基本情報

所属
神奈川県立こども医療センター アレルギー科
学位
学士(医学)(群馬大学)
博士(医学)(藤田保健衛生大学)
学士(文学)(慶應義塾大学)

J-GLOBAL ID
201501005393965477
researchmap会員ID
7000012840

 研究者は増加するアレルギー疾患に寛解をもたらす免疫療法を1つの疾患だけでなく、食物アレルギー、花粉症、その複合疾患である果物アレルギーについて評価検討をおこなってきた。臨床研究を自ら計画、実行し、その成果を様々な形で発表している。

【研究テーマ1: 牛乳アレルギー患者に対する新規食事指導の開発】

 牛乳は食物アレルギーの原因食物として多く、食事から牛乳を排除する除去食対応は栄養面だけでなく、家族のQOLも低下させる(Indinnimeo L, et al. BMC Pediatr. 2013)。

 食物アレルギーに対して、原因食物を摂取しながら耐性を誘導する経口免疫療法の有用性が報告されている。研究者は、本邦で初めて重症の牛乳アレルギー患者に対する経口免疫療法の有用性を報告した[1]。しかし、この治療は有効である一方でアレルギー症状の誘発のリスクが高いことが指摘されており (Brożek JL, et al. Clin Exp Allergy 2012)、安全性確保が今後の課題となっている。

 そこで、経口免疫療法治療中の副反応を減らすために、低アレルゲン化されたペプチドミルクに着目し、二重盲検食物負荷試験にて安全性を確認した[2]。また、重症牛乳アレルギー患者に対してペプチドミルクが免疫学的にもアレルゲン性が低いことを表している[3]。牛乳アレルギー患者が2ヶ月間ペプチドミルクを連日摂取することで、全身症状の誘発なく普通ミルク摂取可能量が増加した。(図1;[4]) 。ただし、その後の検討で治療に反応しない患者がいたこと、増加量が少なかったことより、一般臨床への限界も明らかになった。

 研究者は、強い加熱でアレルゲン性を低減させた乳製品(baked milk: BM)に着目した。2018年より、牛乳アレルギー乳児に対して、少量のBMから徐々に牛乳含有量を増やしていくmilk ladder法を導入している(以下milk ladder法)。まず、導入時のBMの安全性を確認している。さらに、2歳以下の牛乳アレルギー患者と牛乳アレルギーのリスクが高い乳幼児に対するmilk ladder法の介入が、従来行われていた経口免疫療法に比較し、安全で有効であることを発表したI図2; [5])。

  今後は、より有効性・安全性も高い食事指導法を確立するために、milk ladderの改善と、適切な患者にmilk ladder法を導入するための指標の開発を行っている。

図2. 牛乳アレルギー乳幼児の指導方法の比較
2年間の観察では、milk ladder群の方が早期より乳含有加工食品を摂取できるようになっていた。
Y. Matsumoto and  C. Inuo. et al.Clinical and Translational Allergy 2024。

<関連発表論文>

  1. 犬尾千聡,伊藤直香,高増哲也,栗原和幸.
    牛乳経口耐性誘導療法の1例. 小児科臨床 2010; 63:999-1003.
  2. 犬尾千聡
    【アレルギーを治そう!〜免疫療法のいま〜】<免疫療法をはじめる前に>食物アレルギー. チャイルド ヘルス 2019; 22:499-502
  3. C. Inuo, K. Tanaka, S. Suzuki, Y. Nakajima, K. Yamawaki, I. Tsuge, A. Urisu, Y. Kondo.
    Oral Immunotherapy Using Partially Hydrolyzed Formula for Cow's Milk Protein Allergy: A Randomized, Controlled Trial.International archives of allergy and immunology 2018; 177:259-268. [IF:2.437]
  4. C. Inuo, K. Tanaka, Y. Nakajima, K. Yamawaki, T. Matsubara, H. Iwamoto, I. Tsuge, A. Urisu, Y. Kondo.
    Tolerability of partially and extensively hydrolysed milk formulas in children with cow's milk allergy. Asia Pac J Clin Nutr 2019; 28:49-56. [IF:1.236]
  5. T. Matsubara, F. Ishikawa, C. Inuo, M. Fujita, A. Tsukahara, T. Koyama, H. Iwamoto, K. Miyaji.
    Allergenicity of partially hydrolyzed whey and casein formulas evaluated by ImmunoCAP inhibition assay and basophil activation test. Front Allergy 2023; 4:1207924. 
  6. Y. Matsumoto, M. Fujita, T. Ayumi, T. Takamasu, C. Inuo.
    Milk ladder versus early oral immunotherapy in infants with cow's milk protein allergy. Clinical and Translational Allergy 2024; 14.  [IF:4.6]

