のいくつかの展示をします。そして、文字列傾斜錯視自動生成ソフトのデモも行います。

 文字列傾斜錯視自動生成ソフトは、特許第5456931号(発明者:新井仁之、新井しのぶ、特許権者:JST)を使って作成したものです。

 五感で感じる産学連携に関する詳しい情報は

http://www.jst.go.jp/csc/scienceagora/program/booth/aa_016/

をご覧ください。
 

東京大学大学院数理科学研究科 新井仁之

 


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数学領域 CREST と PRESTO で得た成果のまとめ

科学技術振興機構(JST)の PRESTO (さきがけ)では 2007 年9月から、引き続きCRESTでは 2010年9月より研究を行い、今年度でこの研究費は終了します。8年半もお世話になりました。あと半年残ってますが、CRESTの成果報告文を提出しなければならず、これを機に PRESTO / CREST での研究成果をパワポ一枚にまとめてみました。
研究自身はまだまだ発展途上中なので、CREST終了後もこの研究を続行していきたいと思っています。





参考サイト
錯視の科学館:http://www.araiweb.matrix.jp/Exhibition/illusiongallary4.html

東京大学大学院数理科学研究科 新井仁之


キーフレーズ
純粋数学の新しい結果を生み出し、脳内の視覚情報処理の数理モデル研究、アート、各種画像処理の新技術の発明、そして数学イノベーションの創出。

キーワード
数理視覚科学、錯視、視覚、ウェーブレット、かざぐるまフレームレット、数学イノベーション、数学と異分野の融合的研究、数学とアート、画像処理。
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