Mycobacterium abscessus complex(以下MABC)を構成するMycobacterium abscessus subsp. abscessus(M.abscessus),Mycobacterium abscessus subsp. bolletii(M.bolletii),Mycobacterium abscessus subsp. massiliense(M.massiliense)は,亜種間での治療成績の違いが指摘されているが,充分な検討はなされていない。そこで我々は,当院で分離したMABCについて亜種同定と最小発育阻止濃度(Minimum Inhibitory Concentration:MIC)の測定を行った。DNA-DNA hybridization(DDH)マイコバクテリア法によりM.abscessusと同定されたMABC 11株について,ropB,hsp65遺伝子解析にて亜種同定を行い,CLSI M24 3rd edに準拠した方法でMIC値を測定した。MABC 11株の亜種同定結果はM.abscessusが10株(90.9%),M.massilienseが1株(9.1%)であった。M.abscessusは10株中8株(80%)がMIC>32μg/mLと,Clarithromycin(CAM)に耐性を示し,2株(20%)は感受性であった。M.massilienseはCAMに感受性を示した。また,Imipenem/cilastatinはM.abscessus,M. massilienseともにMIC≧32μg/mlと耐性を示したが,Amikacin(AMK)に対してはMIC≦16μg/mlの感受性株もM.abscessusにて2株認められた。M.abscessus/bolletiiとM.massilienseは通常6:4程度の比率で分離されるが,今回の株はM.abscessus優位であり,これまでの報告と異なっていた。M.abscessusは一般にCAM耐性であるが,約10%の感受性sequence variant(sequevar)が存在するとされている。MABC株が分離され治療の必要がある場合には,亜種同定とともにMICを測定し感受性を評価する必要がある。(著者抄録)