2021年7月 - 2023年3月
高齢化社会における免疫能維持を目指して
日本学術振興会 科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽) 挑戦的研究(萌芽)
MAIT細胞は自然免疫と適応免疫細胞の両方の性質を持ち、自然免疫と適応免疫とを橋渡しする。この性質からMAIT細胞はアレルギー性気道炎症に関与することが予想されていたが、従来の実験用マウスにはMAIT細胞がほとんど存在せず、その機能解析が遅れていた。今回、我々はMAIT細胞が遺伝的に豊富なマウスをMAIT細胞由来iPS細胞から作製し(以下、Va19マウスという)、これを用いてアレルギー性気道炎症モデルにてMAIT細胞がアレルギー性気道炎症に及ぼす効果を検討した。 Va19マウスと野生型マウス8C57BL/6)にかびの一種であるアルテルナリアを投与して気道炎症を誘導したところ、野生型マウスに比してVa19マウスでは肺胞洗浄液液(BALF)中の好酸球、2型自然リンパ球の数が減少していた。しかし、マクロファージ、好中球、リンパ球の数には差異がなかった。BALF中のサイトカイン産生を調べたところ、Va19マウスでは野生型マウスに比してThelper 2(Th2)型サイトカインであるIL-4, IL-5, IL-13 の産生量が減少していた。また、肺組織をヘマトキシン/エオシン染色したところ、野生型マウスでは多数の免疫細胞の浸潤並びに気道平滑筋の厚み増大が見られ、典型的な気道炎症を示した。一方、Va19マウスにおいてはこれら細胞浸潤や筋の肥大化が抑制されており、炎症が和らいでいた。さらにPAS染色を行なったところ、野生型マウスでは杯細胞の過形成・異形成と多量のムチン蓄積が見られたのに対して、Va19マウスではこれら表現系が抑制されていた。以上から、MAIT細胞のマウス内での増加はアルルテナリアによって誘導されるアレルギー性気道炎症を抑制することが明らかにされた。
- ID情報
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- 課題番号 : 21K19732
- 体系的課題番号 : JP21K19732