<関連獲得研究費>

研究代表者:文部科学省科学研究費 基盤研究(C)(一般) 、2011年度~2013年度
ペプチドミルクによる低アレルゲン経口免疫療法の確立

研究代表者:文部科学省科学研究費 若手研究 (一般) 、2019年度~2021年度
新規ペプチドミルク経口免疫療法の開発

 

【研究テーマ2: 鶏卵アレルギー患者に対する新規食事指導法の開発】
 研究者は鶏卵アレルギー・ハイリスク群であるアトピー性皮膚炎小児46例に対して、オボムコイドを減らすことで鶏卵を低アレルゲン化した低オボムコイド離乳食を摂取する検討を行い、安全に摂取可能であることを報告した([1])。

 BEを用いた25症例の負荷試験結果を前年時期に施行した少量卵白(中央値: 卵白1.7g)を用いた26例の経口負荷試験結果との比較検討行った。BEの方が症状誘発が少なく、導入時の安全性を示唆する結果を報告している(図3. [2])。

 さらに最近、当科で2014〜2024年に実施した BE・加熱卵黄(EY)・加熱卵白(EW)経口負荷試験の後ろ向き解析を行い、3歳未満の卵アレルギー児97例を対象に三者の安全性を直接比較した研究を国際誌に報告した(Ohara Y, Matsumoto Y, Fujita M, Inuo C. Int Arch Allergy Immunol. 2025)。BE 群47例、EY 群23例、EW 群27例のうち、BE 群では負荷陽性例を1例も認めず、EY 群17.4%、EW 群22.2%と比較して有意に低頻度であった。EY・EW 群で認められた反応も大部分が皮膚症状や消化器症状にとどまり、いずれの群でもアドレナリン投与を要する重篤反応は認めなかった。特に BE 群では、卵タンパク0.65 mgを含む市販baked egg製品を用いた単回負荷プロトコールにより、卵完全除去中の高リスク児においても極めて安全に初回再導入が可能であることが示された(図4)。

図4. 食物経口負荷試験結果

(Ohara Y and Inuo C et al.,Int. Arch. Allergy Immunol.2025,)

 我々は、少量のBEの摂取から開始し、様々な鶏卵含有の加工品を摂取していくことで、鶏卵アレルギー寛解を目指すegg ladder法という食事方法の有効性・安全性を現在評価をしている。

 これら一連の研究により、卵白未摂取のハイリスク乳幼児に対して、①極少量 BE による安全な経口負荷での再導入確認、②その後さまざまな鶏卵含有加工品へと段階的に摂取範囲を広げていく egg ladder 法、というステップを踏むことが、安全性と寛解誘導の両面から合理的な新規食事指導戦略であることが裏付けられつつある。現在、研究者は egg ladder 法の有効性・安全性を前向きに評価するとともに、どのような臨床背景・感作指標を有する患者に本法を優先的に導入すべきかを検討し、個々の患者に最適化された鶏卵導入アルゴリズムの構築を進めている。
  

<関連発表論文>

  1. 犬尾千聡、森雄司、近藤康人、田中健一、中島陽一、川井学、山脇一夫、木村守、柘植郁哉、宇理須厚雄.
    卵白未摂取アトピー性皮膚炎乳幼児に対するオボムコイド減量加熱全卵ベビーフードの安全性. 日本小児アレルギー学会誌 2017; 31:135-140. 
  2. 上原健史,藤田真弓,津曲俊太郎,高増哲也,犬尾千聡.
    鶏卵アレルギー児に対する少量Baked Eggを用いた経口負荷試験の安全性の検討. 小児科診療 2023; 86:1522-1525.
  3. Ohara Y.,Matsumoto Y.,Fujita M.,Inuo C.;Comparative Safety of Baked Egg, Egg Yolk, and Egg White in Young Children with Egg Allergy,Int. Arch. Allergy Immunol.,1-13.2025. [IF:1.8]

