2018年4月 - 2020年3月
呼吸リズムに同期した高位脳幹領域の探索:呼吸困難感知覚機序解明のための基礎的検討
日本学術振興会 科学研究費助成事業 若手研究 若手研究
呼吸困難感とは,呼吸を行うことが容易ではないという感覚,あるいは呼吸に伴う不快感・苦痛をいう.呼吸困難感は,呼吸器疾患患者では特に労作時に増強し,患者のADL低下,ひいてはQOL低下を引き起こす要因となる.そのため,患者の呼吸困難感を軽減させることは,呼吸リハビリテーションの実施上,極めて重要である.しかし,現時点で呼吸困難感の知覚機序は十分には解明されておらず,呼吸困難感の緩和法も十分には確立されていない.本研究では,『下部脳幹の呼吸中枢が意図した呼吸神経出力と実際に実現された換気運動の大きさ・タイミングのズレを大脳が感知した時に,呼吸困難感が知覚される』という仮説を提唱し,その検証の一環として,その場合に存在するはずの延髄で形成された呼吸活動運動指令の上行性コピー投射を実証することを目的とし,具体的には,(1)摘出間脳下部脳幹脊髄標本を用いた膜電位イメージング解析により,間脳・中脳で呼吸リズムに同期して活動する領域を同定すること,(2)同定した領域が延髄呼吸リズム形成機構からの神経投射を受けていることを解剖学的に確認することを目指している.本年度は,上記(1)の呼吸に同期して活動する間脳・中脳領域を同定するための実験を行った.具体的には,新生ラットから作製した摘出間脳下部脳幹脊髄標本を電位感受性色素で染色後,正立蛍光顕微鏡下の計測用チェンバー内に固定し,横隔神経に連なる第4頚髄前根より吸息性神経出力を記録しつつ,タングステンハロゲンランプを光源とする緑色励起光を照射し,標本からの赤色蛍光を高感度光計測システムで計測し,観察面内の呼吸神経活動を動画像として捉えた.本年度に行った実験および解析から,間脳で呼吸に同期して活動する領域を複数箇所検知することができた.特に,視床下部腹側において,第4頸髄神経根の吸息神経活動に同期して活動する二つの領域を同定することができた.
- ID情報
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- 課題番号 : 18K17783
- 体系的課題番号 : JP18K17783
この研究課題の成果一覧
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論文
5-
The Journal of Physiological Sciences 72(1) 26-26 2022年12月 査読有り
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Brain Research 1795 148061-148061 2022年11月 査読有り筆頭著者責任著者
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Frontiers in Physiology 12 757731-757731 2021年10月8日 査読有り筆頭著者責任著者
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PLOS ONE 16(9) e0258104-e0258104 2021年9月30日 査読有り筆頭著者責任著者
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Frontiers in Physiology 12 2021年3月25日 査読有り
MISC
4-
Respiratory Investigation 2020年12月 査読有り筆頭著者責任著者
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自律神経 57(1) 31-35 2020年 査読有り筆頭著者責任著者
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Respiratory Physiology & Neurobiology 265 172-179 2019年7月 査読有り筆頭著者責任著者
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Journal of Rehabilitation Neurosciences 19(1) 22-32 2019年 査読有り筆頭著者責任著者