共同研究・競争的資金等の研究課題

2019年4月 - 2022年3月

振動を介した分子内エネルギー移動と化学反応の関連性についての理論的考察

日本学術振興会  基盤研究(C)  基盤研究(C)

課題番号
19K05367
体系的課題番号
JP19K05367
担当区分
研究代表者
資金種別
競争的資金

2020年度は、振動を介した分子内エネルギー移動と化学反応の関連性について理論的考察を進めるために、(i)溶液中での化学反応ポテンシャルの高精度計算を目指した手法開発、(ii)振動を介した分子内エネルギー移動を議論するための理論開発を行った。
(i)では、統計力学と量子化学計算のハイブリッド法であるRISM-SCF-cSED法にMoller-Plesset(MP2)法を組み合わせたMP2-RISM-SCF-cSED法の解析的微分を導出した。本手法の有用性を調べるため、溶液内でのシクロペンタジエンとメチルビニルケトン間のDiels-Alder反応に適用した。計算で得られた活性化自由エネルギーは実験結果を2kcal/mol以内の誤差で再現しており、本手法の信頼性を確認することができた。
(ii)の理論開発では、溶液内での基準振動解析を効率的に行うため、RISM-SCF-cSED法で定義された自由エネルギーの座標に関する解析的二次微分を導出し、量子化学計算プログラムの一つであるGAMESSに導入した。プログラムの妥当性を検証するために、溶液内でのホルムアミドの基準振動解析に適用した。今回の解析的に得られた振動数は従来の数値的な結果と極めて良く一致した。また計算時間についても、従来法の約1/8倍に削減できることがわかった。次に、パラニトロアニリン(PNA)の分子構造の平面性について検討を行った。PNA内のアミノ基はピラミダル構造をとっており、分子は完全な平面構造をとっていない。本研究では、このアミノ酸周りの構造を議論するため、アミノ基のワギング振動モードに沿った自由エネルギーを計算した。水中での自由エネルギー曲面を求めたところ、ワギング振動モード以外の振動モードを考慮することで、平面構造の安定性が増加することが明らかになった。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-19K05367
ID情報
  • 課題番号 : 19K05367
  • 体系的課題番号 : JP19K05367