<関連獲得研究費>

研究代表者:文部科学省科学研究費 基盤研究(C)(一般) 、2022年度~2024年度
新規鶏卵導入法( Baked Egg Diet)の有用性の検討

【研究テーマ3:皮下注射免疫療法】

 研究者は皮下注射免疫療法によるアレルギー寛解のメカニズムをトマト[1]、スギ[2]、ダニ[3]について報告をしている。

<関連発表論文>

  1. C. Inuo, Y. Kondo, K. Tanaka, Y. Nakajima, T. Nomura, H. Ando, S. Suzuki, I. Tsuge, T. Yoshikawa, A. Urisu.
    Japanese cedar pollen-based subcutaneous immunotherapy decreases tomato fruit-specific basophil activation. Int Arch Allergy Immunol 2015; 167:137-45. [IF:4.036]
  2. C. Inuo, H. Ando, K. Tanaka, Y. Nakajima, I. Tsuge, A. Urisu, Y. Kondo.
    Long-term immunological effects of Japanese cedar pollen-based subcutaneous immunotherapy. Allergol Int 2018; 67:408-410. [IF:4.036]
  3. C. Inuo, H. Ando, K. Tanaka, Y. Nakajima, I. Tsuge, A. Urisu, Y. Kondo.
    Decreased Basophil Activation against House Dust Mite after Japanese Cedar Pollen Subcutaneous Immunotherapy: A Retrospective Study. International archives of allergy and immunology 2024; 185:73-78. [IF:2.5]

<関連獲得研究費>

研究代表者:文部科学省科学研究費 基盤研究(C)(一般) 、2016年度~2019年度

トマト・アレルギー:抗原感作から発症、治癒に至るメカニズムの解明

 【研究テーマ4:食物アレルギー原因アレルゲン探索】

【研究テーマ4:アレルゲンの同定】
 食物アレルギー研究において重要なアレルゲン同定について報告をしてきた。

<関連発表論文 >

  1. Inuo C, Kondo Y, Itagaki Y, Kurihara K, Tsuge I, Yoshikawa T, Urisu A.
    Anaphylactic reaction to dietary oats. Ann Allergy Asthma Immunol. 2013 Apr;110(4):305-6. [IF:2.74]
  2. Tanaka K, Kondo Y, Inuo C, Nakajima Y, Tsuge I, Doi S, Yanagihara S, Yoshikawa T, Urisu A.
    Allergen analysis of sea urchin roe using sera from five patients. Int Arch Allergy Immunol. 2014;164(3):222-7.[IF:2.74] 
  3. Mori Y, Okazaki F, Inuo C, Yamaguchi Y, Masuda S, Sugiura S, Fukuie T, Nagao M, Tsuge I, Yosikawa T, Yagami A, Matsunaga K, Fujisawa T, Ito K, Narita H, Kondo Y; Fruits Allergy Component Study Group, Japan..
    Evaluation of serum IgE in peach-allergic patients with systemic reaction by using recombinant Pru p 7 (gibberellin-regulated protein). Allergol Immunopathol (Madr). 2018 Sep - Oct;46(5):482-490. [IF:1.644]
  4. Mori S.,Kurihara K.,Inuo C.;
    Case of a 6-year-old boy with anaphylaxis induced by erythritol with positive skin prick test and negative basophil activation test,Allergy, Asthma & Clinical Immunology,18,2022.(IF=3.4]
  5. Inuo C.,Okazaki F.,Shiraki R.,Tanaka Y.,Momma K.,Kondo Y.,Narita H.;
    Generalized allergic reaction in response to exercise due to strawberry gibberellin-regulated protein: a case report,Allergy, asthma, and clinical immunology,18,49.2022.[IF=3.4]
  6. Tsukahara A.,Fujita M.,Okamoto Y.,Tsumagari S.,Takamasu T.,Inuo C.;
    Different tolerance of food protein-induced enterocolitis syndrome in fishes of the same family: A pediatric case report,J Investig Allergol Clin Immunol,33,2023.[IF=7.2]

 

【研究テーマ5:アトピー性皮膚炎】
 鶏卵アレルギー発症のリスクとされているアトピー性皮膚炎について副次的反応、湿疹症状の予防研究について報告している。

<関連発表論文>

  1. 吉岡奈月、井上瑶子、小島隆浩、犬尾千聡.
    沐浴指導内容の変更による1ヵ月健診での皮膚症状有症率への影響. 助産雑誌 2019; 73:392-397.
  2. Adachi M.、Takamasu T.、Inuo C.;
    Hyponatremia secondary to severe atopic dermatitis in early infancy、Pediatr. Int.、2019.[IF: 1.139]
  3. Inuo C.,Soneda A.;
    Reduced cerebral blood flow in an infant with severe atopic dermatitis,Pediatrics International,65,e15563.2023.[IF: 1.4]

共同研究・競争的資金等の研究課題

  4

論文

  35

MISC

  85