抗真菌薬による足白癬の治癒率は高いが、毎年の患者数は決して減少しているとは言えない。その原因として、1)完治前に治療薬の塗布を止めてしまう、2)爪白癬から白癬菌が皮膚に感染する、3)環境中からの再感染などがあげられる。私達は、環境中、特に履物に付着した白癬菌による再感染の可能性に着目した。皮膚科外来に来院した未治療の足白癬患者15名の痂皮と来院時の履物内の汚染真菌をテープ法で採取・培養した結果、1例について痂皮と履物内で同一の発育形態を示す真菌を得たので、両菌株を18S rDNA遺伝子ITS領域での同定を試みた結果、いずれの遺伝子も同一の配列を示し、Trichophyton interdigitaleと判定された。これとは別に、長期にわたって未治療の足白癬患者が、終日使用した靴下の種々の部分から菌を採取して培養した結果、靴下の内側のみならず、外側からも白癬菌が採取された。以上の結果から、足白癬患者の白癬菌は靴下を透過して履物の中に散布されている可能性が示唆され、足白癬の治療と同時に患者が使用している履物内も除菌する必要性が示唆された。(著者抄録)