2020年4月 - 2024年3月
腫瘍微小環境でのがん悪性化におけるカリウムチャネル調節の病態的意義解明
日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C) 基盤研究(C)
本研究の目的は、三次元(3D)スフェロイド培養システムを用いてin vitroで再現した腫瘍微小環境でのがん幹細胞能および抗がん剤耐性能の獲得におけるカルシウム活性化カリウムチャネル(KCaチャネル)の病態生理学的意義を解明し、KCaチャネル作用薬の悪性がん治療薬としての潜在性を示すことである。本年度の研究計実施計画では、ヒト前立腺がん細胞における①抗アンドロゲン剤耐性獲得のメカニズムを解明するとともに、②KCa1.1阻害薬による抗アンドロゲン剤耐性克服効果を検討した。本研究では、アンドロゲン依存性ヒト前立腺がん細胞LNCaPを用いて以下のことを明らかにした。(1) スフェロイド培養によりLNCaPのKCa1.1活性が亢進しており、ユビキチンE3リガーゼFBXW7の発現抑制によるKCa1.1のタンパク分解の抑制が関与することを明らかにした。(2) LNCaPスフェロイド培養モデルにおいて、KCa1.1阻害薬の前投与によりdoxorubicin耐性が克服された。また、doxorubicin耐性獲得とKCa1.1阻害によるその克服には、ABCトランスポーターMRP5が関与することが示唆された。(3) LNCaPスフェロイド培養モデルにおいて、抗アンドロゲン剤耐性獲得にユビキチンE3リガーゼMDM2を介したアンドロゲン受容体ARタンパク分解促進が関与しており、KCa1.1阻害薬の処置によりMDM2発現が抑制されることにより、抗アンドロゲン剤耐性が克服された。さらに、「乳がん患者の腫瘍サンプルを用いたイオンチャネル発現の網羅的解析」を実施した。
- ID情報
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- 課題番号 : 20K07071
- 体系的課題番号 : JP20K07071