共同研究・競争的資金等の研究課題

1993年 - 1994年

耐高温硫化および酸化性新合金の創製

日本学術振興会  科学研究費助成事業 国際学術研究  国際学術研究

課題番号
05044075
体系的課題番号
JP05044075
配分額
(総額)
5,000,000円
(直接経費)
5,000,000円

本研究では金属の耐高温酸化性の改善に最も効果的な添加元素であるAlと耐高温硫化性に優れた高融点金属をスパッター法を用いて合金化し、これらの高温硫化挙動および高温酸化挙動を調べてきた。その結果、これまでにAl-Mo合金およびAl-Nb合金が金属としては極めて優れた耐高温硫化性を示し、耐高温酸化性に関しても著しく改善されたことを報告してきた。しかし、これらの合金の高温硫化における挙動はまだ十分解明されているとは言えず、また、高温酸化に関しても、実用材料として用いるためにはより一層の改善が望まれた。そこで、高温硫化挙動に関してはAlの添加の効果についての解析を、また、耐高温酸化性の改善に関しては第三元素としてSiの添加の効果について検討した。
Al-Mo合金やAl-Nb合金はMoやNbの硫化物スケールが形成することで優れた耐高温硫化性を示し、その硫化速度は純粋なMoやNbの値をも下回るものだった。その改善の機構については、MoやNbの硫化物にAlが添加されることでこれらの硫化物中の欠陥密度が現象して、合金全体の硫化の進行を抑制されるものと推定された。この場合、Alの添加は微量でも合金の硫化速度に大きく影響することが予想される。そこで、この推測の確認を目的として微量のAlの添加の効果について解析を行った。ここではMoやNbに16at.%以下のAlを添加した合金を作製し、その高温硫化挙動を調べた。その結果、Mo合金では僅かなAlの添加でも硫化速度が急速に減少するのが観察されたのに対し、Nb合金ではAlの添加量に従って硫化速度が緩やかに減少するのが観察された。
このほか、RBSを用いた硫化後の試料の分析より、Al-Mo合金の高温硫化は純粋なMoの高温硫化と同様に硫黄の内方拡散によって進行することが明らかにされた。また、Al-Nb合金では、Nbに僅かなAlを添加すると表面にできる針状結晶の形態が急激に変化する様子が観察され、その結晶中、さらには表面にできるNb硫化物のスケール中の物質移動にAlが大きく影響していることが推測された。
以上の高温硫化試験の結果を総合すると、Al-Mo合金の高温硫化挙動に関してはこれまでの推測を概ね裏付ける結果が得られたが、Al-Nb合金に関してはこれまでの推測では説明が不十分であり、今後さらに硫化機構の検討が必要であるものと考えられた。
高温酸化に関してはAlの添加によって酸化速度が著しく減少した。しかし、その値は一般に用いられているアルミナフォーマ-の合金を上回り、さらに、Al-Mo合金では揮発性のMo酸化物の生成、Al-Nb合金では複酸化物の生成やペスト現象(高温酸化における試料の脆化・崩壊現象)が観察され、より一層の改善が望まれた。そこで、本研究では第三元素に着目し、ここではAlと同様に耐高温酸化性の改善に効果のあるSiを添加することでこれらの合金の耐高温酸化性の改善を試みた。まず最初にAl-Mo合金にSiを添加した合金を作製し、その高温酸化挙動を測定した結果、Siを添加しなし合金では900℃において揮発性のMo酸化物の生成による重量現象を伴った高温酸化が進行してしまうのに対して、6at.%程度のSiの添加で重量減少が抑制され、耐高温酸化性が向上するのが観察された。これは高温酸化が容易に進行してしまうMoを多く含んだAlとMoの金族間化合物の生成が、Siの添加によって抑制されるためと推測された。しかし、Mo濃度の高い合金ではSiの添加の効果も十分に現れなかった。
高温硫化におけるAl-Mo合金に対するSiの添加の影響についても調べた結果、6at.%Si程度の添加であれば合金の耐高温硫化性は保たれたが、過剰にSiを添加した場合は初期には緩やかであった硫化が途中で急速に進行してしまう現象が観察された。このため、高温硫化においてはAl-Mo合金に対する過剰なSiの添加は有害であった。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-05044075
ID情報
  • 課題番号 : 05044075
  • 体系的課題番号 : JP05044075