土田 亮
基本情報
- 学位
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学士(学術)(2017年3月 九州大学)修士(総合学術)(2020年3月 京都大学)博士(総合学術)(2023年9月 京都大学)
- ORCID ID
- https://orcid.org/0000-0001-8773-1305
- J-GLOBAL ID
- 201901000392255929
- researchmap会員ID
- B000357957
- 外部リンク
主に災害と日常の研究や実践、思想を、フィールドやテクスト、日常、学問、映像・写真、アートなど行き来しながら自由に探究しています。それはなぜならば、例えば以下の問いを私たちに投げかけ、その応答に対していかようであるのか、いかようにありうるのかを探求素、私たちの手で作り上げていく必要があるように思えるからです。
①「なぜ、どのようにして人びとはリスクのある地域に住まうのか?」、②「いかにして人びとや自然は生き抜くのか?」、③「誰が誰に誰の何をどのように書く、語る、残す、記録する、読む、語られるのか?」、④「これらの学問的あるいは実践的な見方が、結局は私たちに何をもたらすのか?」といった主題を考えています。
①-1 スリランカの水害と復興に抗する地域の成立過程と戦略に関する研究(自然と生業、文化と社会、都市や制度・技術の歴史的成立過程との相互作用 キーワード:リスク、レジリエンス、歴史、社会性・共同性、日常的実践)
災害研究における地域に内在する知識形成と組織、復興の問題について、主にスリランカをフィールドに包括的な研究を行っています。特に、近年スリランカ農村部で増加増大しつつある水害常襲地での調査から、地縁・血縁に基づく社会的関係や生存戦略が形成されつつあることに着目して研究してきました。
博士論文ではラトゥナプラ市におけるフィールドワークや公的文書・手記などの読解を通した災害対応の歴史的変遷や戦略に着目し、内在する資源を活用した策を見出しつつ、国家や社会が示すレジリエンスにも包摂されないような実践や工夫が繰り広げられていることを見出しました。ただし、コロナ禍のなかでのままならない調査や執筆・考察であったため、フィールドワークや読解は十分であったとはいえません。今後は災害、脆弱性、リスク、主体といった諸テーマに加え、気候変動適応や多元的なレジリエンスなどと呼ばれる概念やミクロな実践との相互作用にも注目しています。地域固有の文化や住民らの被災経験・知恵といった在来知が結びついた地域のレジリエンスがどのような歴史的変遷を経て構築されてきたかという問いをもとに研究しています。スリランカの水害常襲地における防災技術・制度とその時代下で実践された戦略との相互作用として形成されたレジリエンス、植民地時代からの歴史的変遷に関心を持っています。さらにJICAと関連したSATREPSプロジェクトに携わりながら土砂災害と住民に対する避難や防災教育のあり方にも迫っていきます。
①-2 リスクとメリットの共存 (宝石産業と洪水、テンポラリティ、スケーラビリティ/ノンスケーラビリティ、採掘主義(extractivism)と資本主義、サプライ/コモディティチェーン、マルチサイテッド、デジタルエスノグラフィ)
気候変動や災害多発、ポストパンデミック、経済危機といった複数の危機や不確実性に直面している今日のスリランカにおいて、宝石産業が栄えているサバラガムワ州ラトゥナプラ県ラトゥナプラ市における生業と維持・発展に着目しています。対象地域は、集中豪雨が起こると河川上流域から宝石の原石を含む土塊(地球科学的な熱や圧力によって出来上がった天然石と人工的な熱処理や化学反応によってできる人工石も入り混じった原石)が流れ込み、盆地かつ下流域にかけて川幅が狭まるボトルネックがあることで、水と原石が溜まるといった地理的要因とモンスーンにより季節性の雨をもたらす気候的要因が重なっている場所でもあります。こうした災害というリスクと宝石というメリットが共存する地域では、独自かつ伝統的に採掘・ 研磨・加工・市場販売といった宝石産業とそのサプライチェーン、人とモノのネットワーク、さらには デジタル上でのつながりが栄えています。なぜこの地域と人々は、水害や複数のリスクがありながらもそれらを営み続けられ、多様なつながりを作れているのでしょうか。こうした問いから、洪水によって生まれるメリットとリスクをめぐる社会性や生活史、組織、利潤追求、さらにグローバル、デジタルな展開に目を向けています。
②-1 被災・復興とケアをめぐる実践の研究(危機、ケア、多元世界、あっけない出来事の後の日常の意味づけ、主体の継ぎはぎ キーワード:移動・移転、住まう、場所・空間の喪失と変容、行為、意志、選択、ケア、よさ、生社会性)
スリランカだけでなく、令和元年・令和3年九州北部豪雨で立て続けに被災した佐賀県武雄市でも調査してきました。さまざまな問題に直面し葛藤する災害頻発地域で生きること、被災すること、リスクの高い地域や被災地から移動すること/移動しないことの選択した行為と意志、そのケアのあり方とは何か。それを提示することがこれからの私たちの生存のありように何を加えることになるのか。具体的な人びとや経験とともに考え、今後継続して長く関わっていきます。
また、もともと災害研究あるいは水にまつわる研究をはじめることになった端緒を振り返ると、私自身が2005年、当時小学5年に地元・宮崎県宮崎市生目台で台風14号を被災し、長期断水を経験したことにあります。その時に短期的にも長期的にも垣間見たのは、ソルニットのいう「災害ユートピア」なのか、グレーバーのいう「基盤的コミュニズム」なのか、すぐにはわかり得ない互助的な関係性でした。健常で資源にアクセスしやすい人たちだけが社会をつないでいるわけではないでしょう。シングル世帯や心身に不自由がある人、社会的参加が難しい人、高齢者など多様でよるべない人たちをゆるやかにつなぐコミュニティを考えてみると、不思議な取り組みや仕組みがいくつかあるときに動員され、循環していきます。私の地元は昭和の終わりに台地を切り拓いてできたニュータウンで、当時はそれならではのコミュニティの存在や人やモノ、サービスのコンパクトさを間近に感じることもありました。ただし、当時の地域と現在とでは、例えば少子高齢化や学校合併化など大きく状況が動いています。今、再び地元に立ち返って変容する地域での困難さやケアのよさを考えていきます。
