論文

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2010年12月20日

工学倫理の教科書の変遷

技術倫理研究
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  • 藤木 篤
  • ,
  • 杉原 桂太

7
開始ページ
23
終了ページ
71
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(大学,研究機関等紀要)
出版者・発行元
名古屋工業大学技術倫理研究会

本稿では、日米両国における工学倫理の教科書の変遷過程を概観し、その後のわが国に適した教科書を作成する上での課題について述べる。アメリカにおける近年の出版動向を確認すると、従来アメリカ式の工学倫理の特徴とされたプロフェッショナリズムはさらに強調され、同じく特徴として挙げられてきた個人主義的傾向は勢いを弱めつつあることが明らかになる。一方わが国の教科書は、アメリカに強く影響を受けているにもかかわらず、上記の点、すなわちプロフェッショナリズムを前提とする社会契約モデルを採用するか否か、また個人主義的傾向をとるか否かについて、執筆者ごとのスタンスの違いが表れるため、未だ標準化という方向へ向かっていない。こうした状況は、工学倫理導入当初からわが国において議論され続けてきた問題、すなわち「専門職概念をどのように受容するべきか」という問題へと帰着する。つまり、わが国で技術者が置かれている実際の立場と、社会契約モデルが前提とする技術者像の間に乖離があるために、両者の間に齟齬が生じ、結果的にこのような複雑な状況を生み出しているのである。したがって、われわれは今後、技術者の社会的地位とその責任について議論を行う必要がある。日本に適した工学倫理の教科書を作成するためには、我々はあらためてこの問題に向き合わねばならない。

リンク情報
CiNii Articles
http://ci.nii.ac.jp/naid/40017436995
CiNii Books
http://ci.nii.ac.jp/ncid/AA11981204
共同研究・競争的資金等の研究課題
アスベスト問題の事例分析を基礎においた、工学の特性に関する哲学的考察
URL
http://id.nii.ac.jp/1476/00001352/ 本文へのリンクあり
ID情報
  • ISSN : 1349-4805
  • CiNii Articles ID : 40017436995
  • CiNii Books ID : AA11981204

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