論文

2017年3月

「国際経済統合とベトナム金融システム:健全なシステムへの道」

アジア太平洋研究所資料
  • Cao Thi
  • ,
  • Khanh Nguyet

記述言語
英語
掲載種別
研究論文(大学,研究機関等紀要)
出版者・発行元
Asia Pacific Institute of Research

ベトナム経済は、1986年より始まったドイモイ(革新)政策により、計画経済から離れ、市場経済体制への移行を果たした。これをきっかけとして、ベトナムの銀行部門は単一銀行システム、すなわちベトナム国家銀行が中央銀行として政府の金融政策を実施するのと同時に商業銀行としても運営されていた状態から、中央銀行と商業銀行の機能分離を明確にした二階層の銀行システムへと移行をしている。他方、ドイモイ政策により、国際経済統合も進んでいる。その中で、外国銀行がベトナム国内銀行への投資を行い、外国銀行も支店だけにとどまらず、国内銀行とのジョイントベンチャー、100%外国資本銀行の形で、銀行事業を展開している。
また、ASEAN 経済共同体(AEC) の誕生により、現地で法人資格を持たない外国銀行でもベトナム国内での銀行サービスの提供が可能となり、海外投資家による株式保有比率が70%へ引き上げられるなど、海外投資家及び海外銀行のベトナム国内における存在感はより大きく高まって行くと考えられる。
そうした背景を踏まえ、本研究はベトナムの国際経済統合を概観し、それによる銀行部門へのインパクト、特に外国銀行の参入に焦点を当て分析を行った。本稿の分析により、経済改革と国際経済統合は、ベトナムの銀行部門に、市場の多様化、国内銀行の効率性向上、経営ノウハウの習得、法制度の整備等、様々なメリットをもたらしていることがわかった。しかし一方で、資本と経験の豊富な外国銀行は、国内銀行に厳しい競争をもたらすという点も明らかとなった。分析結果からの政策的インプリケーションとして、健全なシステムに向かって、引き続き国内銀行の再編を行うことに加えて、信頼できる外国銀行と協力し、経営ノウハウの習得を通じて、効率性を向上させることが重要であることを提案する。

リンク情報
URL
https://www.apir.or.jp/ja/research/research-project/5400/

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