②-2 「ケアする災害復興」の理念と実践に関する研究 (小さき者たち、運動、開発、ケア、多元性/複数性、燃え尽き、回復、巻き込む/巻き込まれる/巻き込まれちゃった、自己犠牲・贈与、カタストロフィ)
ケアの諸行為は社会や秩序を維持し再生産する重要な営みで、他者を思いやり、他者の存在から自らを見つめ返すことで、自他のあいだで生まれる行為を通じて創造的な関係性を生み出す。それは災害発生から復興のいろんな場面で見られうる…そう私は導きたいです。しかし、本当にあるのか?それはどうやって、どんな場面、条件で?さらに、この他者との関わり合いに関して災害復興の場面では根源的な問いを提起します。それは、災害がもたらす苦しみを他者に共有、経験できないなかで、いかに相互に関わり合うのか、ケアという自己犠牲や贈与の行為をしながら、私たちはいかにカタストロフィのさなかや新しい日常に向かう復興の時間のなかで自ら生きることや日々を肯定するのか、といった問いです。
「よりよい災害復興とは」と一般化された大きな言葉から考え始めるよりも、ケアという行為、そして、「ケアする災害復興」という言葉を掲げつつ、その具体的な行為や場面を通じて、まず基礎研究や社会課題の根本について考えてみたいと思います。
③ 環境・社会・人間の危機の記述・記録とオープンな/クローズドな公開(カタストロフィから取るに足らない日常の重さや暗さまでを扱う記述や読み方、感じ方の多様なあり方 キーワード:グラフィ、記述・分析の民主化、カテゴリー、モード、問題の当事者)
危機的な状況が立ち上がったりその渦中にいたり巻き込まれたりする時、記述・記録する私は何を見る/見ない/不可視化しているのか?書ける/書き得ないのか?身体や五感から経験する/しないセンサーをどのように切り替えているのか?伝える/伝え得ないのか?記述や記録を目の当たりにした時、引き込まれるのか、憚られるのか?こうした記述や分析を誰がどういったモードで書くのか?アカデミズムだけに研究の主権を持たせず、民主化を狙って市井が書き、記録し、分析するような実験性を持った記述ができるとなったら、どんな価値転換や方向性が見出せるのか?リアリティを描くことや近づくことを研究上のテーゼに掲げ、圧倒的な場や主体、行為、感情、語りをそのままゴロっと書き残すこともやっぱり書けないと躊躇うことも引き受けることなどで得られる「-グラフィ」の可能性について考えています。
④ 学際研究、課題解決の方法論・思想に関する研究(人類学的な実践や学際がもたらす反省性と公共性、価値の探究 キーワード:学際、課題解決、圏、多元性、共創、総合知)
これまで私はいわゆる一文字学部とか伝統的な学部ではなく、新しい学際的な学部から学際的・社会課題解決志向の大学院に身を置き、学問や研究とは何か探求したり議論したりしてきました。その経緯もあり、そもそも学際や専門とは何で、みなで何を目指し、何が生まれるのかに興味を持っています。実際、よく考えると私自身が何の専門であるのかもわからないし、仮に定位してもそれを何かの機会や場で主張することの意義がはっきりと見出せません。曖昧な立場だからこそ、文理融合のあり方や課題解決型の研究の方法論、さらには学際や共創の方向性や思想について考えています。これは現在自分の研究を違う切り口から見通すことや他の研究グループ・プロジェクトと交わることを通じて、メタ的に分析することを実験的に試みています。
気になるテーマやコラボしたい内容などがあれば、ぜひお気軽にご連絡ください。
所属は東京ですが、普段の住まいは京都です。たまにスリランカや九州に調査に行きます。
連絡先:tsuchida.ryo.74☆gmail.com (☆を@に変えてください)
主要な経歴
14-
2023年10月 - 現在
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2023年4月 - 現在
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2023年4月 - 現在
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2021年4月 - 2023年3月
学歴
3-
2017年4月 - 2023年3月
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2017年4月 - 2023年3月
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2013年4月 - 2017年3月
受賞
2主要な論文
11-
Proceedings of the International Conference on Disaster Risk Reduction and Climate Change 2023 4-10 2023年10月 査読有り筆頭著者最終著者責任著者
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Journal of Safety Science and Resilience 258-266 2021年11月 査読有り筆頭著者責任著者
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日本災害復興学会論文集 18 21-32 2021年7月 査読有り筆頭著者
主要なMISC
15-
日本災害復興学会2023年度静岡大会 予稿集 53-56 2023年12月
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2022年9月 招待有り筆頭著者
