論文

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2021年2月20日

空想的表現物の規制手段に関する小論――いわゆるポルノ漫画の規制方法を中心に――

大学院研究年報法学研究科編(中央大学)
  • 海老澤侑

50
開始ページ
101頁
終了ページ
119頁
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(大学,研究機関等紀要)
出版者・発行元
中央大学大学院研究年報編集委員会

我が国には,性的内容を表記したものを規制する規定がいくつか存在する。その対象も,小説にはじまり,電磁的記録媒体といった現代技術により生まれた記録媒体を含んでいるところ,漫画表現に関しては,我が国特有の議論状況が生じている。
法律レベルでは,性表現規制の母法ともいえる刑法175条が想定されるところ,漫画に関しては,その適用は控えられている状況にある。また,いわゆる児童ポルノ法は,現在まで漫画表現を規制対象に含めていないが,立法時,また改正作業時にこれを含めるべきか否かについて激しい議論が生じていた。さらに,販売規制に目を向けると,風俗営業取締法による風俗営業の登録及び法律に反する営業を行った場合の営業停止措置が,ここでの検討対象となる。
規制のレベルは法律にとどまらない。いわゆる地方自治体の青少年健全育成条例による不健全図書類の指定が,漫画規制の題材になる。その中でも平成23年 7 月 1 日に施行された「東京都青少年の健全な育成に関する条例」は,条文に漫画,アニメ表現が含まれたこともあり,世論の大きな関心を集めた。東京には出版関係の会社が数多く存在しており,過度な表現規制の恐れから批判の声が数多く上がったわけである。本稿は,数多くの批判を受けた中で漫画表現の規制に大きく舵を切った理由を,議論状況も参照しながら見ていく。
また,規制の態様は,国,自治体のみの専権事項ではない。性表現の場合,作成者,出版社による自主規制が度々取られており,そのような活動が一定の理解を得ていたことも事実である。自主規制は,作成者,出版社側の営為であるが,他方で摘発側(多くは警察)との共同作業の面も有している。この共同作業が,現在の性風俗の基準を作り出していることは否めない。
このように,性的内容が加味された漫画表現は,種々の規制ごとに,主体,客体,行為内容,罰則が異なっている。本稿は,このように複雑に絡み合った規制体系を確認すると同時に,現在の漫画表現の規制は妥当なものといえるのか,検討するものである。

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