近畿大学「日本中世史講読A」のしおり

大学講義のしおり

イントロダクション

〔授業の目的〕
 鎌倉時代の重要史料を講読し、卒業論文の執筆にむけての基礎的な史料読解力を養います。
 第一に、テキストとなる史料や関係史料を厳密に読解することが求められます。併せて文献の探索方法についても習熟することが肝心となります。

〔テーマと史料、ポイント〕
①「承久の乱後の過程」
 京方の武士たちについて、関係史料を読みます。東京大学史料編纂所編(編纂担当者:和田英松・三浦周行・八代国治『大日本史料』第4篇を積極的に活用してください。基礎データとして、宮田敬三「「承久京方」表・分布小考」(『立命館史学』22、2001年)を配付しますので、持参してください。
 授業中では、活字化された史料を読むわけですが、どんなに偉大な学者が編纂した史料集でも誤植・誤読がつきものなので、注意してください。真に良心的で深い学識を有する学者は、洋の東西を問わず、出来る限り史料の原本や写本を調査するものです。その点についての心得もお教えします。併せて、活字本のみに依拠する研究が、思わぬところで考察に不備が生じたり、失敗をおかすことを、実例に即して示したいと思います。
 また、研究史の探索方法の習得に資すべく、近年の政治史研究はもとより、戦前や江戸時代の研究などにも触れる予定です。研究は、生鮮食品ではありませんから、古い研究でも、しっかりとしたものは永く生き残ります。
新しい論文さえあれば事足りるというものではありません(最近の研究が指摘した事実が、実は戦前の学者によって既に指摘されていた、という例もあるのです)。とりあえず、三浦周行氏の研究、さらには水戸藩で編纂された『大日本史』の列伝などを例にとって、お教えします。

〔注意事項〕
 予習・復習を欠かさず行なうことが必要です。単なる「出席」だけでは、単位は絶対に認定しません。積極的な質問や受講生同士の活発な討論を、心から期待しています。
 知識不足を怖れたり、恥じることは一向にありません。とにかく、一生懸命に勉強に励みましょう。難しい漢文を読めたり、これまで知らなかった中世に対する理解を深めたりすると、とても楽しいと思いますよ。