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UNESCO Chair WENDI Resilience Brief 2020 by Graduate Student, Kyoto University UNESCO Chair WENDI Course for Creating Resilient Societies 27-30 2020年3月
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アジア・アフリカ地域研究 19(2) 269-273 2020年3月 筆頭著者
書籍等出版物
3-
柊風舎 2023年5月 (ISBN: 9784864981019)
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京都大学学術出版会 2021年1月
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京都大学学術出版会 2021年1月
主要な講演・口頭発表等
38-
EASST-4S 2024 Amsterdam: Making and Doing Transformations 2024年7月
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海域アジア・オセアニア研究プロジェクト(MAPS)第1回若手研究者集会「アジア・オセアニアから考える移動・災害・海域社会」 2024年1月21日 招待有り
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日本災害復興学会大会 2023年度静岡大会
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International Conference on Disaster Risk Reduction and Climate Change 2023 2023年10月7日
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13th IDRiM Cafe 2023年9月6日 招待有り
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第4回復興デザイン会議全国大会 2022年11月27日 招待有り
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IDE大学協会近畿支部 令和4年度IDE大学セミナー「文理融合型教育の実現を考える- 高大接続・大大接続の視点から-」 2022年9月9日 招待有り
担当経験のある科目(授業)
3主要な共同研究・競争的資金等の研究課題
11-
日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 2023年10月 - 2026年9月
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アカデミスト株式会社 Academist Grant × Alphadrive 研究助成プログラム 2024年3月 - 2025年3月
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日本学術振興会 科学研究費助成事業 特別研究員奨励費 2021年4月 - 2023年3月
主要な学術貢献活動
4メディア報道
4-
AlphaDrive PRTimes https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000081.000033909.html 2024年3月
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京都大学 京都大学 https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2023-12-12-1 2023年12月 インターネットメディア
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PR Times PR Times https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000005338.000002535.html 2023年8月 インターネットメディア
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京都大学 京都大学 https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2021-09-17 2021年9月 インターネットメディア
その他
3-
2022年7月国際連合人間居住計画(国連ハビタット)アジア太平洋担当(福岡本部)設立25周年に際して発行・翻訳をインターンチームと職員で担当
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2019年11月 - 2021年3月総合型選抜専門塾AOI(大阪校・京都校)において、高校生に対して小論文対策に関する授業や指導として講師を務めつつ、授業カリキュラムの開発やメンターの育成、授業動画作成などを総括するインターンとして務めてきました
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2017年3月卒業論文「場所の喪失が地域愛着に及ぼす影響に関する研究 -九州大学箱崎キャンパスとその周辺地域を事例として-」について、今はなき九州大学箱崎キャンパスの近くにオフィスを構えていた建築設計事務所のサイトに掲載していただきました。下記リンクよりアクセスできます。 http://love-kyudai.jp/journal/685
主要な社会貢献活動
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