2020年4月 - 2023年3月
放射線化学種の磁場効果に関する研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究 若手研究
放射線照射方向と平行に磁場を印加すると、放射線照射に誘発される細胞致死率が増加する(以下、本現象)。 本現象のメカニズムを明らかにする為に、放射線に誘発され生じた化学種へ与える磁場効果を実験・シミュレーションの両面から検証した。 本研究において、放射線輸送モンテカルロコードGeant4-DNAを用い、放射線に誘発されるDNA損傷をシミュレーションし、細胞の生存率を予測できるシミュレーションプラットフォームの開発をおこなった。このプラットフォームを用い、放射線の受ける磁場効果だけでは、本現象のメカニズムを説明できない事を示した。東京大学原子力専攻の施設共同利用の枠組みを通じて、電子ライナックを用い磁場中でのパルスラジオリシス実験(時間分解能10ナノ秒程度)をおこなった。 チオシアン酸カリウム水溶液や臭化ナトリウム水溶液へ磁場中での電子線照射を行い、非磁場中での測定結果と比べる事で、電子線照射に誘発されて発生したOHラジカルの受ける磁場効果を調べた。本研究によって、磁場によってOHラジカルの生成或いは反応が影響を受けている事を強く示唆する結果を得た。磁場印加時、OHラジカルのG値が非磁場印加時に比べて大きくなる事を示した。また、照射開始から比較的遅い時間(5-15マイクロ秒)でも、反応速度定数が非磁場印加時に比べて高い事が分かった。来年度からは大阪大学産業科学研究所の電子ライナックも用い、より系統だったデータ測定を行い、化学種の磁場効果をモデリングし、本現象の解明を行う。
- ID情報
-
- 課題番号 : 20K16840
- 体系的課題番号 : JP20K16840