共同研究・競争的資金等の研究課題

2018年4月 - 2021年3月

国際バカロレアに関する理論的・実証的研究―「知の理論」を中心に―

日本学術振興会  科学研究費助成事業 特別研究員奨励費  特別研究員奨励費

課題番号
18J20217
体系的課題番号
JP18J20217
配分額
(総額)
2,800,000円
(直接経費)
2,800,000円
(間接経費)
0円

本年度は高大接続制度としての国際バカロレア(IB)の汎用性について、日本を事例として検討した。検討のための観点として①日本の大学入試制度におけるIBの位置づけ、②当事者(IB修了生)からみたIBカリキュラムと日本の大学教育カリキュラムの接続、以上2点を設定した。
第一の観点から以下のことが明らかになった。IBは世界中の多くの高等教育機関が認証している高大接続のための一制度である。しかし、IBが世界中の高等教育機関から高い評価を受けているという先行研究の指摘が、日本の文脈でも当てはまるかについては検討の余地がある。なぜなら、大学はIBを積極的に入試に用いることが推奨される、という政府や国立大学協会等の指針とは裏腹に、IBを活用する大学は限られるためである。
本研究は、日本の大学入試におけるIBの位置づけを、各大学が「IBを活用した特別入試」(以下、IB入試)を導入・実施する際の意図と葛藤を中心に明らかにした。本研究は、日本の大学がIB入試の導入・実施に積極的に取り組んでいるとは言い難い状況が生じている理由として、日本において、IB修了生の進学希望先となる選抜性の高い大学は、「新しい能力重視の選抜」に分類されるIB入試を実施する場合であっても、旧来型の学力を尺度とした公平性担保の重視という「エリート選抜の論理」を保持するからである、ということを論証した。
第二の観点から、日本の大学に在学しているIB修了生へのインタビュー調査を分析することで以下のことが明らかになった。日本の大学教育の文脈に焦点を当てると、IBを履修・修了していることは必ずしも円滑な接続を保証しない。なぜなら、IBの学習を通じて獲得した力が大学教育で活かされるか否かは、大学でとられる授業方法や評価方法、ならびに学部学科(専門分野)の性質に規定され、かつIBを履修・修了したゆえの接続上の困難があり得るからである。

リンク情報
KAKEN
https://kaken.nii.ac.jp/grant/KAKENHI-PROJECT-18J20217
ID情報
  • 課題番号 : 18J20217
  • 体系的課題番号 : JP18J20217