2016年4月 - 2019年3月
LINE1配列のストランド特異的分布とMARを介したクロマチン制御機構の解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
我々は,親由来の明らかなヒト15番染色体を1本保持したマウスニューロン様細胞株F12を樹立し,15q11-q13領域のゲノムインプリンティング制御メカニズムの解明に取り組んできた。興味深いことに,15q11-q13領域に関してはLINE1配列がDNAストランド特異的高密度分布をとることが見出されている。そこで,我々はこのLINE1配列のストランド特異的高密度分布を示す領域のBACをプローブにDNA-FISH解析を行った結果,神経細胞でのみ父片アレル特異的にクロマチンが大きく広がった脱凝集構造をとることを見出した。また,LINE1配列のストランド特異的高密度分布を示す領域内のMAR(PWS-IC)を欠失させると,本来凝集している母方アレルにおいてもクロマチン脱凝集構造が出現するなど,LINE1配列がMARを介した染色体ドメインレベルのクロマチン構造形成に寄与している可能性が示唆された。そこで,本研究で我々はCRISPR/Cas9システムを用いてMAR結合タンパク質,Satb1の欠損細胞株を樹立した。Satb1欠損F12細胞にて,15q11-q13領域のクロマチン脱凝集状態を解析した所,正常細胞株と比較し脱凝集が小さくなっていることが明らかとなった。一方,Satb1を強制発現させたF12細胞では,クロマチン脱凝集状態が正常に比べ大きく広がっていることを見出した。このことから,15q11-q13領域のクロマチン脱凝集の構築には,MAR結合タンパク質,Satb1が大きく関わっていることが明らかとなった。また,興味深いことに,Satb1の欠損細胞株において,15q11-q13領域のMAGEL2/NDNの発現が低下していることが明らかとなった。現在我々は,クロマチン脱凝集の縮小が,染色体ドメインレベルの遺伝子発現制御に影響を与えている可能性を考えている。
- ID情報
-
- 課題番号 : 16K07196
- 体系的課題番号 : JP16K07196