研究ブログ

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出張時の託児

この一週間、上海の研究会に来ています。私の分野(可積分系・数理物理・統計力学・スピン鎖周辺)の研究者は国内外に点在しているので、研究会は議論をするのにとても貴重な機会です。
出張をするにあたり避けて通れないのが、留守の間どこに子供を預けるかという問題です。今回の私の出張の場合ですが、両親に協力をお願いしました。出産後はことある度に両親にお願いしていて、近くない距離を移動してもらうのは心苦しいのですが、とても助かっています。また、私の場合は夫婦で研究者をしておりある程度時間に融通がきくため、互いに協力し合って育児と研究を両立しています。
ただし、パートナーの働き方や両親の状態によってケース・バイ・ケースだと思うので、(今後のためにも)思いつく選択肢を挙げておきたいとおもいます。

まず一番はじめに思いつくのが、パートナーにお願いすることです。ただし、パートナーが激務で深夜帰宅になってしまう場合や、離れて暮らしている場合、この選択肢はなくなります。
次に思いつくのが、宿泊型託児施設に預けることです。区によっては、特定の世帯に補助があることもあります(たとえば文京区の場合、https://www.city.bunkyo.lg.jp/kyoiku/kosodate/okosan/ichijiteki/nyuyoujisoutosutei/nyuyouzisyoto.html)。こちらは、知らない人に子供を預けることになるので、心理的に抵抗のある人もいるかもしれません。
上の二つ以外で思いつくのは、出張先に子供を同伴するという選択肢です。会場に連れて行くのは現実的ではないですが、全国展開しているベビーシッター業者に登録しておけば、出張先で利用することも可能かもしれません。あまり知られていないかもしれませんが、出張中の託児費用として科研費を利用することができます(文部科学省 科研費FAQを参照 http://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/faq/__icsFiles/afieldfile/2019/07/19/1306984_001.pdf)。また、私が所属している物理学会を含むいくつかの学会では、学会期間中に託児所を運営しています。

こういった具体的な問題に直面したとき、まわりを見渡すと、相談できる同年代の女性研究者は本当に少ないことに気付きます。幸い、私のまわりにいる少数の先輩方はとても親切で、今のところ本当に困った状況にはまだ陥っていません。科研費を託児費用に使えたり、学会で託児所ができたりしたのも、先輩方が多く働きかけてくださったおかげで実現しています。子供も育てたい、だけど研究でも活躍したいという若手研究者(女性だけとは限りません!)の願いが、決して贅沢なものではなく、ちゃんと実現されるのだという環境が整っていって欲しいです。
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出産までとそれにまつわる(費用関連)支援等

出産前に助かったこと・困ったことなどを記録しておきたいと思います。


まず、一番大変だったのは満員電車での出勤と立ち授業です。私のいる大学では授業が105分と長く、また次の授業へ行く際のキャンパス内移動が長いため、連続して授業を行うときはほぼ4時間弱立ち続けなければならないこともありました。地味に辛かったのは眠気で、研究や授業の準備が思うようにはかどらずもどかしさが募りました。

逆にありがたかったのは、周りの教員や事務の方々が大変気遣ってくださり、急な欠席や休暇中の学内業務の交代などを快く受け入れてくださったことです。また、ドイツからの招待講演で旅費が先方負担だったのですが、体調を気遣って飛行機の広い席を用意してくださったり、その他学内でも、移動で普段より多くかかった経費を負担するための予算をいただけたことも、とても助かりました。

こうした制度も以前は知らないものばかりで、調べてみると(産後も)便利なものがたくさんあります。すでに利用している人から教えてもらうのが手っ取り早いですが、身近にいなければ学会でのミーティングなどに参加したり、このブログのようなところから情報を得るのもアリだと思います。

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産前産後休暇と育児休暇

産前産後休暇という制度、私は実際に取得するまで、育児休暇と混同していました。まず、大きな違いは産前産後休暇は誰でも取得できるのに対し、育児休暇は取得できる人の要件が決まっています。また、産前休暇は出産6週間前から、育児休暇は子供が1歳になるまでの間、請求した期間を取得できますが、産後休暇については原則出産の翌日から8週間は就労できないことになっています(詳しくは厚生労働省のページをご覧くださいhttps://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/31.pdf)。

