コミュニティの紹介

リーディングスキルテスト

テーラーメード教育開発を支援するための学習者の読解認知特性診断テストの開発(科研費基盤A)の共同研究者・研究協力者によるコミュニティです。

21世紀の知識基盤社会においては,人生を通じて必要となる知識やスキルを確立されたカリキュラムの枠組みだけでは十分には獲得できないため,生涯にわたり学び・学習の活動を続けていく「生涯学習」が必要となる.その形態が,アナログかデジタルか,直接か遠隔かに関わらず,学習コンテンツの多くが書記言語の「読解」を前提として構成されている.MOOCsが提供する学習コンテンツにアクセスするにしても、あるいはソーシャルネットワークを通じてオープンソースソフトウェアのノウハウを知るにしても、まず必要となるのはドキュメントを読解する力である。その意味で,知識基盤社会とは,書記言語の運用能力の如何が労働市場での価値を大きく左右する社会とも言えよう. そのような認識の下,OECDではPISA調査でも,読解力を単なる「読み書き」から概念を広げ,「自らの目標を達成し,自らの知識と可能性を発達させ,効果的に社会に参加するために,書かれたテキストを理解し,利用し,熟考する能力」と改めて定義し,21世紀型スキルの核心的能力として位置付けている.

一方,学習者間で看過できない読解力の差が生じていることは動かしがたい事実である.たとえば,数学の予習をしようとしても新しい単元の定義文章を読解することができず断念する中学生や黒板の文字を書き写すことができない高校生は決して珍しくない.だが,ディスレクシアのように学習障害として認識されれば診断法や体系的な学習支援の方法が検討されるが,それ以外では,標準的な発達モデルと異なる認知特性を有する学習者のつまずきは科学的に分析されず,やる気や科目の得手不得手の問題として片づけられてしまいがちである.それはなぜか.「初見のテキストを読解する」上で、基礎的な「読み書き」を習得した各学習者がどのような困難を抱えているかを診断する標準的な方法がこれまで存在しなかったことが,要因と考えられるではないだろうか.読解力が知識基盤社会を生き抜くための核心的スキルならば,すべての学習者がそれを一定程度身に着ける教育プログラムがあることが,格差の少ない民主的な社会の形成の上で強く望まれる.

本研究では,項目応答理論を用い,読解の認知特性を高い精度で診断する標準的なテスト(リーディングスキルテスト)を開発し,教育現場に提供する.これにより,学習到達度調査等では十分に把握できなかった各学習者の要素スキルレベルの読解の特性や得意・不得意を浮き彫りにする.学習支援者が各学習者の読解力に関する認知特性を正確に知ることで,真に一人一人の能力や特性に応じた教授法のが開発が可能になるされ提供される,より公平で生産性が高い社会への道が拓かれる.具体的な目標は,すべての学習者が(科目によらず)自力で中学・高校の教科書を読解できるスキルを身に着けることである.