論文

2020年2月

【子どもを虐待したくてしているわけじゃない!-逆境体験に精神医療はどう向き合うか-】児童期逆境体験(ACE)が脳発達に及ぼす影響と養育者支援への展望

精神神経学雑誌
  • 藤澤 隆史
  • ,
  • 島田 浩二
  • ,
  • 滝口 慎一郎
  • ,
  • 友田 明美

122
2
開始ページ
135
終了ページ
143
記述言語
日本語
掲載種別
研究論文(学術雑誌)
出版者・発行元
(公社)日本精神神経学会

児童期逆境体験は,さまざまな認知発達領域に悪影響を及ぼすことで,その後の不適応のリスクを高めることがよく知られてきた.本研究では,児童期逆境体験のなかでも児童虐待による被虐待経験に焦点をあて,幼少期における脳発達に及ぼす影響について検討した.まず,被虐待経験が脳に及ぼす影響について先行研究をもとに脳領域ごとに概観し,前頭前野における実行機能の減弱,海馬と二次障害の関連性,報酬系における報酬処理の機能不全などが示唆されていることを述べた.次に,虐待のタイプとタイミングが脳発達に及ぼす影響について,著者らが近年行ってきた研究をもとに検討を行い,虐待のタイプとタイミングによって影響を及ぼす脳領域が異なることや,そのことにより呈する症状が異なっている可能性を示した.最後に,養育者支援につなげるための近年の脳科学研究の進展について概説し,近年におけるfMRIなどの脳機能計測技術の急速な進展に基づき,精神疾患や養育困難を含む社会適応困難を早期発見・対応できる予防モデルの開発の可能性について議論した.今後,養育脳のメカニズムの理解の深化とともに,養育困難およびそれに伴う養育脳機能低下の予防や介入支援に関する研究がさらに進むことで,養育者を支援するうえでの方法論の変革を導き,養育能力の個人差を含む多様なニーズに合った支援プログラムの構築が可能となることが期待される.(著者抄録)

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ID情報
  • ISSN : 0033-2658
  • 医中誌Web ID : 2020155336

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