基本的に行き当たりばったりな私は、運良く体調が良かったこともあり、授業の区切りがよい学期の最後まで働くことにしました。結局、出産予定日の2週間前くらいまで出勤していました。おかげで、代講を頼むことなく最後まで担当の授業をやりきることができました。それでも、年度のはじめに決まっていた学内業務など、休まざるを得ないものもありました。幸い、周囲の方々がとても協力的で安心して休むことができました。
私の職場は産休・育休などを取得する教員がとても少なく、該当者が出た場合には周囲が全力でバックアップしてくださいます。これはとてもありがたいことなのですが、もし今後女性教員が増えて、同時に複数人が休暇を取るような状況になった場合にも対応できるよう、体制を整えていかなければならない課題だと感じました。
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旧姓併記パスポート

多くの人が結婚後に改姓手続きを取ることになると思いますが、それにまつわる事を少し記しておきます。実は、私の周りには同業者かどうかに関わらず、男性が改姓したケースも少なからずあったので、これからは男性も結婚の際には改姓手続きについて(するにせよしないにせよ)意識しておくのがいいと思います。
私は結婚前、改姓は手続きが面倒そうだなぁとなんとなく思っていたのですが、いざ結婚するときに、「姓は変えたくないとか、そういうことはある?」と聞かれ、あまり自分の姓にこだわりがないことに気付きました。職場では当たり前のように旧姓使用が認められていたこともあり、改姓することにしました。手続きはそれなりに面倒でしたが、特殊な手続きが必要なのはおそらく「パスポートの旧姓併記」くらいだと思います。

そういえば、少し前に旅券への旧姓併記の拡大が検討されているというニュースがありました(http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/jyuuten_houshin/sidai/pdf/jyu10-shiryo10.pdf)。たぶん、私が申請したときはまだ拡大されていないときだったと思いますが(ひょっとしたら今もまだ?)、旧姓である程度の業績を挙げている人なら問題なく発行してもらうことができます。具体的には、「改姓後に旧姓で国際的に活動した証拠」を提出できればいいです。たとえば、国際ジャーナルから出版された論文や、国際会議のプラグラムなどです。これらに旧姓と新姓を併記してしまった場合については、経験がないのでわかりません。
「例外的措置」なんて書かれているため構えていましたが、旧姓併記はメリットこそあれデメリットは見当たらないので、面倒でも申請したほうがいい!という先輩既婚者のアドバイスに従って損はなかった、というのが今のところの印象です。
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結婚・出産のタイミング

結婚・出産のタイミングは、独身時代のライフスタイルを大切にしている女性にとって大きな悩みの種かもしれません。
学位取得まで普通に進むと、学部4年間に加えて修士課程2年、博士課程3年。この後もポスドク時代には異動や経済的な不安がつきまとい、なかなか所謂「落ち着いた生活」とはならないことが多いと思います。私の周りの女性研究者は夫婦で同業の方が多いのですが、近い場所でポストがなく、離れて暮らしている方も少なくありません。また、任期付ポストに就いている場合、任期中に育児休暇を(たとえ制度として可能であっても)取得するのかという大きな決断を迫られます。

私の場合は、高校時代は21歳で結婚すると意気込んでいたものの、大学院に入ってからは(出張や議論、合宿などを含め)研究活動にはまってしまい、あまり婚活を意識することなく学生時代を過ごしました。卒業後は物理 → 情報理工 → 数学と激しく所属を移ったり、自分で研究テーマを見つけられるようになったことで研究そのものが楽しくなったこともあり、特に良縁に恵まれることなく30歳を迎えました。
それから少しして運良く任期なしのポストを取得し、そのタイミングで結婚しました。任期について悩む必要がなかったのと、あまり若くなかったこともあり、その後すぐに妊娠・出産することにしました。
実際には、いつ任期なしのポストを取得できるか予測することは難しく、また年齢やいろいろなタイミングとの兼ね合いもあるので、どの段階で結婚するのか、出産するのかはそれぞれの個人が何に重点を置くかで変わってくると思います。
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研究・趣味、ときどき家事・育児

ここ最近、男女共同参画の活動に関わることが増え、理系(特に物理・数学分野)に進みたいけれども漠然とした不安を抱えていたり、将来像がイメージできなかったりするために、大学院進学や研究職を選ぶことをためらう女子学生がそれなりにいるのではと思うようになりました。
私個人の話がどの程度役に立つのかはわかりませんが、少しでも多くのモデルケースがあったほうが参考になるかと思い、育児をしながらの研究活動について発信することにしました。
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